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intentionallies | インテンショナリーズ | Architect / Design Office

95年の設立以来、建築を中心に、様々なメディアを横断するモノ作りを展開し、既存の建築アトリエの概念を覆す仕事を続けてきたインテンショナリーズホテルクラスカアマダナを始め、数々のエポックメイキングを打ち立ててきた彼らの活動は、建築がその場に新たな文脈を作っていくことと同様に、クリエイティブシーンにひとつの流れを創り出し、各方面に多大な影響を与えてきた。近年では、海外のビッグプロジェクトにも参画するなど、活動領域をさらに広げている彼らを支えるものとは何か? インテンショナリーズ代表・鄭秀和に話を聞いた。

Text:原田優輝


まずは、95年のインテンショナリーズ設立当時のお話から聞かせてください。

最初はムサビ(武蔵野美術大学)時代の先輩ら3人で、「1人で10年かかることを、3人で3年でやってみよう」ということでスタートしました。当時の時代背景としては、すでにバブルが崩壊して5年くらい経っていて、何も良い話がないような状況でした。でも、景気が良くなった時のことを考え、あえてこの時期にくさびを打っておいた方がいいんじゃないか、という漠然とした考えがあったんです。当初から、建築を通して、空間全体を作っていきたいということは考えていたので、「家具から超高層建築まで」というキャッチフレーズを掲げていました。もちろん、不景気で建築だけでは仕事がなかったという理由もあるんですけど(笑)。

その当時は、小規模なユニット単位で、ジャンルを横断したクリエーションを展開するインディペンデントなチームが世に出始めていた頃で、ムーブメントとして取り上げられたりもしていましたよね。

そうですね。けれどもマスコミからも反体制的に見られているところがあって、「嫌いな建築家を挙げてくれ」というアンケートの依頼などもあったのですが(笑)、自分たちにはそういう意識は全然ありませんでした。結成メンバーのうち、僕以外の2人は、それぞれ建築アトリエで働いていた経験があったのですが、色々な意味で限界や疲弊を感じていたのだと思います。だから、良いものを作って、正当に評価してもらいたいというシンプルな動機が何より大きかったと思います。そのために戦略的なもの作りをしてきた部分もあって、信藤三雄さんの展覧会の会場構成を手掛けた時に、プレスリリースに自分たちの名前をクレジットしてもらったり、ギャラリーロケットの内装をやった時も、こけら落としの展覧会をやらせてもらったりしました。建築家がそういうことをやること自体、それまではあまりなかったので、「マルチ」と言われて注目された部分もあったのだと思います。ただ、文脈がまったくバラバラなところで「マルチ」にやってきたわけではなく、ひとつのことを突き詰めていったら、自然と別の山が見えたという感じでしたね。

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そもそも、鄭さんが建築の道に進んだ理由は何だったのですか?

うちの父は構造家だったのですが、僕自身、それほど建築に興味があったわけではないんです。もともと絵を描いていたこともあって、美大に進んだのですが、やがて、自分の中から沸き上がってくるような創作意欲はそんなにないんじゃないかと気付いたんですね。それよりは、何かきっかけが外にあって、そこから始まる表現の方が向いているように思えて、その時に建築というのが漠然とあったんでしょうね。当時は、建築を、総合芸術や社会的な彫刻と捉えていたのですが、音楽やアートなどに比べて、街を歩いていて、カッコ良いと思える建物があまりないと思っていたんです。それに、自分の性格として、時にはじっくりと時間をかけて何かを作っていくことが好きということもあったのだと思います。

音楽やアートなどに比べ、建築は制約などが多い表現ですよね。

そうですね。それは実際にこの世界に入ってみて、より強く感じたことでもありました。ちょうど今も、台湾で東京ミッドタウンくらいの規模の商業施設のプロジェクトに携わっているのですが、38万坪もある敷地に建物を作っていくわけですから、プロジェクトを推進していくために、表現以外の目に見えない部分でやらないといけないこともたくさんあり、一筋縄ではいきません。例えば、売れているアーティストがCDをたくさん作ることはありますが、その人の家というのはそんなにはたくさん作らないじゃないですか(笑)。それは宿命としてずっと感じてきていることではありますね。

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そうした世界の中で、インテンショナリーズはどのような立ち位置を築こうとしてきたのですか?

昔は、建築家と言えば、公共建築を作っていく職業という認識が強かったと思うんです。でも、自分たちのようなアトリエでは、そういうものをやるのは難しいだろう、と(笑)。それなら民間のプロジェクトを中心に、人々がパブリックアクセスをしやすいものを意識して創っていこうという想いがあったんです。ただ、建築家という職業はすでにシビアな状態で、従来のシステムは成り立たなくなっています。極端な話、これから先、建築家という職業がなくなってしまうんじゃないか? という危機感は常に抱きながらやっています。

とはいえ、ホテルクラスカなどを経て、現在手掛けられている台湾のプロジェクトなど、仕事の範囲や規模はどんどん大きくなっているように思います。

これまでインテンショナリーズは、3年をひとつの契機としてやってきました。先ほども話した「1人で10年かかることを、3人で3年でやってみる」という第1期を経て、第2期では僕ひとりになり、「はなみづき」というお店や「アテハカ」という家電など、インテンショナリーズにしかできないことを改めて追求しました。そして、第3期は、それまでにやってきたデザインを熟成させつつ、「ホテルクラスカ」なども手掛けました。そして、現在の第4期では、海外進出を念頭に、バリ島でのヴィラ建設や、台湾のプロジェクトなどを手掛けられるようになってきました。Webなども発達して、僕らの仕事を見てくれる海外の人が増えたこともあるだろうし、これまでにまいてきた種も実を結びつつあるのだと思います。

常に時代を見据え、自分たちの立ち位置を考えられてきたところがあると思うのですが、第一線で長く続けていくための秘訣があれば教えてください。

僕は以前DJをやっていたのですが、その頃の経験というのが実はスゴく活かされています。DJの世界でも、一時期スゴく勢いがあった人が急に消えていくということはよくあったのですが、そのなかで長く続けられる人というのは、時代に合わせて常に自分を編集している人なんですよね。僕がDJをやる時には、その時々に良いと思う音楽をプレゼンをするつもりでやっていました。お客さんの反応を見ながら、「これがダメならこっち」ということを常にやっていたんです。それは仕事でのプレゼンでも役立っていますし、その感覚を活かせると思ったからこそ、DJをすっぱり辞めたんです。

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先ほどお話に出た台湾のプロジェクトについて詳しく教えてください。

もともとは、施設内のワンフロアにあるラウンジのインテリアの提案で行ったんです。でも、自分たちのプレゼンがかなり好評で、一度全体を考えてみてくれないかということになったんです。そこでやったプレゼンというのは、その会社の生業や、その場にある意味などを踏まえたコンセプトと、それを視覚化したインテリアの提案だったんです。そこの社長が仰るには、それまでの台湾の建築は、有名な建築のカタチをコピーしたようなものばかりだったようで、僕らのようなプレゼンをする建築家がいなかったみたいなんですね。もちろん最終的なカタチにはこだわるべきなんですけど、僕らはいつも「なぜそれなのか?」ということを明確にするようにしていますし、それこそがデザインだと思うんです。

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具体的なコンセプトについても教えてください。

「2進法」をデザインのコンセプトとしました。そこの社長が中国の客家出身なのですが、そもそも2進法というのは、中国の「陰」と「陽」の考え方が起源になっていると言われていて、それがやがて0と1になり、現在ではコンピュータ言語などにも発展しています。また社長は、町工場を都心の一ヶ所に集約させるというビジネスモデルを作った方で、その集積のさせ方が、コンピュータ言語というかIPアドレス的な構造を持ち合わせていたりもしたので、「2進法」をコンセプトに、ファサードから、インテリア、照明計画、サイン計画までのすべてを統一したデザインを、それぞれの専門家とコラボレーションして一緒に作っていきました。時代背景を掛け合わせながら、彼らの企業の生業や、過去から現在、未来を行き来するコンセプトを、「オリジナル」と認めてくれて、社長もとても感激してくれました。

このプロジェクトでも顕著だと思うのですが、インテンショナリーズが創り出す「オリジナル」というのは、自分たちの内側ではなく、外にあるようなイメージがあります。

そうですね。限定した作家イメージを確立するよりも、毎回新しいことに挑戦していこうと考えています。例えば、「クラスカ」風のデザインを、他のプロジェクトでコピーすれば商売としては上手くいくかもしれませんが、それだけがうちのテイストというわけではない。分かりやすいアイコンに頼らず、毎回新しいものや意味を作りたいと思うんです。だから、ある意味自分たちがやっていることは分かりにくいんです。いまだに「インテリアもやるんですか?」とか「建築はやらないんですか?」という人もいます。それはもうしようがないかなとも思うし、それを逆手に取ろうとしているところもあります。会社を作った当初から、自分たちのことを「インテンショナリーズ業」と言ってきたのですが、そう言えば仕事の内容がなんとなく想像してもらえるようになるのが理想ですね。

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モノ作り、特にマスプロダクトを通して、一貫して大切にしていることがあれば教えてください。

「アマダナ」を例に出すと、僕たちはあくまでも選択肢のひとつを与えているだけに過ぎないと思うんです。全員があれを好きだと言ってくれるとは思っていないし、10人のうち1人でも良いと感じてくれる人がいれば、その人には強烈なメッセージを伝えたい。その「1人」というのは、エンドユーザーとしての自分が基準になっているところがあります。家に本当に置きたいものを考えた結果、こういうアウトプットになっているところが多分にあります。結局は、自分が使いたいと思えるかどうかが重要なんです。当然、プロダクトであるからには、マスでなければいけないのですが、例えば、キラキラしているものが流行っているからといって、同じようにキラキラさせるのではなく、「らしさ」と「マス」のバランスというものを常に考えるようにしています。

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また、「アマダナ」もそうですが、インテンショナリーズの作品には、日本的な感性というのが常に潜んでいるような気がします。

そうですね。特にそれが出ているのは「余白」や「調和」という部分だと思います。足していくこともキライではないのですが、自分の中に引き算の美学というものがあるんです。それは単純に好みということもあるので、最初は無意識にやっていたのですが、「クラスカ」以降はだいぶ意識的にやっていくようにしています。家具からすべてデザインして、作れないものも自分でアンティークなどを集めてきて、ひとつの空間を調和させた「クラスカ」は、ひとつの集大成でした。最近手掛けた「ユナイテッド・シネマ豊洲」や「芝浦アイランド ブルームタワー」などは、決して「クラスカ風」というわけではないのですが、調和のさせ方というところでは、「クラスカ」でつかんだものが活かされています。結局それがわかるのに10年もかかってしまったということなんですけどね(笑)。

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最後に、今後のインテンショナリーズが目指す方向性を教えてください。

建設業というものが、最もゴミを出す産業だということが分かった時、かなりショックだったんです。この問題には、なかなか明確な答えを出すことはできないけど、バリ島に建設中のヴィラなどでも、その部分は重要な要素として意識しています。「エコ」の時代だからというよりも、例えばそこはウミガメが産卵しに来るビーチなので、浄化槽をしっかり作るなど、基本的なことを普通にやっていけたらと思っています。また、うちはこれまで「建築」「インテリア」「プロダクト」にまたがってやってきたのですが、まだ「建築」が足りないと思っています。だから、このバリ島のヴィラなどが完成すれば、その部分ももう少し知ってもらえるかな、と。

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