
TUCKER | 神秘の町タイのレコード編 | 「Hello Wizard Residence」Vol.3
6.7年前になりますが、写真家の都築響一氏の事務所での御食事会に招かれ行ったところ、部屋の片隅に見慣れないレコードの山を発見。どうやらタイでの取材旅行の際、購入されたレコードらしく、むせ返る様ないかがわしいサイケジャケット群を鼻息を荒く、拝見させて頂いていると、親切にも「行ってくれば、?だいたいこんな所にあったような気がする」と購入したレコード店の地図を書いて頂きました。
しばらく行くかどうか考えていると都築氏が「なんかエレクトーンみたいなレコードもあったような気がするなー」との発言にエレクトーンバカの好奇心は沸点に達しその一言で行く事決定。
当時のバイト先のカフェのマスターにその旨伝えると「おお、いいね、いってらっしゃい、じゃ一万円わたすからなんか買ってきて」と暖かく見送られ翌週には「タイのエレクトーンのレコードを買いに行く」というアホな目的のため友人、とうしゃ君におつきあい頂き共に意気揚々、初めてタイに渡ったのでした。
しかしそれは悪夢の始まりとはつゆ知らず。、
滞在期間は一週間。レコ屋の地図もあるし、サクサクとゲットした後は優雅に観光などとしゃれこもうと計画していたのだが、そうは問屋は卸さないよオッカサン、不慣れな土地のレコード探し。
まず初日、「たぶんこの辺と」書かれた地図を握りしめにいざ出陣。しかし炎天下の灼熱の中たどりついたのは、行けども行けども、棺桶屋ばかり。
うすうす「ここじゃない」と思いつつ様々な彫刻の施されたサイケな棺桶達をしばし鑑賞。日本のシンプルな物と違い様々な文様にカスタムされた棺桶を見つつ「俺だったらエレクトーンの形がいいなあ」とか下らない会話をしているうちに夜もふけてしまいレコ屋は見つからず、アリなどの昆虫が共存する激安宿で就寝。明日は反対側の通りを探してみようということで、翌日もレコ屋を求めストリートを徘徊、しかしこの日もレコ屋にはたどり着けず行き着いたのはヒヨコ専門の卸問屋が立ち並ぶヒヨコストリート。ゴザに山盛りの生きたヒヨコが高々と積まれ「ギャピー!」と奇声を発しつつ下の層のピヨコ達はその重みで大半は息絶えている壮絶な光景に悶絶し2日目終了。
そんなこんなで3.4日がすぎ、(3日目はネジとかドライバーしか置いてない通りをフラフラ)しまいにはつき合ってくれていた友人も「観光してくるね」と言い残し海を見に出かけ、遂には独りに、、、
「こんなことならもっと詳しく聞いときゃ良かった」と言っても後の祭り。観光案内所で教えてくれるわけもなく、宿の汚い電話帳もグシャグシャしとってよくわからん。
もうこうなったら、吉とでようが凶とでようが勘をたよりに歩いて探そうと、決意というか発狂。多分暑さで頭がおかしくなっていたのかもしれないが、持ち前の嗅覚を発揮して「レコードのありそうな場所」をひたすら手探り状態でキョロキョロサーチ。
汚くて危ないところに良いレコードは眠っている:という代々伝わる先人達の教えを胸に放浪。しかしこの一見アホな行動が結果的には実を結び、変な楽器街を発見し、、遂にはレコード屋にたどり着くことができました。それは帰国1日前にせまった夕方、なぜかインド人街にたどり着きドブ川の橋を失意のどん底で渡っていると向こう岸の奥の隅に怪しい店が、、良く見ると店から溢れんばかりの平積みされたアナログが目に飛び込んできた。

「ギャピー!」と奇声を発しつつ入店! 汚くて危ない場所に良いレコ屋はありという神話は遠くはなれたタイではまだ生きていた。2000年当時に関わらずほぼ全面積はアナログが無造作に山の様に積み重なりかなりのケイオスな店内。見渡す限り知っているレコードは一枚もない状況なので、気が遠くなりそうだが端っこからレコードの山を崩しつつ物色。NY、日本のネタ屋とは違ってジャンルわけなどあるはずも無く、と言うかとにかく汚い。っていうか臭いのがビックリした。たまにレコード同士が張り付いているので剥がすと虫の様な物が平たく潰れているのに気絶しそうになりながらも、エレクトーン物やタイの60.s70,sガレージなど確保。

物色している最中、奇怪なスクラッチの入った曲が店内にかかっているので初老の店主に「今かかっている曲のレコードを下さい」と言うと「それはできない」と言う。「ホワイ?」と尋ねると「これは彼女の物だから」と指差す先におばあさんがなにやら座っている。よくよく聞いてみるとどうやらこの店、レコード店でありながら、客の持ってきた複数のカセットから客の希望する曲一つのカセットにまとめるダビングサービスなるものもやっていて、先ほどから流れている奇怪なスクラッチとはどうやら店主による旧式ダブルカセットデッキを駆使したMIX作業における頭だしなどの音だと判明。しばし店主の壮絶なメガミックスに耳を傾けつつもなんとか40枚近く選んでここから値段交渉へ。悪臭による吐き気と疲労の為、言われた値段が安いか高いのかも良くわからず値切りものどほどに買う事にしたのだが、ここに来て大失態!現金の持ち合わせが全然なかった。

店主に事情を説明し明日の開店時間を確認、翌日飛行場に向かう途中レコード屋に寄るという過酷な最終日でこのツアー終了。そんな苦心の末手に入れたレコードの一部を今日は御紹介いたしやす、、(なおレコード達は帰国後一枚ずつ消毒致しましております。)(数年前スペクテイターという雑誌で一部を紹介できて、日の目を見て良かったなー。興味ある人はバックナンバーで見てくらはい2003年冬号。)

来週からドイツへソナーフェティバルの出演の為行ってきます。アバンガルドなレコードを期待しつつ、清潔な店を期待しつつ。
Posted by:
TUCKER
’90年代からエレクトーン奏者として活動。’03年に1stアルバム『TUCKER IS COMING』、05年に2ndアルバム『ELECTOON WIZARD』発表。積極的なライヴ活動のほか、CM曲提供、CM出演など多岐に渡り活躍している。確固たる実力に裏打ちされたパンク/ヒップホップ的初期衝動とジャズの即興性が、観る者を完全に圧倒する魂の鍵盤奏者にして、ギターやターンテーブル等までも駆使する超絶パフォーマー。10月はソナーフェスティバル出演の為ドイツへ、帰国後13日はお台場の渚音楽祭に出演。2008年は1月から一ヶ月ほどオーストラリア、ビックデイアウトツアーへ参加予定。
http://www.universal-music.co.jp/tucker/
http://mixi.jp/view_community.pl?id=32426
http://www.youtube.com/profile?user=gamakatsu




