
HAROSHI | ニューヨーク「FUTURE PRIMITIVE」展 レポート |「WORLD CULTURE REPORT」Vol.16
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今回は、使用済みのスケートボードからアートワークを生み出すHAROSHIが、ニューヨークのJonathan Levine Galleryにて4月16日から5月14日に行った初の海外個展「FUTURE PRIMITIVE」の様子をレポートしてくれました。
Text:HAROSHI
どうもHAROSHIと申します。この度、NYのチェルシーのギャラリーで個展をやらることになって、そのレポートを載せていただけることになりました。自分のblogはもう8年くらい続けているのですが、こんなことは初めてで調子が狂っちゃうので、自分のblogと同じような感じでいきたいと思います。
他のレポートと違い簡潔でなく、そもそもレポートか?と言った感じで長くなりそうな予感がプンプンしますが、どうぞよろしくお願いします。

出発の日の朝、送りが間に合わなかった作品を8点くらいドデカいトランクに詰め、家を出て、京成の急行に乗って成田空港に向かいます。
「いや~どんな展示になるかな~」とか「売れるかな~」とか考えを巡らせながら電車に乗っていると…..車内であのいやな警報音が!そうです!地震です。ちょうど駅に着くところだったのですが、停車しがてらグラングラン大揺れ! 遊園地のアトラクションのようなので、車内は大パニックになるかと思いきや、意外とみんな冷静に座っています。
揺れが収まると車内アナウンスが。「千葉県を震源とする震度5強の地震で、すべての線路を徒歩で点検する必要があります」とのこと。とは言っても、1時間もすれば動くでしょとタカをくくっていると、乗客がみんな外に出て一斉に電話をし始めた! どうやらタクシーを呼んだり、車を用意したりしてるみたい。 おかしいなあと思いつつ、早速やって来た作業員の方に「実際どうなんすか?」と聞いてみると「いや~ぶっちゃけ半日は動かないよ」とのこと….やばい。今からタクシーなんて呼んだってもう呼ばれ尽くしちゃってるだろうし、周りは畑と山のみ…。

畑しかないじゃないかっ!
作品の展示の方法や天気とか、いろんな事態を予測しながら動いてたつもりだったけど、まさかたどり着けないとは(笑)……と思いつつ、一緒にNYに行く予定のエージェントに連絡してみると、彼はいつもなら絶対に忘れ物をしないのに、この日に限ってやってしまっていて、それを届けるために車が今成田空港に向かってるって! ついてる! クモの糸状態でうらやましがる人たちの目線を尻目に、車に乗って一路成田空港に! 空港に到着しチェックインするのですが、X線で透過すると時限爆弾にしか見えない作品も今回は持っていたので、もしかしたら飛行機に持ち込めないかもしれないなあ~とか思ってたら、今回はスル~wow! 消火栓は立ち会いで開けたり、中身は何だとか言われたのに…(中身は僕の履き古した靴ですと言ったら、そこにいた全員の頭から「?」マークがボムッと出たのを見ました)。飛行機に乗り込むとガラガラ…。そりゃあそうだわ。みんな途中で止まっちゃってんだもん。以上が国内レポートでした(笑)!
前置きはさておき、ここからが海外レポートです。今回個展をやることになったJonathan Levine Gallery(以下ジョナサン)は、Shepard Fairey, Mark Ryden, Doze Green, David Choeも展示をしてきた、いつも注目されているストリート色の強いギャラリーです。2年前にNYに行って、チェルシーで実際にmaztu君がJoshua Liner Galleryで個展をやってるのを見て衝撃を受けました。その他にもものスゴい数のギャラリーがひしめいていて、そのパッションがすごい!200以上のギャラリーがギッシギッシひしめいているのです。絶対に僕もこの町で個展をやってやる! と密かに思いました。

2年前のチェルシー。一見治安悪そうだよね。
そもそも僕らが作品を作って、その売り上げで食べていくには、そのマーケットが存在しなくてはいけないわけで、まあ日本には、「ローブローアート」や「ストリートアート」とでも言うのでしょうか、このマーケットはないわけです。だから、生きていくには今の段階では海外のギャラリーで個展をして売るしかないと僕は思ってます。色々ギャラリーを調べて、僕らに一番合いそうなギャラリーはジョナサンしかない! と思ってコンタクトを取って、だいたい1年前にこの展示をすることが決まりました。そこから他の仕事をこなしつつ、この展示の準備をずっとして来たわけです。
そうそう。ジョナサンは、今回の震災の被害のために3月のエキシビジョンと、今回のエキシビジョンの総売上の5%を、赤十字に寄付してくれると言うのです。5%なんて相当な金額ですよ! それだけでも僕はジョナサンを選んで本当によかったと思っています。去年最も制作に時間がかかったDUNKも展示できることになって、もう展示が楽しみで楽しみでしようがないのです!

これは地獄だった…..。
さてさて、展示セッティング初日。現地の人が「そんなとこに泊まってんの?」とビックリする96丁目の東側の表も裏もプロジェクト(低所得者向けの大きなレンガ色のアパート)が建つアパートを出て、作品をタクシーに積んで会場に向かいます。たしかに言われてみれば白人は全然いないし、空気はちょいと違うけど特にキラキラしたカッコをしてない僕らには、今のところトラブルは何もなくて、住み心地もかなり良いのです。ホテルでもないので食材を買って来てご飯を作ったりして食べます。外でご飯を食べるとお金がかかるのです(当たり前か!)。


消防車かっこいい。
チェルシーのジョナサンの入っているビルに到着し、9階へ。ちなみにこのビルもすべての部屋がギャラリーです(スゴッ)。
ジョナサンには、gallery1、gallery2、project roomの3つのスペースがあって、僕らは今回gallery1での展示です。入口の目の前がgallery1なので、入っていきなり消火栓とmooseが重なりつつ存在感ドドンっ!と見えるように展示プランを練りました。今までmooseは2ヶ所で展示してきたけど、本当は入っていきなり目の前に見えるようにしたかったのです。なのでこの配置はかなり理想です。展示用の台は前開と同じくコンクリート風に。これはコンクリートとスケートボードの相性が宿命的に良いからです。日本から連絡を取ってサイズから何から何まで話をしていたので、出来上がってるのが本当に楽しみだったんです!
まあそんな事を考えながら、ジョナサンに入って挨拶してまわると、あれ~何にも完成していない…(すでに展示3日前)。

まあそんなもんか! ここはアメリカだ! しかも、僕を含め3つのスペースの設置もやってるんだしね、大変だ!と2年前のNYでの悪しき出来事を回想しつつ、でもまあ、きっと今日は夜中までビッチリやるんだろうなんて思ってると、担当のフィルは5時にキッチリ帰宅wow! そうだ! ここはアメリカなのだ! 今日はNYヤンキースの試合があるらしい。ふふふ、なのでこの日は作品達の梱包をほどいたりして帰宅。まあそれだけでも相当な時間がかかるのだ。


次の日(展示2日前)、春巻さんを空港に迎えに行って、帰りにすべての電車を乗り間違えメイク! かなり下調べしたのにありえね~。地下鉄は慣れるまで難しいなあ~。そして、春巻さんをアパートに残して、遅れました~ってなテンションでジョナサンに行ってみると、ん~、あまり状況は変わってない。でも猛烈に働いているフィル。どうやらA-RODがホームランを打って勝ったらしく、絶好調wow! しかしどうするべきか。台ができてない→物が載せられない→ひとつも並べられない→僕は無力です。

ふて寝してみました。
なのでこの日はmooseの設置を。mooseは壁に特別に作った頑丈なフックを貼付けて、それにmooseの裏側にあるへこみにガシッと入れてかかっているのです。天井の高さもそこそこあるので、家に設置するのをイメージして高めにプレートを打ち込みます。なんせ35キロくらいあるから、持ち上げてはめるのは一苦労なので、ここはジョナサンでNo.1の巨人、2m超えのレイ(セールス担当)に手伝ってもらいます。レイは背が高いだけじゃなくマッチョ気味なので、「キン肉マン」に出てきそう。レイを入れて4人掛かりではめ込んで、おお~、いい感じじゃん!と思っていたところに通りかかるジョナサン(オーナー)。一言「高すぎるよ!」。ここでみんな「そんなことないよ~、高くないよ~」と意見はふたつに分かれます。でもジョナサンは「絶対高い! ここは家じゃないんだ!(ごもっとも)レイみたいな高層ビルみたいなやつばかりじゃないんだ!(ごもっとも)こんぐらい(40cmくらい)下げて!」と示した場所にマスキングテープをピシリ。その10センチ上に僕はこっそりプレートを打ち込んで(ささやかな反抗)、もう一度みんなではめ込みます。その完成形を見たジョナサンは一言「若干高い気がする…(さすが!)」「そんなことないよ~、こんなもんだよ~」のフォローでなんとか事なきを得ました。これでこの日は終了(笑)。

まだふて寝中。
彼がジョナサン・レヴァイン。自伝本出るんだって!スゴっ!
一応僕の予定では、初日にすべてのセッティングを終えて、残り3日間で初めての美術館巡りにでも行っている予定でしたが、甘かった…。翌日(展示1日前)も台は完成しておらず、正直本当に大丈夫なのか? と疑い出す僕。できることをやろう! と、壁周りも開いたので壁掛けのマリオ達やその他をセッティング。

スーパー働くフィル!
夜はギャラリーのみなさんと今回展示するサウザーさんやバンさんを交え、夕飯を食べに行きました(そんな余裕あるんかい?)。そこに設置担当のフィルはおらず(笑)、かなり遅くまでやっていた模様。この日もハッキリしない天気だったけど、オープニングの明日はどうやら嵐になるとの予報!! ほんまかいな……。
翌日(オープニング当日!)、この日ばかりはもう焦りまくっているので早めに行ってみると、ヘロヘロのフィルとでき上がったコンクリートの台やX-RAY用のライトボックスが。さすが!

ど~ん!コンクリ箱がズラリ。

ジョナサンの要望で今回初展示の、撮り貯めしていたX-RAY。DUNKにはNIKEのロゴが、BIG APPLEにはスケート中にお尻のポケットに入れていて壊れたiPodが! 遠隔操作のできる爆弾か!(笑)
今日は18時からオープニング! でも、午後から天気は嵐!(人来んのか!?) 猛烈なスピードで用意を進め、いよいよ最後にクリアのアクリルケースをかぶせます(これもすべて今回のために注文! すげ~!)。本当は作品と見る人の距離を作っちゃうから、クリアボックスとかはイヤだったんだけど、目の届かない所も多いギャラリーでは盗まれたこともあるらしく、やむを得ない処置なわけでありまして…。まあ、DUNK盗まれでもしたら大変だしね(笑)。でも、これがただかぶせるわけでもなく、クリアボックスのゴミをきれ~にふきとりつつ、すぱっとかぶせないといかんわけです!これがまた大変なんだ~。

消火栓とmoose以外のすべてにケースをかぶせ、びしっと終わったのが17時(笑)。ちなみに16時くらいにスタッフが壁を塗っていたりして、いや~すべてがリアルタイムで進行中でした。



ついにタイトルが!
17時から18時まではもうぐったりで、酒飲んだらもう起きられないであろう……なんて思ってました。でも、外は嵐(笑)。どうやらこの日の嵐でアメリカ各州での死者は45人を超えたらしい…。来るか!? こんな日に人来るか!? 僕なら絶対に行かない(笑)。

翌日に見たへし折れた梨の木…。せっかくきれいに咲いてたのに。嵐怖いね~。
ポツリポツリと人が来始めて、驚くことに気がつくと人でギャラリーはいっぱいになってました。
入りきれないような人数ではなかったけど、ひとりのお客さんが「作品をじっくり見て写真に撮ったりしてる人多いね! 作品をチラっと見て、酒をタダで飲んでみんなで談笑して帰っていくのが普通なんだけどね」と言っていた。
ぼくもいろんな展示を見て来たけど、今回のオープニングは本当に作品を見ている人が多かった。後で聞いたら、ほとんどのお客さんが車やタクシーを乗り付けてこのギャラリーまで来ていたらしい。じゃなきゃこの嵐の中来れないもんね。そこまでしても見たいと思って来てくれた人達だから、作品をじっくり見てくれるんだな。しかもジョナサンはオープニングではお酒は出さないのだ。ジョナサン曰く、「だってみんなタダ酒飲みにくるだけでしょ!」(終止ごもっとも! でも、それをしてでも人を集めるのがオープニングだと思ってました。)


色んな人に声をかけてもらって、僕が大して英語ができないことを知ると、みんないやな顔せず「amazing work!!」とか「crazy!!」とかわかりやすい言葉を笑顔で話してくれた。みんなの優しさがスゴくうれしかった。
そんななか、面白いことがあった。セールスのレイさんがpigeon(ハトです)を買ってくれたお客さんを紹介してくれたのだ。そのお客さんはNYで働いている日本人の男性で、以前から僕らを見ていてくれたらしい。日本人のお客さんなんてスゴく珍しいし、彼はドットで出来ているpigeonを買ってくれたらしいので、「そのpigeonは実は全部5boro(NYで一番coolなスケートブランド!)のbossのSteveからもらったデッキで出来てるんですよ~お目が高い!」なんて水を得た魚のごとく喋りまくると、『えっ!Steve!知り合いだよ!? 昔一緒に働いたことがあるんだ!もう何年も合ってないよ~、懐かしいな」なんて言うわけです。なんと言う奇遇なんだろう、なんて言ってると、Steveが目の前に(笑)。

Steveが嵐の中来てくれたこともものスゴくうれしかったけど、その偶然がふたりを少しハッピーにしてくれたこともうれしかった。今回のメインイメージの写真をNYで撮ってくれたYuriさんも来てくれて、一緒に来ていた人は6~7年くらい前に一度だけ駒沢公園で一緒に滑ったことのあったアーティストのMikeさんでした。なにかがむしゃらにがんばっている時に限って、いっぱい面白い偶然がやってくる。それの繰り返しでここまで来れたんだなあとつくづく思いました。

翌日は満月で快晴に! 空が夜中でも青かったよ。
関わってくれたみんなの熱意で、本当に良い展示になったと思います。隣のサウザーさんやバンさんの展示もスゴく良かったし、自分を見つめ直すためのとても良い刺激になったなあ。みんなすばらしい表現者で作品にパッションが宿ってた。絵を描けるってすばらしい。今回のみんなの作品もジョナサンのサイトで見られます。
ジョナサンでの展示は約1ヶ月ほど続くけど、僕の頭の中はもう次の作品制作でいっぱいだ….というか間に合うのか?(次はLAで10月)
と、こんな悩みを一生繰り返していければ本望なのです。
つけたし
地震が起きて津波が来て、原発の問題があって、僕なりに色々考えた。多分表現者なら誰もが考えたと思う。僕らのやっていることは本当に役立たずに思えた。でも、「感動した!」とか「ハッピーになった!」と言われる度に、僕はものを作っていて本当に良かったと思う。僕にも存在する意義はあるのだ。誰かひとりでも、張りつめた中で一瞬でも気が緩むような、そんなギャグを言えるような(…違うか)、そんな物を作りたいと思っています。長々とお付き合い頂きありがとうございました。ほとんど室内だったけど、NYC最高!レポートおしまい。

Posted by:HAROSHI2003年より使い古されたスケートボードを加工し、数々のプロダクトやアートピースを制作してきたHAROSHI。2009年、東京で開催された初のsolo exhibition “SKATE&DEASTROY”以降、マレーシアのGALERI PETRONASでのsolo exhibition、NIKE DUNKをオフィシャルで制作するなど国際的な注目を集める。














