
毛利悠子 | オーストラリア「Alternating Currents Japanese Art After March 2011」展滞在レポート | 「WORLD CULTURE REPORT」 Vol.23
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今回は、ダイナミックなインスタレーション作品を展開するアーティストの毛利悠子氏が、「Alternating Currents Japanese Art After March 2011」展のために訪れた、オーストラリア・パースの滞在記をレポートしてくれました。
Text:毛利悠子
こんにちは! 毛利悠子です。
わたくしは美術家をやっておりまして、このたび、オーストラリア西部のパースという街にあるPICA(Perth Institute of Contemporary Art)という美術館で開かれた国際交流基金主催の「Alternating Currents Japanese Art After March 2011(※)」展に参加しております。その展覧会準備のため、11月1日から14日まで2週間ほどオーストラリアに滞在したので、今回はその様子をレポートいたします。
※国際交流基金(ジャパンファウンデーション)のプログラム(「21世紀東アジア青少年大交流計画」)として開催される、2010年夏に日本に滞在する機会を得た東アジアのキュレーター/アーティストと、日本人キュレーターの共同キュレーションによる展覧会。1ヶ月から数ヶ月にわたって、日本の現代美術シーンを調査した各国のキュレーターと日本人キュレーターが討議を重ね、日本の現代美術を紹介することを目指している。
南半球は人生において初めての訪問だったのですが、オーストラリア大陸の生態系を守るため、入国の際の食べ物や植物、動物の皮などの持ち込みが欧米と比べてとても厳しいことに驚き。飛行機のなかで注意がけのビデオが流れていたのですが、ミドルエイジの夫婦がなぜかジャンベを持ち込もうとして空港で注意され、なんとも言えない残念そうな表情をしているシーンが印象に残っています(航空会社はキャセイパシフィック)。
さて、空港を出ると、なるほどたしかに、これは見たことない植物と野鳥だらけ。

公園の木。
木の皮の質感も、枝の広がり方も、まるで妖精でも住んでいるんじゃないかという感じ。カラスの鳴き方も、異様に高いアニメ声です。
また、太陽が異様にまぶしい。サングラスも必須なのですが、日焼け止めも必ずつけなきゃという感じ。ある日、日焼け止めをつけ忘れたので、PICAのスタッフに貸してくれと頼んだところ、出てきたのがこれ。

2リットルくらいの日焼け止めクリーム…。
そして、こちらが今回展覧会をする会場、PICAです。

もともとボーイズ・スクールだったレンガ造りの建物のなかをギャラリー・スペースとしてリノベートした施設です。ドリルで会場の壁に穴をあけると、白い粉の後、すぐに赤い粉(レンガ)が出てくることに、この建物の古さを感じました。
PICAは、パースの中心にある広場に面していて、目の前には大きな市立図書館と市立美術館がありました。毎週末休日になると、クラシック・カーのイベントや地元のお祭りなども行なわれる、人通りの多い場所です。南半球はちょうど初夏なので、この広場は外でぼーっとするのにもってこい。でも、オーストラリアでは、外でビールを飲んでいるとおまわりさんに罰金を払わなくてはいけないので注意しましょう。
この展覧会は、国際交流基金主催による「Omnilogue(オムニログ)」というプロジェクトの一環で、リー・ロブさん(オーストラリア)、橋本梓さん(日本)、ハイメパセナさん(フィリピン、通称=ジェイ)という3カ国のキュレーターがチームを組み、展覧会をするというものです。参加作家は、藤本由紀夫さん、泉太郎さん、Nadegata Instant Party、大友良英さん、須川咲子さん、そしてわたくし毛利悠子という、なんというか、ものすごく盛りだくさんなメンバーです。
会場のなかはこんな感じ。
「浮き輪から入り樽井戸を抜けて胃腸にいたるスカンクトンネル」
泉太郎さんのすごろくの作品が目を引きます。
泉くんは今回、3週間の滞在だったのですが、そのあいだ一度もお風呂に入っていませんでした。泉くんによると「お風呂に入ると気がゆるむから」ということで、歯はちゃんと磨いていましたw
左手の場所には、Nadegata Instant Partyによるプロジェクト「イエロー・ケーキ・ストリート」。

「イエロー・ケーキ・ストリート」
実在しないパースのお菓子「イエロー・ケーキ」を実際に売っているカフェ・スペース。店員は笑えるほどイケメンぞろいでした。Nadegata Instant Partyが現地で撮影したイエロー・ケーキ・ストリートができるまでのショート・ムービーも見ることができます。

イエロー・ケーキ・ストリートのカフェの入口は展覧会会場とは別の場所に、特設された。

ナデガタの皆さん。イエローケーキを作ってみているところ。
奥の部屋は須川咲子さん、キース・パスコさん、サム・フォックスさんの「International Conference on the Reconstruction if Japan (ICRJ) 」の会場。素敵な家具の演出で泉さんの作品と地続きとは思えない空間に。期間中にはディナーが4回開催され、パース市民を招待し、これからの日本をどうすればいいかという話し合いが行なわれました。

「International Conference on the Reconstruction if Japan (ICRJ) 」
2階に上がってまず見えるのは、「プロジェクトFUKUSHIMA!」フェスティヴァルのドキュメント映像。Nadegata Instant Partyのメンバーである中崎透さんが中心となって制作した大風呂敷が敷かれたスペースで鑑賞することができます(写真がなくてごめんなさい~)。
次に、藤本由紀夫さんの作品。「BROOM(CHARCOAL)」

「BROOM(CHARCOAL)」
パースの特産品である木炭をレコード型に敷き詰めた会場。お客さんがこの上を歩くことで、部屋中に気持ち良い音が響きます。自分の足がレコード針の役割をするわけですね。
展示の最後はわたくし、毛利悠子の部屋です。「IO/AIO」。

「IO/AIO」

製作中のスナップ。
この部屋だけはリノベーションされておらず、ほとんど原型の教室のままで残っていて、とてもきれいな光が部屋に射しこむのが印象的でした。「IO/AIO」という作品名は、まー、いろいろと思いを込めたタイトルではあるのですが、その意味のひとつにインド洋(Indian Ocean)というのがあります。実はパースはオーストラリアの西の端にある街で、インド洋に面しているのです。
今回の作品は、ふたつのロールペーパーが中心になって構成されています。紙はゆったりと動いて、床にまき散らしてある竹炭の粉を付着させていき、その黒色が部屋に置いてあるモーターや照明のオンオフの信号になっています。つまり、部屋の中の無機物が電気的につながっていて、有機的な空間にしているちゅうことですね。また、紙がモーターやパイプにこすれてなんとも言えない音が響いているのにも気づくと思います。最後にビデオを貼っておきますね。
ここまで展覧会を作り上げるのは大変でした! 一緒に作り上げたスタッフはたくさんいるのですが、紹介しきれないですね。仕事が終わった後の、みんなで外で飲んだビールが忘れられません(あ、外で飲んではいけないので、大きなユーカリの木陰で飲みました)。
ということで、オーストラリア滞在中はほぼ展覧会準備に追われてしまいお休みがなかったのですが、そんな中でも合間をぬって、キュレーターの橋本梓さんとキングスパークという市立の大きな公園に遊びにいってきました。彼女ともう一人のキュレーターのジェイさんとは、今回の宿泊先をシェアしていて、制作面だけでなく、精神面でもかなり助けてもらった。そんな私たちの息抜きですね。ついでに我々の住んでいたアーバンなアパートメントも紹介しておきましょう! じゃーん!

異様なほどアーバン。
さて公園。
最初にも書いたけれど、本当にいままで見たことのない生態系であることが、写真からも伝わるでしょうか。

あ、ご家族が楽しんでらっしゃしますね!

カンガルーの指先のようなお花、カンガルーズポウ。
ひときわ目立っていたのが、バオバブの木。


バオバブが運ばれている…。

実はこれ、アフリカから輸入してきたものらしいのですが、輸入の様子を紹介した写真がおかしかったです。まるで大きな太巻きを運んでるみたい。大きいにもほどがあるか。
バオバブの木の皮は陶器のように固く、乾いていました。そしてやはりここにも落書きが。タギングは万国共通なんですね。
そしてこちら、作品タイトルにも込めたインド洋です。

空気が爽やかに透き通って、とても気持ちの良い景色でした。写っているのはたまたまそこにいたご夫婦です。
最後の日はフライトが夜中ということもあって、昼間にキュレーターのひとりであるリーさんとそのご両親に、近くのワイナリーに連れていってもらいました(なんとアットホームな!)。ここは日本でいうと軽井沢的というか、なかにはスワン・リバーという美しい川やクリケット場、そして60以上ものワイナリーがある優雅な観光地です。山の手には別荘を持っている人が多いみたいですが、近年山火事が多いようなので気をつけないとね、とおっしゃるリーのお母様の目が鋭く光っていたのが忘れられません。

ワイナリーといえば、テイスティング! ここぞとばかり、おいしいワインを次々試飲。お腹がすいているのに、こんなに飲んでいいのだろうか。「このカベルネ・ソーヴィニヨン、おいしい……」と藤本さんも思わずつぶやくほど、これがほんとにおいしかった……。
その後の食事は、リーの知り合いの男性(若干28歳)が経営する地ビールを作っているレストランへ! ここではいくつものビールを小さいコップで試飲できて、気に入ったものを注文できるシステムでした。
それにしても、飲んだ報告ばかりだな……。

ワインにはしゃぐジェイ

ビールを選ぶ梓さんとリーのお父様、そして古市さん

左からリーさん、ジェイさん、藤本さん

お料理とてもおいしい!
そして、帰国の道のりは藤本由紀夫さんと泉太郎さんと一緒でした。
ホテルの前から乗り込んだタクシーはインド人の運転手で、なぜか懐かしい感じのユーロビートが大音量でかかっていて、3人ともこのままどこへ連れて行かれるのだろうか、そんでそこで次はいったい何をやらされるんだろうか──などとバカ話をしながら、空港へ向かったのでした。空港のラウンジでは、藤本さんにビールとピザをごちそうになり、3人で初めてゆっくり話したり(え、今さら?w)。乗り継ぎの香港空港では泉くんと、今度はこのバカでかい香港空港くらいの会場を1年くらいかけて作品にしてみたいね~、などと。
それにしてもほぼ準備に追われ、なかなかゆっくりできなかったものの、アーティストもスタッフも参加者全員で全力で取り組んでいました。最後の最後まで、たいへん実のある展覧会“準備”プログラムだったのではないでしょうか。展覧会自体は12月末までやっておりますよ~~~。

成田空港に降りたとき、パース空港にてお土産で買ったTシャツをすでに着ていた太郎…。顔がすこしだけゆるくなってる気がする。
手前味噌で申しわけないのですが、最後に、今回パースで発表したわたくしの作品「IO/AIO」の映像も貼り付けておきますね。
以上、現在はスペインに滞在中の毛利悠子がお送りいたしました! セルベッサー!
Posted by:毛利悠子美術家。1980年神奈川県生まれ。消耗品や楽器を用い、独自の機械構造で動きや気配をつくるインスタレーションを制作、発表している。国内外展示多数。
URL:mohrizm.net














