
DOKAKA | ドカカ | Musician
ほぼ無名に近い存在であったドカカをフックアップしたビョークにも驚くが、その作品から知った彼が、どんな音でも”クチ”で表現できることに驚いた。それ以来沈黙を守ってきた彼が、つい先日、待望のファーストアルバム『 HUMAN INTERFACE 』をリリ−スした。一般的に持たれている「ヒューマンビートボクサー」のイメージを一気に払拭する本作は、絶対に誰にもマネできるものではなく、そもそもマネする気さえおきない作品だろう。そういった意味では、オリジナリティに溢れ、他の追随を許さないアルバムと言えるのだが、彼の根底には、「より良い音楽を楽しみ、生み出す」という純粋なマインドだけが存在し、結果それが”クチ”で表現することであっただけでしかない。彼にとって、”クチ”は絶対的なアートフォームであると同時に、手段のひとつに過ぎないのだ。それはドカカのライヴを観れば一目瞭然であろう。アルバムリリースパーティで朝まで騒ぎ通した翌日、彼に話を聞いた。
Text:大草朋宏
「クチ」音楽をはじめたきっかけを教えて下さい。
最初は子供の頃のゲーム音楽ですね。「ドラクエ」とか「ゼルダの伝説」とか「ファイナルファンタジー」なんかの曲を録音して、クチでマネしてたんです。でもやっていたのはベースラインばかり(笑)。ある時、母親に「このブーブーなってる低い音は何?」って聞いたんです。でも「わからない」って。その後、カラオケに初めて行った時にも、当然、ベースラインを歌うものだと思っていたんですよ。そうしたら、みんなボーカルを歌うんですよね。そのとき、「なんでだろう?」って思って(笑)。だから、カラオケはボーカルのパートだけじゃなくて、ドラムもベースも、全部のパートを用意して欲しいですよね。絶対ベース歌っている方が楽しい(笑)。
そんな少年時代を経て、その後は音楽的にはどんな影響を受けて育ったのですか?
高校生の時に、友だちからたまたま借りたイングウェイ・マルムスティーンとアイアン・メイデンのCDがメチャクチャカッコ良くて。ギターはもちろん良かったんですけど、ドラムもカッコ良い。その頃は、キッスのコピーバンドをやったりしてました。

では、ヒューマンビートボックスとは言え、ヒップホップの影響はほとんど受けていないということですか?
はい。ラゼール(※ヒューマンビートボクサー。元ルーツのメンバー)よりメイデン(笑)。初期の頃に、アフラさんとイベントに出たんです。それでヒューマンビートボクサーのイメージが強くなってしまったんですけど、ヒップホップは全然聴かないですし、ヒューマンビートボックスをやっているという意識もないんですよ。たまたま好きなメタルの曲をクチでやっていて、でもそんなジャンルないから、ヒューマンビートボックスという捉えられ方されちゃいましたね。だけど、「これは違う」って最初に気付いてくれた人が、いきなりビョークでしたからね。
そのビョークのアルバム『Medulla』に参加することになった経緯を教えて下さい。
自分のホームページに音源を出していたんです。それをニュージャージーにあるWMFGというB級のラジオ番組で取り上げてくれて。その番組をマトモスがかなり好きだったらしいんですよ。そこからビョークに伝わったみたいです。それでたまたまホームページに「ニューヨークに旅行に行くよ」って書いたら、「旅行にくるならレコーディングしよう」とビョークのマネージャーから連絡がきたんです。
DOKAKA with Bjork
先日リリースされたばかりのオリジナルアルバム『HUMAN INTERFACE』についてのお話も聞かせてください。具体的にはどのように進めていったのですか?
思い立った順番に録っています。思い付いたメロディとかに合わせていますけど、基本的には何も考えていないんです。計画を立てるのが、ホントにヘタクソで(笑)。でもどれだけ苦労したことか! 例えば、そもそもヒューマンビートボックスって、ドラムはすべて一緒にやるものだと思うんですよ。でもオレは、ハイハット、キック、スネアと全部別々に録るんです。それを多重録音して、初めて曲が完成します。ドラムも分解してギターやベースや他のパートも合計すると、全部で最低でも10パートはある。68分のアルバムで10パート。サンプリングはしていないので、つまり680分をNGナシでレコーディングし続けるという、遠い道のりでした。これはたぶん、世界でボクしかできないと自負しています。
ダンスミュージックのバックボーンがない割には、さまざまな曲調が散りばめられていますよね。
(ここで、一緒にアルバムを制作したTKDOG登場)一枚のアルバムにまとまったときに、ひとりの声だけなので、似たような曲ばかりになったらつまらないだろうと危惧していたんです。それで、ドカカが今まで聴いたことのないハウスとかテクノとかヒップホップの曲をガンガンぶつけていったんですよ。そうしたら、全然違う方向から自分なりに消化して、インプット即アウトプット。脳の中の複雑な回路を回って、全然違うモノになって生まれてくるんですよ。
すごいですね。しかもそれをすべてクチで表現しているなんて。
でも、ホントは音色だけで聴いて欲しいんですよね。たまたまクチで表現しただけであって、別にクチでなくても何でもいいんです。ただ、自分で言うのもなんだけど、このハーモニーはクチでしか出せないと思います。

最適な音色や音質を出す表現がたまたまクチだった、ということですね。タイトルにも変な言葉が並んでいますが、これはやはり自然にクチから出てきたんですか?
そうですね。TKDOGと一緒に「面白い言葉言おうぜ」って遊んでいて、例えば、「HA TA GLI LA TO」って曲は、「マタギラト、マタギラト」「ハタギラト、ハタギラト」って言っているなかで生まれたんですよ。あと、人の名前を適当に連呼するのが好きなんです。山田山田山田、佐藤佐藤佐藤、田中田中田中。タナカの3回目くらいから気持ち良くなってくるよね〜。
…(笑)。昨日のライヴ(リリースパーティ)もそうでしたが、衝動的なアクションや言葉のインパクトが強いですよね。
その場で思ったことをやっていくような生き方なんですよ。とにかく、今日思った面白いことを今日やる。一般的にはダメだとわかっているんですけど、気付いたらいつもそうなっちゃってるんですよね。決めてやる人生って苦手なんですよ。そうすると、ガーっとこみ上げてくる素の衝動を押さえつけちゃうんです。

ところで、ビョークのアルバムから4年ほど経っていますが、その間は何をしていたんですか?
何もしていないですね。オレむちゃくちゃオタクですからね。オタクって引きこもりがちだけど、そのオタクの良さをエンターテイメントとして出す。自分で言うのもなんだけど、それが新しいんですよ。「音楽」と「ネット」と「鉄道」が自分の柱です。
鉄道! ちなみに何鉄ですか?
全部。もちろん音も好きですよ。一番良いのは113系、115系、103系。昔と今の山手線の音が、明らかに違うってわかってます? 初期の113系の「ンンンンーーーー」っていう地を這う音、カッコ良かったのに。あと、つりかけ式っていう、東武野田線とか十和田観光鉄道とかに走っているやつも好き。この前も九州に行ったんです。直流から交流に変わるところがあって、一瞬、電気が消えるんですよ。おれみたいな鉄道ファンは、電気が消えるポイントにワクワクするんですよね。だけど、いつも乗っている人は平然とした顔をしてる。それがまた興奮するんですよね! …こういうのはアートになりますかね?(笑)
わかりませんが、村上隆さんなんかよりよっぽどディープにアキバ系をアートにして欲しいですね。
アキバといえば、ソフマップの店頭で流れている曲も好き。ベースラインカッコ良いですよ。九十九電機の曲も好きだったな。ケーブルとかのパーツ屋巡りも好き。あまり見かけることのないステレオの5ピンのキャノン端子知ってます? あれ高いんですよ。あと、テレフォンカードも集めてる。「熊日ウーマンカレッジ」の特別なテレカがあって、150万円くらいするんですけど、欲しいんですよね。 YouTube では、決算報告会の映像も見ています。この前、ソフトバンクとソニーの説明会を見たんですけど、ある人はイライラしてくると、ボールペンをカチカチ鳴らすんですよ(笑)。最近は、アラビア語にもハマってるんですよ。ノドにひっかける発音があって、例えば…。
もういいです! 存分にオタクっぷりがわかりました(笑)。では最後に、12月5日にUNITで開催される「Public/image. FOUNDATION」でのライヴがどんな感じになるか、教えて下さい。
音楽とエンターテイメントを混ぜて、その時に一番やりたいものをやります。これからも、メロディがあって踊れる音楽なら、どんどんクチでトライしていきたいですね。
DOKAKA with Mike Patton











