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CHIM↑POM | チン↑ポム | Artist

紅一点のギャル・エリイをフロントに据え、突拍子もないアイデアと圧倒的な行動力で、一躍アート界の台風の目となったチン↑ポム。ギャルがピンクのゲロを吐き続ける作品「ERIGERO」、渋谷センター街でネズミ捕獲に乗り出した「スーパー☆ラット」、カンボジアに渡航し、高級バックや石膏像を地雷で爆破し、それをチャリティオークション形式で販売した「サンキューセレブプロジェクト アイムボカン」etc。次々と発表されるこれらの作品には、“若気の至り”という言葉では片付けることのできない、未知なる可能性が隠されている。一見脈絡なく、自由奔放なゲリラ活動を展開しているように見えるこのアート集団を支えている原動力とは何なのか? メンバー6名全員出席となったインタビューをお届けする。

Text:原田優輝

まず始めにチン↑ポム結成の経緯を教えてください。

卯城(以下U):関わり方は様々だったのですが、メンバーそれぞれが会田誠さんと知り合いだったんです。当時、会田さんの周りには、なぜか若者がたくさんいたのですが、特に何かをやりたくて自主的に集まっていたという感じでもなくて…。

林(以下H):普通に飲みに行ったり、遊びに行ったりしていたんです。

エリイ(以下E):私は(会田さんの)山椒魚の絵と滝の絵のモデルやってた。

U:今考えてみると、不思議なことに絵を描いてる人は全然いなかったですね。でも、アートも含めて、おもしろいものが好きな奴らが集まっていたので、何もしないのはもったいないと思って、チン↑ポムをやることにしたんです。エリちゃんがやっぱり珍しかったですしね。ギャルがアートをやるというのは今までなかったけど、こういうのもアリだなと。

岡田(以下O):でも、特に技術的な何かを持っていたわけじゃないから、自然と身体が資本になっていったんです。

U:不思議なことに、メンバーの中で一番まっとうなアートへの道を歩んで来ているのは実はエリちゃんなんです。ほかは高校中退や大学中退、専門学校卒とか…。

稲岡(以下I):浪人失敗…。

O:受験失敗だろ(笑)。

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E:私だけ美大に行ってた。勉強とかが全然できなくて、大学受験の時にヤバいなと思ってたんだけど、その頃にピアノの先生から美大っていうのがあると聞いて。それから美術系の予備校に行って、そこにはたまにギャルとかもいたんだけど、みんなやめてっちゃうんだよね。

U:アートみたいな極端な表現をする人たちって、天然の人が多いと思うから、ギャルにしても、周りを真似てコスプレ的にやっている子じゃなくて、真性のギャルじゃないと無理なんじゃないですかね。

E:みんな自分じゃ何もできないとかって思い過ぎてるんだよね。人間なんてみんな同じだし、誰でも何でもできるから。「会田さんってスゴいな」とか「どうせ自分とは違うから」とか言うけど、ハッキリ言って同じ人間だからまったく変わらない。

U:やらないだけだと思うんですよね。アイデアばかり持っていても、それを実行しないと意味がないから。アートという表現は、「生き様」そのものだと思っていて。生きているということとまったく同じこととして、(表現が)現れないといけないと思っているところはありますね。

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初期の代表作「ERIGERO」について教えてください。

U:自分たちは、やっていく過程で変異していくような作品を制作しているから、最初にイメージがあったとしても、やっていくうちにどんどんエスカレートしてしまうんですよね(笑)。それで「何か違うぞ?」となってしまうことも最初のうちはあったのですが、この作品は自分たちが活動をスタートしてから、初めて「これだ!」と思えた作品なんです。

H:エリちゃんが「私吐くの得意」みたいなことを言い出したのが最初のきっかけなんです。じゃあやってみようということなって、ピンク色のゲロを吐いたらカッコ良いんじゃないか? という話に発展して。でも、実際に撮り始めてみると、エリちゃんがものスゴく笑いながら吐いてたりして、みんなのテンションもどんどんあがってきて、ただピンクのゲロを吐いているだけじゃない何かが生まれてきたんです。ギャルがゲロを吐くだけの作品なんて、これまでの美術のなかになかったから、自分たちがやってもいいところだなというのはありましたね。

チン↑ポムの作品において、大切にしているポイントがあれば教えてください。

U:作品制作を通して、自分たちが良いモチベーションになれるかどうかということが大切ですね。トランスしていない作品なんてオモシロくないと思っているところがあって。自分たちが高いモチベーションを持って、トランスしながらやっていると、作品もいいものになるはずだし、そのエネルギーは(作品を)受け取る人たちとも共有したいので、どうすればそのテンションを波及させられるかということは考えています。

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「ERIGERO」のような、その場のライブ感をストレートに伝えるような作品と、社会的メッセージも感じられる「スーパー☆ラット」のようなコンセプチュアルな作品をそれぞれ発表してきていますが、両者に大きな違いはありますか?

U:お客さんの自由な解釈に委ねる作品と、正確にメッセージを伝えたい作品というのがあります。例えば、上空にカラスを集める「ブラック・オブ・デス」というプロジェクトを最近やっているのですが、この作品は受け取る側がどう感じてくれてもいいんです。一方で「スーパー☆ラット」のような場合は、もう少し正確に伝えたい。あと、以前に発表した「ともだち」という作品で、富士の樹海で自殺者が首つりに使っていたひもと木をそのまま展示したことがあったんです。これもお客さんに投げてみた作品だったのですが、展覧会が終わってから、様々なフィードバックがあって、自分たちのなかで色々なものが生まれてきたんです。そうすると、それをもっと正確なカタチで伝えたくなっていく。そういった流れになることもありますね。

この「ともだち」は、どのようにして生まれたのですか?

U:他の作品を作るために樹海に行ったのですが、そこで多くの自殺者の遺留品を見て、だんだんそれに慣れてきてしまっていた時に、この同世代の自殺者「N君」の遺留品に出会ったんです。まず樹海自体がものすごいファンタジックだった。その現場には木があって、ひもがあって、ロールプレイングゲームに出てくるようなナイフ、というかサーベルが刺さっていて、美少女フィギュアが落ちていました。遺体はどこにもありませんでしたが…。あと、樹海に行くということは、失踪しにいくということなのに、家族に宛てた遺書が残されていて、そこには愚痴ひとつなく、とてもポジティブで、テンションが高い言葉が書かれていたんです。「父。最期の半年は親子らしかったな。母。頼りにしてました、誰よりも。妹。幸せになれ!」みたいな。樹海や自殺なんて、人間にとってはスゴくネガティブなものなのに、なぜかそこにあるテンションからは、スーパーポジティブを感じました。

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U:これを切って持っていくというのは、どういうことなんだろうと思いながら、木を切っている自分たちがいました。でも、この木を使って何かやろうと言ってはみたものの、どんなアイデアを出しても、アートっぽいだけで何か違うような気がしたんです。どれだけ深めていったとしても、あの場の「アッ」と思ったファーストインパクトからは外れたくない。それで、一切深めることをやめて、ひもをブランコにして座っているような自作のフィギュアだけを付け足して、そのまま展示することにしました。何が正しいかは分からないけど、その時のテンションや気持ちをカタチにするしかないんです。それまでは、死というものにスゴく構えていたところがあったのですが、樹海の中は、木が朽ちていて、人が死んでいて、石などの鉱物なども含めて、すべてが死のレイヤーで成り立っている。そこからまた何の秩序もなく、新しい命が生まれてくる。そのテンションが美しかったのかもしれませんね。

水野(以下M):あと、N君の情報が他の自殺者より多かったから、単純に感情移入がしやすかったというのもありますね。

H:ただ、それらのことがあったとしても、自分たちとN君はまだ無関係じゃないですか。それで、ずっとどうしようかというのがあったんですけど、(作品として)出して良いと思えたのは、エリちゃんが付けた「ともだち」というタイトルのおかげだったんです。それによって関係ができた感じはスゴくありましたね。

E:毎日N君のことを超考えて、想いを馳せたりしていて、すっかり友達と同じくらい生活に入ってきてて、もう「ともだち」じゃんって。私とN君とはタメだったし。

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U:僕たちが常にこだわっているのはリアリティなんです。僕らのやっていることは、東京のアートと言われることも多いけど、リアリティさえあれば、樹海でもカンボジアでもインドネシアでもどこでもいい。昨年、「サンキューセレブプロジェクト アイムボカン」でカンボジアに行ったのですが、そこでは死というものが、スゴく生っぽかった。

E:カンボジアで衝撃だったのは、普段から現地の人たちがかわいがっていた犬が、道路で跳ねられた時に、みんな超笑ってたこと。まだピクピクしているのに、「犬が死んだ!」とか言って…。しかも、たぶんそのあと犬鍋にして食べてるし…。

M:でもホントは、動物の命を奪って、それを食べるというのは日常のはず。それを情報として知ることと、間近で見ることでは全然違うんですよね。

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このプロジェクトでは、エリイさんを型どった石膏像や、高級ブランドバッグなどを地雷で爆破したものを作品として発表していましたが、現地の人たちのリアクションはどんな感じだったのですか?

E:現地の人で否定的な人はひとりもいなくて、カナダ人やイギリス人とか、NGOで滞在している人たちからは非難された。

U:彼らは、実際に地雷で爆破されたカンボジアで、こんな行為をすることに対して否定的な反応を示したんだと思うけど、現地の人たちはそんなことお構いなしに爆破の瞬間を見てメチャクチャ笑っていた。人間が爆破されるという悲惨な行為に向けられる倫理観と、爆発そのものを面白いと思う感覚は、相容れるものではないのかもしれないと感じました。

作品をオークションで販売し、売上をカンボジアに寄付するというアイデアはどこから生まれたのですか?

U:エリちゃんが、セレブっぽいからオークションにしようと提案したんです。売上を寄付するという話は最初はなかったんですが、自分たちがお金をもらってもしようがないし、寄付した方がセレブっぽいじゃんということになって。作品を深めていくなかで、カタログもしっかり作ろうとか、いとうせいこうさんにオークショニアとして出てもらおうとか、設定価格をダミアン・ハーストのダイヤで作った骸骨の作品の値段から、徐々に下げていくようにしようとか、どんどん決まっていきました。

今後の予定で決まっているものがあれば教えてください。

U:4月にインドネシア、ブラジルやロスで展覧会があります。あとガンダーラ映画祭で、オークション、寄付までを含めた「アイムボカン完全版」を上映します。今年後半は、広島市現代美術館無人島プロダクションヒロミヨシイでそれぞれ個展をやる予定です。国内の展示はすべて新作にするつもりです。でも、やりたいものを完全にカタチにしようとすると、予算的にも倫理的にも難しいところがあって…。それをなんとか実現させていくということを、場所を問わず今年はやっていきたいですね。

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