
SEMITRANSPARENT DESIGN | セミトランスペアレントデザイン | Web Creator
銀座ソニービルのファサードカラーを、PCユーザーがモニターの前にいながらリアルタイムで自由に変えることができる。SONY BRAVIAのキャンペーンサイト「LIVE COLOR WALL PROJECT」は、そんな斬新なアイデアで大きな注目を集めた。その画期的なサイトを作り出したのは、グラフィックデザイナー、プログラマーらによる4名編成のクリエイター集団、セミトランスペアレントデザイン、通称“セミトラ”だ。これまでにも、Web世界と現実世界を結びつける作品などを数多く発表し、各方面から注目を集めてきたWebデザイン界の異端にして、最注目クリエイティヴ・チームであるセミトラのクリエーションの秘密を探るべく、主にグラフィックデザインを担当する田中良治に話を聞いた。
Text:原田優輝
セミトラが結成された経緯を教えてください。
セミトラとして活動を開始したのは03年からなのですが、その少し前からネットワークをもう少し広義に捉えられるような表現はできないかと考えていました。ただ、自分たちにとっては未知の領域だったので、小規模でスタートした方が方向修正などしながら気楽にできるかなと思い、その当時勤めていた会社を辞めてセミトラを立ち上げました。
「セミトラ」の名前の由来は?
「透明(Transparent)なデザイン」というある種の理想に対して、「Semi」には、その過程にある「未熟さ」とそれに反発する「ノイズ」という2つの対立する意味が込められています。
メンバーの役割分担を教えてください。
田中と佐藤がグラフィックを中心としたビジュアルにかかわる部分を担当し、菅井、柴田がプログラミングとデバイス開発しています。ネットワークは多層的で、専門分野が違うとその捉え方も違っているので、その辺りをお互いが共有していくことで、色々なアイデアが生まれます。例えば、僕の場合は、システムのことが分からない部分もあるので、モニターから見えるものや表層的なことをメインに、どちらかというと一般ユーザーに近い視点で見ています。それに比べて、プログラミングチームは、より深いところに入り込んでいて、技術的な進歩なども踏まえた上で、ある程度未来を見越しながらものを考えていたりします。その両方の観点がネットワークにはあるので、それらをお互いに共有しながらやっていますね。


オンラインセレクトショップBEYESのWebサイト「INTERACTIVE INTERIOR」では、表参道ヒルズにあるリアルショップに設置された巨大なスクリーンと連動し、ショップを訪れる客のシルエットとWebサイト上のユーザーのマウスの軌跡がリンクする仕組みを構築した。
Web空間と現実世界を結んだ作品が多く見られますが、どのような意識でそういった表現を追求しているのですか?
実際の空間とWebの空間をつなげていく表現というのは、ネットワークを使った表現の追求から生まれたひとつのアイデアだと思っています。自分たちの意識は、常にネットワーク表現の面白さに向かっていて、現実空間を持ち出したのは手段のひとつだと思っています。
具体的には、ネットワークにおける表現のどんな部分に面白さを感じているのですか?
Webの特徴のひとつに、スタンダードが常に更新されていくことと、それに伴い扱う領域が広がり続けていることがあると思います。Webの変化に応じて「Webデザイン」も変化していくところが面白いですね。自分たちはそれほど「メディアアート」には明るくないのですが、ネットワークに関する作品にも興味があります。
最近注目を集めたサイト「LIVE COLOR WALL PROJECT」(サイトは9月26日で終了)について教えてください。
これは、SONYのBRAVIAという液晶テレビのための広告サイトなのですが、このプロダクトは色の再現性に力を入れた商品だったこともあり、僕らにもネットを使って「色」を表現することが求められました。そこでポイントになったことは、色の美しさを表現することよりも、色を体験することだったんです。実際にこのサイトにアクセスすると、ユーザのマウスカーソルはスポイトになります。そして、サイト上で流れているBRAVIAのTVCM映像、又は銀座の街から色を吸いとり、サイト上にあるビルの上に落とすと、銀座にある実際のソニービルのファサードが、ユーザーの吸い取った色に変化するんです。



実際にはどのような仕組みになっているのでしょうか?
銀座ソニービルには、元々LEDライトが仕掛けられていて、それを制御するための機械も最上階のあたりに置いてあるんです。普段はそのメモリにLEDの色を変えるためのプログラムを覚えさせているのですが、僕らは制御部分を操作するためのデバイスを自分たちで作り、それをPCを介してネットワークと繋げています。そうすることで、ユーザーが落としたインクの色などの情報がネットワークを通してそのデバイスに伝わり、そこからLEDライトに命令がいくような仕組みです。また、ソニービルの対面にある建物にWebカメラを仕掛け、そこで撮影した映像をサーバーにアップしているので、実際のソニービルの変化もリアルタイムで確認することができます。以前に手掛けた「アカリウムコール」というプロジェクトで使用したライトと同じメーカーのLEDライトだったので、若干のノウハウもあり、システムを上手く構築することができたと思います。
今回のプロジェクトでポイントとなった部分を教えてください。
TVCMを二次利用している点だと思います。ネットワークの世界では、「初音ミク」という音声合成ソフトを使って制作した作品が、動画共有サイト等に数多くアップされていて話題になっているのですが、これらの作品のソースコードを二次利用して、別の作品に作り変えたりする動きが盛んになっているんです。二次利用によって、コンテンツがどんどん増えている状況が面白いですし、ネットワークに限らず他の分野でも重要なキーワードになっています。そういう意味では、今回のプロジェクトも、TVCMの映像を色パレットにしているという点で、二次利用になっているんです。実は最初の企画段階では、TVCMではなく、銀座の街を色パレットにして、「銀座の街の色を吸収して発光する建物」を作るというコンセプトだったのですが、それではクライアントは首を縦に振ってくれなかったということもあり、苦肉の策として生まれた作品ではあるのですが(笑)。

LIVE COLOR WALL PROJECTの際にも参考になったと田中が話していたのが、この「表参道アカリウムコール」プロジェクト。表参道に立てられた無数の巨大灯籠が、参加者の携帯電話の声に反応して変化するというインタラクティヴなイルミネーションを制作した。
広告サイトにはそういった面も常につきまといますよね。
そうですね。でも、これだけ大きなプロジェクトの場合、やはりそれなりのクライアントへの「お土産」は必要だと思いますし、そこでクライアント側がメリットを感じてくれないと、仕事としては成立しないわけですからね。ただ、こういったことがすぐに妥協につながるわけではないと考えています。初期の企画にノイズが加わることによって突き抜けるということはよくあることですからね。だからなるべく柔軟に考えるようにしています。
「二次利用」のほかに最近注目されている動向はありますか?
「低解像度化」というキーワードが気になっています。一番分かりやすい例でいうと、洋服が購入できる携帯サイトとかになるのですが、携帯電話の液晶画面に映る低解像度の画像を見ただけで洋服が買える感覚が一般化してきている状況が面白いと思っているんです。音楽に関しても、いまやMP3データどころが、「着うた」でじゅうぶんというジェネレーションが確実に出始めている。低解像度でも平気でいられる感覚というのを、追求していくことで新しい何かが生まれそうな予感もするんです。僕らがWeb上でのグラフィックをビットマップで作ることが多いのも、「低解像度」を意識しているからという面もあります。

セミトラは独自フォントの開発にも積極的に取り組んでいる。これは海外のWebサイト用に制作したLARGE PIXEL FONT。
セミトラはグラフィックデザインにも非常に力を入れていると思うのですが、Webにおけるグラフィックデザインの重要性をどのように考えていますか?
僕らがプロジェクトを行う上で、グラフィックデザインは重要なポイントになっていて、グラフィックからアイデアが生まれることもよくあります。Webデザインはまだまだグラフィックデザインに従属している印象がある。グラフィックデザインから学ぶことはたくさんありますし、その層の厚さは踏み込み難いものだったりします。ただ、透過光を扱っているという点と時間軸を持っているという点にフォーカスし、Web独自のビジュアル表現を試みているWebデザイナーも増えてきていると思うので、あとはそれをグラフィックデザインに還元できるような関係性になっていかなくてはいけないだろうと感じています。
最後に、今後追求していきたいテーマなどがあれば教えてください。
今までやってきたことの更なる追求はもちろんですが、現実空間に開いていくような作品を作っている割に、自分たち自身が閉じている部分があるので、もっとオープンにやっていこうと思っています。どうしても、僕らの作品は半年近くかかる規模のものが多くなってしまうんですが、それだけでは広がりにくいなって思うんですよね。だから今後は、小規模に短いタームで制作できる作品やプロジェクトもいろいろやっていければなと思っています。





