
Felicity | やけのはら | 「POWER OF PEOPLE」Vol.6
個性豊かなアーティストたちが集い、国内音楽シーンにおいて独自の存在感を放つレーベルFelicityと、Public-image.orgによるコラボレーション連載「POWER OF PEOPLE」。
毎回、同レーベルの旬のアーティストが登場し、これまでに影響を受けてきた「10人のクリエイター」たちを紹介してくれます。音楽というジャンルを超え、様々な分野との交流も盛んなFelicityのアーティストたちのバックグラウンドや意外な趣向をお伝えしていきます。
今回は、昨年Public/image.がリリースしたコンピレーションCD『Public/image.SOUNDS』に収録された七尾旅人とのコラボレーション曲『Rollin’ Rollin’』が、2009年を代表するアンセムとなったことも記憶に新しいやけのはらが登場。現在、ソロアルバム制作中の彼に、影響を受けた10名のクリエイターについて聞きました。
Interview:大草朋宏
やけのはらが影響を受けた”やさしくたくましい”10名のクリエイター
忌野清志郎
清志郎さんから影響を受けた人は、特にロックミュージシャンの場合はたくさんいると思うんですが、僕のなかでも大きな存在です。ユーモアがあったり、振り幅も広かったりといろいろな要素を持っていますが、突き詰めて考えると、やはり歌詞の世界観。やさしくありながら力強く、一貫してマイノリティの視点から歌っていますよね。僕は先輩のラッパーよりも、どちらかというと清志郎さんが切り開いた日本語の使い方の流れ。その末端にいると思っています。
真島昌利 
最初はもちろんブルーハーツから入ったんですけど、そのなかでも気がつくとマーシーの曲が好きになっていましたね。そこからソロアルバムを聴いて、より好きになりました。ファーストソロアルバム『夏のぬけがら』は、多摩川の写真がブックレットに載ってて、過ぎ去った夏をテーマにしていました。そういうノスタルジックなテーマや、少年性が好きですね。彼は、清志郎さんが作った日本語の使い方の継承者だと思っています。やさしい視点で、かつ力強い。どちらかしかないような、地に足ついていない雰囲気にはグッとこなくて、両方の視点をもっている人に惹かれます。
赤塚不二夫
子供の頃から「バカボン」とかをアニメで見ていて好きだったんですけど、大人になって改めて見返してみると、かなり狂っていた人だとわかりました。普通に成立しているギャグマンガとして大衆性があるんだけど、とがっていて毒がある。白に見えるものが実は黒かもしれない、ということをマンガのなかで試していることが素晴らしいです。それこそ“面白いとは何か?”と、世の中の見方を試していたんじゃないかと思います。本人はあまり多くを語らないんですよね、ただアル中だっただけかもしれないけど(笑)。
タモリ
高校生くらいからファンでした。タモさんほど「生き様」って言葉が似合わない人もいないけど、生き様が好き。イケイケじゃない温度感も合います。でも、牙を出してないように見せかけて、実はどれだけ狂っているんだと。両手ブラリで全面降伏しているように見せかけてキンタマを蹴り上げる、みたいな。それでいて、『笑っていいとも!』で見せる懐の広さも感じます。ああいうふざけた大人になれたらいいなと思いますね。以前考えたことがあるんですけど、日本で一番有名なのは、タモリさんなんじゃないですかね? タモリさんに触れずに日本で生活するのは、相当大変ですよね。
石野卓球
若い頃に電気グルーヴに出会って聴いていたんですけど、大人になるにつれて、卓球さんのスゴさがわかってきました。絶えないエネルギー=人間的バイタリティがスゴイ。コラボユニットなんかも合わせたら、毎年何かしらリリースしていますし、どんどん面白いものや新しいものを取り込んで、前へ前へ進んでいますよね。あの世代の中でも特に息切れせずにずっとやり続けてる気がしますし。DJもスゴイですよ。3時間アゲっぱなしとか、絶倫スタイル! ちょっと1時間やって、「楽しかったね」なんていうDJとは足腰が違う。ストロングスタイルですよ。
山下達郎
歌がスゴくうまくて、尋常じゃないフィジカルの強さを持っているのに、それでいて、探究心を忘れない曲作りへのミュージシャンシップに感激します。ものスゴく時間をかけて吟味して作る裏方気質があり、それを異常な完成度の高さでポップスとして成立させている。あれだけキャリアがあって、ヒット曲もある人が、今でも手を抜かずにやっていると思うと励みになります。自分が雑になりそうだったり、めげたりしているときに、達郎さんのことを考えると勇気づけられますね。
アントニオ猪木
男たるもの、何かを作ろうとする以上、猪木さんの気持ちを忘れてはいけないと常に思っています。情報があふれていて何でもスグに解答がわかる世の中、小さな模範解答を当てていくよりも、猪木さんのような前向きさや人間味が必要だと思います。ど真ん中でいながらも挑戦し続ける姿もいいし、事業で借金を負うとか、失敗するところもいい。魅力のある人だからこそ、きっと変な人も寄ってきちゃうんですよね(笑)。でも、それこそ「元気があれば何でもできる」じゃないけど、前向き。猪木さんの力をよくある五角形のチャートとかで表すと、スゴくいびつな星型になると思いますけど、僕のなかでは、勇気づけられ系ですね。
クボタタケシ
キミドリが日本のヒップホップで一番好きかもです。特にクボタさんの書く鋭い歌詞や挑戦的なプロダクションが好きでしたね。今度自分のアルバムでもカバーするんです。ヒップホップって一人称の文化だから、時代や立場が変わったりするとあまりカバーされないんですけど、キミドリは楽曲性が高くて普遍的だからカバーが成立するんですよ。鋭さと甘さを合わせ持っていて、ポップセンスもあるんだけどストレンジ。日本人でサンプリングで作る人のなかでは一番影響を受けたかもしれないです。
ECD
ボーカリストやミュージシャンとして尋常じゃない技術があるとかじゃなくても、それぞれの立場や状況から、それでしか表現できないものもあるんだなと勇気づけられます。あと、今や今後どんな曲を作るとしても、石田(ECD)さんに恥ずかしくて聴かせられないと感じるものは、作っちゃダメだなと勝手に思ってます。自分の気持ちなんて、徐々に流されますからね。だから石田さんに聞かせても良いかは、自分がブレてないかの勝手なジャッジライン。時代の描き方やリアクションの仕方も鋭いので、この先どういう動きをしていくのか、常に気になる存在です。
江戸アケミ(JAGATARA)
初めて聴いたときは、ツギハギ感というか洗練されてないロウな感じに驚きました。まぁ、技巧的にうまくやろうと思ってはなかったと思いますけどね。一般的に反体制の歌を歌っているイメージがありますが、ベースでは人や街を歌っているような気がします。そういう面でも歌詞がうまい。反復の手法などは、聴く場所や状況によっていろいろな捉え方ができて、深みや広がりがありますよね。アケミさんも、やさしくたくましい。どんな状況においてもへこたれない強さに勇気付けられますね。
Release Information
異色と思われたタッグが、確信的に親和性の高さを証明した一作。せつなさを湛えたメロウなトラックに七尾旅人の歌は何事もなかったかのようにはまり、やけのはらのラップが彩りを加えている。
『Rollin’Rollin’』
アーティスト名:七尾旅人×やけのはら
レーベル : felicity
リリース日 : Sep.16th 2009
Artist Profile
やけのはら2003 年、エレクトロ・ヒップホップユニット、アルファベッツでアルバム『なれのはてな』リリース。その後、イルリメ、STRUGGLE FOR PRIDE、サイプレス上野とロベルト吉野、BUSHMIND、『ピューと吹く!ジャガー』ドラマCD等、50作を超える作品に参加。NHK〜SSTV番組の楽曲制作も手掛ける。DJとしても、『RAW LIFE』、『SENSE OF WONDER』、『ボロフェスタ』などの数々のイベントや、日本中の多数のパーティーに出演。MIX CDも多数発表している。近年では、バンド”younGSounds”にサンプラー〜ボーカルで参加。09年9月、七尾旅人_やけのはら「Rollin’ Rollin’」をリリース。
Posted by:Felicity
2002年の設立以来、ジャンル、洋の東西を問わず知的好奇心を刺激するような良質な作品をコンスタントにリリースしてきたレーベル。 音楽ソフトだけにこだわらず、アートブックや写真集など、その アーティスト、また作品に適したフォーマットでのリリースなど、やりたいことにはチャレンジし続けるスタイルで、今後も多くの作品を世に送り出す予定。














