
Yuni Yoshida | 吉田ユニ | Art Director
まるで、絵本の中の一場面を見ているかのような独自の世界観を創り出すアートディレクター、吉田ユニ。大貫卓也、野田凪といった日本を代表するクリエイターたちに師事し、2007年の独立以降も、広告、エディトリアル、グッズデザインなど幅広い分野でその個性を発揮している彼女は、今最も注目されている若手アートディレクターのひとりだ。思わぬ視点で見る者を驚嘆させるフォトディレクションを武器に、ファンタジックな世界観を表現する彼女の素顔に迫った。
Text:原田優輝
デザイナーを志したのはいつ頃からですか?
小学校の卒業アルバムを見返してみると、その時から「デザイナーになりたい」と書いてあるんですね。当時は、まだ具体的には考えてなかったと思うんですけど(笑)。もともと、モノを作ったり、絵を描いたりということは大好きでした。オモチャで遊ぶにしても、まず自分でそれを作るところから始めるような子で(笑)。昔、ファミコンが欲しかったんですけど、うちにはなかったので、自分でファミコンとカセットを実物のように作って、テレビにマリオを貼り付けて遊んだりしていました(笑)。
その後、専門的に美術の勉強等をされるようになったのですか?
中学から女子美の付属校に入って、高校までは油絵をやっていました。その後、大学に進む時に将来のことも考えて、もともと興味もあったデザイン科に進むことにしました。大学で、広告の授業を受けるようになったのですが、それがきっかけで広告への興味も強まってきました。制限されたなかで、どれだけ面白いことをして、人を動かしていけるのかということを考えていくところに面白さを感じたんです。何も制約がないところでものを作るよりも、何かお題を与えられた方が燃えるところがありますね(笑)。
FITS 「Love Passport」
当時、影響を受けたクリエイターなどはいますか?
そんなに広告に関して詳しくはなかったんですけど、大学の授業がきっかけになって、それからは色々なアートディレクターの方の作品なども意識的に見るようなりなした。そのなかで、大貫卓也さんの作品が一番好きだったので、就職の時も「作品を見てください」と電話をかけたんです。そうしたら、「作品を送ってください」と言われたのですが、送るだけでは見てもらえないんじゃないかと思って、直接事務所に行ったんですね。今考えるとスゴいことしたなと思うんですけど(笑)、スタッフの方が対応してくれて、後で大貫さんに見せてくれたみたいなんです。それで気に入って頂けて、その後試験を受けて、大貫デザインに入社しました。
大貫さんのところではどのくらい働いていたのですか?
3年ちょっとです。私が入った頃は、ちょうどラフォーレ原宿の25周年キャンペーンの仕事で忙しい時期だったみたいで、入ってすぐにひたすらその仕事をやるようになりました。当時の事務所は、女性は私一人だったんです。しかも、新卒だったので上の人たちとも年齢は離れていたし、とにかく自分で学ぶしかなく、毎日朝までの仕事で結構大変でしたが、みんなのやり方を見ながら色々覚えていきました。大貫さんは、とにかくこだわりがスゴい人なんです。たとえば、直感で良いと思ったものでも、それをなぜ良いと思ったのかということを、後でちゃんと検証をするんです。もちろん、最終的な定着にもスゴくこだわるし、そういうところはとても勉強になりました。逆にそのクセがうつってしまって大変なくらいです(笑)。
「装苑」2009年5月号
art direction:Yuni Yoshida, photographs:Muga Miyahara, hair&makeup:Masayoshi Okudaira(BUBE), model:OLGA
その後、野田凪さんの宇宙カントリーに移られたんですよね?
はい。野田さんとは私が大学の頃から知り合いだったんです。もともと作品も好きでしたし、当時まだ野田さんがサンアドにいた時に、バイトさせてもらっていたことがあって、そこで野田さんのお手伝いとかをしてたんです。その頃から知っていたので、友達のような感じだったんですね。私が大貫デザインに入るという話なんかもしていましたし。それで、私が大貫デザインで3年くらいやった頃に、一緒にやらないかと誘ってくれたんです。ものスゴく悩みましたが、その頃は、私もそろそろ自分で色々やってみたいと思っていた時期だったし、アートディレクターとして個人の仕事をしてもいいと言ってくれていたので、決めました。
野田さんとはどういった関係で仕事をしていたのですか?
一緒にやる仕事では、お互いにアイデアを出し合ってやっていました。あと、当時は野田さんがかなり映像の方に力を入れていたこともあって、グラフィックの仕事は私がアートディレクターとしてやることもありました。一緒に仕事をしてみて、自分が作りたいものを実現させるパワーがスゴい人だなと感じました。プレゼンとかでも、そんなに特別なことをしているど、人を惹き付ける魅力があるというか、有無を言わせないエネルギーがあるんですよね。それは企画やアートディレクションの力ももちろんあるのですが、普通はなかなか実現させられないようなことでも上手く説得していくというか、相手に「この人なら形にしてくれるだろう」と思わせる魅力があったんです。
印象に残っている仕事があれば教えてください。
私が初めてアートディレクターとして手がけた香港のアパレルブランド「b+ab」の広告ですね。これは、撮影ものとしては初めてのAD仕事でした。初めてということで力もスゴく入っていたし、セットが上手くできるかなども心配で、本当に大変だったんですけど、結果的には周りの反響も良くて、フランスの雑誌でも取り上げてくれたりしたんです。完成したものを野田さんに見てもらった時も泣いて喜んでくれて。そういう意味でもスゴく思い出深い仕事ですし、その後自分が独立するきっかけにもなりました。

(上)b+ab Fall 07、(下) b+ab Winter 07
かなり自信になった仕事だったんですね。この作品のコンセプトを教えてください。
秋冬シーズンの広告だったので、女の子を象徴するアイテムであるスカートを使って、秋冬の部屋のあったかさを表現しようと思ったんです。常に新しいことが要求されるファッション広告で、いつもと違う視点で何か作れたらと思っていました。展開が秋と冬の2回に分かれていたので、秋バージョンで部屋の中を走り回っていた動物を、冬バージョンではスカートの中に入れたりして、季節感も出していきました。
作品のアイデアはどのように出していくことが多いのですか?
まずはじめに、色々なアイデアをとりあえず出していくんです。その時に出てくるアイデアの多くは「これだ!」というものではないんですけど、「いける!」と思えるものが出るまでとにかく出し続けていきます。そのアイデアが出た後は、それをどう詰めていくかを考えます。なんとなく面白いかもと思っても、それを定着させる形が浮かばないと、そこから進めないですからね。あと、大事にしていることは、あまり突っ走り過ぎずに、常に客観的に考えるということです。もともと性格的に一歩引いているところがあるので、そういうところは仕事にも活かされています(笑)。早い段階で良いアイデアが出たとしても、さらに良いものが出るんじゃないかともっと考えるようにしています。カンプを作ったりしていると、また別の案がふっと浮かぶこともありますね。
b+ab Spring 09
吉田さんの作品には、まるで絵本の物語の一場面を見ているかのようなファンタジックなものが多いですよね。
もともと自分の中にストーリーがあったり、コンセプト自体を物語のように考えていくところがあるのかもしれません。もともと絵本やマンガを見たり、描いたりすることも好きでしたし。ただ、よく女の子っぽいイメージに捉えられがちなんですが、基本的には女の子っぽいものってそんなに好きじゃないんです(笑)。例えば、携帯電話とかも割とゴツいものが好みですし、映画もマフィアものや刑事ものが好きです。あと、つのだじろうさんのマンガとかも大好きですし(笑)。
それは意外な感じですね(笑)。どの作品も絵作りの面でかなり緻密な設定がされているように感じるのですが、やはり最初の段階でかなり明確なイメージが固まっていることが多いのですか?
そうですね。最終的なイメージは頭の中でできています。ただ、それに基づいてラフを作っていくのですが、完全なそのイメージを描くのはとても難しいですね。だから、プレゼンの時なんかは自分の頭の中の絵をそのままプリントアウトできたり、USBにつないで取り出せたらどんなにいいかと思ったりするんです(笑)。どうしても手描きのスケッチやカンプだけでイメージを伝え切るのは難しいですね。

「NH」2009年11月号
一方で、最終的なアウトプットの段階では、頭の中で思い描いていたところに落とし込めるのですか?
そうですね。むしろ、そのイメージを超えられるようにしています。実際に撮影をしてしまえば、なんとか形になるものなんです。もちろん、最初に自分のイメージをスタッフに明確に伝えるようにはしていますし、なるべくそれをすぐに理解してもらえるような感覚の近い人たちとやるようにしています。やっぱり現場ではハプニングが起きたりもするのですが、それが逆に想像以上の面白さや意外性につながるんです。だから、合成でやれば簡単にできるところも、あえて現場での一発撮りにこだわったりするんです。
アナログへのこだわりも強そうですね。
仕上がりの奥深さは、やっぱりアナログの方があると思うんです。撮影後の細かい調整などはデジタルでやっているんですけど、やっぱり一発撮りをやる現場というのは面白いですし、みんなの情熱もより強く感じられます。その分時間がスゴくかかることもあるのですが、ありがたいことにみんな楽しんでやってもらえることがほとんどですし、終わった後の達成感もスゴいんですよね。
最後に、最近手がけたお仕事や今後やりたいことなどを教えてください。
最近はCDの仕事などもよくやっています。あと、安野モヨコさんの「HAPPY MANIA」の新装版の装丁も手がけています。これは安野さんご本人から指名して頂いた仕事だったんです。もともと読んでいたマンガだったので、スゴく感激しました。ファッション雑誌の撮影なども大好きなので、そういう仕事も続けていきたいですし、バランス良く色々なことをやっていきたいですね。あと今、映像をスゴくやりたいんです。今までグラフィックを作っていた時も、「ここを動かしたら面白いだろうな」と思うことが多かったので、なんとか実現させたいですね。
Information
母校である女子美術大学で、10月24日に吉田氏の講演が開催される。詳細は同大学のホームページから。
V6「Spirit」














