loading...

PUBLIC-IMAGE.ORG

Creators Dictionary for Realtime Culture

  • PUBLIC-IMAGE.STORE
  • PUBLIC-IMAGE.3D

浅沼優子 | ベルリン クラブ・シーンレポート |「WORLD CULTURE REPORT」Vol.11

Public/image.にゆかりのある様々なクリエイター、編集者、ライターなどがコントリビューターとなり、世界各地から旬なクリエイティブ情報を届けてくれる「WORLD CULTURE REPORT」。
今回は、ベルリンを拠点に活動し、現地のクラブシーンにも詳しい音楽ライター・浅沼優子さんが、新進レーベル「WHITE」について紹介してくれます。

Text:浅沼優子

ベルリンのライフスタイル、音楽シーンに魅せられてこちらに引越して来てから、かれこれ1年半が経つ。数え切れないほどのクラブがあり、夜な夜な世界的DJがどこかでプレイしていて、平日でも朝の8時や9時まで平気でパーティーが繰り広げられる街。クラブ好きなら天国のような環境だが、やはりしばらくいると選り好みも激しくなるし、最初の頃ほどありがた味もなくなって来るのが人の性というもの。なので正直なところ、実際には「シーン」のほんの断片にしか触れていない。その上、自称アーティスト、自称DJがあふれ返るこの街にあって、クラブ・シーンについてレポートするといってもどこから手をつけていいのやら。

最初は、いわゆる大御所系のクラブやレーベルを紹介しようかとも思ったが、そういうレポートや資料は他にもいろいろあるので、今回はローカルに地に足着けて活動している、あえて若手のレーベルでありDJ/アーティスト集団である、「WHITE」を紹介してみたいと思う。

WHITE

俗に言う「ホワイト・レーベル」とは、ブートレグのレコード盤を意味する。著作権などを無視してプレスされたレコードなので、そこには名前や曲名やレーベル名は記されず、ただ白いラベルが貼られるからだ。だから、レーベル名を自ら「WHITE」と名乗るところにすでに遊び心が表れている。

とはいえ、私が「WHITE」をちゃんと認識したのは、昨年の元旦に開かれたイベント「Weisse Hasen 10」(白ウサギの意)の頃。2008年に発売された004番のレコードをたまたま日本で買って持っていたけれど、レーベルまでは認識していなかったし、それがベルリンのものだったと分かったのは後になってからだ。この「Weisse Hasen 10」に遊びに行った際に、スタッフをしていた子と友達になったのがきっかけで「WHITE」をちゃんと認識し、レーベル主宰者であるOskar Offermannとも知り合った。

今年も元旦に開催された「Weisse Hasen 11」に遊びに行き、イベント終了後、疲れも取れたであろう数日後に改めて「WHITE」のレーベル拠点兼Oskarの自宅に話を聞きに行った。

WEISSE HASEN WEISSE HASEN

「WHITE」は、リリースが1年にシングル4~6枚と少ないが、そのペースは守っている。多くのレコード・レーベルがそうであるように、レコードの販売だけではほとんど利益が出ないご時世なので、ほとんどのレーベル経営者はDJで稼ぐか、何か副業を持っている。Oskarの場合はまだ学生で、映画関係の勉強をしているそうだ。

「本当に典型的すぎて自分でも恥ずかしいんだけど!」という彼は、10代でスケボーにのめり込み、そこからパンク/ハードコア、ヒップホップへと音楽に興味を持ち始め、DJやラップ、グラフィティにも挑戦した後、ベルリンを訪れてテクノに感銘を受ける。ベルリンの美術大学に進学しそこで仲間達とアートとエレクトロニカを融合したイベント「CLIC CLAC CLUB」を2003年から定期的に開催するようになる。その後ミニマルを経て徐々にディープ・ハウスへと傾倒するようになって現在に至る。確かに、20代後半である彼の世代に多そうなパターンだ。

Oskar Offermann

レーベル主宰者のOskar Offermann。12月に発売されたばかりの最新盤EP『Tied Together』を手に。

レーベルの「WHITE」が発足したのは2007年。それまで共にイベントをやっていた仲間達と、仲間の作った曲を発表するために立ち上げた。美術大学で知り合った友達が中心となっているというだけあって、ビジュアルへのこだわりと一貫した美意識が感じられる。
「レーベルのコンセプトは、”THE LABEL FOR BEAUTIFUL THINGS”としていて、僕たちが美しいと思う音楽を世に送り出し、それに相応しいビジュアル表現をするようにしている」

特に面白いのが、「顔シリーズ」のレコード・ジャケットである。「WHITE」というレーベル名と同時に思いついたアイデアだという、レーベル名に反したアーティスト本人の顔面アップ写真。「僕らの一世代前のダンス・ミュージックのアーティストたちは、顔を出さないこと、アーティスト自身は目立たないようにすることが美徳とされていたけど、僕らはそういう世代でもない。あえて逆のアプローチをやってみるのも面白いと思ったんだ。みんなのデビュー盤であるシングルに、その当時の顔を撮影して載せる。無垢だった少年達が、その後音楽業界に蝕まれていく様を、顔を記録することでドキュメントしたいと思ってね(笑)。だからときどき”顔ジャケ”を作って、いつかはそれを並べて展示したいと思ってるんだ」

WHITE

WHITE

元旦のパーティー以外にも、「WHITE SPARKLE IN HER EYES」と題したレギュラー・パーティーをクロイツベルクベルグ地区のクラブHorst Krzbrgで開催し、毎回多彩なゲストを呼んでいた他、最近注目の小さなクラブ ://about blankでも「SWEET SWEET LOVE」というパーティーを主催。ここ数年は拠点のベルリンを中心に、DJ活動もかなり活発に展開してきた。

「でも、今年の特に前半はパーティーの開催は控えめにしようと思ってる。パーティーをオーガナイズするのはとても時間もエネルギーも使う。それでも大して利益が出るわけではない。それにもう何年も続けてきて、以前みたいに魔法のような瞬間が味わえなくなってきたように思う。ベルリンのお客さんが変わってきたからなのかもしれないし、僕が変に慣れてしまったからかもしれない。だから、今年は前から計画していた自分のアルバム制作に集中したいと思ってるんだ」

ベルリンをベースに活動しながらも、特にベルリンという場所に固執したくはないという。
「最初から国際的に認知されるようなレーベルにしたかったから、サイトも全て英語で表記してる。今は自分の活動拠点として、仲間もいるベルリンが都合がいいけれど、もし他に条件が揃う場所があれば移ってもいいと思ってるよ」

WHITE WHITE

レーベル所属の中心メンバーであるEdward、Jason、Tristen、Nu、Moominといった面々も、皆出身は違えどベルリンで意気投合し一緒に活動するようになった仲間だという。
「ベルリンは自分でなにかやりたい、なにか形にしたい、と思っている人がたくさんいる。それが励みになるし、いい出会いや機会にも繋がるよね」

そういう意味では、やはりベルリンらしいレーベルだ。今年はOskarとEdwardのアルバム・リリースが予定されていて、それが大きな課題でもあるという「WHITE」。日本のレコード屋さんでも彼らのレコードは販売されている他、BeatportZero-InchWhatpeopleplayでデジタル販売もされているのでぜひ聴いてみてほしい。

WHITE


浅沼優子

RELATED