
THA BLUE HERB | ブルーハーブ | Musician
5年ぶりとなるサードアルバム『LIFE STORY』を引っさげて、活動を再開したブルーハーブ。ここ数年間、ILL-BOSSTINOはJAPANESE SYNCHRO SYSTEMやHERBEST MOONでハウスミュージックに接近し、O.N.Oはソロ活動を展開するなど、それぞれが課外活動により、その音楽性を深めてきた。そして2007年、さまざまなプロジェクトから持ち寄った“何か”を、ブルーハーブへと練り上げるべく、彼らがシーンに戻ってきた。強いメッセージ性と音楽に対する不器用なまでに真摯な態度がにじみ出る彼らの楽曲は、聴く者の心を強く打つ。果たして今作ではどのような魂が込められているのか? ラッパーのILL-BOSSTINOとトラックメイカーのO.N.Oに話を聞いた。
Text : 大草朋宏
「ライフストーリー」というタイトルからは、いろいろなことが読み取れますが、今作のテーマは?
ILL-BOSSTINO(以下I):「のし上がってやるぜ」とか「金をとってやるぜ」とか「オレが一番優れたMCだ」とか、今回はそういうことには触れずに進めていったんだよね。それより日常のなかで感じていることを、自然に歌ったんだ。
アルバム制作時には、他のすべての活動を休止して、制作に専念しているということですが、今回はどのような準備期間を送っていたのですか?
O.N.O(以下O):毎日普通に生活して、音楽聴いて、日常から出てくるモノを聴いたり書いたり。札幌の街で、何も起きないような日常を普通に過ごしていましたね。
I:でも普通の生活の中にも、じゅうぶん価値はあったね。だから逆に、そういう曲を歌おうと思ったのかもしれない。ヒップホップの世界で語られるような、生きるか死ぬかみたいな劇的な世界ではなく、変化のない毎日にも、一場面一場面を切り取るといろいろなことが見えてくる。


Photo by SUSIE
確かに今までは、同業者や音楽業界を厳しく非難するような内容で、批評性や攻撃性を高めることを自己表現のひとつとしていましたが、今回はそれが薄まっていますね。
I:何度も同じコト言いたくなかったんですよ。それいう過去の曲は今でも音源としてフレッシュな状態で存在しているし、ライヴでもやっている。それらを訂正したいって思えばできるけど、訂正する気もない。そんなことよりも、逆に今の状況から見える、新しいことを歌っていきたかった。あくまでもブルーハーブというグループで音楽を作り続けてきた時間と、自分自身の問題。自分の年齢や環境から見える光景を歌ってる。
なるほど。それでも、これまでの活動からすると、今回のある意味普遍的なリリックに行き着いたことはやはり意外に思えます。
I:本当に自然な流れなんだよね。でもいきなりじゃなくて、ファーストやセカンドの時代があったから、ここに到達できた。このメッセージに辿り着いて、それを照れずにしっかりと、面と向かって正直に歌えるまでに10年かかった。自然とそういう気持ちになっていったんだ。
今作は楽曲として、より練り上げられていると感じました。トラックとリリックのバランスが良く、完全に「ひとつ」になっていると。長年一緒に曲を作ってきたお二人の熟練の技であり、そこに大きな熱量を感じました。
O:結構、曲は作りましたね。お互いに知らないボツがたくさんあるハズ。
I:今まではお互いリリックとビートを出して、合体させて、「さぁ、何が起きるか?」という化学反応を楽しんでいた。でももうずっと2人でやってきているから、お互い“いい曲”のゴールは見えているし、そのレベルに到達する自信もある。だから今回は、奇跡を待たずして作った感じかな。化学反応を待つのではなく、作るべくして実力で作った。
時間と熱意はたっぷりとかかっていると?
I:自分たちの到達点がわかっている以上、1小節も妥協は許されない。何度も何度もふり返った。
O:確かに1小節にスゴい時間がかかる時もある。トントンと出来た曲なんて、記憶にない。しばらく時間を置かなきゃいけない時もあるし。他の曲を作ってから、また戻る。なかには1年くらい置いた曲もあるよ。それで結局やり直したりもしたし。


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ブルーハーブには、女性ボーカルをフィーチャーするという印象はあまりないのですが、今回は、中納良恵さん(エゴ・ラッピン)が参加していますね。
I:あの曲に関しては、リリックもビートも出来ていて、最初は良恵ちゃんのパートもオレがやってたんだよね。それから少し置いてた曲なんだ。でもさっき言ったように、すべて必然で作り上げてきたから、奇跡がないワケ。
過去のインタビューで、ブルーハーブが「中盤戦にいるのか、終盤戦にいるのか、3枚目が出たらわかる」とおっしゃっていましたが、3枚目が実際に出てみてどう感じていますか?
I:今はまた、やっとスタートラインに立った感じかな。自分を大きく見せるようなことを言ったり、金を掴むというようなことばかり言っていたけど、今作でホントの歌っていうか、人の感情にフィットするような歌を作ることができたと思うし、これからも歌っていきたい。ヒップホップを聴こうが聴かまいが、男だろうが女だろうが、このアルバムの曲で語られていることは、みんなに必ず訪れるものだと思うし、みんなのあらゆるシチュエーションにフィットする言葉を歌いたいって思った。やっとそういう領域に入り込んだ。まだまだスタートラインだね。
RELEASE INFORMATION
最新アルバム『LIFE STORY』は、シスコ・インターナショナルより発売中。






