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石井龍 | ヨーロッパ”MANGA”事情 |「WORLD CULTURE REPORT」Vol.14

PUBLIC-IMAGE.ORGにゆかりのある様々なクリエイター、編集者、ライターなどがコントリビューターとなり、世界各地から旬なクリエイティブ情報を届けてくれる「WORLD CULTURE REPORT」。
今回は、PUBLIC-IMAGE.ORG編集部の石井龍が、2月に旅行してまわったヨーロッパ数カ国の”MANGA”事情を紹介します。

Text:石井龍


毎週のご褒美である「ジャンプ」「サンデー」「マガジン」、それに「チャンピオン」もなし。それだけでもなかなかハードでしたが、そのほとんどを移動に費やした今回の旅行。
日本では「クール・ジャパン現象」なるものが注目を集め、コミックマーケットやコミティアなどの同人フェアの盛り上がりは周知の通り。(CDセールス自体が落ちているので一概には言えませんが)アニメタイアップ曲やキャラクターソングのチャート入りの多さにも驚かされます。最近では雑誌などのメディアもこれを取り上げたり、どうやら「クール・ジャパン」が、今まさに”キテる”トピックなのかもしれません。

そこでこのレポートでは、漫画にフォーカスを当てて、ヨーロッパ数カ国を巡ってみます。

まずはイギリスから。



事前に、漫画がかなり売られているという情報を手に入れたのですが、行ってみると日本漫画は見つけられず、大判の絵本(アメコミバンド・デシネ)のようなものが多かったです。
テート・モダンの書籍コーナーには「漫画の書き方」などの指南書や日本アニメ、漫画の功労者をキャラクター、スタッフ、作品を織り交ぜ、サラダボウル的に紹介する本も見つけることができました。注目するポイントが日本のそれと微妙にズレていて新鮮でした。

次はフランス。



やはり漫画が多かったです。パリの新たなモニュメントとして1989年に完成した新凱旋門の敷地内にあるfnacという量販店では、並べられた書籍のほとんどが日本漫画の翻訳で、フランスのオリジナル漫画はほとんど目に付かず、『NARUTO』や『ONE PEACE』などのジャンプ系の漫画が大人気のようでした。パリ市内には日本人のための漫画喫茶もあり、日本の週刊誌や単行本をリアルタイムで読むことができました。
また、漫画雑誌も多く販売されていて、日本の週刊漫画のようなスタイルではなく、漫画の持つクリエイティビティに着目し紹介する雑誌『MHz』のようにカルチャーの要素を交えたスタイルが印象的でした。

最後は、イタリアとドイツです。
ここでは意外な発見に出会いました。前情報が少ないということもあり、「あればラッキー」くらいの気持ちで訪れたのですが、意外なことに特に印象に残ったのがこのふたつの国。現地で購入した本と、書店についても紹介していきます。



レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたことで有名な『最後の晩餐』がある、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の近くに位置する「LIBRERIA DEGLI ATELLANI」。中にはアート関係の書籍を中心に様々な種類の雑誌や書籍があり、カフェも併設されていて、食事を楽しむこともできるようです。日本人アーティストのコーナーも設けられ、荒木経惟さんや蜷川実花さんといった写真家の作品集が並べられていました。

階段を上り2階に上がると、すぐに漫画のコーナーが目に入ります。日本人漫画家は浅野いにおさん、浦沢直樹さん、CLAMPさんなど、日本国内でも人気が高い方々の作品が多かったです。

ここでは目についたのは次の2冊です。



ほとんどのページがモノトーンで構成されているGablriella Giandelli氏による『SOTTO LE FOGLIE』。カラー漫画にも関わらず一切鮮やかな色が使われず、黒が効果的に使用されています。もちろんストーリーは分らないのですが、絵のタッチとも相まってなんとも不気味な印象です。



ロードレースをテーマにしたLelio Bonaccorso氏、Marco Rizzo氏による漫画。といってもレースシーンがメインではなく、ロードレースを取り巻く人間模様を描いた作品のようです。水に薄めた絵の具で描いたような質感とロードレースというヨーロッパの人気スポーツを題材にしていることからも、現地のリアルな生活模様が伝わってきます。


ドイツ・ケルン駅構内にあるこの書店「LUDWIG」。看板に「COMIC」の文字があるように、2階部分は漫画コーナー。バンド・デシネ(以下B.D.)、アメコミ、漫画がバランス良く取り揃えられていました。一番の発見は、ドイツ人作家がB.D.に寄るのではなく、日本の「萌え」に寄った作品を描いていたということ。

大人向け、芸術的タッチのB.D.ではなく、萌えを目指しているであろう作品や、ドイツ人作家にも関わらず舞台を東京に設定している漫画を発見することができました。(放送終了したばかりのアニメ1クール分をパッケージしたDVDが付属したアニメ雑誌なども…)
また、ドイツ国内におけるポピュラーな漫画としては、『アンネの日記』が挙げられるとのことでしたが、やはり日本漫画も人気があるとのこと。

この書店では次の2冊。


『NiNJA!-HINTER DEN SCHATTTEN-』は衝撃でした。ところどころ劇画調ではあるものの、描き込まないフラットなタッチはまさに日本漫画のそれで、さらに驚くべきことに『NARUTO』のドイツ語翻訳者であるMiyuki Tsuji氏が制作に参加しているという、ある意味お墨付きの作品。好きな子が悲しむ→修行→強くなる→打ち勝つという「超」がつくほど王道を突き進む構成になっています。


背景を黒一色に統一した部屋での会話のシーンや、動物が擬人化したようなキャラクターなど、トリッキーな要素がふんだんに詰め込まれたMARTINA LENZIN氏による『RPM』は、日常を描いていながらもどこかファンタジックです。この作品は「REPRODUKT」というレーベルから、「グラフィックノベル」と紹介されています。他のリリース作品も一癖あるものが多く、日本人のイラストレーター、グラッフィックデザイナーが描いた漫画を収録したZINE『megane the comic』に共通する部分があるように思います。

『NARUTO』の海外人気をまじまじと見せつけられた今回。しかし、谷口ジローさんをフィーチャーする書店が多いのも印象的で、こちらの漫画の楽しみ方の背景が垣間見れた気がしました。

ということで、以上ヨーロッパ”MANGA”レポートでした!

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