
KEN KAGAMI | 加賀美健 | Artist
オモチャやぬいぐるみなどを素材に用い、カラフルな色彩感覚で表現される加賀美健の作品には、常にバイオレンスやセックスを想起させる要素が含まれている。それらの作品群からは、いわゆる「ダークファンタジー」的世界観を、確信犯的に創作するアーティストの姿を深読みしてしまいそうが、どうやらその推測は彼にとっては本意ではないようだ。あくまでも子供の頃に抱く“イタズラ心”をベースに、イメージの世界で自由に創作を楽しむ加賀美に、その真意を聞いた。
Text:原田優輝
まず始めに、アーティストとして活動を開始したきっかけを教えてください。
学生時代からスタイリストのアシスタントを6年程やっていて、その後サンフランシスコに1年間遊びに行ったんです。その頃から徐々に作品を作るようになったんです。僕の代表的な作品のひとつ『ミルクマン』もサンフランシスコ時代に生まれたものです。
スタイリストからアーティストへの転身とは珍しいですね。
そうかもしれないですね。若い頃、学校に行っているときはスタイリストになりたい気持ちが強かったと思うのですが、小さい頃から絵を描いたりすることが好きで、アートに興味があったこともあって、そっちの方が魅力的に見えてきたんです。自分の洋服を決めるだけで手一杯な自分にとって、スタイリストはあまり向いてなかったんでしょうね(笑)。
では、サンフランシスコから戻った後に、本格的に日本でアーティスト活動を開始したということですか?
そうですね。サンフランシスコにいる頃から作品は結構作っていたのですが、帰国後にそれらの作品を、元々好きだったタカイシイギャラリーに持っていったんです。そこで作品を気に入ってもらえたので、割とスムーズに作家活動をスタートすることが出来ました。


『MILK MAN』(2004)
サンフランシスコ時代に生まれたキャラクター「ミルクマン」は、アメリカのバンドディアフーフのアルバムジャケットにも使われた。
これまでにアートの専門的な勉強をした経験はあったのですか?
特にありません。絵を描いたり、何かを作ったりすることは元々好きではありましたが。
その頃はどのようなものを作られていたのですか?
僕は元々かなり変わったものに興味を示す子供だったと思います。小学校低学年の頃からホラー映画が大好きで、部屋を真っ暗にして、布団をかぶりながら何度も見ていました。「ゾンビ」を見た時の衝撃は今でも忘れられないですね。人の手によって作られたグロテスクなものに魅かれるんです。それは今も変わりません。特に下ネタと性的なモノ(笑)。ただ、あくまでも“ポップ”じゃないとイヤなんです。それが、作品制作の上でも自然と出ているんでしょうね。
かなりストレートに出ていますよね(笑)。言い方は悪いかもしれませんが、加賀美さんの作品からは子供のイタズラに近い感覚が感じられます。
そうですね。普通は年を重ねるに連れて、頭は大人になっていくものだと思うんですが、僕の場合は逆で、時とともに幼少期のような脳を戻っていくような感じです(笑)。先日も実家に帰って、小学校5,6年生の頃に自分が描いていた絵を見直してみたのですが、今とほとんど同じなんですよ。“巻きグソ”とか描いてあったりして(笑)。普通大人になったら、そういうものに対する抑制が働くと思うんですが、それが自分にはない。でも、その辺のギャップが作品に出れば面白いのかなとも思っています。自分の頭の中の幼稚な部分に自分なりのセンス、エッセンスが上手く、カッコよくマッチすることがとても重要なんです。

『SHOPPING』(2005)

『PINK and YELLOW』(2004)
なるほど。加賀美さんにとっては、“成長しないこと”が重要なポイントなのかもしれないですね。
そうかもしれないですね。自分にとってスキルが云々というのは大きな問題ではないんです。(自分の作品に)変化や成長があるとすれば、昔から描いてきた“巻きグソ”が、ブロンズ像になるとか、そういうことだと思います。小学生ではさすがにそこまでできない(笑)。あとは、今まで一貫して追求してきた性的なものや下ネタをもう少し違う解釈で作品に落とし込めたら面白いのかもしれませんね。そのようなことが自分にとって成長につながると思います。
加賀美さんの作品からは、「ミッキーマウス」や「ハローキティ」など、誰もが知っているキャラクターをモチーフを使いながら、それらの確立されたイメージとは大きく異なる作品を作ることで、そこにギャップを生じさせようとしている印象を受けるのですが、そのあたりには自覚的なのでしょうか?
モチーフには、誰もが知っているイメージを使った方が分かりやすいし、そうした方が作品に入りやすいと思うんです。でも、特にギャップを作り出そうという意識はありません。それよりは、小学生が教科書に載っている歴史上の人物に鼻毛を描いたりすることの延長だと思います(笑)。


(左から)『C-CHAN』(2002)、『SEXY BROWN』(2001)
作品を制作する上で、重要なポイントを教えてください。
いかにシンプルで強いものを作るかは常に気にしていますね。ドローイングもシンプルな作品がほとんどですが、ビビッドな色を使うようにしています。あと、作品の素材選びはかなりシビアにやっています。僕の作品は既存のオモチャやぬいぐるみを使う事が多いのですが、なんでも良いというワケではないんです。そこには一番気を使っているかもしれません。
オモチャやぬいぐるみなどのポップでわかりやすいモチーフを使いながら、そこにダークな要素も含ませているのが、加賀美作品の大きな特徴ですよね。
そうですね。でも、別にダークな作品を作ろうとかはまったく思っていないんです。人を楽しませたたりすることよりも、自分が作っていて面白ければいいかなと。
あまり鑑賞者の視線は意識していないのですか? 例えば“子供のイタズラ”は、イタズラされた側のリアクションがなければ成立しないようにも思うのですが…。
展覧会を作る時は当然意識しますが、基本的には受け手の反応はあまり意識はしていないんです。頭の中にイメージがあって、それに見合うものを買ったり作ったりして、それらをただ組み合わせているだけです。もちろん作品自体は売れてほしいと思っていますし、様々なコレクターの手に渡ってほしいとは思ってますが、作品を見た人の反応そのものはあまり気にならないですね。反応と言っても、だいたい笑うか怒るかのどちらかだと思いますしね(笑)。
海外での作品発表も積極的にされていますが、日本と海外では、何か違いはありますか?
海外の方が反応がストレートで面白いですね。日本はどちらからというと反応が薄い。見ちゃイケないモノを見てしまったという感じなのかもしれません。日本人は、日常でも結構見て見ぬ振りをすることが多いですからね。海外の人の方が割と普通に笑いますね(笑)。


(左から)『BABY HEAD and STRAWBERRY』(2005) 、『SEXY SANTA』(2005)
共感できるアーティストも海外の人が多いのですか?
そうですね。たくさんいます。海外の作品はパッと見て面白いと思えるものや、不意を突かれるような作品が多い。逆に日本の作品は僕には難しすぎることが多いんです。
昨年はウィーンでも個展をやられていますよね。
はい。4月に開催したのですが、「ハロ−」と「ウィーン」をかけて、「HELLOWIEN」というタイトルの展覧会をやりました。元々自分の作品にはハロウィーン的要素が多いということもあったので。レセプションパーティでは、かりんとうをたくさん買ってきて、ビニール袋に入れて配ったんです。向こうでは犬の糞がいたる所に落ちていて、それが社会問題にもなっているらしいのですが、ギャラリーではみんながウンコ(のようなもの)を食べている、という僕流のユーモアなんです。

『HELLOWIEN』 KEN KAGAMI EXHIBITION 2006
最後に今後の予定を教えてください。
9月にデンマークのARKEN MUSEUM OF MODERN ARTで開催されるグループ展「MAD LOVE」に参加します。さらに12月にはマイアミで開催されるアートフェアNADAで、ディアフーフと一緒にパフォーマンスを行う予定です。あと、今後はビデオ作品も作りたいと思っています。やりたいことはとにかくたくさんありますね。バカデカい作品も作りたいし、パブリックアートとして公園を丸ごとプロデュースとかできたら良いなと思っています。子供番組のTVのセットなどもやりたいですね。







