
ECD + 植本一子 | 生活 | 「WE ARE ECD+1」Vol.4
Text:ECD
Photo:植本一子
「お願いしたらお弁当作ってくれる?」
ある日、仕事中の僕に、バイト中のいちこからメールが入った。
「いいよー」
1人分作るのも2人分作るのも同じだ。僕はすぐに返信した。2人の朝食と自分の弁当は僕が作るという役割分担はすでにできていた。いちこはバイト先がファミレスだから、これまでは弁当を持っていかなかっただけだった。

一緒に暮らし始めた頃は、いちこのバイトは夕方からの遅番だった。
僕が朝、仕事に出かけるためにひとりで起きると、いつの間に作ったのかいちこが暖めるだけでいいように朝食を用意した上、弁当まで包んでくれて僕は大いに感激した。
そのうちいちこは、バイトを早番に替えた。
2人が起きる時間が一緒になることが多くなると、自然と朝に強い僕が朝食と弁当を作るようになったのだった。
朝食をいちこの部屋で一緒に食べ、昼食は自分で作った弁当、晩はいちこの手料理、そういうわけで外食というものをほとんどしなくなった。いちこと暮らす前の僕は、3食すべて外食だった。しかもいちこの部屋での主食は玄米である。
外食をしなくなったのが良かったのか、玄米の効果なのか、いちこと暮らすようになってから半年で実に10キロ近く体重が落ちた。食べる量自体が減っているとは思えない。特に運動量が増えたわけでもない。もちろん、ダイエットなどしているつもりもない。
ひとりで外食だけで暮らしていた頃は、食費だけで月に10万近くになっていたはずだ。それが今は、僕がいちこに渡す一ヶ月分の食費3万円だけで2人分をまかなっている。
自炊はいいことずくめだ。「金がない」とか言いながら、以前の僕は随分ぜいたくな暮らしをしていたものだとつくづく思う。
いちこが写真の仕事から帰ってきて、その仕事でお世話になった編集者Sさんから聞いたという話をしてくれた。
Sさんにはもう何年も付き合っている彼女がいた。ふたりとも若く、その頃は貧乏だったから、なかなか結婚に踏み切れなかった。見兼ねた彼女の母親が、「いつになったら結婚するの?」と問い詰めた。「お金がなくて」とSさんが弁明すると、彼女の母親はこう言ったという。
「お金がないから結婚するんでしょ」
その一言で2人は結婚し、今に至るという。
去年の夏までとお金のかかりかたが変わったのは食費だけではない。
去年、近所の動物病院では、1回診察してもらうだけで2万、3万と消えていったプーちゃんの治療費。それが今診てもらっている先生は、信じられないことに実費しか受け取らないのだ。点滴の補液4週間分で2000円。
もう、自宅で点滴をするようになって1ヶ月になる。お腹の腫瘍の進行は止まったわけではないけれど、血を吐くことはその後一度もないし、食欲もある。
4月の2週目には珍しく連休が取れた。いちこの郷里広島に、ふたりで行ってこようと思う。
Posted by:ECD
60年生まれ。ラッパー。本名石田義則。ファイナルジャンキー主催。 96年に、日比谷野外音楽堂で開催された伝説的なHIPHOPイベント「さんぴんCAMP」を主催したジャパニーズヒップホップのオリジネーター。アルコール中毒に悩まされた時期もあったが、今では立ち直り警備員をしながら音楽活動を続けている。『ECDIARY』(レディメイド・インターナショナル)『失点イン・ザ・パーク』(太田出版)などの文筆活動を始め、音楽活動以外でもその才能を発揮している。
植本一子
84年広島県生まれ。写真家。02年、高校生の生活フォトコンテスト受賞。03年、日本写真芸術専門学校在学中に、キャノン写真新世紀で、審査員の荒木経惟氏らから賞賛を受け、優秀賞を受賞する。現在はフリーランスで活動中。




