
AC-bu | AC部 | Video Director
“笑える”映像を作らせたら、おそらく彼らの右に出る者はいないだろう。ハイテンション&濃密なアニメーションを次々とリリースし、お茶の間を笑いの渦に巻き込む映像制作トリオ、AC部。「半分天然」(メンバー談)であるがための無意識な「ズレ」と、「変」な映像を作ることへの意識的なこだわりが絶妙に絡み合った彼らのクリエーションの源泉に迫るべく、板倉俊介と安達亨の2人に話を聞いた。
Text:原田優輝
AC部の3人が出会ったきっかけを教えてください。
安達(以下A):元々は美大の同級生で友達として遊んでいたんです。それから、大学の課題なんかをやっているうちに、共通するものをお互いに感じるようになって、徐々に影響を与え合うようになっていった気がします。
板倉(以下I):そもそも、僕らの名字が「安達」「安藤」「板倉」と50音順の頭の方で、同じクラスに振り分けられたがために、仲良くなったというのもあるんです(笑)。
大学では映像を学ばれていたのですか?
I:3人ともグラフィックデザイン専攻だったのですが、僕らが3年になった時にちょうど映像コースができたので、興味本位で授業を受けてみることにしたんです。だから、今でも変わらないのですが、僕らの作品はまず「絵」ありきなんですよね。

映像のどんな部分に魅力を感じたのですか?
A:自分でソフトを手に入れて、独学で覚えていったのですが、色々なツールを試しながら制作していると、やる度に多くの発見があったんです。当初はそこに喜びを感じて、ひたすら作り続けていましたね。
I:音楽もMIDIで作って映像に合わせたりしていたのですが、そんなことをしているうちに、パソコンさえあれば、すべてひとりで作れてしまうということが分かって、それから目の前が一気に開けた感じはありましたね。
学生の頃は個別に制作をされていたとのことですが、現在のように共同でひとつの映像を作るようになったのはいつからなのですか?
A:大学を卒業してからですね。大学の先生のつながりで、卒業後半年くらい経った時に、いきなりテレビドラマのプロモーション映像の仕事を頂いたんです。出演者の写真などを使って好き放題やってほしいというオーダーで、深夜枠のみに流されるその映像を、3人で分担して作ったのが最初の共同制作ですね。

メンバー3人の役割分担はあるのですか?
A:明確に分担してやることはほとんどありません。毎回担当がバラバラで、状況に応じて柔軟に対応するようにしています。「ゴチャ混ぜ感」というのがAC部の基本テーマでもあるので、あえて混ぜているという面もあります。きっちりフォーマットを作ってしまうと、作品がまとまりすぎてしまう恐れがありますからね。
なるほど。では、AC部の作品に共通している“イビツ”な感じの描写なども、あえて出している表現なのですか?
I:そんなに意識してやっていたわけでもなかったのですが、やっていくうちにそれが良い効果になっていることに気がついてきたんです。最初は「ゴチャ混ぜ」な感じに、自分のなかでは少し違和感があったのですが、気持ち悪いけど「変な効果」が出ているということがわかってからは、それも必要なんだと考えるようになりましたね。
A:あえて出来上がりを予測しないで作っている部分もありますね。「ゴチャ混ぜ感」というのも、どうなるか分からない状況を作るためという意図もあるんです。ただ、まったくバランスを考えていないわけでもなく、そのさじ加減はむずかしいところなんですが…。
I:学生の頃に天然でやっていた部分が、最近はできなくなってきているところもあるので、「普通なのか? 変なのか?」という見極めをしていかないといけないこともあり、最近少し苦しんでいるんです。学生の頃には思いもしなかった状態ですね。
A:昔は自然にやれていたことが、経験を積むとできなくなる。最近は特に意識して初期の感覚を取り戻そうとしています。普通に作るとやっぱり普通になっちゃうんですよね。「どこか変」というところがうちのポイントなので。

制作の上で、“変”なものを作るという意識は常にあるのですか?
A:意識しているのは半分くらいですね。元々、皆が半分天然なので(笑)。でも、残念ながら僕らは天才ではないので大変なんですよね。何も考えずに描けたらスゴいと思うんですけどね。
自然に生まれる違和感のようなものを出していきたいということですか?
A:そうですね。狙いすましたものよりも、一生懸命やっているけど、どこかズレているようなモノの方が面白いと感じるんですよね。
I:本気でやっているところから生まれる違和感みたいなものが自然に出ているものがベストなんです。
確かにAC部の作品のストーリーやモチーフは、極めて「本気」なものがほとんどですよね(笑)。作品のネタは、日々探している感じなのですか?
A:常に探しているワケではなく、日頃見たり聞いたりしたものを、引き出しの中から出してくる感じですね。日々必死におもしろいものを探しているわけでもないんです。
それは少し意外ですね。AC部の作品に対するリアクションとして一番多いのはやはり「笑い」だと思うのですが、「何が何でも笑わせてやろう」という感じで作っているわけでもないのですね。
A:そんなに芸人的な気質はないですね。普段から何が面白いかを話し合うようなこともほとんどなく、割と切羽詰まっている時に出てくるアイデアが多いです。それをポンと放り投げて、受けてもらえれば「ヨシ!」というくらいです(笑)。

作品のストーリーやナレーションなどはどのように考えられているのですか?
A:最初にみんなで意見を出し合い、細かい部分は誰かがひとりでまとめていくことが多いですね。ナレーションは自分たちで入れることがほとんどなのですが、割と現場で書くことが多いですね。
I:僕らの作品に最大の違和感を与えているのは、実はナレーションかもしれないと思っているんです。映像だけだと結構普通だなと感じることもある(笑)。そこに声を入れてみるとスゴく変な感じになるんですよね。ナレーションに関しては完全に素人なので、それが役に立っているような気がしています。
A:やっぱり音が入ると違うんですよね。予算がない時は曲も自分たちで作ることがあるのですが、おもしろい曲ができるとそれに合わせて絵を変えることもあるくらいですからね。

AC部の作品は非常に個性的ですが、それがクライアントワークにおいて足かせになったりすることはないのですか?
A:逆に、ある程度縛りがあった方がとんでもない発想が出てくることが多いです。だいたい僕らに来る仕事は、作家性を求められていることがほとんどなので、自由度の高いオーダーが多いのですが、自由過ぎるとどうすればいいかわからなくなることがある(笑)。若干の制約があるなかで、表面的には条件を満たしつつ、あとは好き放題やるというのが理想ですね。
クライアントがAC部に求めている“作家性”を、裏切るような作品を作りたいという気持ちはないのですか?
I:裏切るということが重要なのではなく、自分たちが見ておもしろいと感じられるものにしないといけないという想いが強いです。
A:裏切ることで逆につまらなくなることもありますからね。その辺は冷静に見るようにしています。クライアントが求めるものって、良くも悪くも直球ド真ん中だと思うんです。それに乗っかりつつ、ちょっとハズすくらいが一番旨味が出るんじゃないかなと。最近はその辺がだいぶ普通にできるようになってきているのですが、逆に分かりすぎてしまっても、つまらないと思うんですよね。そういう意味でも学生の頃の初期衝動を忘れてはいけないと思うんです。

最後に今後の予定を教えてください。
A:「海女ゾネス」というプライベート作品を以前から作り続けているのですが、将来的にはそれをDVD化できたらと思っています。
I:ミュージカル調の作品で、歌モノの短編による連作になると思います。今はオリジナル作品を作る時間が削られがちなので、なかなか進んでいかないのですが…。でも、受注仕事も平行して続けていきたいという気持ちは強いですね。何も捨てたくないんです(笑)。
A:まだ方向性を探っている段階です。いざという時に、どこにでも行けるように守備範囲をジワジワと広げています(笑)。もう少し経てば、今後の流れが見えてくるんじゃないかと思っているんですけどね。
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