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FACTOTUM | ファクトタム|Fashion Designer

ミリタリー、ワーク、テーラード。もはや伝統と化したメンズウェアの定番も、「FACTOTUM」のフィルターを通せば、モードのエッセンスを絶妙に取り入れた、現代に生きるリアルクローズに生まれ変わる。男心をくすぐるウェアラブルなコレクションには、独特の繊細さや脆さ、それとは対照的に味わい深い素材使いのもたらす温かさが同居し、独自の魅力を形成している。もの静かな佇まいながらも、常に未知の領域へと挑戦し続けるデザイナー有働幸司は、日本の次世代メンズウェアシーンを牽引する存在となるだろう。

Text:三浦達矢


ファッションに興味を持ったのはいつ頃ですか?

僕が生まれ育った熊本の街はちょっと特殊で、ヨーロッパのインポートを扱ったブティックからアメリカ的な古着ショップまで、様々なお店があふれていました。周りの仲間の影響もあって、自然とファッショが好きになりましたが、自分で稼いだお金で洋服を買うようになり、本格的にファッションに興味を持ったのは、高校生の頃ですね。ジャンルの違う洋服を、当時のストリートでは、みんなミックスして着ていた。そのスタイルから受けた影響は、今でも自分の中に残っています。

ファッションの道に進もうと思ったきっかけは?

高校卒業後、まずは東京へ出てみたいという思いがありました。でも、本気で進路について考え、東京の学校のリサーチを始めた時には、すでに大学の受験シーズンは終わり、各種専門学校もほぼ応募を締め切っていて(笑)。まだ受け入れてくれたのがモード学園だったんです。ただ、ファッションというキーワードはずっと頭にあったから、専門学校に結局ファッションの学校を選んだんでしょうね。

学生時代、すでに具体的な将来像を描いていましたか?

入学当初は、正直に言うと、将来に対するビジョンは漠然としていました。周りには、音楽、それもクラブミュージックのような、サブカルチャー的なジャンルを追求している仲間が多く、洋服以外に強い興味関心を持っているというのが新鮮で。自分の場合、それは何かと考えたら、スケートボードが好きだったということもあり、ストリートカルチャーだったのかな。ファッションもカルチャーの一部として捉えていたようなところがありました。当時の僕のスタイルは、まさにスケーター。「ミルクボーイ」や、ロンドン発信でグラフィックが特徴の「インセイン」、藤原ヒロシさんプロデュースの「グッドイナフ」、ストリートブランドの「アナーキック・アジャストメント」とか。学生時代の前半は、かなりハマりましたよ。

FACTOTUMFACTOTUM

その後、どのような過程を経て、現在に通じるモードなメンズウェアのテイストに移行されたのでしょう?

学生生活も後半になると、「ビームス」に代表される、いわゆるセレクトショップに通うようになって。そこで、洋服のオーセンティックな部分の魅力、インポートウェアのモードなテイストに興味を持つようになりました。例えば、「バーブァー」「ベルスタッフ」「ラベンハム」「ジョン・スメドレー」といったイギリス的オーセンティックな洋服、それとは正反対の「ドリス・ヴァン・ノッテン」や「ヘルムート・ラング」などアントワープのデザイナーの洋服に触れ、プロダクトとしての洋服の背景に惹かれるようになったんです。そこから、メンズウェアをちゃんと知りたいと思うようになりました。

卒業後にした最初の仕事は?

常に洋服に触れているためにはショップ店員が最適だと思い、学生時代から通っていた「ビームス」に就職しました。だから、スタートは販売業だったんですよ。デニムやTシャツなど、アメカジ的なアイテムを主に扱うセクションでしばらく働いた後、一度退職して、ロンドンに半年ほど短期留学したんです。将来のことを考えてというよりは、もっと衝動的で漠然としていた。その場に行ってまず直接触れてみたい。気持ち、感情が先走っちゃうんです(笑)。

ロンドンを選んだ理由は?

20歳の頃、卒業旅行でヨーロッパを回ったんですが、その時初めてロンドンに行って、何かしっくり来たんですよね。どこか東京的な雰囲気もあって。で、また行ってみたいな、と。当時はロンドンが新しいステージに向かって盛り上がろうとしていた時期で、音楽的にも面白かった。プライマル(・スクリーム)オアシスブラーなど、ロック、ブリットポップのようなイギリス的音楽ももちろんありましたが、当時はクラブミュージックが台頭しつつあった時代。何かが変わろうとしている、ちょうどその狭間にいたような気がします。

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帰国後はどうされたのですか?

また「ビームス」に戻り、今度はインターナショナルギャラリーのセクションに配属。そこでテーラードやモードなデザイナーズウェアに本格的に触れることができました。そうするうちに、周りの仲間で集まって、せっかく出会ったんだから何か一緒に始めよう、と。その拠点としてショップを作ろうということになり、退社して実現させたんです。

お店のコンセプトは?

これも漠然としていました。最初の構想は、「みんなが気になるものを買い付けて売ろう」というくらいで。いわゆるセレクトショップ的な発想でしたが、実際動き始めると、バイイングのルールもよくわからず、モノが集まらない。足りない分は自分たちでデザインをしよう、と作った洋服が、「ラウンジ・リザード」の始まりです。

その後、どのような経緯で「FACTOTUM」を立ち上げたのですか?

「ラウンジ・リザード」のコンセプトは、変わることのないリアルクローズ。4年ほど経つと、リアルクローズというキーワードはキープしつつ、そこに新しい要素、挑戦するような何かをプラスしたいと思うようになって。そこで仲間に相談した上で、独立して立ち上げたのが、「FACTOTUM」です。

「FACTOTUM」は究極のリアルクローズだと言われていますが、それだけじゃない、男心をくすぐる“何か”があるんですよね。

基本的には、自分で着たいと思う服をデザインしていますが、同時に大勢の人にも着てほしい。目指すは、リアルでストリート感のある服。だから、ミリタリー、ワーク、テーラードというリアルクローズの定番を、すべて「FACTOTUM」というフィルターを通して表現しているんです。新しく進化した何か、時代性を反映したテーマやメッセージ性を、シーズン毎にプラスできたらいいな、というところからスタートしています。

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今までに、人生を変えるような人やモノ、場所との出会いはありましたか?

作家のチャールズ・ブコウスキーですね。ブランド名の「FACTOTUM」は、彼の小説のタイトルからとりました。新しくブランドを始める時、リサーチのために集めた資料の中から、たまたま手にしたのが、この小説。そこからブコウスキーという人間像に興味を持ち、調べる中で 「DON’T TRY」 という彼の言葉に出合いました。ネガティブに聞こえるこの表現、実は逆説だったんです。その裏には「するな」ではなく、「(無理に何かをしようとするのではなく)好きなこと、同じことをやり続けろ」という強いメッセージがあったんですね。スゴく良い言葉だなぁ、と心に沁みました。例えばロックスター。「恰好いい引き際」っていうのもアリだと思う。でも僕としては、何があっても歌い続けることが、実は一番恰好いいんじゃないか、と。

「FACTOTUM」と言えば、業界ではシーズン毎の凝ったビジュアルブックが評判でしたね。

自分たちの洋服は、シンプルなリアルクローズがベースです。そこで、テーマ性や匂い、微妙な空気感をより良く伝えるためのツールを探すなかで、ビジュアルブックにたどり着きました。それに賛同してくれた、同じマインドを持ったクリエイターと、シーズンテーマのルーツとなる場所に旅をしながら集中して作っていました。

撮影のための旅が、時には数週間に渡ったとか。

旅に出ると、ビジュアルブック作成が目的だから、そのことしか考えない。それがいいんです。でも、こうしよう、ああしよう、というのはコロコロ変わっていった。ある意味、日々喧嘩状態(笑)。ただ、そうして出来上がったブックには、現地での体験、みんなで交わした熱い議論、濃いコミュニケーションが結晶しています。

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2007年の春夏から、ビジュアルブックに変えてランウェイショーを始めた理由は?

ビジュアルブックを3年ほど続けましたが、そうなると今度は新しいことにチャレンジしたくなるのが僕の性分。ブックは何週間もかけて撮影し、じっくり時間をかけて制作できるけれど、ショーはたった10分ほどの一発勝負。短い時間の中で、いかに凝縮してシーズン毎の新しさ、ブランドらしさを伝えていくか。そのライブに近い感覚が面白いんです。ビジュアルブックで表現していたフォトストーリーは、Webサイトに場を移して続けていますよ。

今も、シーズン毎にテーマを追求する旅をしているんですか?

そうですね。やはり、実際に現地に飛んで、テーマに関連する物事を肌で感じると、リサーチしただけの情報とはまったく違った見え方になるんです。2009年秋冬シーズンのテーマは「STORY」で、「5人目のビートルズ」と呼ばれた(スチュアート・)サトクリフの生涯にスポットを当てました。だから、彼に縁のあるリバプールやハンブルクに足を運び、生家を訪ねて親戚に話も聞いて。そこで”生”のサトクリフに触れ、ビートルズの一員としてよりも、画家としてアート性の高い人物像に刺激を受けたんです。だからコレクションには、抽象画のような空気感を散りばめ、彼の人生につきまとう切ない感覚を表現した。デザイン的には、リバプールやハンブルクと言えば港町ですから、マリン(海軍)的要素をもったものを、あくまで抽象的に落とし込みました。

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ショーを重ねていくごとに、何か変化は生まれましたか?

今までは、シーズン毎に人物像が変わっていましたが、ここ最近は、シーズンに関係ない「FACTOTUM」の男性像について考えるようになりました。ただ、実は具体的な像というのはなくて。逆に洋服の方には、着る人に合わせられるよう、余白を残したデザインでありたいという思いがあります。華奢で繊細な男の子からガッチリした男性にまで、幅広く受け入れられるような服でありたいですね。

もうすぐ2010年春夏コレクションが始まりますが(※)、答えられる範囲で、テーマやショーの見所など教えてください。

そうですね、「テーマはインド」ということだけお伝えしておきます。もちろん、デリーを始め、ジャイプール、リシケシといった街を旅してきました。あとは、当日ショーを見て頂いて、何かを感じ取っていただければうれしいですね。

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