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塚田有那 | ロサンゼルス「Little Tokyo Design Week」レポート | 「WORLD CULTURE REPORT Vol.21」

PUBLIC-IMAGE.ORGにゆかりのある様々なクリエイター、編集者、ライターなどがコントリビューターとなり、世界各地から旬なクリエイティブ情報を届けてくれる「WORLD CULTURE REPORT」。
今回は、LA・リトルトーキョーで開催され、その一部展示にも関わった塚田有那氏が、イベント「Little Tokyo Design Week」の模様をレポートしてくれました。

Text:塚田有那

PUBLIC-IMAGE.ORGをご覧の皆さま、こんにちは。
フリーランスエディター、コーディネーターの塚田有那です。

この度、LAダウンタウン内に位置する日系人居住区・リトルトーキョーエリアで開催された、建築・アート・デザインをクロスジャンルに繋ぐイベント「Little Tokyo Design Week」の一部展示にコーディネーターとして参加してきました。

湿気に包まれる日本を抜けてLAX空港に降り立つと、どかーんと突き抜ける青空、だだっ広い道路、カラっとしたドライな太陽の光。ああ、ここは自由の地、西海岸!なんて、あっという間にウエストモード。そんなバカンス気分でスタートしたこの旅ですが、気分が上がるのは気候や土地柄ばかりではなかった。このLAには、日本人の気質に近い何かがある気がしたんです。いや、言い返せば何もなくって、抜け穴がたくさんある。今こそ、日本のクリエイターに伝えたい最新のLAレポートをお届けいたします!

さて、今年初めて開催されたLittle Tokyo Design Week(以下LTDW)は、UCLA建築学科長・阿部仁史氏が発起人となり、リトルトーキョーエリアの町興しを狙いにスタートしました。100年以上の歴史を持つリトルトーキョーですが、今では日本語を話せる日系3世4世は少なく、半端な日本語の看板が混在し、戦後から文化が取り残されたままのオールドタウン。いわば日本の寂れた温泉地と代わらぬ印象。日本人の姿はほとんどどなく、アジア系の観光客が目立っていました。

かつて、ベタな外国人向けお土産物屋にツッコミを入れたことはありませんか? 決まって還流亭の漢字フォント、謎の龍神、コテコテの歌舞伎柄…。嬉々としてジャパン土産に手を伸ばす外国人の姿を見た日本人なら誰しも違和感を覚えるはず。ちなみにこの写真は「ロサンゼルス東本願寺別院」(別院があるのもリトルトーキョーならでは)の、年に一度の夏祭り「OBON FESTIVAL」(笑)。こうした「ベタさ」は世界中どこにでもある現象なのでしょうが、どうにも失笑は隠せません。

LAっ子に尋ねてみると、そもそもダウンタウン自体の印象が味気のないオフィス街で、東京でいえば「丸の内」。夜遊びするならハリウッド、オシャレに過ごすならサンタモニカというのが通説だったそう。ところがここ1、2年の間にダウンタウン内にもオシャレなバーやビストロが登場し、リトルトーキョー付近も遊べる場所のひとつになってきたんだとか(実際、このエリア付近だけで相当楽しませていただきました)。そんな気運が高まってきた土地で、LTDWは更なるエリアの印象の格上げに貢献したのかもしれません。

会場は2カ所に分かれ、文化センター前の広場には小さなコンテナが点在。伝え遅れましたが、今回の展示についてご説明を。
数ある企画のうち、3つのコンテナ展示のキュレーションに当たったのは、LTDWの公式ロゴデザインも手がけたグラフィックデザイナーのASYL佐藤直樹氏。LAという土地で、今、誰を紹介すべきか? さまざまな文脈を取り払った結果、デザイン、メディアアート、ヴィジュアルアートの3ジャンルから、それぞれ取り上げたいクリエイターとして名が挙がったのが、NOSIGNERエキソニモ森本晃司の3組でした。


NOSIGNER 「OLIVE -Open designs & ideas for earthquake survivors – 」

NOSIGNERは、3.11震災2日後に立ち上げた、被災地の生活を助けるアイデアデータベースのプロジェクト「OLIVE」のエキシビションを展開。実際に「OLIVE」のサイトに寄せられたアイデア、ジーンズのカバンやペットボトルランプ、ストッキングのマスクや包帯など、D.I.Y.のプロダクトが並びました。「1st Week: SURVIVAL」「2nd Week: SECURITY」「3rd Week: STABILTY」と展示構成を災害が発生してからの時間軸上に区切り、段階を経て変化する人間とモノとの関わりを考察できる展示になっています。


今回、事情により現地入りできなかったエキソニモですが、私が彼らから託された作品はMac Book一台。業者から未使用PCをレンタルし、エキソニモ千房さんのもとへ送ったのが展示1ヶ月弱前のこと。数週間を待った後、返送されたMac Bookを抱えて、いざ空港へ。私が現地でしたことといえばこのMac Bookをプロジェクターに繋いだだけ。そして、PCを起動した瞬間からエキソニモワールドがスタートしました。

何のことかと思うかもしれませんが、実はこれ、PC本体をプログラミングし、勝手にマシンがさまざまなアプリケーションを立ち上げ続ける超進化型インタラクティブ作品。10分ほどの「ライブ」が終了すると、自動に再起動して、リスタート。毎回操作が微妙に変化するため、成長(退化?)し続けていくのが見物なんです(たまにバグります)。展示を見守っていると、「お前はあのPCに何をしたんだ?!」と色んな方に問われましたが、「私もわかりません!」としか答えられず。。


今回大人気だったのが元STUDIO 4℃の森本晃司監督。以前公開されたオムニバス映画「Genius Party」で公開された短編アニメーションを上映しました。緻密な筆致と身体感覚に訴えかける音楽と映像で、観るものを瞬時に引き込む壮大な森本ワールド。LAでもジャパニーズアニメは大人気ですが、森本監督のようなアートの次元に到達した映像表現に、誰しも驚きを隠せない様子。


また、この度佐藤直樹氏と同時にキュレーターとして招待されたのは、建築家・OpenA馬場正尊氏。「LA TOKYO HOUSES」と称するコンテナでは、LAと東京からそれぞれ10組の建築家による住宅模型が展示されました。この展示、イベント自体UCLAやSCI-Arcなど建築関係者が多いことも手伝って非常ににぎわっていたのですが、LAと東京の土地事情や建築家の個性をフラットに眺められる、非常に興味深い展示でした。そもそも、建築に携わらない人々が建築模型を観る機会がどれほどあるでしょう? ル・コルビジェフランク・ゲーリー藤森照信などスーパースター建築家らのエキシビションなどは人気がありますが、普通の建築模型というのは意外と目にしていないもの。こうしたオープンな場所で非専門家の視点を取り入れることは、改めて、都市と住居を再考するきっかけとなるのかもしれません。


イベント最終日前夜には、野外広場に大きなスクリーンが登場し、PechaKucha Nightが開催!この公共広場に多くの人が集まり、総勢48組によるプレゼンテーションが展開されます。今回の出展メンバーもプレゼンに総出演。馬場正尊氏、NOSIGNER、佐藤直樹氏と続き、ラストには森本監督の特別編集映像(超貴重)が上映され、幕を閉じました。なぜか、その後はコスプレコンテスト。LAでは7月上旬にANIME EXPOが開催され、3Dの初音ミクに数万人が狂喜乱舞したばかり。パリのJAPAN EXPOに続き、ジャパンカルチャーの熱狂ぶりはここLAも熱いです。

さて、ちょっと脱線しますが、すてきな旅の出会いをご紹介。こちらはハリウッドにあるアニメーションスタジオTitmouse
ここ数年で急成長を続けている彼らは、NYにもスタジオを持ち、今ではおよそ100人ほどが在籍。そして、何よりも熱狂的なアニメ信者多数につき、元STUDIO 4℃の森本晃司監督が来社とあって、一堂騒然。神様降臨の衝撃で、あっという間にサイン会状態になっておりました。

彼らの制作はオールデジタル、それぞれのデスクで担当ごとに絵やフラッシュを作成し、オンライン上で合成されていくので、ネットさえあればどこでも制作できる環境。非常に効率的な作業プロセスに森本監督も驚いていました。

建築の名門、SCI-Arc(通称:サイアーク)の校内にもおじゃま。横にひたすら長い校舎は、古い駅舎を改装したものだとか。端から端への移動が大変そうと思いましたが、スケボーで移動する学生も多いらしいです。

リトルトーキョーから歩いて5分ほどのところに、ARTS DISTRICTというアーティスト居住区があります。10数年前から行政の取組みでこの名がつき、アーティストが移り住んできた場所。写真は15組のアーティストが居住するアパートメントですが、一室およそ300平米以上の超広大なアトリエスペースを建築家やアーティストが使っているそう。なんともうらやましい話ですが、元は築80年の空きビルに自分たちで水道管を取り付けることから始まったのだとか。


このあたりの地区に目を向けると、何やら使い道のありそうな空き倉庫がゴロゴロ転がってます。近くにはビール工場を改装しただだっ広いギャラリー兼DJバー(?)もあって、広大な空間の使い方は東京人としてはうらやましい限り。大きければいい訳ではないけれど、スペースの自由さにはさまざまな可能性を感じてしまいます。

さて、今回の展示メンバーもすっかりLA♡LOVEモード。そもそも、今回のキュレーターはアートとローカルイベントの火付け役とも言える佐藤直樹氏。氏は馬喰町や浅草橋などの寂れた問屋街に目をつけ、空き倉庫やビルの隙間スペースで展開されたアバンギャルドなアートイベント「Central East Tokyo(通称CET)」を10年間主催していました。今ではあのエリアにもアートギャラリーやカフェなどが増え、ちょっとしたアートエリアになってきたことはすでに周知の事実。それは単なる町興しイベントの成果ではなく、「土地が持っている可能性」に感度のいいクリエイターたちが目をつけただけのこと。その意味で、LAのリトルトーキョーも東東京も、可能性のあり方は同じなのかもしれません。東京、LA、世界中のどんな土地でも、ちょっとした「抜け穴」を見つけ、クリエイティブなハブを作るという野望がモリモリ湧いてきました。気候のいい場所で、のびのびした創作環境を求めるクリエイターの皆さん、LAに拠点を持つのもいいかもしれませんよ?

塚田有那

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