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山口崇洋 | バルセロナ「HANGAR 滞在」レポート |「WORLD CULTURE REPORT」Vol.12

PUBLIC-IMAGE.ORGにゆかりのある様々なクリエイター、編集者、ライターなどがコントリビューターとなり、世界各地から旬なクリエイティブ情報を届けてくれる「WORLD CULTURE REPORT」。
今回は、2ヶ月以上に渡りバルセロナで滞在制作を行ってきたアーティスト山口崇洋氏が、現地での様子をまとめてくれた充実の滞在記をお届けします。

Text:山口崇洋


2010年10月1日から12月15日まで、トーキョーワンダーサイトの『二国間交流事業プログラム(※)』に採用され、派遣アーティストとしてバルセロナに2ヶ月半滞在した。渡航の目的は「滞在制作」なので、観光はもちろん、美術館/ギャラリー巡り等もあまりせず、ひたすら制作活動に励んでいたので、ここではその滞在先のことや、制作活動の様子とその成果を主に紹介していきたい。




HANGARとバルセロナでの生活
HANGARは、ワンダーサイトの二国間交流プログラム提携施設のひとつで、今回私が滞在制作を行った場所。地元でも有名なレジデンス施設で、基本的には滞在アーティストの大半が地元のアーティスト。彼らは普通に賃料を毎月払ってアトリエを借りる。私のように資金を得て国外から来るアーティストは実は少なく、私が滞在していた時は、韓国から1名とブラジルから1名。それと私。他は地元アーティスト。

山口崇洋

2階建ての建物で2階はすべてアトリエ用スペース。10数個のアトリエがあって共用のトイレ、シャワー、キッチンも完備。決してキレイとは言えないが、個人的には問題なく使えた。

山口崇洋

アトリエは作家によってかなり色が出る

山口崇洋

1階はオフィスとメディアラボ、ワークショップスペース、機材庫等。上の写真はオレンジにペイントされた壁が印象的だった待合いスペース。

HANGARの特徴は、なんと言ってもメディアラボの存在。映像関係に特化したラボとプログラミング、電子デバイス等、テクノロジー関連のラボ、2つのラボが併設され、その道のプロフェッショナルが常駐しており、強力にサポートしてくれる。私自身も滞在中、何度もここのギークなスタッフに助けられた。このメディアラボの存在は、私が滞在先としてHANGARを選んだ大きな理由の一つだ。週末にはバルセロナのギークたちが集いハードコアなワークショップを開いている。私の滞在時には毎週のようにモジュラシンセ制作ワークショップが開催されていた。

山口崇洋

プログラミング/ハードデバイス系のラボ部屋。大型の切断機からボール盤、電子工作に必要なパーツなど、なんでも揃っている。滞在後半は自分の部屋のように入り浸っていた。


宿舎はHANGARから支給されたシェアハウス(アパート)で、HANGARから歩いて30分程度。滞在中は4人(男性3人+女性1人)のルームメイトと生活を共にしていた。アトリエへ通うのに自転車が欲しいと相談すれば、家にある自転車を貸してくれたりと、皆いい人だった。それと、ルームメイトに限らずバルセロナの人は持っていた印象通りおおらかで、いい感じにゆるい。それが良いと取れる時もあれば、もちろん悪い方に転ぶ時もある。昼休みはだいたいどこも午後2時から4時までと決まっていてレストラン以外は昼に閉まるお店も多い。お昼には皆ビール、ワインなど当たり前に飲む。

山口崇洋

与えられた自分の部屋は決して広くはなかったが、基本的に寝るだけだったので問題無し。家自体は日本と違ってかなり広くて天井が高い。

山口崇洋

アパートのキッチン。ランチを作るルームメイト(夫婦)。節約のため、食事は自炊することが多かった。

山口崇洋

12月、親しくなった友人数名を招いて自宅にて日本食ナイトを開催。天ぷらをふるまったり。日本食はだいぶポピュラー。



滞在制作とその成果
滞在中は大きく分けて2つの作品を制作。1つは以前から構想があったプロジェクトで、スプレー缶塗料とマイクロコントローラー、モーターなどの電子デバイスを用いて抽象的なラインを自律的に描画していくマシン、ボットのような装置の制作。滞在中はこのプロジェクトに関するマシンの開発に多くの時間を費やした。

山口崇洋

滞在開始から半月後に完成したデバイスのプロトタイプ。

上の動画では、スプリングを引っ張ることで私自身がデバイスに動きを与え描画をさせていたのだが、その後動きを作る動力部分の制作にも取りかかる。最終的に、滞在期間中の完成には至らなかった同プロジェクトは現在も制作進行中である。

もうひとつの作品は、私の代表作の一つである「Urbanized Typeface」バルセロナ版。「Urbanized Typeface」は、自転車でGPSデータを採取しながら広大な範囲にわたり街を走り回り、そのデータによって文字をデザインするというプロジェクト。昨年夏、Incheon Digital Art Festivalのために韓国にて仁川版を制作。今回が3都市目になる。こちらの制作は12月に入ってからスタートさせ帰国2日前、なんとか完成させることが出来た。

山口崇洋

バルセロナの街の大部分は正方形のグリッド状に区画され、ひとつのグリッドがかなり大きく、道幅も広くて走りやすかった。

山口崇洋

GPSデータをソフトウェアに読込ませた際のスクリーンショット。現在ログデータを編集中で近日、サイトにフォントデータ等アップ予定。

その他、大きな成果といえば、現地のギャラリーにてグループ展を開催したこと。滞在当初からHANGARのスタッフに成果展開催を打診していて、11月頭に開催が決定。私の個展ということで開催することもできたのだが、様々な理由から、私と同じ境遇のブラジルと韓国からのアーティスト、それに私と同じ時期に3ヶ月間のみ滞在していたバルセロナの2人組、合計4組のグループ展ということで自主的に企画し、HANGARスタッフのサポートも得ながら展覧会を作りあげた。

山口崇洋

展覧会開催が決まって以降、すぐにミーティングを設け展示コンセプトを話合い、決まり次第フライヤー制作。大まかなデザインは皆でアイデアをブレストして、ディティールやエディトリアル、入稿データ制作は私が担当。展覧会のタイトルは『encreuament』。カタルーニャ語で”交差点”という意味。

山口崇洋

山口崇洋

展覧会オープニングの様子。

その他、Mozillaのイベント出演のためバルセロナに来たGraffiti Research Labエヴァン・ロスとの再会がきっかけで制作した「kml2gml」や、グループ展に参加したバルセロナの2人組blablabLABの作品「HABERLANDT」のためのサウンドシステム制作など、詳述してくとものすごく長くなるので、以下簡単にご紹介。

バルセロナに行くまでは、スペインという国自体にそれほど興味を持っていなかったわけだが、住んでみると気候はいいし、ご飯はおいしい、物価も安いし、街が非常にコンパクトで自転車ですぐにどこでも行ける。本当に居心地が良く住みやすい地域であった。
現代アートやメディア・アート、先進的なデザインなど文化も進んでいる。制作に打ち込んでいたとはいえ、いくつか展覧会やイベントに足を運んだが、どれも非常に興味深いものばかりだった。特に、Disseny Hub Barcelonaというピカソ美術館の向いにあるギャラリー兼ラボスペースで開催されていた3Dプリンティングに関する展覧会には衝撃を受けた。CBCNETに展示レポートを寄稿しているので興味のある方は是非見て欲しい。
さらに、バルセロナ滞在についてより詳しく知りたい方は滞在中記録ブログもどうぞ。

本レポートが、今後、トーキョーワンダーサイト二国間事業への応募を考えている方、ひいてはレジデンス全般に興味を持っている方への参考になれば幸いである。

山口崇洋

レジデンス帰国報告会のお知らせ
2月6、7日の2日間、トーキョーワンダーサイト本郷にて、レジデンス帰国報告会が開催されます。僕だけではなく、他の国へ派遣されたアーティストたちの滞在成果作品が展示されるほか、各作家が滞在の様子をスライドを交えながらプレゼンテーションします。レジデンスに興味のある方は是非ご参加下さい!



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