
古屋蔵人 | ベネチアビエンナーレ レポート | 「WORLD CULTURE REPORT Vol.19」
PUBLIC-IMAGE.ORGにゆかりのある様々なクリエイター、編集者、ライターなどがコントリビューターとなり、世界各地から旬なクリエイティブ情報を届けてくれる「WORLD CULTURE REPORT」。
今回は編集者の古屋蔵人氏が、イタリア・ベネチアで開催中のアートの祭典「ベネチアビエンナーレ」のレポートをしてくれました。
Text:古屋蔵人
みなさんこんにちは、編集者の古屋蔵人と申します。
僕は映像とかグラフィックデザインを扱う編集者なのですが、生意気にもベネチアビエンナーレに行ってまいりました。アートを語るコトバもありませんし、知ってる美術作家も少ないですが、世界最大のアートの祭典、ベネチアビエンナーレといったら一度は訪れたいビッグパーティ。雑な興味に駆られ、航空券をポチってしてしまいました。
ビエンナーレに参加する数少ない日本人出展作家「チームラボ」の猪子寿之さんの配慮でスタッフパスを手配いただき、プレスプレビュー3日間にわたって、ビエナーレを堪能してきましたので、iPhoneで撮った写真とともにお楽しみください。

ディズニーシーのように美しいベネチアの島々。
チームラボの出展は、本サイトでもレポートされている「生きる生命は生命の力で生きている」という映像作品。

TEAMLAB, 書:紫舟「生命は生命の力で生きている」(2011)
台湾・中国の作家を中心としたサテライト会場「FUTURE PASS」内で2011年11月6日まで展示されています。こんな感じ。


初日
ベネチア到着とともに、とりあえずチームラボのみなさん、設営があるので会場入りしました。
ところがっ! 作品もモニターも届いてな~い。
奇しくもビエンナーレのプレスプレビューの前日であるその日は、ベネチアの足である水上バスの路線が全線ストライキだったのです。

うなだれるチームラボの広報、工藤岳さん。
まだ作品がほとんど届かずガランとした会場。重い空気が流れます。微妙に関係者じゃないわたくしは、居たたまれず、近所の自然史博物館に向かいます。
客ゼロ、ビエンナーレ感ゼロですが、かっこいい空間。ガイドブックに載っていないおすすめ博物館です。


ベネチア自然史博物館 Sestiere Santa Croce, 1730, 30135 Venezia
(右上)ゴリラの剥製。ほかの客ゼロなので本当に怖い。(左下)鳥の剥製のモビール。マネしたい。(右下)細胞の模型。樹脂性。アートピースかと思った。かっこよすぎる。
チームラボの作品は結局、設営できないまま初日を終えます…。
2日目
朝、会場に着くと、なにやらもめているご様子。聞くとスタッフのミスで、ビエンナーレ全体が観られるプレスパスが手配されてませんでした…。わーっ! このまま行くと単なるベネチア観光で終わる。旅の目的を根底から覆す事件です。これには焦りました。チームラボのスタッフがゴネにゴネた末、中国人女性作家の名前入のパスが2枚手に入りました。
アジア人ならば中国人だろうが日本人だろうが、性別が違おうがバレそうもありませんが、チームラボ関係者は僕も含め4名。かなり本気のジャンケンの末、僕と猪子さんで会場入りしました。

ジャンケン直前の4人。左から古屋蔵人、猪子寿之(チームラボ代表)、河田将吾(チームラボオフィス・建築家、空間設計)、工藤岳(チームラボ広報・編集者)。
明日は残ったふたりに自分の入場パスを譲らなくてはならなかったので、わりと必死な思いで展示を回ります。入場待ちの行列を並び終え、入場用のバウチャーのバーコードを通された時にハッ気づきました。
そのまま入り口近くのゴミ箱に直行。やはりありました。プレスプレビュー用のバウチャーが。ビエンナーレのプレスパスは会場のゴミ箱にある。これ、ビエンナーレのマメ知識です(現在の入場料は20ユーロです)。
ベネチアビエンナーレは、2年に一度開催されるのですが、大きく分けて3つの展示形式が取られています。
ひとつはメイン会場であるビエンナーレ駅周辺(駅と言っても水上バスです)の「庭園」。
Giardini Pubblici 30122 Venezia
古くからの造船エリアである「アーセナル」。
30122 Venezia
そして、ベネチアの街中に散らばる「サテライト」展示の3つ。
祭典全体をビエンナーレといって、会場の駅名にもビエンナーレがあり、かなりややこしいです。また各国がそれぞれオーガナイズするナショナルパビリオンとメインキュレーター(アーティスティックディレクターっていう肩書き)であるビーチェ・クーリガーが仕切る会場があり、「ILLUMInations」(啓蒙)をテーマに展示されています。
「庭園」会場は100年以上続く現代美術の祭典の歴史を物語る各国パビリオンが“万博”方式で立ち並んでいて、各国を代表した作家さんたちがパビリオンをまるごと使って、腕をふるいます。ちなみにレペゼン日本はTABAIMO。パビリオンは必ずしもソロではなくて、複数作家のコンピだったりもします。

メイン会場のエントランス。
庭園
各国のアートの勢いは「庭園」会場での行列でなんとなくわかってしまいます。アメリカ、イギリスがとにかく大行列、ドイツ、フランスも盛況。日本もかなりいい線いってます。ちなみにアーセナルにあるイタリア会場はガラガラでした・・・。
「庭園」会場でまず強烈なのがアメリカパビリオン。逆さまに設置された戦車のキャタピラの上でランニングしています。

約30分待った末、会場には飛行機のファーストクラスシートの木彫。そして、その上で器械体操するオリンピックゴールドメダリスト(!)。

そしてパイプオルガン付きATM。

おぞましい。アローラ&カルサディーヤ(Jennifer Allora and Guillermo Calzadilla)の作品群は、アメリカのおぞましさを体現しています。そしてマニーが唸っています。
フランスの展示はクリスチャン・ボルタンスキー。会場に張り巡らされた輪転機に赤ちゃんの顔写真がループして、奥の部屋では赤ん坊と成人のモンタージュ。左右の部屋ではカウントダウンが行われています。示唆的です。よくわかんないけど。

緑が豊富な会場をうろうろしていると、ひときわ大きなメインパビリオンがあります。今回のビエンナーレのメインキュレーター(アーティスティックディレクターっていう肩書き)であるビーチェ・クーリガーによる展示空間が広がっています。

まず会場の天井には剥製の鳩がずらーり。

Maurizio Cattelan「Others」(2011)
ずらーり。これは自宅にも採用できる。マネしよっと!
昨年亡くなったシグマー・ポルケ。古いコピー機のノイズのようなアミ点ペイントの上に、波上のアクリル板が貼られていて、かっこい~。

マネしよ~。

(左)Cindy Sherman「無題」(2011)かっこい~。壁紙にしよ~。(中)Norma Jeane「#Jan25」(2011) 粘土が積んであるだけ?(右)Nathaniel Mellors「Hippy Dialectics (Ourhouse)」(2010)
生活とインテリアに役立つアイデア満載です。
こちらは常設ですが、ビエアンナーレ会場のカフェ。かっこえーっ。長時間いると視力が落ちそうな超オプ&ヴィヴィッドな内装。マネしよ~っ。

そして、やばかったのはスイス館。アルミホイル、割れた瓶、雑誌などゴミで構成された異様空間。やっばー、マネしたら単なるゴミ屋敷。しかしこの密度、広さ、相当、頭おかしー。すごーい。マネしよ~。


Thomas Hirschhorn「Crystal of Resistance」(2011)
むき出しのガラスが全然危ない展示、これを人で込み合う会場でアリにしちゃうって、すんごーっ。鼻息も吹き出ます。
以上が、小学生レベルのビエンナーレ「庭園」エリアのレポートです。とにかく濃密なパビリオン郡が詰まった「庭園」エリア、ビエンナーレの空気を感じ取るにはまずここという感じです。
2日目の夜は、中東系(失念しました)のパビリオンのレセプションにTシャツ短パンで出向いたのですが、TPOを完全に読み違えて死にそうになりました。宮殿・・・。

3日目
アーセナル
2日の僕のスカベンジ(ゴミ漁り)により晴れて4人全員で会場入りできるようになった3日目。チームラボの展示作品は依然設置されていませんが、サテライト会場「FUTURE PASS」のレセプションパーティは本日午後6時から始まってしまいます。
友達としてはすごく心配ですが、一緒に待っていたところでなんの解決にもならないので、とりあえず「FUTURE PASS」をあとにしました。もうひとつのメイン会場、アーセナルに向かいます。
元造船場の大型倉庫である会場の入り口は、ベネチアの入り組んだ路地の拍子抜けするくらい小さな入り口からはじまります。緑の多いビエンナーレ会場とは打って変わりこちらは水場に位置します。
ところが会場入りすると、でかーい! Song Dongによる古民家解体&再構築作品。

Song Dong 「Song Dong’s Parapavilion」(2011)

(左)Roman Ondák「Stampede」(2011) 暗い空間に入り、ぎゅうぎゅう詰めで展示会場に押し込まれる人々の姿をプロジェクションした作品。ひにくーっ、見に来させといて、ヒニクが効いています。
(右)Monica Bonviciniのでっかい蛍光灯作品。束ねるだけなら、マネできる。かっこいー。

Franz Westのドローイング、写真、それとゴミを陳列しただけアートブース。空間広ければこんなのもかっこいい。マネしよーっと。

(左)Haroon Mirza「The National Apavilion of Then and Now」(2011) 無響室と電子音LEDの明滅作品。わー、耳がつーんとするー。自宅に設置だ。(右)関係ないけど、ベネチアの随所でみられる消火栓。こんなのもかっこいい。
そして、こちらクリスチャン・マークレイの映像作品「The Clock」。世界各国の映画のカットアップで時計を意識したり、待ちぼうけする人々が映し出されます。また映像編集がよくて。1時間ほど観て、いつまで経っても終わらないなぁと思っていたら、後に聞いたところによると24時間の大作だと。8月6日からの横浜トリエンナーレで上映されるので、ぜひフル尺を視聴したいところです。

Christian Marclay「The Clock」(2010)

他にもこんなのとか、こんなのまでも。

これなんか、でっかいロウソクの作品。会期終了の頃には跡形もないのでしょうか。
ここまでがキュレーターによる完璧なオーガナイズエリア。やはり各国の好き勝手なエリアとは違って作品のアベレージ高いです。

アーセナルエリアを半分ほど歩いたところですでにぐったりな面々。

おもいっきり造船所のフンイキ漂わせてます。

Loris Gréaud「THE GEPPETTO PAVILION」(2011)
でっかいクジラもいた。ゼペットのパビリオン。ふ~ん。

中国パビリオンの前では「フリー・アイ・ウェイウェイ」のデモが行われていて、中国人来場者がポカーンとデモを眺めていました。
一応、説明しとかないといけないと思うのですが、ベネチアビエンナーレはかなり玉石混合です。各国パビリオンでは、それぞれのパビリオンを代表したキュレーターがオーガナイズするため、アートっていうより国の産業見本市? な展示もあり。イタリア館に至っては、ガチャガチャとした大量の作家を圧縮陳列しており、開催国のメンツを潰していたりします。
サテライト
様々なパビリオンがぎゅっと詰まったビエンナーレやアーセナルとは別に、ベネチアの街中に散らばった展示会場があります。チームラボが参加している「FUTURE PASS」もそのひとつ。築100年以上建築物なんてザラなベネチアでは、何を飾ってもサマになる。羨ましいインフラです。

ベネチアのディズニーシーすぎる街並み。
サテライト、結構回ったのですが、写真取り逃しまくってしまいました。迷路のようなベネチアの街中に散らばるサテライト展示。良いものは良い、悪いものは悪い。各団体がオーナイズしているせいかクオリティはまちまち。
17世紀に建てられ、近年、安藤忠雄によって補修された「プンタ・デラ・ドッガーナ」は巨大な現代美術館。ジェフ・クーンズ、村上隆、マイク・ケリー、シグマー・ポルケなどスター現代美術作家作品、たっぷり詰まってます。

最後の夜、みんなでクラブに行ったんですが、もうすごかった。ベネチアは歴史的埋立地なので敷地が狭い。クラブも半端じゃなく狭い。なので数少ないクラブはぎゅうぎゅう。DJはMacBookでプレイしているのですが、曲つながないので、なんでじゃと覗き込んだらiTunesが立ち上がってました・・・。やはりベネチアの、いびつです。

さしてカルチャーに興味なさげ地元民をよそに、世界中のアート財団がこぞってビッグコレクションを見せびらかす現代美術館群。そして美しい島々と歴史ある街並み、いびつなアミューズメントアイランド、不自然ながらも唯一無二のお祭りがそこにありました。「ビエンナーレを見て死ね」ですよ。
Posted by:古屋蔵人「SAL magazine」編集部を経てフリーランスに。主にデザイン、映像を扱った編集を行う。 「映像作家 100 人」や「2027」など編・著書 50 冊以上。Webディレクション、インタラクティブコンテンツ制作、映像制作、BEAMS商品アドバイザーなどなど。伊藤ガビンらと共にウェアラブルJPGショップ「TEE PARTY」を運営中。














