
DAISUKE SHIMADA | 島田大介 | Video Director
楽曲の世界観に拠ったミニマルなコンセプトメイキングを信条とし、時間軸を自在に操りながら映像にしかできない表現を模索し続ける作家、島田大介。ある時は退廃的なイメージを、またある時はファンタジックな世界観を巧みに表現し、Mr.Chiidren、Chara、木村カエラらのミュージックビデオ作品等で、映像ディレクターとして確固たる地位を築いてきた。松本俊夫らの実験映像に魅せられ、キャリアをスタートさせた彼の源流を探るべく、インタビューを敢行した。
Text:原田優輝
島田さんが映像に興味を持ち始めたきっかけを教えてください。
元々、学生時代から映像を学んでいたんです。いわゆる実験映像やアートフィルムと呼ばれていたものが好きで、ケネス・アンガーや寺山修司、松本俊夫とかの作品を見ていたんです。以前は写真に興味があったり、バンドをやったりもしていたのですが、あるきっかけでアート映像を見る機会があり、スゴく魅かれたんですね。ある意味写真的でもあるし、音楽もできるし、さらに時間軸の中で表現できることが良かった。
大学卒業後、ヨーロッパに渡られたんですよね?
はい。大学に入る前からDJもしていたんですが、その頃がちょうどVJのようなものが出てきた時期だったんです。トマトやアンダーワールドなんかも出てきていて。やっぱり実験映像とかやっていると将来的に不安になることもあり(笑)、とりあえずイギリスに行ってみることにしたんです。
実際にイギリスではどんな経験がありましたか?
結構フラフラと生活していたんですが、ある日スタイリストを名乗る黒人が声をかけてきたんです。当時僕はドレッドヘアーにしていて、アジア人では珍しかったのかもしれませんね。それから約1年半程モデルの仕事をするようになるんですが、その過程で、写真家のモンディーノや映像作家のターセム(映画『THE CELL』の監督や前衛的なミュージックビデオ作品などで知られる)らと仕事をする機会に恵まれて。それが大きな刺激になりましたね。特に、シュールな世界観をCMで表現しているターセムとの出会いは衝撃でしたね。それがきっかけで、本格的にミュージックビデオやCMに興味を抱くようになって、日本に戻ってきたんです。
そのままイギリスで映像を作ろうとは思われなかったんですか?
単純に就労ビザの問題とかもあったんですが、それ以上にヨーロッパの風景やモノに飽きていたというのがありました。日本が恋しかったんですね。日本特有の泥臭さというか、そういう所に戻りたくなったんです (笑)。

AKEBOSHI、松岡亮らとのユニット「SOUMA*走馬」として参加したイベントの模様。
日本に戻られてからは、順調に映像の仕事に向かうことができましたか?
最初はどうすれば良いかまったくわからなかったですね。それでしばらくモデルの仕事なども続けながら、ユニットを組んでモーショングラフィック寄りの映像を作ってVJをしたり、イベント映像などを手掛けていました。でも、それが自分の一番やりたいことではなかったし、誰かの下で学びたいという思いもあり、谷田一郎さんのところに行ったんです。入った当時は、CGにはあまり興味がなかったんですが、そこでいろいろ勉強させて頂きましたね。表現の幅が広がったというか。
その後独立をすることになったきっかけを教えてください。
谷田さんの下でやっていくうちに広告の楽しさもわかってはきたんですが、やっぱりミュージックビデオを作りたいという想いが強かったんです。当時は、ミシェル・ゴンドリーやスパイク・ジョーンズらが出てきた頃で、とても魅力的に見えたんです。
ミュージックビデオを作る上で最大の魅力は何ですか?
元々音楽が好きなこともあり、やはりミュージシャンとコラボレーションできることが楽しいです。広告のように商品のために映像を作るというよりは、人のために作っている感覚があります。あと、自分の作家性を表現しやすいですし、その作風を気に入ってくれた人から依頼を受けるという循環が良いですよね。CMなどに比べるとはるかに実験ができますからね。

『PERSPECTIVE』BACK DROP BOMB(2003 / TOY’S FACTORY)
独立当初はどのような作品を撮られていたのですか?
独立してから1年くらいは食えなかったですね(笑)。アテがあって独立したワケではなかったですし。最初の仕事は、知り合いのツテで話をもらったバックドロップボムのメンバーがやっている別バンドの映像でした。それは予算もなかったし、モーショングラフィックで作ったんですが、それがonedotzeroで上映されたりもして、その後バックドロップボムのビデオもやらせてもらえることになったんです。その時に実写にCGを合成したSF的な世界観を表現したのですが、当時はあまりそういう作風の方がいなかったので、少し話題になったようで、ミスチルの仕事などにつながっていきましたね。
その辺りから島田さんの作風も確立されてきたのでしょうか?
そうですね。自分でもその頃からスタイルが見えてきたような気がしています。今はいろいろやっていて、一定の作風という感じではないんですが、駆け出しの頃はやはり「島田大介」という作家のブランディングもある程度意識していきましたね。ただ、ミスチルの『掌』をやるようになった頃は、退廃的な世界観の作品が多かったので、そのイメージがつきすぎて困った時期もありましたけどね(笑)。


『掌』Mr.Children(2003 / TOY’S FACTORY)
島田さんが作品を作られる時の制作過程を教えてください。
ミュージックビデオの場合、やはりミュージシャンのヴィジョンを大切にします。だからミュージシャンとコミュニケーションを計りながら、彼らがどんなイメージを持っているかをまず確認します。そこから考えていかないと難しいですよね。逆に「一からお任せします」と言われると結構困ってしまいますね。
確かに島田さんの作品には、原曲の世界観や歌詞をとても尊重しているような印象を受けます。
そうですね。結局、映像の善し悪しも音に左右されると思っているので、慎重にやっています。だから、どうしてもイメージが沸かない楽曲だったりすると断ることもあります。
島田さんの作品は、時間軸の使い方にも特徴があると思いますが、その辺へのこだわりも強そうですよね。先日制作された10Feetのミュージックビデオもハイスピードデジタルカメラを駆使した撮影が話題になりましたよね。
そうですね。あれは完全に実験映像ですけどね。ずっとやりたかったことなんです。アーティスト側も面白がって協力してくれました。実質撮影時間は4秒なんですが、仕込みにスゴく時間がかかって、結局4回くらいしか(カメラを)回せなかったんですよ。

『STONE COLD BREAK』10 FEET(2007 / NAYUTAWAVE RECORDS)
計3分10秒のミュージックビデオだが、実質の撮影時間はなんと4秒!! ハイスピードデジタルカメラ「ファントム」を用い、4000コマ/1秒という撮影方法で制作された。
この作品のように、時間軸を自由に操れるのは映像の面白さですよね。
そうですね。映像ならではの表現だと思います。昔からビデオを早送りしたり巻き戻したりするのがスゴく好きでしたね。初めて(ビデオを)見た時なんかおかしくて、ずっと巻き戻しで見てました(笑)。ちょっと現実逃避できる感じが好きなんです。実験映像とかは特にそういう要素が強くて、リアルじゃないんですよね。そう言う世界を作ることができるのが映像の魅力です。実は最近、映画にも興味が出てきているんです。
映画ではどんなことを表現したいと思っているのですか?
人間的なことですね。大作をやりたいというワケではなく、「つい昨日の話」みたいな地味で細かい描写がしたいんです。それは映画にしかできないことだから。
スタイル的にはドキュメンタリー映画ということでしょうか?
そうかもかもしれないですね。人の生い立ちとかも撮ってみたいですね。最近、ある映画のメイキング映像などを撮影したんです。実際に(映画を)やることになる前にいろいろ勉強はしておきたいですね。昔から映画は夢だったんですが、これまでは自分の中で表現したいものがなかった。でも今はようやく映画じゃないと表現できない作品を作りたくなってきたので、(映画制作に)大分意識がいっていますね。

『Crazy for you』Chara(2006 / ユニバーサルシグマ)







