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Felicity | 石橋英子 |「POWER OF PEOPLE」Vol.11

個性豊かなアーティストたちが集い、国内音楽シーンにおいて独自の存在感を放つレーベルFelicityと、PUBLIC-IMAGE.ORGによるコラボレーション連載「POWER OF PEOPLE」。
毎回、同レーベルの旬のアーティストが登場し、これまでに影響を受けてきた「10人のクリエイター」たちを紹介してくれます。音楽というジャンルを超え、様々な分野との交流も盛んなFelicityのアーティストたちのバックグラウンドや意外な趣向をお伝えしていきます。
今回は、来年1月6日に待望のニューアルバム『carapace』をリリースする石橋英子氏に、影響を受けたクリエイターたちについて語ってもらいました。

Interview:大草朋宏

石橋英子が影響を受けた”本質を深くえぐる”10名のクリエイター

ポール・マッカートニー
父親がビートルズのなかでもポール・マッカートニーが作った曲ばかりを集めたテープを編集していて、私が4、5歳の頃よく聴いていました。そのときは無意識でしたが、大人になってからビートルズを聴いてみると、自分が好きな曲がすべてポールの曲だったとわかってびっくり。それからもビートルズ自体やジョン・レノンよりも、やはりポールが好きですね。彼のベースラインから曲の奥行きを感じます。1曲のなかで、いろいろなところに行けたり、全然違う景色を見せてくれるんです。


ジョニ・ミッチェル
中学生のころ、ラジオから流れてきた曲が気になって、テープに録音して、近所のCDレンタル屋さんのおじちゃんに尋ねたんです。それが、ジョニ・ミッチェルでした。このおじちゃんにはいつも教えてもらっていて、プログレとか、ピーター・ガブリエルとかを好きになったのも、おじちゃんのおかげ(笑)。ジョニ・ミッチェルは、当時住んでいた街の殺伐とした風景と合うんですよね。ウォークマンに入れて歩いていると、なんともいえない不思議な感覚になります。早口だけど、メロディラインに乗っていて他にはない歌い回しだし、不思議なコード感、そして技術。すべて揃っている人はいませんよね。そのうえ、押しつけがましくない。難しいことをやっているのに、聴く側には、ただ美しいものとして入ってくるんです。

アルベール・マルクール
「フランスのザッパ」とかいわれているんですけど、私にとっては、ザッパよりも気が利いているし、ユーモアもある。いろいろな楽器が入ってきますが、スパッと入ってスパッと抜ける。そのタイミングが絶妙です。本当に情報量が多くて、1曲のなかにびっくりさせられる瞬間が何回もあります。誰も思いつかないようなリズムばっかりだし、集中して聴かないといけない音楽なので、BGMとしてはまったく向きません(笑)。前のバンドでドラムを叩いていたときも、影響を受けていましたね。自分の音作りという側面では、割と近いところがある人です。

ミルトン・ナシメント
ブラジルにとどまらず、世界で一番のポップシンガーでしょう。「歌ってこういうことでしょ」って感じ。一緒に歌えて、しかもいいメロディ。その辺を歩いている子供が口ずさんでいて、ぜんぜん違うメロディになっちゃっても、ミルトン・ナシメントの音楽といっても大丈夫なポップさや、みんなの歌になりうる強さ。メロディそのものにそういう強度があります。もちろんアルバムごとにいろいろな評価があるけど、私はミルトン・ナシメントなら何でも許しちゃう。心から歌っていて嘘がないから、どんなアレンジになっていてもOKなんです。

ロバート・ワイアット
元々ドラマーだったのが、事故で下半身不随になってピアニストになるという、私は事故にはあってないけど、ドラムとピアノというところに自分と重ねるところもあります。勝手に、心のお父さんにしています(笑)。宅録でパパッと録ったり、即興の活動をしながらも自分の作曲をしていくというのも、いままでの自分のスタイルに共振するところがあります。”You make your little pond but if your pond isn’t connected to the river, which isn’t connected to an ocean, it’s just going to dry up. It’s just a little piss pool”という言葉に本当に感銘をうけました。自分が予期しないものを取り入れていかないと、音楽は干上がってしまう。

ルイス・フューレイ
『THE HUMOURS OF』というアルバムは、ミュージカルチックなアルバムで、息もつけない楽しさ。いちいち芝居がかっているんです。悪巧み感とか、ダンディズムも表現されていますね。物語やミュージカルなど、ストーリー性のある作品というものへの憧れもあって、ルイスさんのアルバムからは影響を受けていると思います。新宿の思い出横丁の行きつけの店で、ルイス・フューレイを聴きながら踊ったという思い出もありますね(笑)。


ジョン・カサヴェテス
彼の奥さんでもある女優のジーナ・ローランズが好きで、高校生のころ、カサヴェテス監督の映画はよく見ていました。人間の闇の部分を描いているにもかかわらず、ウェットではなくドライ。描き方がとても深いと思います。台詞に頼らず、映像、沈黙の間、表情などが多くを語る映画監督だと思います。表面的ではなく深くえぐる作風に影響を受けています。曲を作るときにしても、「なぜこの曲を作るのか」「この部分は必要なのか」「本当にこの言葉が合っているのか」「そもそもこの言葉が必要なのか」と考えることが大事だと思います。もちろん、当時はそんなつもりで観ていないですけどね。




ニコラス・ローグ
たぶん、すごく変な人だと思うんですよね(笑)。何が好きなのかわからないけど何回も観ちゃう映画ってあるじゃないですか。この監督もそう。場面が焼きついちゃって、観ずにはいられない。すごく生々しい描き方なんです。現実味がなくても、支離滅裂でも、それが本当はリアルだったりする。そういう表現手法って、映画に限らず、物作りにおいて大事だと思うんです。ストレートに本当のことをいえばいいのかといえば、そうでもなく、別のものに置き換えることで本質が伝わる。外見のきれいなものすべてが、決して本質的に美しいものではない、という表現の仕方に影響を受けています。




深沢七郎
『人間滅亡的人生相談』という本を高校生のときに読んで、目から鱗のことばかり書いてあって、びっくりしました。かなりうろ覚えですが、「友達と疎遠になってしまった。どうすればいいですか?」というような悩みに、「友達は季節に咲く花のようなものだから、変わっていっていい」とか、「夫が病気なのに、たばこもお酒もやめないし、好きなものを食べている。どうやったらやめさせることができるか?」というような質問に、「人生なんて短いから、好きなように食べて、好きなように生きて、楽しく死んでいったらいい」と答えたり。ただ解決策を提示するのではなく、ぎゅっと掴んで固まっていたものを、パッと放してくれるような答えばかり。ひとりで作業していると行き詰まることも多く、そういうときには、余裕とか、自分を客観的に見ることとか、一般常識ではない視点で物事を見るということが大事。そうじゃないと生きていけない、と学びました。


ジム・オルーク
ジムさんなくしては、今回のアルバムは作れませんでした。これまでは、パパッと思いついたときに録る、という感じだったけど、立ち止まって自分の曲を見つめることの大切さや、プロセスに気がつかせてくれました。ジムさんからは、音楽を続けていくための強さを学んだと思います。さりげなくスゴいことをやっているのに、それを人に誇示しない。それは心の強さだと思うんですよ。今では誰でも何でも宣伝して、人に自分のやっていることを何でも言いたくなるけど、本物の音楽は、また別の場所にあると思います。ジムさんは本当に幅広く、深く、音楽をありとあらゆる方法や形で作ってこられている。本物の音楽を求め続けているジムさんから、たくさんの勇気を頂いています。

Release Information

『carapace』

Artist Profile

Felicity

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