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Luvits! |「『美少女』たちは僕らを遠くへ飛翔させてくれる『天使』だ」|「TOKYO STOCK」Vol.2

アイドル、アニメ、アニソン、マンガなど世界的に注目を集める”ジャパンコンテンツ”を、ニュース、インタビュー、コラムなどによって多角的に紹介するWebサイト「Luvits!」と「Public-Image.org」によるコラボレーション新連載「TOKYO STOCK」。
毎回「Luvits!」の人気記事をピックアップし、その中から特に気になるトピックについて、『東のエデン』や『交響詩編エウレカセブン』の脚本を手がけた佐藤大氏率いるStoryRidersが独自の視点で掘り下げていきます。

連載2回目となる今回は、ネットレーベルに関するニュースがランキングを賑わすなか、第8位にランクインしたアニメ音楽誌『リスア二』Vol.2で特集を組まれた『Angel Beats!』について、StoryRidersで企画・制作・マネージメントなどを担当する加川大地氏が寄稿してくれました。

Luvits! 月間アクセス数ランキング

第1位夢眠ねむ×マルチネレコード『魔法少女☆未満』発売!

第2位マルチネ軍団アップルストア銀座に現る!

第3位PandaBoY新作EPリリース!

第4位『TVアニメ戦国BASARA弐 戦国トラベルナビ〜奥州篇〜』リリース!

第5位『インフィニットストラトス』キャスト決定!

第6位『大和彼氏-YAMATO KARESHI-』配信開始!

第7位『サンライズフェスティバル2010夏』開催!

第8位アニメ音楽誌『リスアニ』vol.2発売中!

第9位坂本真綾、初のカバーシングルリリース決定!

第10位パルコ×ドラクエ コラボショップオープン!

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「『美少女』たちは僕らを遠くへ飛翔させてくれる『天使』だ」

Text:加川大地
「天使ちゃんマジ天使」

なにも知らない方には、一体なんのことやら全くもって意味不明な言葉だと思われる。この言葉はアニメ音楽誌『リスアニ』Vol.2(ソニー・マガジンズ)の表紙を飾ったTVアニメ『Angel Beats!』のヒロイン・”天使ちゃん”こと立華かなでを称えるファンから生み出された言葉だ。記憶がない主人公・音無が目覚めた世界、そこは死後の世界の学園だった。学園では神に抗う「死んだ世界戦線」という名の集団が、日夜、神の使いである天使と激戦を繰り広げていた……。そう、天使・立華かなでは、主人公たちの敵なのだ。『Angel Beats!』はこんなストーリーから幕を開ける。

原作・脚本を手がけた麻枝准は、ゲームブランド『Key』所属のシナリオライターの一人だ。アニメ化もされ、今でも熱狂的なファンの多い『Kanon』、『AIR』、『CLANNAD』などのアダルトゲームなのに泣けるソフト、いわゆる”泣きゲー”といわれる作品を90年代に手がけた、人気クリエイターである。さらに麻枝は、自身の作品の主題歌なども手がけ、作詞家・作曲家としても活躍するマルチクリエイターでもある。彼が作詞をした『AIR』の主題歌『鳥の詩』は、ほぼ10年前の作品にも関わらず、ファンの間では今でも「国歌」と呼ばれ愛され続けている。その麻枝の最新作『Angel Beats!』は2010年4月から放送がスタートし、6月で最終回を迎えた。ゲーム作品のアニメ化ではない、完全オリジナルアニメーションシリーズの原作・脚本を麻枝が手がけるということで、本作品は放送前からファンの間でも、そして業界内からも注目を集め、そこに展開されたストーリーは、そんなファンの期待を裏切らない内容であった。魅力あるキャラクターたち、印象的な主題歌、BGM、挟み込まれるギャグセンス、そして感動的なストーリー、まさにこれぞ”麻枝印”といえる作品ではないだろうか。

“麻枝印”。そう私は呼称してみたが、具体的には一体なにをして”麻枝印”と感じるのだろうか。なにが他の作品と違うのだろうか。麻枝の作品を見終わる(プレイし終わる)と、常に似たある感覚を得る。それはどこか遠くへと、ヒロインの美少女たちによって、最終的には自分が想定もしていなかったような場所に連れて行かれたような感覚。 『Angel Beats!』を視聴し終えたとき、改めてその感覚を感じたと同時に、あることに気がついた。1999年、”泣きゲー金字塔”といわれる『Kanon』が発売されてから10余年経った今、麻枝の作品に対する、いや、「美少女作品」に対するある一定の姿勢…。麻枝は常に『美少女キャラクター』へと、カウンターを打ち続けている。

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1999年、『Key』よりPCアダルトゲームとして発売された『Kanon』。折しもWindows95からWindows98にOSが変わり、国内のPC人口が加速度的に高まっていた時代に産声を上げたこの作品は、アダルトゲームにも関わらず、プレイヤーたちの話題が話題を呼び、空前の大ヒットを記録した。そして2000年の『AIR』発売で、ファンの熱は一気に加速していく。業界全体をも巻き込んだこのふたつの作品の大ヒットはその後、アダルト要素を排した全年齢版のPCゲーム発売、コンシューマー機への移植、オリジナルサウンドトラックなどのグッズ発売、さらにはアニメ化などもされ、どれも商業的な成功を収めている。

このような状況は当時のアダルトゲーム業界としては異例で、その後、これをモデルケースに様々なフォロワー、カウンターが生まれ、”美少女作品市場”と呼べるものが確立されてゆく。秋葉原が「ゲーム、PCの街」から「オタク、萌えの街」へと変貌を遂げ始めたのもちょうどこのころではないだろうか。筆者の独断と偏見であるが、今のアニメやゲームにおける「美少女作品」の台頭、さらにいえば初音ミクをはじめとする同人音楽市場の活性化、それら所謂”萌えカルチャー”と呼ばれる現業界の状況は、この2つの作品がなければ確立されていなかった、といっても過言ではないと考えている。『kanon』、『AIR』はそれほどまでに影響の大きい作品だったのだ。その後も『Key』と麻枝は、『CLANNAD』、『リトルバスターズ!』といった作品を発売し、ファンの心を掴み続けている。ではなぜこれらの作品が、ここまでの大ヒットを記録したのか。時代背景などが起因する部分もあり、一言で説明するのは難しいが、作品そのものの魅力が大きいのは間違いない。

まずは音楽。麻枝をはじめ、作曲家・折戸伸治や戸越まごめ、今でも根強いファンが多いサウンドチーム・I’veが提供したその楽曲群は、アダルトゲームの為に作られたとは思えないほどの高いクオリティだった。特に印象的なのは、やはり主題歌などの「歌モノ」だろう。ストーリーとの親和性の高い歌詞を持つそれらの楽曲たちは、作品の随所に挟み込まれている。

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そしてストーリー。アダルトゲームは「アダルト」であり、所謂セクシーシーン、セックスシーンを中心としたものが当たり前の中、『Key』と麻枝が送り出した作品は、それらがゲームの中心ではない。いや、はっきり言うと、アダルト要素はいらない、と言った方が正しい。そこに紡がれているストーリーは「感動」、「家族愛」、「友情」など、およそアダルトゲームとは程遠いテーマだった。”泣きゲー”といわれる所以である。麻枝は「アダルトゲーム」に新しい価値観を与えたのだ。

それが大ヒットの要因だろうか。いや、違う。これらの要素だけならば、これに替わる、いやそれ以上のなにかを与えてくれる作品は他にも存在する。はっきりいえば、名作といわれる映画やアニメの鑑賞、本を読むことでこれは代替できるだろう。ポイントは、麻枝が手がけている作品が「美少女作品」であるということだ。もちろん他のアニメやゲームにも美少女キャラクターは数多く存在している。その中には、現実にはなかなか存在し得ない、男性の妄想が産み出したキャラクターも数多いが、『Key』と麻枝が提示した美少女キャラクターは、それらを遙かに凌ぐ「絶対にこんな女性は存在しない」と思わせるキャラクターだったのだ。彼女たちは、極端にディフォルメが進んだ姿形をしており、現実的にはおよそ存在しない性格造形をしている。オタクのアニマが大爆発を起こしたようなキャラクターたちだ。もはや、そのキャラクター自身が「ファンタジー」である。

しかし麻枝はそんな「ファンタジー」な彼女たちを、逆手に、時に恣意的にコントロールする。そんな到底生きているとは思えない、感情移入もなかなかできない彼女たちが、ストーリーが進むにつれ、自分たちと同じ悩みを抱え、迷っていることを知る。そして最後には感動し、共に涙を流してくれる存在にまでなるのだ。そしてその瞬間、視聴者(プレイヤー)は思う。「彼女たちは生きているのだ」と。視聴者(プレイヤー)のその「存在感」への確信は、彼女たちを「天使」へと変える。そして「天使」は、僕らが作品冒頭では予想もしなかった、遠く彼方の地平へと連れて行ってくれるのだ。

麻枝准は美少女キャラクターに迎合しない。美少女キャラクターたちにカウンターを打ち続けているのだ。それは音楽で。そしてストーリーで。そのカウンターが「可愛い」だけの、いわば愛玩されるだけの美少女キャラクターに新たなる側面、価値観を与えたのだ。それが大ヒットの要因だったのではないだろうか。『Angel Beats!』の『天使ちゃん』に、僕らは涙し、感動する。音楽で、ストーリーで彼女にカウンターを打つこの作品が、何処へ、どの地平へとあなたを連れて行ってくれるのか。未見の方はリリース中のDVD/BDで確かめて欲しい。そして見終わったあとに、是非叫んで欲しい。「天使ちゃんマジ天使」と。

Release Information

SR『Angel Beats!』









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