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RIKA EGUCHI | えぐちりか | Artist / Art Director

電通のアートディレクターとして働く傍ら、アーティストとしても国内外で作品を発表する女性クリエイター、えぐちりか。幼少期の記憶や経験を、現在の自身の興味と融合させ、広告、アートの両分野において、唯一無二のストーリーを紡いでいく”えぐちワールド”は、多くの人々を虜にする不思議な力を持っている。まもなく「Public-image.org」での連載企画もスタートする今最も注目すべき若手クリエイター、えぐちりかに話を聞いた。

Text:原田優輝


アートから広告まで様々な分野で仕事をされていますが、子供の頃からもの作りが好きだったのですか?

そうですね。昔から色んなものを作っていました。小1の頃からフェルトでアップリケを作ったり、綿を入れた人形や紙粘土の動物園を作ったりしていて、2、3年生になると、編み物もやるようになり、マフラーや帽子、手袋などを作るようになりました。他にも革でお財布を作ったり、アメリカンフラワーという花細工を習ったり、お菓子
やジャム作りなんかにもはまっていました。うちのおばあちゃんが手先の器用な人で、お手玉を手作りしたり、チラシを使って切り絵を作ったりしていたので、その影響は大きいかもしれないです。自分も手で何かを作ることが他の人よりも得意だったみたいで、ほめられるからどんどん得意になってさらに作るという感じでしたね。

その頃からすでにもの作りを将来の仕事にしたいと考えていたのですか?

いえ、その頃は趣味でやっていたので、将来はそういうことが得意なお母さんになりたいという感じでしたね。子供なのに「オレンジページ」を愛読していたんですよ(笑)。将来の仕事として意識し始めたのは中学生の頃からですが、その頃は先生に憧れていたので、美術の先生とかになれたらいいなと思っていました。その後、高校に入ってからメイクアップアーティストやCMプランナーなど色々考えたのですが、結局何にもなれないだろうという気持ちが強かったんです。でも、高校では成績が悪くて、大学進学の時に消去法で残ったのは美術だけだった(笑)。

えぐちりか

大学では何を専攻されていたのですか?

ガラス造型を学んでいました。大学を選ぶ頃、お菓子作りや料理にスゴい凝っていたんですね。それで、自分が作ったものを載せる食器を作りたいと思っていたんです。小さい頃から色々な習い事をやってきていたのですが、その中に陶芸やガラスがなかったので、ずっとやってみたかったということもあって、陶芸とガラスを両方専攻できる明星大学の造形芸術学科に進んだんです。実際に学んでみると、ガラスがスゴく難しくて、本気でやらないと習得できそうになかったので、2年の時にガラス作家になろうと決め、ガラスに絞って本格的にやり始めました。

その頃はどのような作品を作られていたのですか?

食器って、使っている時間よりも棚にしまわれている時間の方が圧倒的に長いじゃないですか。でも私は、食べる時だけに楽しむのではなく、飾っている時もおもしろいアートのような食器を作りたかったんです。それで、3年生の頃に「EGG DISH」という作品を作りました。これは、目玉焼き自体がお皿になったら面白いだろうなという思い付きから生まれた作品で、実際に形にしてみたらスゴく面白かったので、お皿に限らず、卵をモチーフにしたワイングラスを作ったり、インスタレーションなどもやるようになっていったんです。その頃からもっとアート寄りのことをしたいと思うようになり、多摩美の大学院に進みました。

えぐちりか

現在は電通のアートディレクターとして働かれていますが、広告の仕事に興味を持ったのはいつ頃からでしたか?

卒業制作の作品が「ひとつぼ展」でグランプリになったのですが、その時の審査員に浅葉克己さんや青木克憲さんなど有名なアートディレクターの方もいて、そこでそういう職業を知ったのが最初ですね。その後、大学院に進んでからは、頭の中で作りたいとイメージしているものの量と、実際に自分の手で作ることができる量のギャップを感じるようになっていって、その時にアートディレクターという職業が魅力的に思えたんです。それで、就職試験で電通に受かって、そこから広告の仕事をするようになりました。

アートディレクターとしてのターニングポイントになった仕事があれば教えてください。

大きなターニングポイントになったのは、ニューヨークと東京で展示をした「How To Cook Docomodake?」展の仕事ですね。この時は展覧会全体の企画からキュレーション、メインビジュアルや空間などすべてのアートディレクション、さらに作家として作品制作までをやりました。あと、その前にやったフロム・エーの仕事も大きかった。こっちはグラフィティアーティストとコラボレーションして、色々なアルバイトのポスターを作ったんです。これらの仕事では、私がアーティストとして活動をしてきたなかで培ってきたものを活かすことができました。普通にデザイナーだけをやってきた人にはなかなかできない仕事だったと思うし、自分で一からアーティストに声をかけてやっていくなんて、他の人からしたら面倒くさい仕事だと思います。でも、自分にしかできないことができたという意味で、これらの仕事はとても大きかったですね。

えぐちりか

えぐちりか

色々なクリエイターとコラボレーションしながらものを作っていくこともお好きなんですね。

みんなで何かを作るのは大好きですし、その方が仕事としても絶対面白いんです。自分が得意ではない部分は、無理しないでその道のプロにお願いする。みんなで一眼となって作り上げることは、一人でつくるアート作品とは違った感動が味わえるんです。それが毎回学園祭のようでとにかく楽しいんですね。

広告を作る上で大切にしていることを教えてください。

広告の場合、それを伝える相手が決まっていることが多いじゃないですか。例えば、ターゲットが20代の女性だとしたら、彼女たちがどういうものを見たらドキドキするかとか楽しいと感じてもらえるのかとか、相手の気持ちをスゴく想像します。まず始めに、ターゲットに「感動してもらう」とか「切ない気持ちにさせる」とか、どういう喜怒哀楽を伝えるのかというところを自分のなかで設定するんです。その上で、今回はヴィジュアルインパクトで勝負しようとか、ストーリー性の強いものにしようというところを色々考えていきます。例えば、ドリカムのCDジャケットを作った時は、「究極のラブソング」というテーマを受けて、ジャケットを手にした人がスゴく恋したくなったり、恋愛って良いなと思ってもらえるようなものを作ろうということを始めに考えました。それで、人、犬、犬のおしっこ、傘、電柱など、写真に映っているすべての要素がカップルになっているビジュアルにしたんです。

えぐちりか
えぐちりか

人の感情を動したいというのは、広告の仕事に限らず、アーティストとして作品を作る時などでも共通してあるものなのですか?

そうですね。アーティストとして作品を作る時も、だいたい美術館の場所やスペース、テーマなどが決まっているので、その場所に見に来てくれた人にどう感じてもらうかということは気にします。やっぱり来てくれた人がワクワクできるものや、忘れられないようなものを作りたいんです。自分のためだけに好きなものを作れば良いというのではもったいない。だから自分が作ったものを相手が見た時に、どんな感情を抱くのかを予測して作っていきます。もちろん、その予測が外れることもありますけど(笑)。

クライアントワークと違い、アート作品の場合、どんな感情を相手に与えるのかは作家の自由ですよね。そのような場合、何を取っ掛かりに考えていくのですか?

例えば、失恋をした時なんかは、その暗い気持ちや切なさをどう表現しようかということを考えます。逆に、スゴく幸せな時には切ないものは作れないですし、やはりその時の自分のコンデションが作るものにスゴく影響します。その時の自分の状態や表現したいことを、自分のフィルターを通して作品にして、見てくれる人と共有したいという思いが強いのかもしれません。

えぐちりか
えぐちりか

作品を作る時のインスピレーションソースを教えてください。

私は、小さい頃にワクワクした記憶とか印象に残っている思い出とか、色々なものを作ってきたなかで覚えた技法などを、大人になってもう一度再現したいという思いが強いんです。例えば、卵の作品をたくさん作っていたのも、私が子供の頃に卵を食べられなかったということに関係しています。鳥が昔から大嫌いで、卵というのはその鳥の子供だということは知っていたので、どうしても黄身とかが食べられなかった。ゆで卵も大学に入るくらいまで食べたことがないくらい気持ち悪かったんです。

それをどのように作品に転化させたのですか?

私が卵を嫌いだったのは、卵を生き物として認識していたからなのですが、そういう視点がみんなとちょっと違うのかなと思い、それをそのまま本にしてみようと思ったんです。それで「バーンブルックのたまご」というストーリーの絵本を作りました。展覧会をやった時には、この絵本の最後のカットを会場に再現して、絵本の中に入っていくというコンセプトの展示にしました。絵本のストーリーは完全な実話ではないのですが、命というものに触れた瞬間のムズムズする感じや生理をくすぐられるような感じを、自分の体験をもとに描いていきました。自分が小さい頃から抱いていた感覚と、今面白いと思っているものを組み合わせることで、新しいものが生まれるというのが楽しいんです。それは作品でも仕事でも同じです。広告の仕事でも、物語性があるものが多かったりするのですが、それもこの辺りに関係しているのだと思います。

えぐちりか

そのような作り方だと、広告の仕事でも作品に対する愛着度がだいぶ変わってきそうですね。

愛着もわきますし、たぶんそういう風にしか作っていけないんですよ(笑)。広告にしても、不特定多数の相手に向けて作っていくというよりも、自分と共通する部分やプライベートな知り合いのことを思い描きながら作った方が、結果的に相手に刺さるものになるというのは、これまでの仕事から実感しています。

最後に、12月からスタート予定のPublic-image.orgでの連載について、意気込みを聞かせてください。

色々な分野で働きながら、クリエイターとしての部分と女性としての部分を両立させている人たちに色々お話を聞いてみたいと思っています。例えば、お母さんをやりながらアートディレクターをしている女性ってまだそんなに多くないんです。クリエイターとして忙しい日々のなかで、女性らしく素敵にお仕事をされている方々にお話を聞いて、私自身勉強させてもらえたらいいなと思っています。



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