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KEITA FUKAZAWA 深沢慶太 | 『WOW10』 | 「NEWハイプ研究所2」連載第2回

NEWなタイプばかり称揚し、提灯記事で消費を煽り、プロモ期間を終えるや否や、過ぎたるはお呼ばざるが如しなのがメディアの常。「NEWなタイプは消費の道具じゃない!」ーOLDハイプの欺瞞を糾弾しつつ、自らもまたハイプである葛藤に奥歯を噛む。魂をメディアに縛られた人々へ。電波、紙に載らない本音の論評をもって我らがリテラシーの革新に挑む、NEWハイプ専用コラム連載。


ー以上をもって我が毎回の導入文となす。さて一服。
と、気を抜いたところで、「なぜwebは紙よりも”本音”が載りやすいのですか」と問われた。
むむ。どんな浅薄な発言でも無自覚に露悪できるから…と、出かかった返事をのど元で飲み込みつつ、答えは明快、出版業界はいまピンチだからである。

雑誌のみなさんが広告出稿のちょうちんになり下がる過程で批評精神という名の背骨を取り除かれ、スーパーに居並ぶ「骨なし魚」状態で陳列されている一方で、広告料という収入手段のない書籍はどうか。
悲惨なのはとくに、印刷・製本費用のかかるアートブック。ズバリ、出したい本が出せない。マスレベルでウケることが確実視されている本以外はダメ。よって、骨なしの魚群がやたらに「アート! デザイン!」と唱和する一方で、天然で活きのいいアートブックは市場に出回りすらしない。そのため、書店でのそうした本との”出会い”がなくなる。出会わないものに対して興味を抱くのは不可能であるため、アートブック市場はますます縮小し、偽装コロッケのように均質化され誰が書いたかもわからないタレント本ばかりが跋扈、美術系出版社を称しておきながら偽装出版社同然の向きが散見され、まさに末法のようなありさまになり果てたのである。

だものだから、『WOW10』の仕上がりを見た時には戦慄した。
ミラー状の特装ページや長大な観音グラビアといった造本には目が飛びでそうになったが、さらに表紙。
というのはフツー、表紙には帯を巻くなどしてわかりやすく、その筋に興味がない人の気をそそるような口上を、さらに大きめの文字の日本語で書かなければならない、でないと売れないから、とされている。しかし、ない。表紙に一切のうたい文句がないのだ……。

WOW10

というのは些細なことで、圧巻は収録されたグラフィック群。
この本の発行元の WOW はCMなどで知られる先鋭的な映像製作プロダクションだが、クライアントからの受注仕事だけでなく、自らの”作品”として自主製作の映像作品を発表してきた。それらオリジナルワークの映像を、グラフィックに再構成し、見開きで展開しているのだが、そのインパクトとヴィジュアル強度が尋常ではない。

WOW10

通常、「映像を再構成した」紙面といえば低解像度、単なるキャプチャー画像に過ぎない。すなわち、紙面上では映像が投影できないから仕方なしの方策であって、粗く、眠く、ありがちなカタログにしかならない。
しかし、彼らは映像作品製作の延長線上にグラフィックを位置づけ、データをほぼ1から作り直したというのである。

WOW10

「受注仕事にはない、表現の独自性を追求したかった」
とのことだが、クライアントからの無茶苦茶な要求や放送基準などのがんじがらめな制約をクリアしつつ、目からウロコのクリエイティビティを達成してきた彼らが言うのだから、凡百のワナビーが放つ言い訳とは言葉の重みが違う。

WOW10

さらに彼らは、自社のクリエイターたちの作品に加えて、grafの服部滋樹、グエナエル・ニコラ、ファッションデザイナーの久保嘉男、Projector inc.の田中耕一郎、華道家元池坊の石渡雅史ら5名のゲストクリエイターに作り下ろし作品を依頼。
500年もの間、研ぎ澄まされてきた生け花の最古の型を、自らの作品と併せて掲載する。それはつまり、物事の本質、普遍性の高みを目指して”表現”を行うのだという、彼らの本気度の表れに他ならない。

それでいながら、デザインを手掛けた若手俊英デザインチームartlessには、「自分の”作品”にするつもりでデザインして下さい」と依頼。
自社の刊行物ともなれば、思い入れとPR目的が悪の相乗効果を及ぼして、あからさまに宣伝めいたカタログにしかならないのが常のところ、なんとも大胆な英断の数々。
「売れる売れないではなく、クリエイティビティへの主体的意志に発してモノを作る」
という彼らの意志こそが、この本の最大の要訣なのだった。

WOW10

作りたい本を作る。出したい本を出す。汝の欲することを成せー。
出版事情のみならず、表現行為として実はいちばん難しいことを体現した、未曾有のアートブック『WOW10』。
もはやありがたい。あやかりたい。と、神棚に設置して拝んでみようとしたところ、
「手前で編集に参加しておきながら手前で拝むのかっ!」
という声が轟き渡り、にわかに突風が吹いて本が落下し、ああっ! 角でつむじを痛打、視界に火花が飛んで昏倒。脳10でワオ! That’s JURYOKU!!!!!!!


深沢慶太

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