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TSUTOMU NIHEI | 弐瓶勉 |Cartoonist

「マンガ」という日本最強のポップカルチャーの最前線で、呆れる程にオフェンシブなSF作品を産み出し続ける作家がいる。リアルとフェイクが絶妙にブレンドされた壮大な設定。体感速度の限界を優々突破するタイム感。洗練の極みを魅せつけるキャラクターデザイン…。「マンガ」であることの有効性を存分に発揮しながら繰り出されるその最先端表現には、諸星大二郎、ギレルモ・デル・トロ、エンキ・ビラル等、ジャンルも国境も超えた巨匠からの賛辞が次々と寄せられている。弐瓶勉。その類い稀なる才能の一端を改めて掴むべく話を聞いた。

Text:メチクロ(MHz)

漫画家を目指したきっかけを教えて下さい。

SF小説がスゴく好きだったのですが、自分で書くことを考えた時に、小説に関しては、すでに新人なんかが入るスキも無いと感じていました。でも漫画だったら簡単に作れるかもと勘違いをして描き始めました。

実際に描いてみていかがでしたか?

難しかったです。小学生の頃は上手いと思っていたのですが…。自分の絵の下手さにびっくりしました。そもそも本格的に絵を描いた事がなかったんです。今でも落書きですら描かないくらいなので、本当は嫌いなのかもしれません(笑)。それでも描いて応募をしてみたのですが、自分の作風も実力も考えず、無謀にも『週刊少年ジャンプ』に送ったりしていました。先日たまたま当時の原稿を見つけてしまって、恐ろしくなって速攻破り捨てました(笑)。

弐瓶勉BIOMEGA

たとえ絵が上手かったとしても、すぐに漫画として成立するワケではありませんよね。プロとしてやっている現在、グラフィックやアートとしての『絵』と『漫画』の違いを感じますか?

まずストーリーが軸にあるということが大きいとは思いますが、漫画のジャンルに関係なく問われることは、なによりも生産力だと思います。一定のクオリティの完成品を週刊や月刊で作りあげることが課せられているので。

長編のストーリーを、週・月単位で断片的な完成品としてリリースし続ける制作過程には脅威すら感じます。音楽に例えるならば、毎週・毎月新曲をリリースする行為に近いですよね。特に弐瓶さんのキャラクターデザインにはライブ感をスゴく感じるのですが、アニメや映画のような詳細にわたるキャラクター設定等は存在するのですか?

ネーム(下書き前の構成ラフ)の時に、ある程度デザインのアタリをつけますが、ほとんど執筆時のインスピレーションで描いています。同じものを何度も描くのが嫌なので、デザインもどんどん変化していきます。話の展開に関しても同様です。

弐瓶勉BLAME

デビュー作『BLAME!』について聞かせて下さい。

『BLAME!』では自分の一番好きなことだけを描こうと思ってました。自然物の無い巨大建築物だけの世界で、強い武器を持った正体のわからない男が延々旅をするー。例えば『ウィザードリー』のようなゲームであったり、昔に流行した「ゲームブック」のような、小説としては全くの未完成だけど受け手が次の展開を選んで冒険できる作品に惹かれていたので、読み手が能動的に解釈して楽しめるものになればと思ってました。

以前、担当さんとの会話の中で、この作品を「巨大な団地に放り込まれた一匹の蟻の感覚」と例えられていましたが、その広大な設定の渦中で弐瓶さん自身がどこを描いているのか解らなくなったりはしなかったのですか?

むしろ、解っても意味が無いと思ってました。物語のラストで辿り着いた場所も、皆が思い描いた場所はそれぞれに解釈が違うと思います。

月刊漫画誌という熾烈な競争を課せられる業界でのデビュー作で、そのような試みを導入するには相当なリスクがあったと思うのですが、結果としては海外にも飛び火するほどの大きな支持を受けました。弐瓶さん自身の手応えとしてはいかがだったのですか?

理想とは程遠いですが、深入りさせて、最後まで解放させず、圧迫感を与えるという意味では成功したかなと(笑)。

弐瓶勉BIOMEGA

現在『ウルトラジャンプ』誌にて連載中の『BIOMEGA』ではどのようなスタンスで取り組んでいますか?

『BLAME!』とは逆のことをやりたかったので、スルっと読めるものを描きたいと思ってます。自分なりにカッコ良いと思う王道のヒーローものですね。しかも、かなり非現実的な内容で。

今回は大量のゾンビや、人格を持った熊が登場したりと、B級エッセンスが多分に含まれた作品になっていますね。

簡単に説明すると、世界政府を築いてしまうような超巨大企業の暴走を、アジアの小さな企業が高い技術力で阻止しようとする話です。そもそも、企業が真面目にゾンビを作ったり改造人間を作ったりしてたら面白いよね、という単純な動機が根底にあります。あと、個人的に不老不死の願望が強いので、不死に関して争うストーリー展開になってます。…叶わぬ夢を書き連ねて傷を舐めあう切ない作業です(笑)。

とはいえ、そのデザイン性や設定には不思議なリアリティを感じますが。

クローン人間のような倫理的に問題とされることも、企業間競争と圧倒的な技術力があったらやっちゃうのではないかという想像を元に、なるべくリアリティのある話を描きたいと思ってます。設定に関しては、現代からの予測に基づいた要素を中途半端に入れることは絶対にしたくありません。例えばナノテクのような事を突き詰めてみたところで嘘は嘘だし、古臭くなっていくだけなので。

今回の作品はバトルの描写にも斬新さを感じます。王道といいつつも、次から次へと敵が強くなっていくような「ジャンプ」黄金期的チカラのインフレ構造ではありませんよね。

出てくる武器にしても、例えば銃の撃ち合いだけでもいいと思うんです。決定的な武器が日替わりのように進化するなんて事は普通ありえないですよね。その時の技術のスタンダードで決まるものだと思うので、そういった部分でもリアリティを感じさせたいと思ってます。といいつつ、ふつう指にドリルはつけませんよね(笑)。

弐瓶勉弐瓶勉

物語に関しても、弱者を救うヒーローもののような安易に感情移入しやすい構図ではなく、企業間抗争に特化した異常にシビアな展開になってますよね。

彼らは”企業戦士”なので、どちらが正しいかではなく、所属する側の正義の為に戦っています。生存競争として目の前の敵を撃ち殺していくしかないのだと思います。

政治的なバランスを超えてしまった資本主義の成れの果てのようなシニカルな面白さも感じるのですが、そのようなメッセージ性は含まれているのですか?

現代の世の中も、偉い人たちがバカバカしいことをしていると気づいてもらえたらな、という気持ちは……一寸もないです(笑)。何も考えずにスルッと読んでもらえるような作品を目指してます。

『BIOMEGA』の連載はまだ始まったばかりですが、弐瓶さんの新たな世界を期待しています。

今後も色々な展開を考えてますので、楽しみにしていてください。

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