
CQ | 空山 基 |「IMAGINATIVE POINT」Vol.1
さまざまなアーティストTシャツなどを扱うオンラインショップ「CQ(http://seekyou.jp/)」とPublic-image.org による連動企画「IMAGINATIVE POINT」が今月からスタートします。「CQ」にゆかりのあるクリエイター達の創造の源泉に迫るインタビューをお届けしていきます。
連載第1回目を飾るのは、1970 年代後半より驚異的な写実力を武器に、ロボットやエロティシズムを追求した女性像の作品で、国内外で伝説的な存在となっている空山基。その名を世に知らしめた「セクシーロボット」シリーズでは、そのメタリックな質感や反射光の描写力で、世界中を驚愕させた。以後広告や出版、アートの分野で活躍し、1999 年には、ソニーが開発した「AIBO」のコンセプトデザインを手掛けたことでも知られる。最近では、エアロスミスのニューアルバム「Just Push Play」のアルバムカバーを手掛けるなど、精力的に活躍を続ける空山に、本人のアトリエで話を聞きました。
Text:Eko
空山さんの描く女性は、ロボットが服を着ていたり、人間がファンタジックなコスチュームをつけていたりしますが、着る、コスチューム、ということについてのこだわりはありますか?
クリエイティブの基本は「ビックリさせる」ということなのよ。でも、出版コードなど制約があって、例えばロボットであっても乳首は見せられないこともある。これ(Robot)も本当は裸なんだけど、それじゃあ出せないからそのために服を着せているだけだよ。ビックリさせるには、本当はタブーが一番いいと思っている。裸が一番いいのよ、オスは女性の裸を見ると必ず瞳孔が開くんだからね。ひたすら隠しているものを見せるとそれだけで興奮して感動する。それを、コミュニケーションのために、コスチュームでオブラートに包んでいるんだよ。それでどんどん生ぬるくなってしまうけどね。本当は刺激が大切なんだ。食べ物でいうと、お子様用の食べ物は刺激がないじゃない。そしてある程度成熟してくると、腐敗したり発酵したり、すっぱかったり苦いものが美味しくなってくるでしょう? 低刺激で浅く広くは、子供の文化だね。ヨーロッパなどでは発酵した精神の人たちがいっぱいいる。日本では子供から大人までというスタンダードを作ってしまう。スタンダードをいろいろ住み分けてくれると、もっといいんだけどね。
世界で空山さんの絵が賞賛されるのは、なぜなのでしょうか?
まず、ロボット自身が日本のイメージ、オリエンタルのシンボルなんだよね。キリスト教の影響で、彼らは人間と同じ形のロボットを作っちゃいけないんだよね。ロボットはもうそれだけでタブーなんだ。神をも恐れぬこと、と思っているんじゃないかな。ショッキングな恐ろしい絵と思っているんじゃないかと思う。海外のインタビューなどでは「どうしてそんなサディスティックで過激な絵ばかり発表するんだ?」ってよく聞かれるんだけど、彼らにとっては、同じキリスト教の人間がこれを描くのは許されないんだと思うね。縛られているんだ。だから「俺には宗教なんか関係ないからね」って言ってやるんだよ。宗教というものはもう、賞味期限が過ぎているのかもしれない。人間を自由に幸せにするためのものが、争いの種になってしまっているからね。

日本人の私たちにとっては、空山さんの作品には、未来的、スーパーリアル、というイメージがありますが。
未来じゃないよ。要は、金属で人間を描いているけど、単にお姉ちゃんを描いているだけなんだよ私は。彫刻家が作品を木で作っても、石で作っても、粘土で作ってもメッセージは同じでしょう? 金属という、あまり見たことのない素材だから、未来的、となるのかもしれないけれども。石で描いても金属で描いてもエッチなお姉ちゃんやセックスに関することを、私は描いているだけだよ。タブーを見せて、オスの瞳孔を開かせるためにね。「スーパーリアル」といっても、嘘を描いているんですよ。緻密なリアルじゃない。ビックリさせる、というのがスタートラインだけれど、そこからは見る人とのコミュニケーションだね。相手をいかにねじ伏せられるか、どうやったらみんなにわかってもらえる作品になるか、ということ。そういうコミュニケーションを大切に考えると、メッセージが伝わるのだと思いますよ。
有名な「セクシーロボット」シリーズを描き始めたきっかけを教えてください。
グラフィック誌「ナンバー」の創刊号でロボットを描いたことがきっかけなんだよ。それがメチャ受けだったの。バッカバッカ仕事が来た。ロボットの絵は入れ食い状態だったね(笑)。1980 年代、バブルの少し前の日本では、企業が引き起こした深刻な公害や世紀末思想で、未来は暗いと考えられていた。それを払拭するために、広告にロボットを出して、クリーンな未来のイメージを打ち出したかったんだろう。ほかにもありとあらゆる大きな企業のために、ロボットの絵を描いたよ。明るい未来の象徴としてね。私は当時この作品群を通じて、見る人とのコミュニケーションが上手くできなかった気がしてる。いろいろな意味で制約があって、たくさんの関係者の OK を取らなければならなかったから。今これらを好きだと言ってくれる若い人たちほど、作品を愛していなかったのかもしれないね(笑)。でも、それでも読み解くとそこには様々なメッセージが込められているんだよね。


フランスのブランド Sixpack France では、CQ でも掲載中の今期の空山さんのTシャツが、大変好評だったようですね。ご自身の作品がTシャツになっていることはどんな風に捉えていらっしゃいますか?
本当に好評なの?(笑) すべて Sixpack にお任せしていたんだよ。私はニューヨークにエージェントがあって、そこですべて過去作品から選んだんだと思う。僕は何も知らないの。「Sixpack というところからオファーがあってTシャツを作るそうだけどいい?」ということに対して「いいよ」と返事しただけだからね。Tシャツには、何も期待していませんよ(笑)。再現能力がないもん。私の絵は、再現性というか、クオリティの絵だから。言い聞かせだとか、気合でピッピッと描くそういうのじゃないからね。質感の再現って、Tシャツでは難しいよね。しかも太った人が着たら伸びて隙間ができたり斜がかかったりするし。全て底面で吹き付けてプリントしているんだよね? 自分では、Tシャツにサインしてといわれたら、みんなに引っ張ってもらった状態で書いているよ。できるだけ墨が生地の中まで入るようにと意識しているね。だから、基本Tシャツや印刷は別物。別のステージでやってくれればいいよ、という考え方だね。その道のプロにすべてお任せしている感じ。私は何も口出ししない。 でも、このTシャツでまた新しい仕事が来たんだよ。亡くなった R&B シンガーのアライヤのお兄さんで、ラシャという人がいて、彼がニューヨークのパーティに Sixpack の黒いロボットのTシャツを着てウロウロしていたんだって。それを、うちのニューヨークのレップ(エージェント)が見つけて、「それはうちがマネージメントしている作家だよ」と言ったら、彼のデビューCDのための仕事がきた。そういう意味では、Sixpack のTシャツさまさまだね。
今後の展望を教えていただけますか?
儲かること(笑)。アートやクリエイティブなんか楽だよ、別に儲からなくても言いわけができるから。儲かることは数値ではっきり出るから答えが一発で出るね。や、本気じゃないんだよ(笑)。基本はウケるといいなと思っているね。同じ時代と併走しながら、オンタイムで賞賛を受けるのがベスト。私はスタンディングオベーションを狙っているからね。ヒットなんかクソなんだ。自分の人生の中で味わった何度かのスタンディングオベーションの瞬間をまた経験したいな、と思っているよ。ゴッホになんかなりたくもないよ。やっぱり、ピカソやマチスのほうでありたいね。あと、ミッキーマウスの二足歩行のロボットを作ってみたいね。子供たちと目線を合わせられるような、小さなサイズのものね。夢はね、捕まるから言えないけど、世界征服(笑)。ハーレムとかね、植物が好きだからマダガスカル島を買いたいとか、そういうのが夢でしょう。戦略的な展望とはまた違うからね。
Hajime Sorayama T-shirts Collection

(左) FANTASY「これは、エロ小説の文庫のカバーで、いやらしいお姉ちゃんがイッちゃってるシーンのイメージ。粘液がタラタラと溶けている様子なんだ。出版物だけど、エッチな小説用だから乳首が見えてもよかったんだと思う」(右) METALLICA「これはメガネの広告用。傷つきにくいプラスティックの新素材が開発され、発売された時のもの。ちゃんとメガネになっているでしょ? それから、さっきも話した通り、当時ロボットといえども、パブリックな作品は乳首を見せちゃいけなかったんだ。だからわざわざ隠してある」
Artist Profile
空山基エアブラシ技法を用いた驚異的な写実力を武器に、ロボットやエロティシズムを追求した女性像の作品で世界中の人々を驚かせた、伝説的存在のアーティスト。1999年には「AIBO」のコンセプトデザインを手掛け、2001年には初代「AIBO」がスミソニアン博物館とMoMA(The Museum of Modern Art)のパーマネントコレクションに収蔵される。Aerosmithのニューアルバム「Just Push Play」のアートワークを手がけたことでも知られる。
http://www.sorayama.com/
Posted by:CQ
さまざまなクリエイターのTシャツを扱うオンラインショップ。Tシャツは単に“身にまとう衣服”という存在を超えた、クリエイターの精神性やカルチャーそのものを伝達する“PROPAGANDA(伝道体)”の役割を持つものであるという考えの下に、身につけることで自分自身のルーツを悟ったり、自分の未来を切り開くための手がかり・きっかけを与えてくれる存在としての“Tシャツ(PROPAGANDA)”作品を発掘し、発表し続けている。
http://seekyou.jp/


