
MANGART BEAMS T | 対談:赤塚りえ子 × 草野剛 | 「M・A・N・G・A・R・T LABORATORY」Vol.3
昨年、72年の生涯に幕を閉じた「ギャグの神様」赤塚不二夫。生前から各界に様々な影響を及ぼしてきたこの偉大なクリエイターへのリスペクトは、氏亡き今、衰えるどころかますます強まっている。現在、MANGART BEAMS Tが展開している「赤塚不二夫 meets MANAGRT BEAMS T」もまた、そんな機運を象徴するようなプロジェクトだ。今回の「M・A・N・G・A・R・T LABORATORY」では、「赤塚不二夫 meets MANAGRT BEAMS T」でアートディレクターを務める草野剛氏と、赤塚不二夫氏の愛娘であり、現在はフジオプロの社長として活躍する赤塚りえ子氏の対談をお送りします。意外にも、音楽的バックグラウンドに多くの共通点を持つふたりが、赤塚マンガの魅力を様々な視点から語り合ってくれました。
Text:原田優輝
まずはおふたりの出会いについて教えてください。
草野:石森プロに共通の知人がいたんです。その方に、「実は赤塚不二夫先生が大好きで」という話をしたら、フジオプロに連れていってくれたんです。ただ、最初にお伺いした時にはりえ子さんはいなくて、他のスタッフの方とお会いしたんです。
赤塚:そのスタッフが「絶対りえ子さんに会わせたい」と(笑)。その後しばらくして、また来て頂いたんですよね。
草野:そうなんです。ただ、その時も僕が葬式に行く前に寄ったので、時間があまりなくて…。
赤塚:そうそう。喪服でいらっしゃって、お話も少ししかできなかったんですが、その時に赤塚の話よりも音楽の話で盛り上がって(笑)。
草野:ふたりとも87年くらいから93年くらいまでの盛り上がっていた時期のマンチェスターが大好きだったんです。
赤塚:ニューオーダーの話や、私がハシエンダに行った時の話とかをしましたよね。私はイギリスに留学していたことがあって、その目的は美術を勉強することだったんですけど、そう言いながらも、向こうのレイブ/クラブカルチャーを体感したかったというのも実はスゴく大きくて(笑)。そんな話を色々草野さんとして、スゴく盛り上がって、この人は信用できるな、と(笑)。

「赤塚不二夫 meets MANAGRT BEAMS T」は、どのような経緯でスタートしたのですか?
草野:バンダイナムコゲームスの人に、入江さん(MANGART BEAMS Tディレクター)を紹介してもらったのがきっかけです。
入江:今回は、草野さんのアートディレクションのもと、赤塚マンガのキャラクターだけではなく、「赤塚不二夫」という人間自身にもスポットを当てることをコンセプトにしています。マンガ家でありながら、作家の人間像がこれほど知られている人というのもなかなかいないですよね。
草野:そうですよね。作品はもちろんですが、赤塚先生自身の生き方もスゴく魅力的なんですよね。
赤塚:父がいなくなってから色々考えるようになったのですが、ホントにボーダーラインがない人だったんだと改めて思うんです。家と外、家族と友人、マンガと私生活、それらすべての境目がないんです。だから、赤塚不二夫自身が、自分が創り出したキャラクターのようなギャグを常にやっている感じなんですよ。一度、ホームレスの人がここに来て、一緒に酒盛りをしたことがあったんです。その時もホームレスの人をお風呂に入れてあげたりして(笑)。父親が連れてきたお客さんを眞知子さんがケアするんですけど、それってもう「バカボン」の世界そのままですよね(笑)。私生活でも死ぬまでギャグをやり続けていたんです。
草野:やっぱり、常に人を笑わせたいという意識が強いんでしょうね。でも、本当にバカをやるには振り切れていないとできない。赤塚先生の魅力は、マンガ以外にも色々なチャレンジをしていたところだと思うんです。とにかく面白ければ、それがマンガだろうと、音楽だろうと、芸能界だろうと、何でも向き合っていたし、とにかく遊び倒している。赤塚先生は、本人自身がメディアみたいな存在だったし、それが他のマンガ家の人とは違うところだったように思います。


(左)赤塚不二夫 meets MANGART BEAMS T 「70’s」 ¥6,090、(右)赤塚不二夫 meets MANGART BEAMS T 「赤塚不二夫 脇役三部作 シルクスクリーンポスター」 ¥16,800
(c)フジオ・プロ
生き方そのものが作品でもあるというのは、クリエイターとしてある意味究極の形かもしれないですね。
草野:そうですよね。赤塚先生の作品は、単なる絵空事ではなく、本人の日記のような部分もあって、ギリギリのところを行っているような感じなんですよね。
赤塚:赤塚マンガには残酷な描写なんかもあるし、「コワい」と言う人もいるんですけど、私にとってはスゴく自然な世界なんです。マンガに描かれているようなことが、現実に私の身の周りで起きていたことだったりするから、違和感を感じずに受け入れられていたのかもしれないですね。
草野:実際にそんなことがあったら問題だけど、赤塚ワールドなら成立するものって多いですよね。例えば、「バカボン」では「本官」がやたらに銃を撃つじゃないですか。そんなの「サザエさん」や「ドラえもん」、「ど根性ガエル」では無理なんですよ(笑)。でも、極端な話、確かに警察はいつでも銃を撃とうと思えば撃てるわけで、そこには警察の権力に対する皮肉があったのかもしれない。それかもしかしたら、単純に銃を乱射するくらいぶっ飛んでいた方が面白いとか、「もし自分が警官だったら撃つ」という程度のことだったのかもしれない。どれが正解かは分かりませんが、赤塚マンガに「コワさ」があるとしたら、そういうところにあるような気はします。
赤塚:「銃をひたすら撃つ警官」とか、言葉だけで説明を聞くと、スゴくヒドい話ですよね(笑)。でも、あの世界観で読むと、普通に笑って読めちゃうところがある。それは、キャラクターデザインによるところが大きいと思うんです。残酷なことをしてもそう見えない絵というか。造形が抜群にカワイイんですよね。

草野さんがグラフィックデザイナーとしての観点から見た時に、赤塚マンガはどのように捉えることができますか?
草野:赤塚先生は、デザイナー気質だったんじゃないかと思うんです。無駄な線というのが一切ないんですよね。要素を省いていって、スゴくシンプルな構造にしているんです。そういうディテールをシェイプしていく視線というのは、現在のグラフィックデザインの感覚にも共通すると思います。コマ割とかも読者の目がいく場所にしっかりレイアウトされているし、テンポを持っていて、間もいいんですよね。
赤塚:赤塚マンガには、背景が描かれていないカットも結構多いんですよね。ある時、それを本人に聞いてみたんですけど、「電柱を描けば外だとわかるし、テレビとちゃぶ台があれば室内だってわかる。それでいいんだよ」って(笑)。要素を少なくしていくことでキャラクターが目立つし、動きもわかりやすくなるんですよね。赤塚は、人やモノの特徴を捉えるのがスゴく上手い人だったんです。造形的な部分もそうですし、ひと目でその人だとわかるようなクセを天才的に観察できる人でした。
草野:余計なものをなるべく排して、見るべきところだけをあしらっていく。アートでも広告でもそうですが、それはモダニズムの基本ですよね。今回のTシャツを作るにしても、先生の作品を変にデザインやリミックスしていくことは野暮にしか思えなくて、極力シンプルなものを心がけました。
赤塚:タモリさんなんかにも言われたのですが、赤塚マンガは説明がないんですよね。説明されないまま、どんどん進んでいく(笑)。だから、見る人もどんな風にも自由に受け取れちゃうんです。
草野:今だったら、「なぜこうなのか?」ということを説明するような、お笑いにおける「ツッコミ」が必ず求められるんですよ。でも、例えば「バカボン」なんかは「ボケ」の連続ですよね。今のマンガは、たとえ病理的なキャラクターが登場したとしても、そいつがどれだけ病理的なのかということを、他のキャラクターが補完していく構造になっているんですよ。でも、「バカボン」ではそこをすっ飛ばしていて、とりあえず「コイツいっちゃってますよ」ということをやり続けている。
赤塚:ものスゴいスピードで進んでいきますよね。最近のマンガだと、「そんなわけねーだろ」っていうようなセリフが入ってきたりするじゃないですか。それを見た時に、逆に私は意味がわからなかった。「そんなわけねー」のなんて分かってるじゃん、って(笑)。なぜそれをわざわざ説明する必要があるのかと。
草野:赤塚マンガはやりっ放しで、言葉でレイヤーを重ねていない分、普遍的だと思うんです。どうしてもディテールを説明し過ぎると、時代感が出てくるから、後で見ると古く感じてしまう。でも、赤塚マンガの場合は、極端な話、「ちゃぶ台!」「テレビ!」「電柱!」だけで事足りてしまうから、普遍性があるのかもしれないですね。

(c)フジオ・プロ
赤塚:以前、赤塚マンガのコマを抜き出して、部分的に色を付けたポストカードを作ったのですが、坂本龍一さんがこれを見て、スゴく気に入ってくださったんです。もともと赤塚の大ファンだったそうなのですが、これを見た時に「ポップアートだ!」と(笑)。
草野:このオノマトペが目に飛び込んできますよね。赤塚先生の作品を見ると、「文字ってこんなに楽しいんだ。キャラクターじゃん!」って思うんですよ。でも、一方でシュールな世界観もある。僕は子供の頃、ダリが好きだったんですよ。時計が溶けて垂れていたり、引き出しが空いていて、中から変なものが出ているというような絵を見て、ワクワクしていました。エッシャーとかもそうなんですが、不思議が絵が大好きで。赤塚先生の絵にもそれがあったんです。でも、マンガというアプローチだったから温かみがあったし、それがスゴく斬新でしたよね。
赤塚:マンガというフォーマットを分かった上で、それを破壊しているというところがあったと思うんです。「バカボン」なんて、マンガのフォーマットを徹底的に壊していますし、この前、私の好きな「レッツラゴン」が載っている当時の「サンデー」を見たのですが、雑誌というフォーマットまでも壊しているんですよね。「レッツラゴン」の前のページが、永井豪先生のマンガだったんですけど、それを「あっちいけ」って押しやって、「レッツラゴン」が始まるんです。

捉え方次第ではアートですよね。マンガの影響を受けているクリエイターは多いですが、特に「赤塚不二夫」の影響は絶大だと感じます。それは、それぞれが色々な観点から作品を捉えることができるからかもしれませんね。
赤塚:そうですね。生前に父が、「オレのマンガは色々な年代が楽しめる」と言っていたんです。「小さい子は絵だけで楽しめて、ちょっと大きい子はドタバタが楽しくて、大人になると内容がナンセンスだから楽しめるんだよ」って。
草野:まったくその通りですよね。手塚(治虫)先生なんかもそうですが、見た目でまずハードルを下げていますよね。背後には”大人の難しい話”なんかも詰まっているけど、このキャラクターでこられるから子供はついつい見ちゃうし、逆に大人は読んでみて、その内容にビックリする。僕も子供の頃はホントに楽しく読んでましたね。今はもっと色々感じるものがありますけど、やっぱり一番感じることは、「ヒドいな」ということ(笑)。
「赤塚不二夫」展も8月から始まるそうですね。
赤塚:そうなんです。展覧会にあわせて、今アクセサリーを作っています。「バカ田大学」のカレッジリングとワッペン(笑)。それを会場の一コーナーで販売したいと思っています。
りえ子さんは現代美術家としての顔も持っていますが、今後おふたりが何かでコラボレーションする可能性はありそうですか?
赤塚:私の作品は、割と立体が多いので、どういうことが一緒にできるかまだ分かりませんが、DMとかのデザインをお願いしたりもできるだろうし、何かしら一緒にやりたいですね。
草野:チャンスがあればぜひやりたいですね。マンガは描けないですけど、紙に関することであれば、お手伝いできることは何でもしたいです。
「追悼 赤塚不二夫展 ~ギャグで駆け抜けた72年~」が、8月26日~9月7日まで松屋銀座 8F大催場で開催予定。

バカボンのパパが出迎えてくれるフジオプロのエントランス。
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赤塚不二夫 meets MANAGRT BEAMS T
「メディコム・トイ」社初の赤塚作品として、『赤塚不二夫 100% BE@RBRICK』、『バカボンのパパ 100% BE@RBRICK』をリリースします。『赤塚不二夫 100% BE@RBRICKは8月28日発売、『バカボンのパパ 100% BE@RBRICK』は9月26日発売予定で、ともにマンガートビームスT 代官山で予約受付中です。それぞれ合わせて、バカボンのパパTシャツ、赤塚先生フォトTシャツもリリース予定です」(MANGART BEAMS T)



(左上)バカボンのパパ Tシャツ ¥5,040、(右上)赤塚不二夫フォトTシャツ ¥5,040 (c)フジオ・プロ(左下)バカボンのパパ 100% BE@RBRICK ¥1,680、(右下)赤塚不二夫 100% BE@RBRICK ¥1,680 BE@RBRICK TM &(c) 2001-2009 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved. (c)フジオ・プロ

Shop InformationMANGART BEAMS T東京都渋谷区代官山猿楽町19-6 2F
TEL:03-5428-5952
OPEN:11:00〜20:00 不定休
Posted by:MANGART BEAMS T
アニメ、マンガを題材にしたTシャツ作品に特化したBEAMS Tの新プロジェクト。日本が世界に誇るカルチャーである”MANGA”を”ART”としてとらえ、そこにBEAMS Tらしさを加え、”MANGART(マンガート)”としてTシャツに表現している。代官山店舗をフラッグシップショップと位置付け、国内のみならず世界へ発信していく。












