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PUBLIC/IMAGE. |「Talk Session: ムラカミカイエ × 鈴木心 + 渋谷慶一郎」| PUBLIC/IMAGE.SESSION Vol.9

PUBLIC-IMAGE.ORGが企画する対談形式のマンスリートークイベント「PUBLIC/IMAGE.SESSION」。5月13日に開催されたイベントでは、SIMONEクリエイティブディレクター・ムラカミカイエ氏と、写真家・鈴木心氏のおふたりが、3月11日に起きた大震災以降のそれぞれの行動、そして、社会におけるクリエイターの役割などについて、意見を交わしてくれました。さらに、ロシア公演を直前に控えた音楽家・渋谷慶一郎氏の駆け込み参加もあり、2時間を超える議論が展開されたイベント当日の模様を、ダイジェストにしてお送りします。

Text:原田優輝

3.11それぞれのアクション
ー3.11以降おふたりとも早いタイミングでアクションを起こしていましたね。

ムラカミ:震災直後、携帯がつながらないなか、ツイッターだけは有効に動いていましたよね。そのなかで、有益な情報を振り分けられるサイトが必要なんじゃないかと思い、「SAVE JAPAN!」を立ち上げました。地震の2時間後くらいにはデザインが終わっていて、6時間後にサイトを立ち上げました。

鈴木:僕は実家が福島なんですが、震災の翌々日に地元の郡山まで行きました。自分がカメラを使う仕事をしているからこそ、その危険性もわかっていたので、まずは自分で現地に行って、実際の風、匂い、スケール感などを感じて、何が起きているかを認識してからじゃないと、アクションが起こしづらいなと思ったんです。その時は、写真はほとんど撮らずに、その日のうちに母を車に乗せて帰ってきました。まずは自分と家族の命あってというところもあったので。その約2週間後に、今度は父と一緒に宮城県の被災地を回り、そこで撮影した写真を整理するついでにツイッターでアップしたら反響があったので、どんどん上げていきました。

ムラカミ:投稿を見ている人には、写真と140字の文字から心くんの思いが伝わってきたと思う。行く前、行っている最中、帰ってきた後で、自分の中で何か差異みたいなものは感じた?

鈴木:どちらかというと自分よりも周りにですね。被災地から戻ってきた直後に、ツイッターのタイムラインを見ると、東京の人たちはもう日常に戻っている感じがした。記憶からこの震災が忘れ去られそうになっていることをヒシヒシと感じました。そこに怒りと悲しみがあって、今も避難して暮らしている人たちもいるなかで自分たちが生きているということを忘れないでいこうよと提案したかったんです。カイエさんの周りの反応はどうでした?

ムラカミ:ファッション業界の動きは総じて遅かった。これまでのチャリティ事例を見ても、打ち上げ花火を一発上げて終わり、ということが多かったのですが、すでに3月末の段階で、長期的に戦っていかないといけないことがわかっていたので、まずはファッション業界全体を巻き込んでいかないと思ったし、継続性のあるチャリティのコンセプトも同時に考えねばという状況でした。

「SAVE JAPAN!」

鈴木心

Photo:鈴木心

チャリティへの違和感
鈴木:パーティをやって、集めたお金を義援金にして送るという話とかもあったけど、パーティなんかやらずに最初から(お金を)送ればいいじゃんって思うんですよね。もし1万円が100万円に変換できるならいいけど、そうでもないのに自分たちが作ったものを売って義援金にまわすという考え方には抵抗がある。僕は、どこの誰がやるかということは関係なく、この事態において写真が最も有効に機能するやり方を優先すべきだという思いが強かったんです。でも、残念ながら、自分が手を動かすことや、自分の名前が大切だという考えの人が多かった。

ムラカミ:僕が「SAVE JAPAN!」をあれだけ早く立ち上げられた一番の理由は、過去に自分が影響を受けてきた人たちに、そういうことに関わってきた人たちが多かったからなんですよ。社会貢献ということがアーティストのメカニズムに組み込まれているという考えが前提にあったから、条件反射的にやらないといけないという思いが出たんじゃないかなと。

ー色々な場所、コミュニティで、クリエイターが参加するチャリティイベントが開催されましたよね。何かやらなくてはいけないという義務感のようなものがこのような現象につながったと思いますが、どこかチャリティということに違和感を抱いていた人たちも多かったように感じます。

ムラカミ:「チャリティ」や「ボランティア」という言葉に違和感を感じるのは、僕らの文化の未熟さだと思うんです。自分も含め、チャリティというものにあまりにも知識がなかったことに今回気づいた。戦後日本の安定感の中では、チャリティという言葉は浮世離れしていたし、どこかに偽善感を感じていたんだと思います。本来はそうじゃないのに、いざとなると躊躇したし、気恥ずかしや感情の揺れがあった。

ムラカミカイエ 鈴木心


ーここで渋谷慶一郎氏が登場。

リスクの中で何を選択するのか?
渋谷:僕は震災時にフランスに行っていたので、地震が起きたことはツイッターで知った。すぐに周りの人の安否を確認して、みんな無事だったということがわかったので、とりあえずまた仕事に戻りました。

鈴木:これから先何をしていくのかというところで、渋谷さんが考えていることはありますか?

渋谷:僕は何億円も集められるようなアーティストではないし、経済の仕組みの中に入って何かを立ち上げるというのは自分の役割ではないと思ってる。じゃあ、音楽に何ができるのかといっても、音楽には音楽ができるだけで、そういうことではないんじゃないかなという気持ちが強い。自分探しと具体的な支援は違うわけで、火起こしは自分がやるよりもっと効率的なことがあるだろうし、それに僕が役立てると思えれば全力で協力したいと思ってます。

ムラカミ:こういう時って、海外の場合ミュージシャンが最初に動くものだけど、今回ミリオンセラークラスのアーティストの多くが、自分の考えを吐けなかったというのはショックでしたね。ミュージシャンというのは、利害関係が少ないと思われているクリエイターなわけで、だからこそとりあえず叫んでほしかったんだよね。

渋谷:3月のコンサートとかイベントは、チャリティにしないと後ろ指差されるような感じがあったじゃない? でもそれだと、ライブで食べているミュージシャンやインプロヴァイザーは生活ができなくなる。それはスゴく損失でしょう。しかもそのコンサートで集まるチャリティの金額なんてたかがしれてるわけだから、そのために音楽家が音楽できなくなるような状況作っちゃうのは違うと思う。数万円の義援金と引き換えに音楽家の生活が苦しくなるようなやり方はサスティナブルではないでしょう。これはチャリティが意味がないとか言ってるのでは全然なくて、スゴく現実的かつ継続的に考えようということなんだけど。

ムラカミ:リスクを背負わないと何かを作れないという状況下で大切なのは、ゴールをどこに設定するかということだと思うんです。例えば、音楽の興業の場合、電気を使わないといけないでしょ。電気を使って100万円集まる興業をやるのか、それとも普段打ち込みをやっているアーティストにアコースティックでライブをやらせて10万円しか集まらないライブをやるのか。そうした選択に迫られたときに答えが出せなかった人というのは、普段から何も考えていなかった人なんじゃないかと思う。

鈴木心

ムラカミカイエ、鈴木心両氏が企画に参加したGallery Kokoでの渋谷慶一郎氏の公開制作「MASSIVE LIFE FLOW 」。 Photo:鈴木心

クリエイターにできること
鈴木:行動を起こすということは、本来は誰にでもやろうと思えばできること。取り組んだ時間、量の結果が差として出ているだけだと思う。

ムラカミ:被災地にいる人たちを慰めるためのコピーライティングを考えてツイートしていた人たちがいたんだけど、個人的にはそれがスゴく違和感ありましたね。震災直後のタイミングでそこから何が生まれるのかまったくわからなかったし、あの時は慰めの言葉より有益な情報をタイムラインに流してくれる方がよかった。

ーデザインや写真という手段であるべきはずのものが、目的になってしまっているという状況は色々なところで見られたように感じます。

ムラカミ:僕は普段Webを作る仕事をしているけど、Webの個人主義的な発想は大嫌いなんですよ。結局、「SAVE JAPAN!」にしても、個人ではなく、集団だから作れたという側面が大きいし、今回強く感じたのは、例えばツイッターにしても、誰かが作ったプラットフォームがあるから、そこにみんなが乗っかることができるということ。チャリティというものもプラットフォームなわけで、誰かが作ってくれれば乗るけど、それが作れなかったら結局どうしていいかわからないという状況だったと思う。

鈴木:こういう時に、逆に今までやっていたことをやめられるというのも、ある意味強い気がするんです。普段広告の仕事をやっているから広告でなにかをやるということが必ずしも効果的なわけじゃない。これは震災に限定される話ではないけど、一度自分がやっていたものを置いてでも、やろうと思ったことをやれる強さというのもあると思う。

渋谷:僕は、そこは変わらずに続けた方がいいと思うんだよね。これは僕の実体験だけど、落ち込むことがあったときにさ、慰めてくれる近い友達も大事だけど、いつもと同じようにバリバリやっている友達の姿が救いになったということがあった。逆の立場で考えると、変わらずに良い作品を作り続けるということが、ひどい状況に陥っている誰かに元気とか勇気を与えるということはあり得るわけでしょ。でも、今までやっていたことを投げてしまうと、表現の強度としては、今までよりも落ちてしまうから影響という意味では弱くなってしまうよね。

ムラカミ:個人レベルではそういう議論もあるよね。僕の場合は会社の経営者でもあったし、圧倒的にお金が足りていないという現状もわかっていたから、経済的な還元がないと何をやってもただの祭りになるという感覚が強かった。「SAVE JAPAN!」の話をすると、直後の1週間くらいは被災地の人にはあまり使われていなくて、アクセスしていたのは関東圏の人が多かった。でも、その後に被災地の大学生たちが、「SAVE JAPAN!」と同じような携帯サイトを立ち上げたんですね。自分一人にできることは少ないけど、そうやって何かを啓発することで改善に向かっていけるなら、それもクリエイターとしての役割なのかなと。

鈴木心

Photo:鈴木心

3.11以降の変化
ークリエイターは表現における社会性というテーマを考えざるを得なくなったところがあると思います。今回多くのクリエイターがアクションを起こせなかった背景には、その社会性がある意味おざなりになってしまっていた現状があったのかもしれません。

鈴木:日本や世界が経済的にどのように成り立っているのかを考えていくと、結局自分は歯車の一部でしかないわけですよね。そういう意味では、ひとりのクリエイターが大きな転換を起こすことは難しい。でも、思想的には無限大に広がっていけるんです。経済活動をしながら、自分の思想を拡張しつつ、作品を発表して生活していくというのが、クリエイティブに必要な要素だと思う。クリエイティブというのは第三者に見せることで存在が実証されるわけで、その第三者が不特定多数になっていくことで、必然的に共同体の中での社会性を帯びていく。自分が社会的にどういうポジションにあるのかを踏まえた上で、表現をしていくということが必要なんじゃないかなと。

渋谷:自分に何が与えられるかということを考えるだけじゃなくて、自分を顧みて、そこに自分がどう影響されるかというところにも目を向けた方がいい気がする。例えば、今回の震災があって、終わりがないと思っていた日常に何となく終わりが見えた。そうなったときに、必ず始まりと終わりがある音楽というものの意味合いも変わってきてしまう。これからはそれを意識して音楽を作っていく必要があると思うし、それがぼくが最初にできることなのかなと。

ムラカミ:今回は決定的な気づきのタイミングだったと思う。今まで日常的だと思っていたものの中でクリエイターとして生きてきた人たちが、これまでやってきたことが本当にクリエイティブだったのかという疑問を持つタイミングだったよね。それに気づいて、これからどうアクションしていくのかというのが今のフェーズだと思います。

ムラカミカイエ 鈴木心


Artist Profile
ムラカミカイエムラカミカイエ








鈴木心鈴木 心









渋谷慶一郎渋谷慶一郎

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