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Felicity | 七尾旅人 | 「POWER OF PEOPLE」Vol.7

個性豊かなアーティストたちが集い、国内音楽シーンにおいて独自の存在感を放つレーベルFelicityと、Public-image.orgによるコラボレーション連載「POWER OF PEOPLE」。
毎回、同レーベルの旬のアーティストが登場し、これまでに影響を受けてきた「10人のクリエイター」たちを紹介してくれます。音楽というジャンルを超え、様々な分野との交流も盛んなFelicityのアーティストたちのバックグラウンドや意外な趣向をお伝えしていきます。

今回登場するのは、周囲の期待が高まるなか、ついに待望のニューアルバム『billion voices』をリリースしたシンガーソングライター七尾旅人。ジャンル、年代問わず、彼の作り手としての基盤を形成した10人のクリエイターについて、語って頂きました。

Interview:大草朋宏


七尾旅人が影響を受けた”人間の根源的な衝動を感じる”10名のクリエイター

エジソン
エジソン
幼稚園のときに、子供向けの偉人伝で読んだんですけど、その時の衝撃は今でも変わりません。あり得ないものをゼロから具現化して、社会のありかたを変えてしまうあの存在感に、大人になった今でも憧れ続けてます。彼は当然誰よりも先鋭的であったと思うんですけど、普通は、それとポピュラリティを対極に考えがちですよね。でもこのふたつは、本来イコールだと思うんですよ。真の意味で前衛的なものって、普遍的だと思うんです。例えば電球。初めて出てきたときは、きっと黒魔術のように見えた。でも怪しい呪術師じゃなくても、誰だって使える。エジソンは、地球の夜を様変わりさせてしまった。こんなふうに、本当に先鋭的なものは、究極のポップスに成り得てしまうということを知ったのも、エジソンからなんです。いつか世の中をひっくり返すような発明をして、みんなを驚かせたい。5歳くらいの僕に、そんな夢を与えてくれました。

ヘレン・ケラーヘレン・ケラー
ヘレン・ケラーも幼稚園の頃、同じ偉人伝シリーズで読みました。彼女からも、人間の根源的な力を教わりました。努力次第で何だって出来る。生きていくうえでの、あらゆる勇気をもらいました。彼女は三重苦のなかで、サリバン先生の助力を得ながら初めて「water」という言葉を認識するんですけど、初めて言語という回路が開いた瞬間の、根底から世界が塗り変わる感覚。それには到底、想像が追いつかないけど、ある意味では究極の音楽体験だと思うんです。何十年も生きてきて、やっと聞こえてくる音楽というものがあるんですよ、きっと。だから俺も死ぬ瞬間に聴く音楽もあるんだろうなと。そのときやっと、「water」の衝撃に近づけるんだと思います。



一休さん一休さん
これも同じ偉人伝シリーズです。とんちで歩けない子を治したり、将軍をやり込めるシーンとか、好きですね。権威的なものとか、絶対に無理だと思われていることを、鮮やかにひっくり返す瞬間がたまりません。さすが破戒僧。パンクですよね。可愛くてウィットに満ちててパンキッシュ。どんなに苦しい生活のなかでも、考え方次第で道が開けるということを、子供にも楽しませながら教えてくれる存在だと思います。日本人にとって切り離せないトリックスターですね。






手塚治虫手塚治虫
小学生の頃、図書館で読みあさりました。60年代の一番ドロドロしてた時期の作品ばかり選んで読んでましたね。なんともやりきれない不条理さや、裸とかバンバン出てくるあたり子供には刺激的でした。手塚先生が漫画を通して一番リカバーしたかったものは、日本が受けた戦争体験だと思うんです。コミュニティが受けた巨大な衝撃を緩和するため、ある一点に強烈な圧力がかかり、才能が産まれてくる。そんな巨大な重圧に、圧倒的な才能で答え続けた手塚先生に感動します。








藤子不二雄藤子不二雄
初めて買ってもらった漫画が、『ドラえもん』だったんです。だから出会いは手塚先生より先です。漫画原体験ですね。藤子A先生は、世俗にまみれながら、カルマいっぱい。すごく人間臭いし、俺たちのそばにいる作家。でも特に好きなのはF先生。宇宙的な突き抜けた才能。あの一切無駄やスキのない作品世界、危険な香りがプンプンします。『ドラえもん』も、ガキの頃より、今読んだほうが数倍やばいですよ。








水木しげる水木しげる
日本の霊性の最も深い部分と、最も浅い部分、その両方をとらえている作家だと思います。圧倒的な想像力と筆力で、戦争の圧力に、一生かけて抗おうとしていますよね。あと、しょうもないギャグを言わせたら天下一品(笑)。漫画には絵があって文字がある。でも絵でも文字でもなく、それは漫画。歌もそうです。言葉でも音でもなく、その真ん中にあるもの。そこに面白みを感じます。漫画は映画と違ってコマがつながっているわけではないので、行間とリズムで読ませるでしょ。無いはずのものを想起させるという意味では、自分がいつもやっている弾き語り演奏にも近い。歌とギターの2音だけを使って、鳴ってないはずのオーケストラやリズムを相手に体感させたりすることは、最高に面白いのです。




石野卓球石野卓球
昔、卓球さんと一緒に『ラストシーン』という曲を作らせてもらって、その時は1日一緒にスタジオワークしただけだったんですけど、あるとき、いきなり夜中に電話かかってきて呼び出されて、そのまま卓球さんの家で16時間くらいDJしてくれて、ふたりっきりで踊り狂った(笑)。当時僕はロックとかポップス畑からは、基本的にほぼ無視されていたんですが、卓球さんは最初から認めてくれたんです。「お前は弾き語りとかやってるけど、俺にとってはパンクでテクノだから」って言ってくれて。卓球さんがいたから、やってこれたんだと思います。言葉にならない感謝でいっぱいです。

ミヒャエル・エンデミヒャエル・エンデ
小学5年生のときに、図書館で『はてしない物語』を読みました。これを読んでいなかったら、生まれていない曲や発想が結構あると思いますね。ファンタジーというと、バカにされがちだけど、エンデは誰よりもリアリストだと思います。そういう人間じゃないと、児童文学は書けないと思うんですよ。社会の根底を支えているのは、政治家や企業家なんかではなく、歌手や絵本作家だと、半ば本気で思ってます。エンデのような、大きな愛を持ちながら、圧倒的に冷徹で、レジスタンスのような実行力と頭脳を持っている人が、世界の夢見る力、想像力を支えているんです。彼のような偉大な作り手がいることを忘れずに精進して、いつか僕も、子供向けの作品を作ってみたいですね。

エルメート・パスコアールエルメート・パスコアール
天才音楽家。俺にとって、エジソンとヘレン・ケラーと一休さんを一体化したような存在ですね。圧倒的な才能を、アカデミックにではなく、ナチュラルに、まるで笑顔のように発揮している。その場にある何でも即座に楽器に変え最高の音楽を奏で始めちゃうという、“音楽家かくあるべし”という理想の音楽家です。パスコアールのライヴを観た人は、皆知らない間に立ち上がり、歌い出してしまい、愛とか夢とかいう陳腐な言葉を信じてしまうんです。たった一晩で、一生分の元気をくれます。彼は音楽が持つ底力を教えてくれました。それは単なる空気の振動かもしれないけど、生涯心の中に残り続けて、人々を支えます。

B’z B'z
子供の頃、父がジャズなどトガッた音を好きで、テレビも見ない家庭でした。だから13歳まで、まったくJ-POPには触れずに育ったのですが、中1のとき、ひと目惚れしてしまった女の子が、ミスチルとか大黒摩季とかB’Zを貸してくれたんです。でもラジカセを持ってないと言えなくて、親に土下座して買ってもらいました。それまでジャズしか聴いたことなかったから、初めてB’zを聴いたとき、なんてイノベイティブで、エキセントリックな音楽だろうと衝撃を受けました。それから脱・前衛して、J-POP化し、今のようになりました(笑)。だから恋が動機。100%不純な動機です(笑)。







Release Information

『billion voices』

billion voices’





Artist Profile
七尾旅人




Felicity

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