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Felicity | カジヒデキ |「POWER OF PEOPLE」Vol.9

個性豊かなアーティストたちが集い、国内音楽シーンにおいて独自の存在感を放つレーベルFelicityと、Public-image.orgによるコラボレーション連載「POWER OF PEOPLE」。
毎回、同レーベルの旬のアーティストが登場し、これまでに影響を受けてきた「10人のクリエイター」たちを紹介してくれます。音楽というジャンルを超え、様々な分野との交流も盛んなFelicityのアーティストたちのバックグラウンドや意外な趣向をお伝えしていきます。

今回は、11月に「カジヒデキとリディムサウンター」として新作「TEENS FILM」をリリースするカジヒデキ氏が登場。やや意外と思える人選もありつつ、彼のミュージシャンとしてのバックグランドや変遷がよく伝わってくるセレクションになっています。

Interview:大草朋宏

カジヒデキが影響を受けた”ポップを高いレベルで解釈する”10人のクリエイター


大瀧詠一
中学一年生の頃にYMOが流行って、そこから掘っていくうちに、大瀧詠一さんにたどり着きました。シティポップと呼ばれているけど、当時の僕にはジャンルなんか関係なく、素晴らしくキラキラした完璧な世界。アルバム『A LONG VACATION』の1曲目「君は天然色」というタイトルから完璧でした。ホントに毎日聴いていたので、その世界の最高峰を自然に植え付けられましたね。その当時、お年玉でギターを買って、このアルバムを聴きながらエアギターしていた記憶があります。AC/DCとかじゃなく、ポップスで(笑)。「ゴー・ゴー・ナイアガラ」というラジオ番組も必ずエアチェックしていて、大瀧さんの音楽性の許容量やジャンルの幅広さにびっくりしましたね。その後の自分が幅広いジャンルを聴くことができるきっかけを作ってくれた人です。


戸川純
YMOの細野さんがプロデュースしているということで、ゲルニカを聴き始めたんです。ものスゴイ衝撃でした。アートワークにロシア構成主義やシュールレアリズムを融合したり、ニューウェーブのなかでもかなりクリエイティブなバンドでした。なかでも戸川純さんは、ポップでパンクだったと思います。人とは違うぞという姿勢は、10代の頃、自分はどうあればよいかという自己形成において、お手本みたいな部分がありました。特に自分がソロになってからは、気がつくと戸川さんのようなパンクスピリットがどこかに入っていたりしますね。
 




 

丸尾末広
スターリンというバンドが好きで、セカンドアルバムのイラストを描いていた丸尾末広さんの漫画を読むようになったんです。いわゆるエログロ漫画で、卑猥な言葉が続々と出てくるのに、なぜか下品に感じない。ものスゴい美学で貫かれているんです。丸尾さんの絵は芸術品ですよね。内容も、幻想文学みたいなものに影響を受けていたりして、漫画に音楽や芸術が融合されていました。あと、丸尾さんがポスターを描いていた影響で、「東京グランギニョル」という劇団の公演もよく観に行きましたね。ものスゴく美意識が高い劇団でした。




ジャン=リュック・ゴダール
高校一年生のときに、『気狂いピエロ』と『勝手にしやがれ』の2本立てを観に行って、初めてゴダール作品に触れました。特に『気狂いピエロ』は、いまだに人生で一番好きな映画です。スゴくシュールで独創的だから、難しくてわからないという評価もあるけど、高一の僕にはそんなの関係なく、映画のパワーにただただ圧倒されてしまったんです。予定調和の様式美を破壊するというところから「ヌーヴェルヴァーグ」という彼らの映画運動は生まれてきているので、スゴく新鮮で生き生きとしていて、パンクに近いものを感じましたね。今でも何かと影響を与えてくれる映画です。




ロバート・スミス(The Cure)
10代後半はポジティブパンク少年だったのですが、なかでもキュアーのロバート・スミスの存在が興味深く、崇拝していました。白塗りでアイシャドウをして口紅を大きく塗って、髪はゴワゴワで、すでにゴスの神的なバンドでしたが、実際の楽曲はスゴくポップ。特に「In Between Days」という曲がポップで好きでした。スタジアム級バンドにまで成長するんだけど、一見特異でマイノリティーなことを表現している人がそこまでのし上がれる存在になれることがスゴい。ダークで暗い部分だけじゃなく、ポップな部分を出すことで大衆にも訴えかけつつ、でも自分の筋は曲げないスタンス。僕もロバート・スミスみたいにありたいと思います。


エドウィン・コリンズ
ゼロ年代にディスコパンクが流行りましたよね。そこでポストパンクの再評価が起きて、フランツ・フェルディナンドが影響を受けたオレンジジュースを改めて聴き返し、さらにスゴいバンドだと再確認したんです。79年頃、ディスコとポップなパンクを融合したらどうだろうと、オレンジジュースを率いるエドウィン・コリンズは考えた。今でこそ普通のことだけど、それを考え出したのはスゴい。オレンジジュースがどれだけ重要なバンドか、もっとみんな知らないといけないと思いますね。演奏力よりも新しさを求めて挑戦していたから、不協和音でさえスリリングに聴こえる。何かを変えようとしているからこそ、カッコ良く聴こえるんだと思うし、彼の崇高なスピリットは今もなお多くの若者に影響を与え続けています。


小山田圭吾
あるバンドのライヴを観に行ったら、対バンで出てきたのが小山田くんたちで、“Pee Wee 60′sを解散して、ロリポップ・ソニックというバンドとして活動します”という日だった。それが彼を初めて見た日。そのときのライヴにスゴく衝撃を受けました。当時はギターも少し乱暴で、ぶっきらぼうに歌ってたんですけど、すでに日本人離れしていましたね。フリッパーズの原形みたいな曲もあって。ロリポップ・ソニックは洋楽を聴いているような感覚。しかも向こうのバンドよりもカッコ良いし、センスがあると思いました。彼の音楽センスはズバ抜けていて、視点が違う。ものスゴくマイナーなことも知っているけど、人前に提供するときは、高いレベルでポップに消化している。今でも小山田くんに対しては憧れがあります。あのライヴに行って良かった。いま考えると、あそこがターニングポイントでしたね。


スティーブン・パステル (The Pastels)
スティーブン・パステル率いるパステルズは、インディポップの元祖だと思います。こんなにヘタクソで、こんなに単純で、こんなに素晴らしい。かわいらしくて、でもパンクスピリッツがあってトガっている。あの頃の「アノラック」というムーブメントはもちろん、今のインディポップのバンドは、すべてパステルズあってこそといっても過言ではない。何度か会って話したこともあるんですけど、スゴく優しくて包み込んでくれる人です。インディポップの仙人みたいな(笑)。フリッパーズに「さよならパステルズ・バッヂ」という曲がありますが、大リスペクトがあるからこそ、生まれた曲だと思います。


レイモンド・カーヴァー
大場正明さんという人が書いたアメリカのサバービアを舞台にした小説や映画、音楽を検証した『サバービアの憂鬱』という本に、レイモンド・カーヴァーも取り上げられていました。事故に遭ったり飲んだくれたり…、明るい話というよりどちらかというと暗い話が多いけれど、サバービアを感じる風景描写が好きです。あと、文章のテンポがいいんですよね。削って削ってというミニマリズムの人だと思うんです。歌詞の面でも直接的に影響を受けていますね。ソロになってからは特に、カーヴァーっぽくありたいと思ったりします。
 






 

エッグストーン
91年頃、輸入レコード店でバイトしていたときに、エッグストーンのレコードが入ってきたんです。最初はジャムとかスタイル・カウンシルみたいで、イギリスのバンドだと思ってたんですよ。でも調べてみたら、スウェーデンのバンドでした。当時はマンチェっぽかったり、グランジ前夜の雰囲気があったので、こういうビビッドなポップは少なかったんです。95年には直接会って、自分のソロ作品を彼らの運営する「タンバリンスタジオ」で一緒にレコーディングしました。彼らは音に対する探求心がスゴく強いですね。科学者的で実験的。自分たちで色々なものを作っていたし、マイクの置き方も変だし。たくさんの作品を一緒に作ってきたので、僕のソロ作品には、彼らとの出会いがとても大きな意味を占めています。同世代なのでバックグラウンドが似ているし、同僚みたいな感じです。




Release Information

極上のポップネスを疾走感のある演奏で包み込んでいる本作は、カジヒデキとリディムサウンターの共同プロデュース。キラキラしたメロディと躍動感のあるバンドサウンドが融合した、爽快なネオアコサウンドだ。どこか青空の下に出かけたくなる一枚。
 
『TEENS FILM』
アーティスト名:カジヒデキとリディムサウンター
レーベル : felicity
リリース日 : Nov.3rd 2010


Artist Profile
カジヒデキ
一昨年、『デトロイト・メタル・シティ』で脚光を浴びた千葉県出身のシンガーソングライター。96年のソロデビューからスウェーデンのミュージシャンらと親交を深め、現在まで多数のアルバムをタンバリン・スタジオなどでレコーディング。スウェーデッシュポップスを日本に紹介し、広めることに一役を買う。また、ロンドンに数年住んでいたこともあり、UKインディーシーンとも深く関わっている。数多くのCMソングや、プロデュース、楽曲提供の活動、自らが主宰するクラブイベント「BLUE BOYS CLUB」など精力的に活動中。

Posted by:Felicity
2002年の設立以来、ジャンル、洋の東西を問わず知的好奇心を刺激するような良質な作品をコンスタントにリリースしてきたレーベル。 音楽ソフトだけにこだわらず、アートブックや写真集など、その アーティスト、また作品に適したフォーマットでのリリースなど、やりたいことにはチャレンジし続けるスタイルで、今後も多くの作品を世に送り出す予定。公式Twitterアカウントはこちらから。

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