MATT FURIE | マット・フューリー | Artist
赤ん坊を大事そうに抱きかかえるフレディー・クルーガー(『エルム街の悪夢』)、少年にタギングをされたファルコン(『ネバーエンディング・ストーリー』)、ストリートに集うビッグバード(『セサミ・ストリート』)や奇妙なモンスターたち…。血を流したり、頭をもぎとられているキャラクターなどのグロい絵や、有名キャラクターをあり得ないシチュエーションで描いたりと奇妙なモチーフが多いが、アメリカ映画やテレビ番組の人気キャラが多々登場し、色鉛筆で鮮やかに描かれる作風はポップな印象を与える。その絶妙な組み合わせが紡ぎだす独特のスタイルで、アメリカのアンダーグランド・コミック界を中心にジワジワと人気が浸透し始めているマット・フューリー。その正体は意外にも、ダンスとBMXとYouTubeが大好きで、毎日ベッドルームでひたすら絵を描いているのが最高の幸せだというボーイ・ネクスト・ドア的な好青年だ。今回、Public/imageは、サンフランシスコ在住の彼にインタビューする機会を得た。
Text:寺島彩子(Alakazam!)
サンフランシスコを拠点にされていますが、住んでみていかがですか?
ここに住んで6年以上になるけれど、すごくきれいな街だしカリフォルニア生活をエンジョイしているよ! 自分の部屋にこもって絵を描くことが多いけれど、息抜きに外に出て、自転車に乗ったりするのに最適な街だね。サンフランシスコは、街全体が大人向けの高価な遊園地みたいだから好きだね。とんでもなく急な坂がたくさんあって、自転車や車で色々と回って、坂を上り下りすると本当に遊園地のようだよ(笑)。人も多いし、信号があちこちで点滅してる。ゴールデンゲートパークは巨大で変わった木や植物だらけ。バッファローもいるし、美術館や自然史博物館、茶庭、樹木園、植物園など盛りだくさん。平日に行くと人込みから逃れられて落ち着くね。
サンフランシスコにあるアトリエの様子。
出身はオハイオ州とのことですが、子供の頃のお話をして頂けますか?
漫画カードとかトイとか、色々面白いものを集めるのが趣味で、ビデオゲームとドラゴンと自転車が大好きだった。あと、オハイオで過ごした夏はすごく懐かしいな。特に夏の夜は最高だった。夜になってもすごく暑くて、虫やカエルの鳴き声がずっと聞こえるんだ。不思議なものがたくさんあって、時間がゆっくり流れてたね。
一番好きな動物は何ですか?
コウモリ! 哺乳類できちんと飛ぶことができるただ一つの動物だし、最高にカッコいいよね! よく「ネズミに羽がついた」と例えられることがあるけれど、どちらかと言うと猿や人間に近いと思う。カワイイ風貌のものもいれば、恐かったり、醜いやつもいる。種類も色々だし、コオモリの絵は一日中描いても飽きないよ。
今までで影響を受けた音楽やアート、カルチャーなどについて教えてください。
ピーウィーズ・プレイハウス、ピンク・フロイド、エイフェックス・ツイン、レン&スティンピー、ウォーリーをさがせ! 、ゴミ箱キッズ(Garbage Pail Kids)、ニルヴァーナ、宮崎駿 、スキニー・パピー 、エコロジー、90年代のMTVアニメーション、ペーパーラッド、マジック、悪魔、ターミネーター、ドラッグカルチャー、動物、怪獣、ロバート・クラムなどに影響を受けたよ。
「宮崎駿」と聞くと、日本人としては思わずどの映画が好きかを聞きたくなるのですが、お気に入りを教えてください。
ひとつに絞るのは難しいな。ベスト3を挙げると、『千と千尋の神隠し』、『風の谷のナウシカ』と『もののけ姫』かな。『もののけ姫』が初めて観た宮崎映画だったんだけど、感激したね。自然環境に関する題材やメッセージ、そして何と言ってもキャラクターの素晴らしさ! 特にオオカミやイノシシ、それとシシガミは本当に最高。シシガミが殺された時は泣いちゃったよ。アニメーションとそのディテールは鮮明で美しくて、想像性に富んでいて、感動するシーンや恐いシーンなど本当に色々な面で素晴らしい。「千と千尋」はその後に観たんだ。たぶん3つの中で一番好きだと思う。この映画もクレージーなキャラクターの数々に圧倒された。「ナウシカ」は最近観たんだけど、人間のダークな部分とか恐ろしいほどにバランスが崩れてしまった生態系などのテーマ性に現実味があって共感できたよ。あと、ストーリーや構成も色々な要素が複雑に絡み合っているよね。モンスターや色々な生き物を描くのが大好きで、ずっと描いてきたけれど、宮崎映画にはかなわないよね!
『セサミ・ストリート』や『ネバーエンディング・ストーリー』など、子供文化を象徴するようなキャラクターをよく描かれていますが、こういったモチーフはパーソナルな趣味なのでしょうか? それとも社会的、あるいは文化的な意味合いを持っていますか?
『ネバーエンディング・ストーリー』は僕にとってスゴく大切な映画なんだ。大人になるにつれて、夢やファンタジー、創造性などとかけ離れた世界に移行して行ってしまう過程がテーマになっているんだけど、子供が持っているような想像の世界に自由に浸る感覚を持ち続けるのはスゴく難しいことだよね。世界中の誰もが、クレージーな生き物を頭の中で想像することがある。こういう不思議で面白い生き物について考えたり、彼らと友達になったりすることってすごくクールなことだと思うんだ。『セサミ・ストリート』のマペットやストーリーを作り出したジム・ヘンソンも想像の世界を追求したすばらしい人だよね。彼が創造したキャラクターは今でも多くの人にインスピレーションを与えているし、人々の生活を楽しくしてくれている。こないだ僕の友達のアルビンが、『セサミ・ストリート』のオリジナル版を見せてくれたんだけど、強烈だったね。ビッグバードの頭はすごく小さくて、「ゴードン」役の俳優も最高! ちょっとしたアニメーションやパペットもスゴく良く出来ていた。それに引き換え、最近の子供番組はつまらないね…。
オリジナルの子供番組を自分で作ってみたいと思うことはありますか?
今は絵を描いていることが楽しいし、ベストな色鉛筆の絵描きになることを目指しているから、それはまだ先の話かな。もし子供番組を作るとしたら、ストーリーを組み立てたり、僕の絵を番組に取り込むための技術やヘルプが必要だね。でも、もしやるとしたら「ピーウィーズ・プレイハウス」のようにすると思う。「ピーウィーズ」は実写と悪趣味なグラフィック、コマ撮り、クレイアニメーション、古いマンガのクリップがミックスされていて、かなり奇妙な世界観を作り出している。一番好きな子供番組だし、こういった番組を作れたら最高だと思うよ。
色鉛筆を主な画材として使用しているマット・フューリー氏。
10年後の自分は何をしていると思いますか?
自分の好きなバンドのアルバム・ジャケットをやっているかもね。アニメーションもしてみたいよ!
最近の気になっている題材を教えてください。
アニマルキングダム だね。
プロフィールに、「踊ること」と「YouTubeを観ること」が趣味と書いてありますが、どのような踊りをするのですか? それと、最近のyoutubeでのお気に入りも教えてください。
僕のダンスはたいがいナードな感じな踊りだね(笑)。クルクルいっぱい回って、手を上げたり、下手なロボットダンスをしたり…。最近のYouTubeのお気に入りは、http://www.youtube.com/watch?v=gB65ENKm4AM、http://www.youtube.com/watch?v=XYFG937Kqb4&feature=related、http://www.youtube.com/watch?v=vFlBJ1xZK10、http://www.youtube.com/watch?v=P81dHaZiyA8&feature=relatedだね。
最後に今後の予定ややりたいことなどを教えてください。
4人のモンスター・ボーイズが、ダラダラとハングアウトしている話を描いた『Boys Club』というコミックがもうすぐ発売される予定だよ。今後やりたいこととしては、もっと大きくて複雑な絵に時間を費やしたいね。あと、年間5回以上は外で寝たい。もちろん寝袋でね(笑)。

『Boys Club』より。










