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takram design engineering | タクラム・デザイン・エンジニアリング | Design Engineering Firm

「デザイン」「エンジニアリング」双方の視点を併せ持ったもの作りへの取り組みで、にわかに注目を集めているtakram。エンジニアとしてのバックグラウンドを持つ5名から成る小数精鋭のクリエイティブチームだ。その高い技術力を活かしたハードウェア開発から、携帯電話のUIデザイン、さらには、展覧会でのインスタレーション作品まで、多岐に亘る活動を展開している。従来のもの作りの現場において、それぞれ別の人間が担うフィールドとされてきた「表現」と「技術」が、急速に接近/融合しつつある時代の潮流を体現するクリエイター集団は、果たしてどのようなビジョンを描いているのだろうか。メンバーの渡邉康太郎が取材に応じてくれた。

Text:原田優輝


まずは、takram設立の経緯から教えてください。

2006年に、代表の田川欣哉と畑中元秀の2人でスタートしました。その後、新メンバーが加わり、現在は5人の設計メンバーが中心となる小さな会社です。社名である「takram design engineering」からもお分かりになると思いますが、「デザイン」と「エンジニアリング」の両方を同時に扱っています。基本的にメンバーのほぼ全員がエンジニアリングの教育を受けているのですが、その後デザインの知識を得ることで、双方を両立させたもの作りを目指そうとしているチームです。

「デザイン」と「エンジニアリング」を両立させるという概念について、もう少し詳しく教えてください。

自分たちは、携帯電話やデジカメなどの工業製品の周辺の仕事をすることが多いのですが、通常、大きな会社でこれらのものを作ろうとすると、ある程度体系化された分業のシステムがあるのではないでしょうか。例えば、最初に商品企画や営業担当がいて、その後デザイナーがカタチを考え、エンジニアが内部の仕組みを作る、という流になるかもしれません。でも、最終的に商品が出来上がった時に、当初考えていたコンセプトが完全に生かされていなかったり、他の部分に隠れてしまったりということはよくあることなんです。だから自分たちには、そうしたコンセプトからデザイン、エンジニアリングまでの一連の流れを担い、もの作りの上流にあるアイデアの発端の部分をも、最後まで生かしていきたいという思いがあるんです。

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実際のもの作りのプロセスにおいて、大切にしていることを教えてください。

自分たちは、『ラピッド・プロトタイピング』をとても大切にしています。例えば、デジカメなどの製品が世に出て、ユーザーからのフィードバックがメーカーに返ってくるまでには、通常4ヶ月くらいの時間がかかると言われています。でも、それを待っている間に、次期バージョンの開発が始まっていることも多いので、そうしたフィードバックを次のモデルに生かすことが、とても難しいんです。それはあまり効率的ではない。そうしたロスを回避するために、プロトタイピングを素早く繰り返すということをやっています。

実際に可動するモデルも制作するということですよね。

はい。実動のプロトタイプも作ります。例えば、通常の「デザイナー」という職種の方が携帯電話を作るとしたら、カタチを見るための形状モックなどを多く作ったりすると思いますが、実際に動作するものまでは、なかなか作りにくいと思うんです。でも、もし僕らが携帯電話を作るとなったら、実際にボタンを押して操作できるプロトタイプも作るんじゃないかと思います。大抵の場合、最初に作るものは使いにくくて、「これじゃダメだ」となってしまうのですが、自分たちが最初のユーザーになり、問題点をその場ですぐに直していけるので、かなり時間が圧縮できるし、商品が世に出る前にかなり洗練された状態まで持っていくことができる。また、プロトタイプがあることで、プロジェクトに関わっている人間全員が、モノをベースにして話をすることができるようにもなります。そもそも、何か新しいものを作るとなった時に、自分たちにしても、クライアントにしても、すぐにモノのイメージが浮かぶ、ということは少ないですね。それよりは、作ってみなければわからない、というところが多々ある。それらしいものを作り始めて、試行錯誤を重ねるなかで少しずつ形が見えてくるということは実際に多いです。

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そうしたプロダクト開発などの仕事と並行して、展覧会などでインスタレーション作品も発表されていますよね。それぞれの活動の関係性を教えてください。

携帯電話のUIデザインなどと比べると、美術館での作品展示というのは、一見かなり異質に見えると思うのですが、そのバランスを皆さんにうまくお見せしたいという気持ちがあります。ただ、基本的には、大量生産品を作ることも、インスタレーション作品を作ることも、自分たちの意識としてはあまり変わらないんです。コンセプトの部分から考えてモノを作っていくという流れを、一人もしくは複数のメンバーで最初から最後まで見るという方法論は共通していますし、限られた時間の中で、ラピッド・プロトタイピングによってクオリティを高めていくというところも同じなんです。

どちらの活動にも、インタラクションを持ったもの作りという部分は共通していますよね。

それこそが自分たちの仕事の醍醐味だと思っています。例えば、2007年に21_21 DESIGN SIGHTで開催された『Water展』で発表した『furumai』という作品があります。この作品の面白いところは、自分たちが作ったものはあくまでも、お皿でしかないということなんです。つまり、実際に来場者が楽しんでいるのは「水の動き」で、それは僕たち自身が作ったり、デザインしたものではなく、来場者の操作によって生まれているものです。そのバランスがスゴく面白いと思っています。自分たちは、来場者の操作を手助けするための装置を作っただけなんです。それは自分たちが作る展示作品のほぼすべてに共通しています。そのようなインタラクションデザインの観点で考えると、こうした作品も、携帯電話のUIデザインなどと同じなんです。

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そこに関わってくる人がいて初めて成立するもの作りということですよね。

やはり、使う人自身が主体的に関わってくるということが一番大事なんじゃないかと思います。自分たちが提供できるのは、「体験」そのものではなく、体験を実現させるための「道具」に過ぎません。例えば、『Water展』のもうひとつの作品で、来場者が廊下を歩くのと同じタイミングで水の音が聴こえる『shigure』という作品があります。この時に考えたことは、音が人の心の中に喚起させるものの意味というのは、決してひとつではないということです。例えば、雨上がりの雰囲気というのがありますよね。少し埃っぽいけど、瑞々しい香りがあったり、ちょっと湿気があって温かみを感じる肌触りだったり。そこから思い出される、雨上がりの記憶みたいなものが、廊下を通る時の音をきっかけに、一人ひとりの心の中に鮮明に甦ってくるもの、というのがいいんじゃないかと。ここでも主役は、それぞれの心に宿っている記憶であって、廊下という装置そのものではないんです。

takramの作品からは、インタラクションやその装置の背後にある余韻や空気感のようなものを強く感じます。

自分たちのもの作りの背景には、「良いものづくりは、良いものがたりなくしては成立しない」という考え方があります。特に、インスタレーションにおいては、「デザイン」と「エンジニアリング」に加えて、「詩情」や「ものがたり性」というものを大切にしています。たとえモノ自体が完成されていたとしても、そこに魅力的な「物語」がないと完結しないと思っています。

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今年の5月に参加されたミラノサローネの出品作「overture」についても聞かせてください。

今回は、東芝さんと建築家の松井亮さんとのコラボレーションだったのですが、きっかけは、実は昨年伊東豊雄さんと一緒にやった「furin」という展示なんです。それを見てくれた東芝の方々にお声掛け頂きました。東芝は、120年前に日本で初めて白熱電球を作った会社なのですが、2010年を境に一般用の白熱球の生産を中止し、その後はLEDなどの光源に切り替えるとのこと。もちろん、エネルギー効率や環境への配慮があります。それらの視点も踏まえ、LEDを使った展示を一緒にやりたいというオファーを頂いたんです。それを受けて、プロジェクトチーム全員で考えたことは、白熱電球からLEDへの過渡期である、今しかできない展示をしようということでした。そこで、白熱電球のフォルムが持つふくよかさや温かみなども含めて、人々が持っている白熱電球の記憶や文化というものにスポットを当てることにしたんです

実際にはどのような展示になったのですか?

インスタレーション会場には、LEDが内蔵された電球のカタチをしたオブジェが約100個、ランダムな高さにぶら下がっています。まず、来場者が歩くと、その場所の電球がフワっと明るくなる。また、電球に触れると、あるパターンで明滅を始め、同時に、手にはそれに同期して、動物の鼓動のような振動が伝わってきます。白熱電球が遺した文化的遺伝子の脈動のようなものを次の世代に受け継いでいきたいという思いを、「鼓動」というメタファーで表現しました。

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今回の展示は、東芝さんの依頼によって実現したものですが、そのようなオーダーなくして、自主的に発信していくプロジェクトもあるのですか?

これまで、自分たちの発想だけではなく、お題を受けて、そこから化学反応的に作ってきたものが多かったのですが、今後もそういうことは当然あり得ると思います。例えば、先ほど話した『furin』という作品は、特にお題があったわけではなく、伊東豊雄さんらとお話をしていくなかで、有機的な交わりが起きたコラボレーションでした。今後も機会があれば、そういったことをどんどんやっていきたいですね。

最近のクライアントワークについても教えてください。

UIデザインの仕事も多いですね。昨年発表したNTT docomoさんの「i-Widget」「i-concier」もそうですし、最近はUSENさんのTVエンターテイメントサービス「GyaO Next」のUIデザインをさせて頂きました。これらは、WOWさんとのコラボレーションです。

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これからのUIデザインにおいて意識されていることを教えてください。

これからは端末にすべてのデータを保持するのではなく、サーバー上にどんどんデータが上がっていって、好きな時にネットワーク越しにアクセスしていくという流れになると言われていますよね。今はまさにその流れの成長段階だと思うのですが、そこに新たに挑戦できるものがあるんじゃないかと思っています。携帯電話のユーザーインターフェースは、今は端末上にありますが、将来的にはそれ自体もネットワーク上に乗ってしまい、常にデータを参照しながら体験を進めていくということもあるんじゃないかという気がしています。

今挙げて頂いた「i-Widget」「i-concier」「GyaO Next」では、WOWさんとコラボレーションするなど、積極的に外部のクリエイターと協働しているようですね。

コラボレーションすることで一流の人たちの仕事を身近に感じたいという思いが常にあって、それがコラボレーションする上での大きなモチベーションになっています。自分たちは「デザイン エンジニアリング」ということをやってきていますが、もちろん世の中には、デザイナーやエンジニアを専門にしている人たちがいて、すべての分野でそういう人たちと対等になれるかというと、当然難しい。どちらもしっかりこなせるようになるのは、60歳くらいになる頃かもしれないですね(笑)。

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