
平川紀道 | ドルトムント「TRUST」レポート |「WORLD CULTURE REPORT」Vol.8
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今回は、アートとテクノロジーに関するカンファレンスや展覧会などが開催された「ISEA2010(International Symposium on Electronic Art)」に参加した平川紀道氏が、現地ドイツ・ドルトムントで気になった展示作品について、レポートしてくれました。
Text:平川紀道
今夏、ドイツの工業都市ドルトムントで開催された「TRUST」というタイトルの展覧会に、日本からの招待作家である三上晴子氏のサポートとして参加した。総勢14名のアーティストが世界中から招待されたこの展覧会は、電子美術という枠を確かに意識しながらも、テクノロジーや理論といったものからの束縛を巧妙に逃れた作品が集まった、興味深い展覧会であった。




会場となった、 Dortmunder U – Centre for Art and Creativity は、欧州文化首都の予算でリノベーションされた新設のセンターである。オープン当日までエレベータ、エスカレータが動いていなかったり、ネットがなかったりと、インフラすら整っていない状況であったが、オープン当日にはそれらも整って、無事に客入れとなった。施設自体の常設となる内装/外装に使われている、十数台の巨大なDLPプロジェクタやLEDパネルの規模も、かなり衝撃的なものであったが、その設備では地元出身のコマーシャル・フィルムの某ディレクターの作品がパーマネントで展示されるとのことで、今回、展示している作家の中からは、「なぜ一般公募にしないのか?」といった声がかなり多く聞かれた。
以下、「TRUST」で展示されていた作品の中から、印象に残ったもの数点を紹介したい。


「Desire of Codes」Seiko Mikami (jp)
山口市にあるメディアセンターであるYCAMで制作された作品。
幾分、スケールは縮小されているものの、YCAMとはまた違った印象に仕上がった。仕込み中には、プロジェクタのランプが爆発したり、音が出なかったりと色々と問題があったが、無事に全て解消してオープンを迎えた。映像のデータベースの中では、YCAMで展示した際のものが残っていたことも、印象が変わった理由の一つであったかも知れない。ドルトムントでの映像も蓄積されていくため、次回の展示はまた違った印象になることだろう。作品の詳細はウェブサイトを参照していただきたい。
空間全体を使った大型のインタラクティヴ・インスタレーションとして、展覧会の中でもかなり目立った作品であった。




「Loops and Fields: Induction Drawings Series 3」Joyce Hinterding (au)
鉛筆で描かれたパターンは、電磁場をとらえるアンテナになっており、サウンドシステムにつなぐことで電磁場が可聴化される。表面に触れると電磁場の干渉が音の変化として聞こえる。パターンが美しいだけでなく、それが目に見えない世界をとらえる装置として機能するという点が、システムの構造的にも美しいと感じた。 作者本人が、デジカメの液晶をドローイングの表面に近づけて、特徴的なパルス音を聞かせてくれた。
彼女とは、2006年にせんだいメディアテークの同じ展覧会に参加しており、予期せずして嬉しい再会となった。

「rota」Carsten Nicolai (de)
ドリームマシーンのように回転するオブジェクト。彼が頻繁に用いる六角形を組み合わせたパターンから、光が漏れてストロボ効果を生む。思っていたよりも回転速度は速くなかったが、超音波を含む超硬質な高音域は、かなり耳に残る。本人は多忙のため欠席。



「Nereida」Ariel Guzik (mx)
クジラやイルカから自由を奪うことなくコミュニケーション/リンクできるか?というような楽器(?)で、実際に、海に沈めて音を出す装置。バネが震えて共振するような、なかなか心地良い音がしていた。
作者はメキシコのヒーラーであり、シャーマンだという。
もの静かな人柄で、虫に刺された他のアーティストに、メキシコから持参したジンジャーを削って手渡す姿が印象に残った。


「macghillie _ just a void」knowbotic research (ch/at/de)
オープニング翌朝にはイスタンブールへ発つ予定だったので、見れないのではないかと心配していたのだが、街中を歩いているところに遭遇した。実物はかなり不気味で、白昼、道端で得体の知れないものを目撃する、ということ自体がかなり体験として強烈であった。
その他、ベオグラードの市内を、普段着の女性がライフルを持ち歩く様子を追いかけた映像作品や、ゲームの中のCGの風景を切り取って編集した映像作品、床へのプロジェクションの壁への反射を見せる作品などがあった。
作品のすべては紹介できないが、いずれも「TRUST」という展覧会のタイトル通り、信用する/しない? 信用できる/できない? といったことを見る者に問うような作品であった。もちろん、テクノロジーに裏打ちされて完成する作品ではあるが、テクノロジー自体を見せるのでは決してなく、どういった文脈でそれを使い、何を問うのか、といった意識が明確に伝わるものであった。もちろん、それはキュレータの手腕であるとも言えるし、その意識が明確であることと、作品としての完成度は必ずしも関わりはないが、巷で増え続ける、質の悪いメディア・アート的な作品とは違うクオリティのものをまとめて見ることができる良い機会であったように思う。
Posted by:平川紀道1982年生まれ。コンピュータ・プログラミングによるリアルタイム処理を用いた映像音響インスタレーションを中心とした作品群を国内外の美術展、メディア・アート・フェスティヴァルで発表。2004年度文化庁メディア芸術祭優秀賞、アルス・エレクトロニカ2008準グランプリ他受賞多数。池田亮司のコンサート・ピース制作への参加、大友良英+木村友紀+Benedict Drewとのコラボレーション、ミラノ・サローネでのレクサスのアートエキシビションへの参加など、活動は多岐にわたる。平川氏のインタビューはこちらから。














