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植本一子 + 南波一海 | 蓮沼執太 | 「お忙しいところ失礼します。」Vol.5

写真家・植本一子氏と、ライター南波一海氏が、毎回気になるクリエイターの仕事場に突撃する連載コラム「お忙しいところ失礼します。」。
今回は、音楽家・蓮沼執太氏の自宅兼スタジオ。「うちは西陽が綺麗ですよ」ということなので、いつもよりも少し遅い時間に集合。なるほど、部屋の三辺に窓があって、各所から光が差す気持ちの良い部屋である。非常に彼らしい明るい場所だ、と感じた。この取材を始めて5回目になるが、作業場はその人の性格が本当に出るんだなとつくづく思う……ともかく、この部屋と、ライヴ盤でありライヴ盤でない最新作『wannapunch!』には切っても切れない関係があった。

Photo:植本一子
Text:南波一海


蓮沼執太

「ライヴ盤でありライヴ盤でない」なんて言葉遊びみたいなことを書いたのは他でもない、本当にそうとしか言えないからだ。『wannapunch!』が作られた経緯はこうである。まずはライヴ会場をレコーディング・スタジオに見立て、バンド編成での演奏はもちろん、会場で起きたあらゆる音を可能な限り録音。それら音素材をこの部屋へと持ち帰る。その素材を用い、一般的なライヴ盤のようにライヴを擬似的に再現するのではなく、必要とあらばさらに音を加え、入念なミックス作業を経た上で完成に至った。
「そういう意味ではこれまでの(宅録で作った)アルバムと同じです」
音の出所、音を出した人間こそ違うが、それを自宅のパソコンで扱って音楽を作り上げるという点においては全く変わらないということである。だから本作はライヴ盤であり、ライヴ盤ではない。そしてこの部屋は、ポスト・プロダクションを施すためのミキシング・スタジオとして非常に重要な役割を果たしているのだ。

また、アルバムが出来上がる上で、この部屋はもうひとつ重要な役割を担っている。なんと、バンドのメンバーがここに集まってリハーサルをするのだという。
「ここでやってるんですよ。大変でしょ(笑)? 狭いスタジオだとモニター環境が良くないから、自分の音もお互いの音もよくわからなくて。お金もかかるし。あとはシンセの問題もある。いつも使ってる鍵盤(コルグトライトン)が置いてないから。何より、ここで小さめの音で出して、お互いの音を聴いて、呼吸を確認しながら演奏できるのが良いので」
バンドの緻密なアンサンブルと、そこから生み出される肉体的なダイナミズムは、この、決して広いとは言えない部屋で築き上げられていった。
そのひとつの成果が『wannapunch!』ということになる。ライヴと宅録との間を自由に行き来するこの不思議な作品は、この部屋なくしては完成の形を見ることはなかった、あるいは別の形になっていたのかもしれない。

蓮沼執太

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