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Luvits! |『ノラゲキ!』が持つOVAというメディアの魅力 |「TOKYO STOCK」Vol.6

アイドル、アニメ、アニソン、マンガなど世界的に注目を集める”ジャパンコンテンツ”を、ニュース、インタビュー、コラムなどによって多角的に紹介するWebサイト「Luvits!」と「Public-Image.org」によるコラボレーション新連載「TOKYO STOCK」。
毎回「Luvits!」の人気記事をピックアップし、その中から特に気になるトピックについて、『東のエデン』や『交響詩編エウレカセブン』の脚本を手がけた佐藤大氏率いるStoryRidersが独自の視点で掘り下げていきます。

連載6回目となる今回は、3月25日のBlu-ray&DVD発売に先駆け、全国5館で上映されたSF×脱出劇アニメーション『ノラゲキ!』のトピックを取り上げ、StoryRiders加川大地氏が、OVAというメディアの魅力を掘り下げます。

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『ノラゲキ!』が持つOVAというメディアの魅力

Text:加川大地

先日『ノラゲキ!』という30分の短編アニメが上映された。
鉄コン筋クリート』CGI監督で注目を浴びた安藤裕章が初監督、『柚子ペパーミント』などの作品で人気の漫画家ゴツボ☆マサルがキャラクターデザイン、ストーリー原案・脚本を『交響詩篇エウレカセブン』のシリーズ構成、佐藤大が担当。アニメーション制作は日清のCMなどでお馴染みの『FREEDOM』を制作したサンライズだ。

しかしスタッフのほとんどは若手でオリジナルストーリーの30分短編、さらに『FREEDOM』で培われた3DCGという新しい技術を使った作品という、今のアニメ業界ではかなり挑戦的なタイトルでもあるこの作品に、私はOVAという、かつて80年中期から90年代後半まで隆盛を極めた、「熱」を持ったアニメメディアの魅力を感じた。

「OVA(オリジナルビデオアニメーション)」という言葉を知っているだろうか。一言で言うならば「劇場上映やTV放送ではなく、メディア販売を1次使用とするリリース形式」のことである。アニメに詳しくない方にもう少し説明すると、「劇場公開されているアニメ」や「TV放送されているアニメ」ではなく、「DVDなどを買うことでしか見られないアニメ」のことを指している。最近発売されたものでいうと『ガンダムUC』などがOVAに当たるだろう。

1983年、『ダロス』という作品がネットワーク(現在のバンダイビジュアル)から発売された。これが世界初のOVAである。『科学忍者隊ガッチャマン』の総監督だった鳥海永行が原作、TVアニメ『うる星やつら』などの演出を務めた押井守が監督という、鳴り物入りで発売されたこの作品は、全くのオリジナル作品であったにも関わらず1万本ほどの売上を記録する。これは当時のアニメ業界に激震が走った出来事だった。

そもそも日本におけるアニメというのはそれまで、スポンサーからの商品(ロボットアニメであればそのロボット玩具。魔法少女アニメであれば変身グッズ、漫画原作のものなどはコミックスなど)のコマーシャルフィルムという側面が強く、アニメそのものに商品価値があるとはほとんど思われていなかった。つまり、視聴率、それに伴う玩具や商品を売ることが目的で、アニメは作られていたのだ。ちなみにこれが「アニメ=子供向け」という先入観を日本人が持っている原因のひとつだと思われる。

しかし『ダロス』が発売された1983年というこの頃、アニメ業界の状況はちょっと違っていた。その6年前の1977年、劇場版『宇宙戦艦ヤマト』が上映され国内で大ヒットを飛ばす。原作者でもあり監督の松本零士が描く、重厚かつ魅力的なSFストーリーは「アニメ=子供向け」という先入観を真っ向から壊すものだったが、当時の子供も、さらには多くの大人たちもこの作品に魅了された。爆発的にファンを増やし市場を拡大したアニメ業界はその後、『銀河鉄道999』や『機動戦士ガンダム』などさらなる大ヒット作品が生み出し、アニメが国内で一大ムーブメントとなった。この現象を「アニメブーム(第1次~第2次アニメブーム)」と呼ぶ。

この「アニメブーム」の影響で、当時様々なことが起きているのだが、本コラムで注目すべき点は、上記の3作品はどれも、TV放映後、人気により映画化され大ヒットしたというところである。それはつまり、それまで商品価値は無いと思われていたアニメそのものを、お金を払って劇場に足を運ぶ客層がいる、ということを発見(もしくはその客層の土壌を作った)ということだろう。

そう、アニメはこのブームを経て、「作品」としての存在を国内で認められたのだ。しかし国内でアニメファンが増え、市場が盛り上がるなか、「作品」となったアニメを生かせる新しいビジネスモデルはなかなか作られなかった。相変わらず国内アニメは玩具販売の収入と劇場公開の動員収入が主になっていた。そこで当時のネットワーク(現・バンダイビジュアル)は、まだ高価ではあったが、徐々に普及し始めた家庭用ビデオデッキに注目する。新作のアニメをビデオ商品として直接アニメファンに売ることを考えたのだ。前述した『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』が、上映後ビデオとして発売され、高価だったにも関わらずかなりの売り上げを記録したことも、OVA制作を思い立った切っ掛けであっただろう。

「アニメを所有したい」と思うファンがいる。ならば、TV放映されたものでもない、劇場上映されたものでもない、まだ誰も観たことのない、「アニメファンのためのアニメ」を作ろう。これがOVAの始まりである。

そして世界初のOVA『ダロス』は発売された。鳥海が描くそのストーリーは、深い人間ドラマと緻密な設定が決められたハードSFであり、それに呼応する押井の演出が、見事な「作品」へと昇華させていった。まさにそれは「アニメファンのためのアニメ」だったのだ。そして全4巻のこの作品は、1巻10000円ほどするにも関わらず、最終的には2万本ほどの売上げを記録することとなる。

この『ダロス』の成功により、アニメは「作品」として認められたアニメは、「商品」にもなったのだ。

「アニメファンのためのアニメ」として作られ、ファンへと販売されるOVA。それはつまり、アニメが玩具を売るためのコマーシャルフィルムから脱却し、いち「作品」として初めから制作することができる、新しいビジネスモデルを手に入れたことを意味する。アニメファンはもちろんのこと、一番喜びを感じていたのは、なによりもアニメ制作者たちだったに違いない。TV局、スポンサーたちに縛られることもなく、自分たちが信じるアニメという「作品」を作ることができる。しかもそれを待ってくれている多くのファンたちがいるのだ。制作者として、こんなにやりがいを感じられるような仕事はないだろう。

そしてその後、OVAはバンダイビジュアルに限らず、さまざまな会社から数多く発売されることとなった。それぞれ内容は様々で、『ダロス』のような完全オリジナルの作品もあれば、大人向けの劇画マンガをアニメ化したもの。また劇場作品でしか観られないような、新進気鋭のアニメーターたちによる、緻密な作画技術を目玉にした作品なども作られた。

『ダロス』を作った押井も、その後OVAでさまざまな作品を手がける。代表作でもある『機動警察パトレイバー』OVAシリーズはファンから絶大な支持を受け、劇場版にまで昇華。それが90年代アニメの名作ともいえる、劇場版『機動警察パトレイバー2』にまで繋がっていくことになる。その後の押井の活躍は言うまでもないが、国内における代表的なアニメ監督となった彼を「OVAの申し子」と言うこともできるのではないだろうか。ちなみに押井に限らず、OVAから注目され、現在でもアニメ業界の一線級を走るクリエイターたちは数多い。

どのOVA作品にもいえることは、俺たちはこういうことだってできるんだ、アニメはここまでできるんだ、という制作者たちの「野心」、そして「挑戦心」を感じとれるということだろう。この制作者たちの「熱」が、そしてなにより、その「熱」に答える多くのアニメファンたちがいた、この時期はあったからこそ、今や世界にも認められることとなった日本産アニメーションの下地が出来たといっても過言ではないだろう。

いちアニメファンの私は、このOVAにあった「熱」がとても好きだった。「メガゾーン23」、「機動戦士ガンダム0080」、「機動警察パトレイバー」、「マクロスプラス」、「青の6号」などなど。好きな作品を挙げればきりがない。しかし改めて考えると、どの作品もファンに易しくない作品たちばかりだと思う。ただなんとなく楽しそうだから観てみよう、なんていう生半可な気持ちでは観らるようなものではなかった。この観たこともない「作品」に投資をした自分の「熱」に対し、制作者たちはどんな「熱」で答えてくれるのか。ビデオを自宅のビデオデッキに入れた瞬間から、ある種、制作者たちと私との間で戦いが始まるような、そんな厳かな時間。そんな気分で私はOVAを観ていた。

その真剣勝負が終わった瞬間、それはアニメ制作者たちの「熱」を私が受け取った瞬間、ともいえるだろうか。押さえられない興奮や感動を私に与えてくれることもある。逆に私の「熱」に答えられないような作品に対しては、愕然とするとともに怒りすら覚える瞬間もある。しかしそのどちらでも、私はとても心地よかった。アニメという「作品」を観ているという満足感をその瞬間、得られていたからだ。驚きや感動を与えてくれた「熱」は一体どういうものなのか。または私を愕然とさせた理由、その原因はなんだったのか。真剣に「作品」に対して考える機会を与えてくれたということが、私がOVAに感じる魅力だと考えている。

『ノラゲキ!』は易しくないアニメだ。制作者たちの「野心」、「挑戦心」。そんな懐かしいOVAの「熱」がある。しかし今、アニメ業界の様子も、またファンの求めているものも、昔と比べ随分様変わりしている。OVAによって「作品」から「商品」になったアニメだったが、昨今、「作品」という色は薄まり、「商品」または「商業」の色が強くなっている。私見ではあるが、ファンのアニメに対する「熱」は昔に比べ、随分と冷たくなっているようにも感じられる。そんななか、この古い「熱」を持った作品が、今のアニメファンたちにどう受け入れられるのか。この作品から少しでも「熱」を感じた方は、是非投資してみて欲しい。そして制作者たちと真剣勝負をしてみて欲しい。感動するほど面白いと思うか、はたまた怒りを覚えるほどつまらないと思うか。それは自由だ。その真剣勝負の先に見える、あなた自身にある「熱」に気づくことができたら、これからのあなたが出会う未知の「作品」に対するの見方、考え方がちょっと変わる機会なのかもしれない。それがOVAの魅力だったと私は考えている。



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