OSSU! SYUGEI-BU | 押忍!手芸部
7名の男性メンバーを中心に、”部活”という形態で活動を続ける「押忍!手芸部」が今大きな注目を集めている。手芸経験ゼロからスタートした面々ばかりという”部員”たちが創り出す素朴でユーモラスな作品は以前から人気を博していたが、先日原美術館で開催されたワークショップを始め、近年は美術館やアートイベントなどからのアプローチも多くなり、”部活”の場は日増しに広がっている。技術に頼ることなく制作に取り組む彼らの姿勢は、皆が忘れかけていたクリエイティブの原点や、もの作りの楽しさを再認識させてくれるものとして、見習うべき点も多いだろう。「押忍!手芸部」の言い出しっぺであり、日頃より ultra tama 名義で様々なデザイン業務を手掛ける「部長」こと石澤彰一を恵比寿のアトリエに訪れた。
Text:原田優輝
「押忍!手芸部」が生まれたきっかけを教えてください。
ワシは元々ファッションデザインの仕事をしてたんです。でも、かなり個性の強い特殊なデザインをしていたので、既製服にはあまり向いてなくて、徐々に一点物の衣裳やオブジェ的な作品等も作るようになっていきました。当時から、デザイン画を描いて型紙を作り、裁断して縫製するという服作りのプロセスには面倒くさい工程が多いと感じてて、そういう工程を省いた服作りができたら結構面白いんじゃないかと漠然と思ってたんです。ただ、それは既製服の世界では絶対に無理なことでした。そんなある時、知り合いと手芸の話になったんですが、一般的には少女趣味的なイメージが強い手芸で、そういうことができれば面白いんじゃないかと思い、「押忍!手芸部」を立ち上げてみることにしたんです。
当時は何名でスタートしたのですか?
4人で始めました。ワシが部員をかき集めたのですが、手芸経験なんてまったくないし、どちらかというとそんな面倒くさいことはやりたくないというようなメンバーばかりだったんです(笑)。でも、ワシとしてもそういう面倒くさいことをやらないという前提でスタートしていたので、「まずは試しにやってみようよ」と。
なぜ、あえて経験ゼロのメンバーばかりを集めたのですか?
ワシがイメージしてた「押忍!手芸部」的な作り方は、何も情報がない素人の方が受け入れやすいかなというのがあったんです。キッチリとモノを作れる経験者にやらせると逆に戸惑ってしまうんじゃないかと思ったんです。そうは言っても、スタート当初は方向性も全然決めてなかったし、もしかしたら1回きりで終わってしまうかもしれないと思ってました。でも実際に始めてみると、みんなのめり込んでいってくれたし、想像以上に面白いものがどんどん生まれて、継続していくようになりました。
当初は、販売目的のプロダクトとしてではなく、作品制作として取り組んでいたのですか?
そうですね。今でこそ商品として販売されているものもあるけど、基本的にはずっと作品として作ってきてます。やっぱり、売り物じゃないものとして生まれてきた作品の方が良いものになると思うんです。作品として展示していたものを見た人が欲しいと言ってくれた場合には、それを作った部員とお客さんの間で話し合ってもらうようにしてますが、最初から販売目的では作ってないですね。
「押忍!手芸部」が作る作品はとても素敵だと思うのですが、それ以上に「部活」という概念が興味深いです。成果物よりもそこに至るまでのプロセスを大切にされているような気がします。
それはずっと考えてることですね。部活の時は大体いつもここに集まって、こんな感じでやったら面白いんじゃないかという例を最初に見せてから始めるんですが、それがみんな出来なかったりするので、それぞれが全然違う新しいことを勝手に考えていくんです。その姿が「押忍!手芸部」だと思ってるし、そんなプロセスを経て生まれたものが、たまたま作品として展示されたり、販売されていくのですが、その前の段階の方が「押忍!手芸部」にとっては大切なんです。
現在のメンバー構成について教えてください。
40代の男性7名が中心メンバーではあるのですが、それぞれが友達や彼女を連れてきたりして、どんどん広がっていて、今は性別も国籍も関係なく色々な人達が集まってきます。部活をやる時はだいたい20名前後に声をかけて、その時来られる人が来るという感じなので、ひとりしか来ない時もあれば、10人以上参加してグチャグチャになることもあります(笑)。最初は「7人の男性」ということで固定して、それ以上増やすつもりはなかったんです。さっきも話したように、手芸には女性っぽいイメージがあったので、7人の男性というだけでインパクトがありますからね。でもある時、「男の手芸」をテーマに取材を受けたことがあったのですが、「男」ということで括られてしまうと、それ以上に広がりがなくなってしまうと感じたんです。伝えたいことはそういうことではなく、「作り方」の部分だったので。
部活の時は、やはり石澤さんが指導役となるのですか?
部員に何かやりたいことがある時は、そのやり方を提案してあげつつ、「でも、他のやり方でもできるかもしれないよ」というような伝え方をしてます。もう部員も馴れているので、勝手に自分でテクニックを編み出してやっていますね。基本的に、細かい手芸的な技術はあまり教えないようにしているんです。例えば、縫う時は最初と最後は「玉止め」をしないといけないとみんな思っているんですけど、糸が抜けないようにすることがそもそもの目的なので、必ずしも玉止めをする必要はないし、別のやり方を考えても良いわけですよね。何が目的なのかを明確にして、やる必要がないことはやらなくてもいいという話はよくしていますね。
なるほど、確かにその通りですね。でも、長い間続けていると、素人だったメンバーもさすがにかなり上達してきますよね。
確かに針と糸を扱うことには馴れてきているように感じますが、不思議なことに技術的には上達していないんです(笑)。普段から上達する必要はないと話しているし、みんなも家に帰って練習するわけではないですからね。「わざと下手に作っているんじゃないか?」と思われることも多いのですが、みんな真剣にやってます。でも、できないんです(笑)。それによってアジや個性が出ているんだと思いますけどね。要は今の自分ができる範囲でやれば良いということなんです。あと、「押忍!手芸部」では、最初にデザイン画を描くことを禁止しています。最初の頃はデザイン画を描いていたんですが、みんな絵が下手すぎて(笑)。頭の中にあるものを無理矢理絵に描こうとすると、最初のイメージがブレてしまうだけなのでやめました。
石澤さんが作る作品と他の部員たちの作品では、仕上がりのクオリティに差が出てくるような気がするのですが、それらを作品として並べた時などに違和感を感じたりはしませんか?
全然気にならないですね。技術が優れているから良いというわけではないし、要はそれぞれの個性が大切だと思うんです。ワシは普段デザインの仕事もしていて、そこではもちろんミリ単位の技術が必要とされる場合もあるので、技術そのものを否定しているわけでは全然ない。「押忍!手芸部」では、たまには普段使わない部分を使ってみるのも良いんじゃないかという意識でやっています。
部活の時には、毎回何かテーマを設定されているのですか?
基本的には毎回違うことをやるように心がけています。1回やったテーマがどれだけ面白くても、もう1度同じテーマでやることはなくて、毎回新ネタを披露するようにしています。部活を始めてから5年程経っていて、すでに80回くらいやっているので、アイデアも尽きてきてしまう時もあるのですが、それでも新しいモノを出していくのがワシの仕事だと思っています。部員はいつもここに来るまで、何を作るか全くわからない状態なんです。その場で手を動かしながら、どんどん変化していって、1時間くらいやっているうちに何となくカタチになっていくというのがいつもの流れですね。
設定されるテーマというのは具体的にはどういうものなのですか?
「靴下を使う」とか「グルグル巻いて作る」とか、ホントに色々ですね。ただ、今の時代に合ったテーマということは意識にしています。こんなことをやったら面白いんじゃないかというアイデアは頭の中にいくつかあるのですが、それが今の時代と合うかどうかということは常に見計らっていますね。
「押忍!手芸部」の作品には、既製品を再利用したものも多いと思うのですが、「リサイクル」や「エコ」という意識はあるのですか?
よく「エコっぽい」とか言われるんですけど、基本的には、単純に「これを使ったら面白いんじゃない?」というところがベースになってます。透明の熊のぬいぐるみの中に、布の端切れを入れている作品があるんですが、これなんかも単に「別にぬいぐるみの中に入れるものは、別に綿じゃなくても良いんじゃないか?」と思って、試しに布の端切れを入れてみただけなんです。そうすると、ぬいぐるみが出来上がった時にゴミもキレイになくなって、それがスゴく気持ち良くて(笑)。そういう感じなので、特に意識しているわけではなく、たまたまという感じですね。
最近は、様々な場所に行かれてワークショップをやられていますよね。
そうですね。基本的には作品を展示する機会に部活も一緒にやっています。そういう場合は、全く知らない人たちと一緒にやるわけですが、基本的な内容はいつもとほとんど変わらないですね。部員たちも教える側に回るわけでもなく、一緒に作品を作ってます。もちろん外でやる場合は人数も多いので、マシン(ミシン)の数や使う素材などの面で、制約は少し多いですけどね。
どのような人たちが集まってくるのですか?
基本的には、20歳以上の大人に向けてやってます。自分たちの作り方って、大人よりも子供の方が簡単にできてしまうんですよね。前に大人も子供も一緒にやったことがあったんですけど、子供たちがすぐに始めるのに対して、大人はまず周りを見渡して、様子を伺うんです(笑)。学校に入って、人と競争したり、決められた作り方を教わったりしていく過程で、だんだん自由な発想ができなくなっていくところがあるんじゃないかと思うんです。だからこそ「押忍!手芸部」では、ネジを2,3本外して、子供の頃に普通にできていたことをもう一度やってみるということが大切なんです。
最後に今後の予定について教えてください。
年内にアメリカの3カ所で展示をします。10月にシアトル、11月にサンフランシスコ、12月にはニューヨークでやる予定です。


