
TOKYO No.1 SOUL SET | TOKYO No.1 SOUL SET | Musician
80年代終わりから90年代にかけて、小さなクラブやライヴハウスから生まれたアーティストたちが躍動していた。そこから20年近く経った今、ポジションは変えながらもスタイルは変えずに活動を続けている希有なバンド、TOKYO No.1 SOUL SET。長い年月を経てそのサウンドは熟成したが、ニューアルバムで鳴らされているのは、やはりまぎれもない「ソウルセット」の姿だ。音響的には、ダンスミュージックの要素や現代的なエッセンスを取り入れることでより深みを増してはいるが、BIKKEが紡ぎ出すのは相変わらず苦しくて、切ない「青春」の詩。これまでの彼らの作品同様、3人の個性がぶつかり合った、形容のしがたい独特の作品に仕上がっている。なんといってもタイトルがまったく枯れていない。『No.1』だ。
Text:大草朋宏
新作のタイトル『No.1』は、もちろんバンド名にも入っている言葉ですが、ベテランの域に入った今、なんとも上昇志向なタイトルをつけるものだなと感じました。
BIKKE(以下B):僕らが、『No.1』ってタイトルをつけるのは、(バンド名にも入っているので)ルール的にもアリな気がしますし、誰の目も気にせずに言っても大丈夫だろうし(笑)。前からそういうタイトルを付けたいとはなんとなく思っていたので、そう思ったら早めに付けておこうかなと。『No.1』ってタイトルを付けたら、間違えて売れないかなとかね(笑)。でも、未だ途中な感じはしているんです。ひとまずアルバムというパッケージとして出すんだけど、この流れはまだ続いているというか、まだ完成していない気がする。たぶん3人とも似た感じは持っていると思うんだけど。
渡辺俊美(以下W):もちろん自分たちの中でこのアルバムはすごく納得しているんだけど、これが『No.1』だからって、次が『No.2』ってことではない(笑)。
今の音楽のトレンド的な要素も盛り込まれているように感じたのですが、その辺りは意識されていましたか?
川辺ヒロシ(以下K):そんなにひねったり狙ったりは意識してないです。(自然に)出ちゃうものはしょうがないですけどね。最初にラフトラックを20曲くらい出してから、半年くらい経っていることもあって、完全に「今の気分」ってわけでもないかもしれないですしね。自分でいうのもナンですけど、ずっと作っている音にはブレがないんですよ。だからいつ作っても大丈夫かなって感じはある。それにふたりが手を加えていく。別に3人で一緒にスタジオに入ってセッションするわけではない。だから毎日ビックリしますよね。「昨日のデモがこんなことになってる」って。

その時点では話し合いなどはされないのですか?
K:最初の段階ではないかな。話さない方が逆に面白い。
W:お互いそんなホメ合わないしね。(自分が作ったパートが)次にスタジオに入った時まで残っていれば、「アリだったんだな」って思うくらい。そういう作業をずっと続けていますね。バンドには、セッションしながら作り上げていく良さがあると思うけど、逆に「寝かせる良さ」もあるんだよね。
B:僕らの場合は、全員が楽器を演奏するわけじゃないし、いちいちそこで話し合うよりも、それぞれが自分の作業をしている方が話が早いんですよ。
W:それで変な作品ができることはないし、必ず良い作品ができるのはもうわかっていることだから。
同じ方向に向かっていくための確認作業のようなものは必要ないわけですね。
B:僕らに限っていえば、3人でやるということ自体がすでに意思統一ですね。
なるほど。さて、今回のアルバムの内容について、もう少しお話をお伺いしたいのですが、全体を通してビートがより強まり、ハウシーな曲などダンスミュージック的な要素が増えていると感じました。
K:始めからそうしたかったわけではなく、結果的にこうなったという感じですね。この2人(川辺ヒロシと渡辺俊美)の(音の)出し合いの結果です。
W:ビートひとつ、ちょっと無くしたりするだけで結構変わるんですよね。その辺のニュアンスを永遠に交換し合っている感じです。今回はエンジニアがすごく細かい人だったので、それもスゴく助かった(笑)。ぼくらはそういうのが意外と適当なんです。


(左)DJ川辺ヒロシ氏、(右)Vo,G渡辺俊美氏
TOKYO No.1 SOUL SET独特の青春っぽさや切なさは、本作でも変わらずに含まれていますよね。1曲目の『Innocent Love』なんて、あまりにもピュアだなと(笑)。
B:(笑)。こういうものを書こうと考えていたわけではないんだけど、結局そうなっちゃうってことですかね(笑)。ただ、最近「折り返し地点」はちょっと過ぎちゃったと思っているんですが、だからこそ行ききりたかったというのはありますね。ここまで来たら、もう果てまで行きたいなと(笑)。
ここまでキャリアを重ねてきて、変化を感じることはありますか?
B:最近は何も気にならなくなりましたね。元々周りのことはあまり気にしなかったんですけど、もはや自分のことすら気にならなくなってきた(笑)。以前だったら、多少は前の作品なんかを意識しながら作っていた部分もあったと思うけど、今はそういうことがない。その時にどう感じたかということをストレートに出しているんだと思います。
色々と変わっている部分はあると思いますが、今回のアルバムを聴いてみると、やはりまぎれもなく「これがソウルセットだ!」と感じます。常に新しいことを目指すことはアーティストの本分だと思いますが、逆に変わらずに大切にしていることがあれば教えてください。
B:要は「それが新しいかどうか」ってことを意識するかしないかということだと思うんだけど、自分の場合はそういうことを意識することはあまりないですね。
W:新しいことをするということは、自分のためではないような気もするんですよね。ある意味ウソをつかないと新しいものなんてできなかったりする。そればかり追求していくと、なんか人のためにやるような気がしてくるんです。結果的に新しいというのが理想。人に「新しいね」とか言われたらもちろんうれしいけどね(笑)。でも結局「懐かしい」とか言われるんだけど(笑)。
B:言われるよね(笑)。「青春」とかね。ま、そんな感じだからやり続けてこれたのかもしれないけどね。

Vo.BIKKE氏
メンバーの皆さんは、それぞれソロや別ユニットでの活動もされていますが、ソウルセットに関しては、「ホーム」という感じがあるのでしょうか?
W:まあ一番楽ですよね。打ち合わせもいらないし。逆にもっと喋った方がいいんじゃないかってくらい(笑)。「作品を作らなきゃいけない」「テーマを見つけなければならない」っていうよりは、こういう自然な形の方が僕らにとっては良いリズムなんです。(ソウルセットは)いつも待っていてくれる奥さんという感じですかね(笑)。
B:ホームかどうかはわからないけど、ここまでやって来られているってことですからね。『No.1』ってタイトルも、昔だったら逆に恥ずかしかったと思う。でも、ソウルセットでそうならなければ、結局他も上手くいかない。だからソウルセットでは調子こいていきたい(笑)。
K:ここがしっかりしていれば、あとは何やっても大丈夫だし、いろんなことできるんです。
5月からはツアーも始まりますね。
B:最近マイクをワイヤレスにしたから、すごく自由なんですよ。ステージ上でよく動くようになった(笑)。今までの自分たちのライヴを知らない人からすれば、別にどうってことないと思いますが(笑)。
K:むしろ元に戻ったんじゃない? もともとレゲエスタイルで、マイクスタンド使ってなかったんだから。
B:確かに音楽を始めた頃に戻ってる気はします。だから今はすごくピュアですよね。でもこれからちょいちょい汚れていくんだよね(笑)。「これも大人かー」なんて言いながら(笑)。
ニューアルバム『No.1』は、avex / tearbrige recordsより発売中。








