
SOTA SUGAHARA | 菅原そうた | Video Director
19歳で『週刊SPA!』に3DCGマンガ『みんなのトニオちゃん』を投稿し、デビューを飾った菅原そうた。その作品に登場するキャラクター「トニオちゃん」は、兄がヴォーカルを務めるロックバンドB-DASHのCDジャケットなどにも度々登場し注目を集める。その後は、テレビ番組やミュージックビデオ、オリジナル作品など、主にCG映像の分野で活躍している彼の大きな特徴は、身近な素材のみで瞬発的に作品を量産し続ける制作スタイルと、”バカCG作家”を自称する不条理ギャグの世界観だ。タナカカツキ氏との共同制作によるオリジナル作品『あかるい世界』、毎日放送で異例の高視聴率を獲得した人気深夜番組『ネットミラクルショッピング』が立て続けにDVD化されるなど、これまでの精力的な活動が結実し勢いに乗る菅原そうたに、その創作の源泉を聞いた。
Text:原田優輝
もの作りを始めるようになったきっかけを教えてください。
原点は子供の頃にやっていたファミコンです。『マリオペイント』というソフトなどで遊びながら、CGなどのデジタルツールで何かを作ってみたいなと漠然と思うようになりました。その頃から、真面目でカチっとしたものよりも、何かふざけたようなものが好きでした。今でもそうなんですが、中二の2学期くらいのテンションがずっと好きなのかもしれません(笑)。
実際にPCを使うようになったのはいつ頃からですか?
18、19歳の頃です。まだ、Photoshopとか3DCGなんかが珍しかった時代です。触り始めて半年くらい経って、『週刊SPA!』にトニオちゃんという3DCGマンガを持ち込み、連載させてもらえることになりました。それがやり続けてみようと思ったきっかけですね。
「トニオちゃん」が生まれた経緯を教えてください。
「トニオちゃん」は3Dソフトで遊んでいるうちに生まれました。自分にとって最初に作ったキャラクターです。だから、へその緒を持ち歩くような感覚で、ずっと使い続けていこうと思い、兄がやっているB-DASHというバンドのジャケットなどでも登場させたりしました。そうしているうちに、他の仕事を頂くようになっていきましたね。でも、PCを使い始めてすぐに仕事が続いてしまったので、その後もしばらく、PC使いたての頃のスキルのままやってきちゃったんです…。Photoshopも3Dも、使っているのはずっと90年代の機能だけ…。その後、しばらく仕事が途切れた時期があって、その時にAfter Effectsとかの使い方も覚えて、色々自由度が高まったきたという流れです。


「みんなのトニオちゃん」
これまでに大きな影響を受けた作品などはありますか?
タナカカツキさんの『バカドリル』がスゴく好きでしたね。ちょうどその仕事がなくなった時期に、実際にカツキさんに連絡を取って、しばらく出入りするようになったんです。カツキさんは自分の持っていない情報や知識、哲学を持っているので、一緒にいると自分が進化できる感覚がありました。カツキさんは、僕の「中二の2学期」の気持ちを受け止めてくれて、キャッチボールができるんです(笑)。先日リリースされた『あかるい世界』も、仕事とは関係なく、僕が朝起きて何も考えずに作った映像をカツキさんとメールでやりとりしていたものが、ポニーキャニオンと倉本美津留さんの目にとまって、DVDとしてまとまることになったんです。そうした「遊びながら作る」という意識は、カツキさんと共通するところで、今でも頻繁にやり取りをしています。
『あかるい世界』にいたるまでのカツキさんとのやり取りはどのくらい続いたのですか?
最初が23歳くらいの頃だったので、6年くらいになりますね。朝のレム睡眠の状態の時にイメージが浮かぶことが多いのですが、一度思いついちゃうと、とにかく目的もなく作ってしまうんですよね。それをカツキさんにメールで大量に送るんです(笑)。そうすると、コメントが返ってきたり、リミックスされた映像が届いたり、アフレコが入れられたりして戻ってきて、わけのわからないものが進化していくような感じでした。やっぱり、思いついた瞬間にすぐ作りたいと思っちゃうんですよね。それは例えば、キレイな風景を見た時に写真を撮る感覚に近いと思います。朝起きてから寝るまでに、思いついた10個のアイデアをすべてその日のうちに作ってしまい、次の日にフォルダを開いてみたら変な映像がたくさん入っているということもよくあります(笑)。

『あかるい世界』(2008)
それが可能になるくらいCGを制作する環境が整ってきているということですよね。
やっぱりPCが進化して、作品作りがスゴく楽になったというのは大きいですよね。以前は3Dデータ1枚をレンダリングするのに1時間くらいかかっていたんですけど、今はあっという間ですからね。だから、自分の思い付きにパソコンがだいぶついてきてくれるようになったという感じです。それでももうちょっと加速してほしい(笑)。思いついた瞬間に2時間の映画が撮れちゃうくらいの言わば自動書記の領域まで(笑)。ただ、遊びで作った3Dの作品がすでに大量にあるので、何か仕事の依頼があった時でも、自分の持っている素材を繋ぎ合わせて対応できることも多いので、仕事でも役に立っていますね。
菅原さんの制作アプローチからは、「編集感覚」が強く感じられます。
頭の中がDJに近いような気がします。最近、ネットでMAD映像とかを見ていると、同じような年代の人たちはやっぱり近い感覚を持っているんだなと実感しますね。そこには、「孤独じゃなかった」という喜びもありつつ、「うわ、他にもいるじゃん!」っていう不安もあるんですけどね(笑)。最近は、世の中に生まれ落ちる作品の数がハンパなくなってますよね。これまで「一筆入魂」でクオリティの高い作品を作ってきたクリエイターたちが、「その他の大多数」の中に混ぜられてしまう状況になっています。そうなった時に、受け手側に近い感覚で、瞬間瞬間で作品を量産していくスタイルは結構良いかなと思うんです。


『あかるい世界』(2008)
菅原さんの中ではやはり「質より量」という意識が強いのですか?
心のどこかには「クオリティの高いカッコ良い映像を作りたい」という意識もあるのですが、潜在能力自体がスゴく低いので、本気を出したとしてもせいぜい40,50点くらいのものしか作れないんです(笑)。それなら15点くらいのものでもバンバン作っていく方が面白いんじゃないかと思っているところはありますね。
時代の大きな流れとしても、クオリティを追求すること以上に、その作品や素材のどこに面白みを見出せるかという「視点」がポイントになりつつあるような気はします。
今はみんな当たり前にCGが上手くなっているので、もう「上」とか「下」とかではなく、「左右」に広がっていく感じですよね。受け手側も、クオリティが高いから見るのではなく、低くても面白ければ見ちゃう。だから、ある意味気ままにポコポコ作っても良い時代になってきたというのはありますよね。前までは作りたい100個のアイデアから選りすぐった最高のひとつを作るという考えだったのが、今は選りすぐらずに100個全部作れるというか(笑)。だからこそ、どうでもいいような素材を3Dで作ったりということをあえてやっていきたいなというのはありますね。

『ネットミラクルショッピング』(2009)
ところで、菅原さんの独特な「笑い」の感覚のルーツはどこにあるのでしょうか?
僕にとっては、「バカドリル」とダウンタウンが二大巨頭です(笑)。あと最近は、本人は本気なんだけど、横から見ると「これ変じゃん!」っていうものが好きですね。変な人が変な価値観のままものごとを進めているというのが全般的に好きかもしれません(笑)。僕自身、20代前半くらいまでは自分のことを普通だと思っていたんですけど、友人とかと話していくなかで自分がズレているんだということに気付いて(笑)。でも、それに気付いてしまった時点でわざとらしくなってしまうので、あまり意識しないように心がけてはいるんですけどね。何で自分がそうなったかを考えてみると、完全に家族の影響なんですよ。家族全員が自分よりも天然(笑)。特にお父さんは「こんな人見たことない!」ってくらい(笑)。
お父さんは『あかるい世界』でも歌で登場されていましたね(笑)。
父は歌手なんですが、毎朝起きた瞬間からスゴい発声練習しているんです(笑)。すばらしい天然素材ですね。そんな環境で生活してきたので、自分が好きなものだけで作っていると、10人中1人も理解してくれないような世界ができちゃうんですよね。最初の頃なんかは、例えば、「気持ち悪い!」って喜んでもらえると思って、内臓とかをモチーフにしたインパクトのある映像を作って、普通に嫌がられたりとか…。それから徐々に、何が共通項になるのかということを模索し始めて、色々考えた末に「笑い」というのがひとつあるかなと思ったんです。そもそも自分には、人気ドラマとかによくあるような恋愛ものとかは無理ですしね(笑)。あと、哲学っぽいものにもスゴく興味があるのですが、そこを本気で考えてしまうとどうしても重たくなってしまうし、いくら考えても答えが出ないので、それならやっぱり瞬間的に爆笑しているのがいいんじゃないか、と。
なるほど。確かに「笑い」は万人が共有しやすいものではありまよね。
そうですよね。やっぱり多くの人に見てもらって、何かしら共有してもらいたいという想いはあります。10人中1人が理解してくれるものもカッコ良いとは思うのですが、やっぱり創り手としては、「売れたい」とか「コンビニに置かれるような作品を作りたい」と考えてしまいますよね。ただ、笑いにも結構センシティブなところがあって、ベタなことをすれば笑ってくれる人と、逆にそれを嫌がる人がいるじゃないですか。一方で、ディープな人に面白がられようとすると、普通の人にはキャッチされなかったりするので、最近はその辺をあまり考えずに、自分自身が面白いと思うことをやっちゃえばいいのかなと割り切ってやっていますけどね。
『未知次元』
一方で、現在『アクションゼロ』で連載中のマンガ『未知次元』は、そうした「笑い」とはまったく異なる作品になっていますね。
今描いているマンガでは、ギャグをやってしまうと怒られるので、ド真面目に描いてます(笑)。でも、まったく違う2つの世界でやることはメリハリがあって面白いですよ。マンガだけでもCGだけでも足りないと思ってしまうタチで、両方あるからこそ自分が作りたいものが満たされているという感じです。結局は、ギャグとストーリーの両方をやりたいということなんだと思います。
マンガを描く時は思考もまったく違うのですか?
全然違いますね。だから、脳みそを切り替えるのに丸一日くらいかかります(笑)。例えば、『ネットミラクルショッピング』をやっている時は面白いことばかり思いつくのですが、そのテンションでマンガを描いてしまうと、やってはいけないネタを考えてしまったりするんです。逆にマンガの脳みその時は、面白いことがあまり言えなくなってしまって…(笑)。あと、実は僕、中学の頃から絵はクラスで下から2番目くらいのレベルで、今も全然描けないので、PCでトレースして描いているんです…。でも、自分が本来できないことを、PCを使って無理矢理やるというのが楽しいんですよね。いつか破綻するだろうなと心の中では思っているんですけど、「中二」感覚とDJ感覚だけでどこまでやっていけるのかっていう(笑)。
DVD『あかるい世界』がポニーキャニオンより、DVD『ネットミラクルショッピング う~まずい、もう一枚!』がビクターエンタテインメントより、マンガ『未知次元』第1巻が双葉社よりそれぞれ発売中。また、3月25日には『ネットミラクルショッピング 1000人乗っても大丈夫』がビクターエンタテインメントより発売予定。

『あかるい世界』(2008)










