
IMG SRC / NON-GRID | イメージソース / ノングリッド | Interactive Design Office
Web制作会社の草分け的存在として、数々の名作サイトを世に送り出してきたイメージソース/ノングリッド。彼らが積み上げてきた歴史の厚みは、同社出身者たちの多くが、現在業界のトップクリエイターとして活躍しているところからも感じることができるだろう。クライアントの様々な要望に応じる多様性と卓越した技術力を武器に、数多くのサイト制作を手掛ける傍ら、独自の実験的プロジェクトにも精力的に取り組んできた彼らだが、近年、その興味の矛先は、インスタレーション、デジタルデバイス制作などに向かっているようだ。ますます多様化するメディアを柔軟に横断しながら、同社設立10年を超えた今もなお疾走を続ける同社代表・小池博史に話を聞いた。
Text:原田優輝
まずは、現在のイメージソースとノングリッドの棲み分けについて教えてください。
もともとノングリッドは、デザインに特化した制作会社として、僕が2000年に立ち上げたものなんです。一方のイメージソースは、ご存知の通りそれ以前からあったWeb制作会社ですが、ノングリッドと共に多くの仕事をしていくなかで、2005年にグループ会社として両者が合流することになりました。その後、デザインとテクノロジーを融合させようと、ゴチャゴチャ混ざりながらやっていたのですが、最近はまた、Webデザインの在り方が変わってきていることもあって、両者の棲み分けをもう一度ハッキリさせたいと思っています。だから、基本的にノングリッドの方にはデザイナーしかおいていなくて、Webサイト、インタラクションデバイス、インスタレーションなどのインターフェースデザイン、アートディレクションをそのチーム内でやっているという感じです。
Webデザインのあり方は今、どのように変わってきていると感じていますか?
少し前までは、ハイクオリティなモーション・グラフィックスや3Dなどを取り入れるだけでもそこそこ新しく見えていたのですが、今はそれが当たり前になってきていますよね。リッチなコンテンツも流せるインフラが整ってきた今、これまでと同じような作り方ではダメなのかなと感じています。もちろんデザインの部分はしっかりやらないといけないのですが、そこに流すコンテンツまでをアートディレクションしていくための様々なセンスが、より求められるようになっています。Web広告にしても、単にリッチなコンテンツを作るだけではなく、逆にシンプルなデザインのページが1枚ペラっと置かれているだけでも成り立つ場合もあると思うんです。制作に予算を費やすだけではなく、例えば、携帯やデジタルデバイスなどを使ったアプローチなど、Webを本丸におきつつも、「外堀」を埋めてあげる作業の方が重要な場合もあるんじゃないかな、と。
近年、インスタレーション系のプロジェクト等を手掛けることが増えていることも、その辺りの話と関係ありそうですね。
そうですね。ここ2、3年は、Webの中だけでいくら面白いことをやっても、どこまでそれが見てもらえているのかを疑問に感じることも時々あって。業界の人たちから良い評価をもらって、何となく話題になったような気もするけど、はたして一般の人たちにどれほど知れ渡っていて、その人たちは本当に面白いと感じてくれているのか?と。もちろん、スゴく話題になるサイトもありますが、そこにはPR的な試作が必要だったりすることも多い。でも僕らは、どちらかというと技術者であり制作者なので、技術的な部分を活かした形で広められる方法を考えた時に、インスタレーションというのはやってみる価値があるし、重要だと感じたんです。
インスタレーション系の取り組みに手応えを感じた最初の仕事を教えてください。
やっぱり「BIG SHADOW」ですね。これはGTの伊藤(直樹)さんのアイデアのもと、projectorの河村(大馬)さんと僕らが技術的なサポートを担当したのですが、受け手が現場でフィジカルな体験をすることができて、作り手側もそこで生まれた体験者の感動のようなものを、彼らの反応や表情から知ることができたし、やっていてスゴく意味がある試みだと感じました。なおかつ、現場だけで終わらずに、Webとも繋げられたことが大きかった。Webから参加することもできたし、現場に来た人がWebの存在を知って、家に帰ってからチェックしてくれたり。現場での体験をWebにアーカイブしてあげることで、その感動が持続するんですよね。現場だけでも1週間くらいは色々な人に体験を伝えてくれるかもしれないけど、どうしてもそこで止まってしまう。そういうことがわかったので、スゴく勉強になりましたね。

「BIG SHADOW」(公開終了)
近年は、野外フェスなどでインスタレーション作品の展示もしていますね。
そうですね。ここ数年、「メタモルフォーゼ」では、実験的に会場にインスタレーションを展示しています。去年は、身体拡張をテーマにした3パターンのコンテンツを用意しました。音楽イベントで高揚しているオーディエンスの動きをビジュアライズするようなインスタレーションだったのですが、フェイス・トラッキングなどシンプルでわかりやすい作品は、特に面白がってくれていました。こうした実験的な試みをすることで分かることも多いし、結果的にはWeb制作などにおいても、その経験が活かされていくんです。
「CUBE Installation」at Metamorphose 08
やはりそうした実験的なプロジェクトを、自主的にやっていくことは重要ですよね。
そうですね。まずは社内で実験的なことを始めて、そこで得たノウハウを外にも広めていくという流れが作れればと思っています。もちろんクライアントワークをやりつつですが、そうした実験も並行させられるようには意識しています。そのような実験的なプロジェクトでも、基本的にはプログラマーとデザイナーでチームを作り、ひとつの案件として取り組んでいます。
そうした試みがクライアントワークにも広がっていきそうですね。
まだ仕事としてはそこまで増えてはいませんが、最近はショップ内に設置するインタラクティブ・デバイスなども手掛けています。去年は、ディーゼルのショップに「Interactive Mirror®」という装置を設置しました。いくつか賞を頂けたこともあって、国内外からの問い合わせも結構ありましたね。現状では、Web、インタラクティブ・デバイスそれぞれ別のプロジェクトとして動くことが多いです。それは、まだクライアントも代理店も、「マス広告」「Web」「イベント」の部署や予算がそれぞれ分かれていることがほとんどで、なかなかトータルで提案するのは難しいところがあります。その辺がもっと混ざっていけば、もう少し幅広く面白いものが作れるんじゃないかなと、今後に期待しています。

「Interactive Mirror®」
試着した姿を静止画として記録し、普段見ることができない後ろ姿などもチェックすることができる。また、最大6カットまで静止画をアーカイブし、同時に表示できるので、洋服ごとに比較をすること等も可能。
最近話題になることも増えているデジタルサイネージについては、どのような可能性を感じていますか?
「デジタルサイネージ」といっても、範囲が広すぎて一概に言うことは難しいのですが、巷で騒がれているのは、駅など色々な場所に液晶画面が置けるようになったりというインフラの部分が大きいと思っています。でも、それは今までポスターを貼っていたのと基本的には同じことで、単にそれが時間によって切り替わるようになっただけ。表現的には何も変わっていないんですよね。僕らが考えたいのは、もう少し面白いアイデアやインタラクティブな表現を入れることで、人に与える影響を変えたいということです。その可能性はスゴくあると思っています。それがWebや携帯にも繋がっていて、そこでも同じような体験ができたり、さらに詳しい情報が得られるような仕組みができるとさらに良いですよね。
屋外での体験や驚きだけで終わるのではなく、それをどれだけ”持続”させられるかというところが、今後の課題になっていくような気もします。
そうですね。Webだけ、インスタレーションだけということではなく、モバイルなども含めて、人に伝達するためのデバイス/メディアを横断しながら、トータルで制作していけたらと思っています。あとはやはり、いかに分かりやすく変換してあげられるかということも重要だと感じています。インスタレーションというと、どうしてもアカデミックなイメージが強かったりして、伝わりにくかったり、拒否されがち。もちろんアート的な表現にも興味はあるし、チェックしていますが、広告という観点で考えると、やはり分かりやすい形で接してもらうことが大切なんです。
イメージソースさんの高度なデザインセンスと技術力にはすでに定評がありますが、インタラクティブ・デザインが多様化している今、それだけを持っていても難しいということですね。
もちろん、プログラマーやデザイナーにはそれぞれ、新しい技術/デザインを突き詰めていくという仕事があるので、それはそれでやりつつも、社内全体に「作ったものを見てもらうためにはどうすればいいか?」ということを考える意識は少しずつ植え付けられていると思います。特にうちはインスタレーションなどをやっているので、撮影した映像などを社内の皆に見せたりして、なるべく意識を共有できるような機会は設けるようにしています。

「FARM IMG SRC」at IMG SRC new year party 09
最近手掛けられたWebの仕事についても教えてください。
KDDIの新ブランド「iida」のプロモーションサイト「iida calling」を手掛けました。ユーザーがある番号に電話し、声を録音すると、テイトウワさんの曲にミックスされて着うたになって返ってくるというサービスが基本になっています。groundの高松(聡)さんと、projectorの田中(耕一郎)さんのアイデアをもとに、自分たちは、サーバーサイドのシステムを外部のシステム会社さんと構築したり、ミックスのバリエーションをサウンドデザイナーとテストしながら、サイトのデザインなども含めた制作全体のディレクションを担当しました。携帯電話を使った新しい広告として、面白い試みができたかなと思います。第2弾も控えているので、次はまた少し違うイメージでやってみようかなと考えているところです。
モバイルの仕事も増えてきているのですか?
そうですね。「iida calling」の前に手掛けた日本マクドナルドの「マック スマイル ファクトリー(公開終了)」というサイトも、お母さんと子供に向けた携帯電話を用いたコンテンツでした。子供の写真を携帯で撮って送信すると、マクドナルドのキャラクターになって戻ってくるというものです。やっぱり今は、ニュースのチェックから買い物まですべて携帯でする時代になっているし、持ち運びも簡単なので、影響力も大きい。例えば、この「マック スマイル ファクトリー」でも、携帯に送られてきた自分の子供のアニメーションを、周りのお母さんに見せたりするわけです。その伝達力は、Webでメールを送ったりすることよりも大きいし、早いんです。表現的な面では、何でも詰め込めるWebとは違い、携帯は容量も限られているし、制限は多いのですが、使い方次第では面白いことができると感じています。

「マック スマイル ファクトリー」(公開終了)
撮影した子供の写真を送信すると、その笑顔の大きさをもとにして、様々なキャラクターに変換された画像が返信される。Flashアニメ、壁紙、ブログパーツなど様々なバリエーションを用意したことも功を奏し、30万人以上のユーザーが参加した。
最後に、今後のビジョンや、やりたいことなどがあれば教えてください。
iPhoneのシェアも広がってきているので、そこでも何かできたらと思っています。先日、ベイクルーズのカタログ「iBAYCREWS」をiPhoneアプリとしてリリースしました。今年のメタモルフォーゼでは、GPS情報等を活かしたiPhoneアプリとインスタレーションを組み合わせて、iPhoneユーザーが会場を回遊するよう仕組みが作れないかなと考えています。iPhoneアプリを開発している会社や、イベント会場のインスタレーションなどを専門にしている会社はそれぞれあると思うのですが、やっぱり僕らの場合は、Webを基軸に、グラフィック、インスタレーション、携帯などのメディアを横断し、ユーザーとの接点を増やしたり、コミュニケーションプランをトータルで考え、制作できる会社でありたいと思っています。あとは、今後海外での仕事にも取り組んでいきたいので、今英語を勉強中なんです(笑)。













