
黒田潔 | 作品集メイキング:平面編 | 「TO THE FOREST」Vol.3
独自の線画イラストレーションを武器に、様々なメディアで活躍するアーティスト/イラストレーター黒田潔。Public/imageとも親交の深い彼が、2010年初頭に、作品集の出版ならびに東京都現代美術館で開催されるグループ展「MOTマニュアル2010」へ参加することが決定!! そこで、Public/imageでは、年明けに向けた短期連載企画として、黒田氏に密着し、作品集/展覧会ができるまでを追いかけていきます。
今回からは2回に分けて、現在制作中の作品集『森へ』の制作過程を紹介していきます。前編となる今回は、これまでモノクロの線画イラストレーションを押し出してきた黒田氏が、今回の作品集出版にあたってチャレンジした着色や原画制作などのプロセスを、黒田氏自身のコメントとともにお届けする「平面編」です。
テーマ


「今回の作品集は、『森へ』というタイトルの通り、森をテーマにしています。これまでに自分がモチーフにしてきた動物や植物、昆虫といった自然の生物がすべて集まっているのが森なんですね。ただ、一冊の作品集にまとめるという時に、自分がこれまでに好きで描いてきたモチーフをただ集めるだけでは、人にあまり伝わらないんじゃないかと思ったんです。そこで、今回作品集のアートディレクションをお願いしている大島依提亜さんの薦めなどもあり、まずはアラスカの森に行ってみることにしました。普段自分が暮らしている都会とはまったく違う場所で、何かを得たいという思いが強かったんです。これまではイラストを描く時に、植物などのモチーフを、何かと掛け合わせることでカタチにするなど、どちらかというとデザイン的な感覚で扱ってきていたところがあったのですが、今回自分の足で10日間程森を歩いてきたことで、そこで見てきたものや感じたこと、残っている記憶などを、そのまま描こうという思いに至りました」
台割

「アラスカの森は、想像していた以上に静かで、常に”孤独感”と”恐怖感”を感じていました。もちろん森を歩くことは楽しくもあったのですが、人間という小さな存在がひとりであれだけ大きく、ひっそりとした森に入っていくというのは、やっぱり緊張するんです。そこで感じた緊張感や恐怖、自然のスケール感、『ここには何かあるな』と感じざるを得ない霊的なエネルギーのようなものを表現することが、この本には必要だなと感じました。そこで、森の精霊をテーマにしたストーリーにすることや、昼間の明るい森と夜の暗い森という2つの森の顔を表現することなどを決め、台割を組み立てていきました。その後もスタッフ間の打ち合わせの度に最新の台割を描き直すなど、絵を描き始めてから明確になってくることなども、台割には常に反映させていきました」
モチーフ


「蝶はアラスカの森では見かけなかったのですが、これまでの作品でもよく描いていて、自分のトレードマーク的な存在でもあったので、今回も最初から入れようとは思っていました。ただ、描き始めてから、蝶を物語の進行役としてクローズアップしようと考えるようになりました。今回の作品集は、イラストレーションのセクションと、立体作品とモデルを入れた写真のセクションがあるので、その2つを違和感なく繋げる役割を蝶に担ってもらおうと思ったんです。また、トーテムポールは、アラスカの森の色々なところに点在していて、スゴく印象的だったんです。森が持つ神秘的な力をそのままカタチにしたと思えるようなこれらのモチーフも取り入れることにしました」
原画サイズ



「作品集のサイズはB5なんですが、原画はA3で描いています(上写真左)。実は、描き始めてしばらくは、A4で描いていたのですが(上写真右)、それが作品集のサイズまで縮小された時に、線が太く見えて、繊細さが失われてしまうように感じたんです。拡大写真の左がA4サイズを縮小したもの、右がA3を縮小したもので、わずかな差ではあるのですが、今回描いているモチーフ自体荒々しいものが多かったりするので、逆にラインの繊細さはしっかり残したかったんです。ただ、かなり描き進めてから気付いたことだったので、最初はA3とA4の原画を混ぜて入稿しようと思っていたんです。でも、印刷所の人にテストを出してもらったら、やっぱりA4の方は難しくて…。結局すべてA3サイズでいくことにしました」
カラー


「アラスカの森はほぼ緑一色で、グレーにすら見えるような世界だったので、色は2,3色程度でいいかなと最初は思っていました。でも、色々な人の意見を聞いたりするうちに、夜はモノクロ、昼はカラフルな色使いと使い分けた方が効果的だと思えるようになりました。また、仮にアラスカの森で感じた冷たくて暗い世界を寒色系のカラーだけで表現してしまうと、見た人に恐怖や不気味さだけが残ってしまう恐れもありました。だから、夜から明け方に向かう作品集のストーリーに合わせて、次第に暖色系の色を増やしていくような構成にしました。着色は色鉛筆でやっているのですが、これまでこんなに色を使ったことがなかったので、小さい頃の記憶などをもとにして(笑)、模索しながらやっています。締め切りが迫っているこの時期に、まだタッチを模索しているというのが苦しいところですが、少しずつ使いこなせるようになっているのが救いです(笑)。また、モノクロのみのイラストでは、鉛筆のタッチを活かした表現も試みています(写真下)」
作画行程
1.参考資料
「アラスカで撮ってきた写真や図鑑を参考にしています。ただ、写真をそのまま描くというよりは、自分が好きな箇所を抜粋して、それを想像で合体させて描いたりすることがほとんどです」
2.ラフ
「鉛筆で下書きを描くこともありますが、今回は木などに関してはほぼ一発描きで描いています」
3.原画
「普段の仕事では、原画をスキャンして、PC上でパスデータを調整することがほとんどですが、今回はペンで描いたこの原画が入稿用の原稿になります」
4.着色
「着色は色鉛筆。原画をすべて描き終えてから着色することもあれば、ひとつのモチーフだけを先に着色することもあり、やり方はバラバラですね」
作品集メイキング後編となる次回は、本作品集のもうひとつの目玉である写真作品の撮影現場の模様などをお届けします。お楽しみに!
Posted by:黒田潔
1975年東京生まれ。イラストレーター/アートディレクター。多摩美術大学大学院美術研究科グラフィックデザイン専攻修了。2003年より独立。新宿サザンビートプロジェクトで2005年グッドデザイン賞受賞。2010年2月より東京都現代美術館「MOTマニュアル2010」参加。2010年3月4日より「@btf」にて個展開催。現在、大阪成蹊大学で客員教授を務めている。
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