
Patrick Watson|パトリック・ワトソン|Musician
カナダ・モントリオール出身の4ピース、パトリック・ワトソン(現在の正式名称はパトリック・ワトソン&ザ・ウドゥン・アームス)が、サマーソニックへの出演のため、2度目の来日を果たした。シネマティック・オーケストラの作品への参加でも知られる中心人物、パトリック・ワトソンの繊細なボーカルを軸に、オーケストレイションと生のバンド・サウンドが融合した美しいサウンド・スケープを聴かせる、その素晴らしさもさることながら、キッチン用品や木の枝までを使った、手作り感溢れる音作りこそが彼らの持ち味。サマーソニックのライブでは、最後の曲でオブジェのようなスピーカーを背負ったパトリックを先頭に、メンバー全員が客席に下り、オーディエンスと共に大合唱するなど、アット・ホームな雰囲気が印象的だった。
Text:カネコアツタケ
Live Photo:Kohei Konoma
日本に来るのは今回が2回目ですよね?日本の印象はいかがですか?
パトリック・ワトソン(Vo/Piano):正直まだまだわからないことだらけなんだ。ヨーロッパとかだと、地元のモントリオールと通じる部分もあったりするんだけど、日本だと文字さえ読めないからね。だからその分、新鮮で、今回もすごく楽しんでるよ。
今ってバンドの正式名称は”Patrick Watson”じゃなくて”Patrick Watson & The Wooden Arms”なんですよね?
パトリック:そうだね。僕らは元々バンドをやろうと思って始めたわけじゃなくて、Brigitte Henryの絵本に音楽をつけるというところから突発的に始まったプロジェクトなんだけど、それが思いがけず成功してしまったので、せっかく知られた最初の名前を変更するのはリスキーかなって思ったのと、自分たちがしっくり来る名前がなかなか見つからなくて、結局この名前に落ち着いたんだ。

”Wooden Arms”とはアルバムのタイトルでもあるわけですが、なぜこの言葉をバンド名に選んだのでしょう?
パトリック:ええと…実はこの言葉自体に明確な意味はなくて、単純にしっくり来たってだけなんだ(笑)。なぜこのタイミングで、アルバム・タイトルでもあってっていうのは、特に意識してなくて…次の質問に行こうか(笑)。
(笑)オッケー。ではそのアルバムなんですけど、美しくも奇妙なオーケストレイションが非常に印象的でした。今度バトルスのタイヨンダイ・ブラクストンがストラヴィンスキーから大きな影響を受けたソロ・アルバムをリリースするんですけど、パトリックもフェイバリットの一人にストラヴィンスキーの名前を挙げてましたよね?やはり彼からの影響は大きいのですか?
パトリック:バトルスとはオランダで共演したことがあるけど、リズミックで素晴らしいバンドだよね。ストラヴィンスキーに関しては、昔の作曲家ってすごく手作り感があるでしょ?昔の映画の効果音って手作りだったりとか。ああいう姿勢に感銘を受けてるんだ。もちろんストラヴィンスキーだけじゃなくて、色んなアーティストからの影響が混ざって僕らの音楽ができてるんだと思う。
例えば映画音楽の作曲家だと誰が好きですか?
パトリック:カール・スターリング(*バックス・バニーでおなじみの”Looney Tunes”などの音楽を手がけたアメリカの作曲家)だね。昔のカートゥーンの効果音ってすごく大げさだろ(と言って、口で様々な効果音を表現:笑)?それが反映されてるのが僕らの「Beijing」って曲で、身近にあるものを使って色んな音を出してるんだ。ギターを歯ブラシでこすって鳴らしてみたりとかさ。

なるほどね。じゃあ最近の北米シーンでは、バンドがオーケストレイションを取り入れるのがある種の流行になってきてると思うんだけど、それに関してはどう思う?
パトリック:最近曲作りをしてて思うんだけど、曲を作ってCDを完成させて終わりではなくて、いかにライブでオーディエンスを楽しませるかが大事なんだよね。さっきの歯ブラシの話もそうで、変わったことをするとオーディエンスも楽しんでくれる。生のオーケストレイションが流行ってるっていうのも、やっぱりライブではエレクトロニックじゃなくて、生のサウンドを聴かせたいっていう思いから来てるんじゃないかな。だから僕は今の流れには賛同できる。
美しい上ものの一方で、リズムは非常に躍動感がありますよね。
パトリック:確かにパッと聴いたときに印象に残るのはストリングスかもしれないけど、それを支えるリズムはすごく重要だ。ただ特別意識してるかっていうとそうでもなくて、曲を作っていく中で自然とそうなっていくんだけどね。
美しい上ものと躍動的なリズムの組み合わせって、近年のカナダのバンドの特徴のような気もします。アーケイド・ファイアしかり、ブロークン・ソーシャル・シーンしかり。
パトリック:文化的背景が関係してるのかもしれないね。イギリスとかアメリカには豊穣なロックの歴史があるわけだけど、カナダってまだ成長過程で、代表的なアーティストの数もイギリスやアメリカのようにたくさんいるわけじゃない。その中で色んなアーティストが新しいことにチャレンジしていく中で、ゴッド・スピード・ユー・ブラック・エンペラー!がオーケストラとロックを融合して見せた。そこから多くのバンドが影響を受けてるのかもしれない。

あとカナダのバンドでいうと、ロビーは一時期ホーリー・ファックに参加されていたそうですね?
ロビー・カスター(Dr):一度イギリスのツアーを三週間一緒に回っただけなんだけどね。元々のドラマーが辞めちゃって、ヘルプで。その後カナダに戻って1曲だけレコーディングして、それで終わり。
なんで彼らの名前を出したかっていうと、彼らは今年サマーソニックと並んで日本を代表するフェスであるフジロック・フェスティバルに出演したんですね。ちなみにフジロックはご存知ですか?
パトリック:ああ、知ってるよ。
ミシュカ:僕はフジロックでバトルスを見たよ。素晴らしかった。
そうなんですね!それでホーリー・ファックって、まだ日本盤のリリースがなかったから、ほぼノン・プロモーションだったにもかかわらず、ネットとかで噂を聞きつけてきたインディ・ファンがたくさん集まって、彼らもそれに応えるすごくよいライブをやってくれたんですね。
パトリック:すごくクールだね。素晴らしいと思う。

そういうインターネットが音楽に与える影響についてはどう思ってますか?
パトリック:違法ダウンロードとかいろんな問題があるとは思うけど、基本的にはインターネットは無限の可能性を秘めてると思う。アナログからCDに移ったときに、最初CDは悪いものだと思われたかもしれないけど、いい悪いじゃなくて、何ができるかを考えた結果、CDが流通のメインストリームになったわけだよね。ネットもいい悪いじゃなくて、あくまで一つのツールとして考えるべきだ。
ミシュカ:インターネットはビジネス的な側面に与える影響ももちろん大きいんだけど、楽曲制作のプロセスやアプローチの仕方自体も変わってくると思う。例えばオーディエンスがライブの情報を仕入れようとするときに、事前学習としてYouTubeを見たりするように、ライブ自体ライブハウスでやるんじゃなくて、モントリオールの自宅でのライブをストリーミングで配信したりとか、アーティスト側の表現方法自体が変わるかもしれない。
サイモン・エンジェル(G):YouTubeで自分たちのライブ映像を検索してみたりとかするんだけど、大体最初の5本ぐらいって音質がひどかったり、20秒ぐらいで終わっちゃったりで、5本の内1本がやっといい映像って感じだよね。
ミシュカ:パリで撮影した「Take Away Show」っていうのがあって、電話ボックスとか地下鉄で撮影してるんだけど、それは音質がいいからぜひ見てみてほしいな。
「Take Away Show」
チェックしてみます。では最後に、僕らもそんなインターネットのおかげでカナダの音楽事情にわりと詳しくなってきたのですが、07年にあなた方が受賞したカナダの音楽賞Polaris Music Prize(*カナダのグラミー賞とも言うべきJuno Awardに対し、もっとオルタナティヴなアーティストを対象とした音楽賞)の、今年の受賞者を予想してください。
パトリック:Lhasaっていうフォーク・シンガーのアルバムは素晴らしいよ。いつ聴いても衝撃を受ける。
ロビー:いや、Joel PlaskettかK’naanだろ。
(笑)意見が分かれてますね。ちなみに、あなた方もノミネートされていますが?
パトリック:まあ、二度はないよ。他のまだ知られていない素晴らしいアーティストに機会を与えることで、カナダの音楽シーンがより盛り上がることが第一だから。もちろん、もらえたら嬉しいけどね(笑)。









