
TADAHIRO GUNJI | 軍司匡寛 | Graphic Designer
日本デザインセンター に在籍し、グラフィックデザインをメインとした様々な仕事を手掛ける傍ら、個人名義やmashcomixのメンバーとして、映像制作、イラストレーションなどのオリジナルワークを制作する軍司匡寛。社会において機能する作品作りを信条に、手描きイラストレーション、CG、さらにはインタラクティブ・メディアまで、様々な媒体/表現を股にかける身軽なフットワークで、貪欲にクリエーションに立ち向かう注目の若手クリエイターに話を聞いた。
Text:原田優輝
まずは、グラフィックデザインに興味を持ったきっかけを教えてください。
興味を持つようになったのは大学4年生の頃です。大学では、アニメーションとモーショングラフィックスを専攻していて、しばらくは映像制作ばかり本気になってやっていて、就職も映像系の会社に行くつもりだったんです。ただ一方で、グラフィック表現もしっかりできないと、映像でもあまり面白いものが作れないんじゃないかという想いもあったんです。それで試しにいくつかの広告代理店と日本デザインセンターを受けてみたら、ここ(日本デザインセンター)に入れてしまって(笑)。それを期に、グラフィックデザインの仕事をするようになり、一気に興味が深まっていきました。
学生時代はどのような映像作品を作られていたのですか?
映画のオープニングタイトルのモーションなどを作っていたソウル・バスの作品や、シャイノーラの活動などに影響を受けて、大学2年生くらいからアニメーションを作り始めました。それからは、コンピュータを使って、実写とCGを合成した作品なども作るようになりました。その後、卒業制作のために制作した映像作品が、onedotzero やRESFESTの招待作品に選ばれたりして色々広がっていった感じです。でも、仕事として映像を作るようになったのは本当に最近のことで、それまではmashcomixや個人名義の作品として制作していました。
mashcomixはいつ頃からスタートしたのですか?
1999年からです。最初は12人程のメンバーだったのですが、そこからどんどん人が増えて、今は中心となって活動しているメンバーが20人くらいいます。最近は、建築家とのコラボレーションをする機会が増えるなど、ヴィジュアルを持たない人たちと組んで、アートワークを提供するような仕事が多いですね。また、今年で結成10周年になるので、これまで毎年出してきた同名の本誌の制作にも、より力を入れてがんばろうかなと思っているところです。Webサイトのリニューアルも進行中で、今回もアートディレクションを僕が担当しています。

mashcomix new website
マンガの影響も大きいのですか?
完全にマンガ/アニメ世代です(笑)。手塚治虫の『ブッダ』や『アポロの歌』は特に好きでした。マンガは今もmashcomixで描いていますが、時間軸とともにストーリーや絵が移り変わっていく表現が好きなんですよね。映像もそうかもしれないですが、ひとつのヴィジュアルでは完結しないようなものをずっと作り続けてきたところはありますね。
そうした映像的な基盤を持つ軍司さんにとって、グラフィックデザインを始めた当初は、色々と戸惑いもあったのではないですか?
そうですね。学生時代にも一応グラフィックの基礎的な勉強は少しやっていましたが、実際にポスターなどを作ったことはほとんどなかったですからね。ここに入社してしばらくは、カタログ関係の仕事を中心にやっていたのですが、デザインの基礎がないままいきなり仕事をやらされる感じだったので、なるべく色々自分から聞くようにしていました。当時僕がいた部署は、車関係の仕事がメインだったのですが、いきなり「ロケ」と言われても全然分からないですしね(笑)。印刷のことにしても、入稿の仕方も何も分からなかったので、そういう基礎的なことは教えてもらいつつ、でも基本的には自由にやってくれという方針だったので、自分なりに色々調べながらここまできたという感じです。その後3年くらい経ち、新規部門を開拓する今の部署に異動しました。


異動したことで仕事内容は大きく変わりましたか?
これまでとは違い、自分で仕事を取ってくるところから始める部署なので、大きく業務内容が変わりましたね。何らかの新しい提案をして、面白い仕事を取ってくるというのが基本スタンスです。外とのつながりが今まで以上に大切になるような仕事が増えて、クライアントともより深く関われるようになりましたし、例えば、写真家の大和田良さんに話をもらって音楽プロジェクトのアートディレクションをさせてもらったりと、世代が近い人と一緒に仕事ができる機会も増えました。今後もそういった同世代や若い方々と仕事で交流し、社会と関係していければと考えています。
グラフィックデザインと映像制作の違いはどのようなところにありますか?
映像と違って、グラフィックの場合は一枚の絵だけで伝える必要がありますよね。でもそれは逆から見ると、一枚の絵の中に明確な要素が入っていれば、それだけでメッセージが伝わるということで、その中であれば何をやってもアリなんだと考えています。最近はそういうグラフィック独自の面白さに気付いてきていて、映像を作る時なんかでも、グラフィックが連続していく様なイメージで作れたら良いなと思うようになりました。
では、オリジナル作品とクライアントワークの間には意識の違いはありますか?
学生時代にアニメーションを作っていた頃から、社会情勢などを踏まえた上で何かしらのコンセプトを立てたり、メッセージ性の強い作品を作ることが好きだったんです。そういう意味では、当時から受け手にことをかなり意識していたと言えると思います。オリジナル作品を作るにしても、「アーティスト」的な意識でやっているわけではなく、「機能する作品」を作るという方向性が一貫してあるんです。だから、今も作品と仕事の間に大きな線引きはなく、基本的には面白ければ何でも良いと思っているし、丁寧でしっかりしたものをずっと作っていきたいという意識でやっています。クライアントがアイデアに直結しているので、いない場合の方が答えを出しにくいですね(笑)。

au「Green Road Project」animation
オリジナル作品を作られる時のインスピレーションソースについて教えてください。
今話したように、学生時代は社会情勢などから着想を得た作品が多かったのですが、最近は無理矢理そうした題材を取り上げるのではなく、もっと身近なところから思いついたりすることが多いです。一度思いついたら作らないと気が済まないところがあるんです(笑)。最近はアイデアを思いついた時点で、定着のカタチまで思い描けるようになってきましたね。
実際に手掛けられた最近の作品について教えてください。
建築物の形態やその場の特性に合わせて、映像をプロジェクターで投影する「Pavlov’s Dog」というインスタレーションのプロジェクトが進行中です。新しい作品では、インタラクティブな要素を盛り込んだプロジェクトも行っています。先日初めて展覧会も行いました。今後は、何かのイベントの時に使ったりできないかなと考えています。

「Pavlov’s Dog」 Installation
やはり最終的には作品を機能させたいという意識が強いのですね。
インスタレーションと言ってもアート作品で終わるのではなく、最終的には社会的に機能するものしたいと考えています。最近はデジタルサイネージなども注目されていますし、Webなどと連動させて社会に何か面白いアプローチができたらいいなと思っています。
そうした新しいメディアへの興味も強いのですか?
はい。そういうものを上手く組み合わせて、全体をディレクションしていくような仕事をしていきたいですね。ただ、手に取れるリアルな紙媒体などのデザインもしっかりやって、そことの連動性も考えられたら良いなと思います。
今後やっていきたい仕事などがあれば教えてください。
あまり他の人がやっていない仕事をしていきたいですね。例えば、さっきも少し言いましたが、デジタルとアナログが交差していくようなプロジェクトなど、新しいメディア自体を創り出していくような仕事ができたらいいですね。ひとつの分野に特化するのではなく、幅広く対応しながら、未知の領域を模索していくというアプローチが今の時代には合っていると思います。最近だと、サイン計画など空間を意識した仕事をする機会も増えているのですが、例えば、空間の中に立体を置いて、そこにデジタル的な要素も組み合わせていくような仕事ができたら面白いかなと思っています。あとは、そういう仕事も結局はグラフィックデザインが基盤になってくると思うので、平面的なデザインのスキルもしっかり磨いていきたいですね。

「Design Tshirts Store graniph」Artwork










