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toe | トー | Musician

つい先日、4年半ぶりのフルアルバム『For Long Tomorrow』をリリースしたtoe。”なんだかよくわからない音楽”をまとめたような「ポストロック」というジャンルに、(一応)括られてこそいるが、それはつまり、彼らがジャンルでは括れないバンドであるということを証明しているに過ぎない。一聴すれば、それがtoeの音であるということがすぐにわかる強い個性を持つ彼らだが、4人それぞれがtoe以外にも活動の場を持っており、どこかひょうひょうとしていて、変な執着がないように思える。彼らの根底にある芯の強さや自信が、そうしたバンド独自の空気感を作り上げているのだろう。
ダンスミュージック? いやロック? そんなことはどうでもいい。ただそこには、素敵なリズムとリフと音色が詰まっている。エモなギターを鳴らす山嵜廣和と美濃隆章、そしてフレキシブルに“歌う”ドラマー柏倉隆史の3人に話を聞いた。

Text:大草朋宏


ファースト・アルバムから4年半が経ちましたが、今作を作るにあたってどのような構想があったのですか?

山嵜:ファースト・アルバムの後に出したEP『new sentimentality e.p.』の時は、アコースティックをメインでやろうというビジョンはあったんですけど、今作は特に決めていませんでした。いつも基本的にコンセプトは決めないんですよ。一曲一曲作っていくだけです。

そうすると、このアルバムに漂うムードは、そのときの気分や好きな音が反映されたものということですか?

山嵜:そうですね。僕らが昔やっていたような、ギター主体で展開の多いインストバンドみたいなものは聴かなくなりましたね。最近は90年代のヒップホップとかネオソウル、70年代のアフロビートみたいなものが好きです。昔は意識して曲の中で展開を変えたりしていたんですけど、だんだんそういうのがわざとらしく感じてきて…。今作るんだったら、ワンループのビートがあって、ドラムの抜き差しやベースラインで変化をつけるような曲を作りたいと思って、そういう感じのアルバムにはなったと思います。

美濃:どちらにしても、エモっぽいところがバンドの根っこにあるので、そのメロディ感は絶対に出てきてしまいますね。アフロビートっぽい曲でも、メロディにはエモ感がミックスされてしまう。どんなに押し殺しているつもりでも、自然と出ちゃうんで、それは個性かなと(笑)。

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Photo:太田好治A/M

今作では3人のヴォーカリストをゲストに迎えていますが、toeにとってヴォーカルはどういう位置付けになるのですか?

山嵜:僕たちにとっては、ヴォーカルも楽器のチョイスのひとつという認識なんです。キーボードが入っている曲、鉄琴が入っている曲、ヴォーカルが入っている曲。すべて並列に考えています。

ヴォーカル入りの曲の場合、最初から歌ありきで考えていくのですか?

山嵜:そういうことが多いですね。特に、『Say It Ain’t So』(千川弦参加)と、『グッドバイ』(土岐麻子参加)という曲は、最初から歌が入ることを意識していました。原田郁子さんも含め今回参加してもらった3人は、みんな近いところにいる人たちで、ヴォーカリストとして声や歌い方が好きな人たちです。個人的に、歌い上げるタイプのヴォーカルよりも、声は張らないけど抑揚がある感じの人が好みですね。

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Photo:太田好治A/M

曲作りはどういう流れで行うのですか?

柏倉:こういうものを作りたいというデモをみんなで持ち寄って、それをバンドで再現していくというやり方が多いです。デモを持ってきた人が主導で曲作りを進めていきます。

山嵜:基本的には、そのデモを作った人の考えを理解するという作業になりますね。自分が持ち寄ったデモの場合は、より良くなれば問題ないし、大きくハズれそうなら修正してもらったりします。

美濃:打ち込みだったものが生になるとニュアンスも変わるので、人力の良さが出るようにアレンジを変えてみたりもしますね。

デモの段階で、大まかなゴールは見えていることが多いのですか?

山嵜:見えています。リフとかリズムから始めるんじゃなくて、「こういう曲をやりたい」という全体のビジョンがある。それを実現するために、自分たちが持っているストックのリフやリズムを使って、最終的なカタチに近づけていきます。コード進行もメロディも、あくまでも楽曲の部品に過ぎないので。

柏倉:僕らの場合は、まず最初に曲があって、それをアレンジしていくという流れではなく、アレンジとレコーディングを平行して進めている感じですね。

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Photo:太田好治A/M

話を聞いていると、あまり「アルバム」という形態にはこだわっていないようにも思えます。アルバム全体の統一感というのはあまり意識していないですか?

山嵜:そうですね。ただ、同じメンバーが同じ時期に録っているので、曲調は違っていても、統一感は勝手に出てきていると思います。

なるほど。曲を仕上げたのは紛れもなく「今」であって、それを凝縮させたものが、アルバムというひとつのカタチとしてまとまると。ところで、楽曲を作る際には、ライヴでの再現性もある程度意識しているのですか?

山嵜:実はライヴのことは意識していません。それをやってしまうと、曲作りが制限されてしまうから。4人しかいないので「これしか楽器が入れられない」と狭めてしまうのがイヤなんですよね。自分が考えていることをどれだけ再現するか、ということを最優先にしていて、ライヴのことは全然考えてない。だから今、ライヴでどうやろうかってことが大問題です(笑)。

柏倉:音源通りにライヴをやってもどうなのかっていうところはありますよね。ライヴにはライヴの面白さがあるので。

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Photo:太田好治A/M

Toeはライヴに定評があるバンドだけに、ライヴを意識しない曲作りをしているというのは意外でした。月並みですが、今作もまた、ジャンルで括れない作品になっていると思います。しかし、toeの個性はかなり熟成されていて、ある種のジャンルは確立しているような気がします。これから先、どこへ向かうのでしょうか? “新しいことにチャレンジ! とか、他のバンドとは違うことをやってやる!” みたいな気概も特に感じないのですが(笑)

山嵜:それはまったくないかも。新しいことをやっている気もない。「自分たちは何にも影響されることなく、まったく新しいことをやっています」なんてことはありえないので。今までの人生で、自分が関わってきたものすべてが反映されています。落とし所も斬新な音楽とは思わない。でも、自分が好きな音楽に忠実なつもりです。

柏倉:例えば、ドラマーの立場からしても、4つ打ちとかエイトビートとか、ビートに名前が付いている時点で、そのフォーマットで挑むわけだから、もう新しくもなんともないですよね。自分たちの中で新しいことをやっていくしかない。

山嵜:あとは組み合わせの新しさでしかないですよね。Phil Ranelinっぽいホーンと自分たちのエモいギターを組み合わせたらカッコ良いな、とか。確かにジャズのスタンダードとかカッコ良いと思うんだけど、それを通過してネタにしたヒップホップの方がおいしいところだけをループしているから好きだったりするんですよ。逆にこのループカッコ良いなと思って元ネタ聴いたら、そのフレーズが出てくるまで長いなと思ったり(笑)。

新しいジャンルやシーンを開拓するのではなく、自分たちのなかで、常に新しいことをやったり、進化していこうという気持ちはあるんですね。

山嵜:そうですね。ただ、どちらかというと、自分がいちリスナーとして「こういうバンドがあったらいいな」とか「こういうライヴがあったらいいな」という理想のバンド像を再現している感じでしかないんです。今はライヴにたくさんのお客さんが来てくれるからうれしいですけど、もちろん昔はソールドアウトになることなんてなかったし、たまたま今リンクしているだけのことかもしれない。まあ、それに関係なく、バンドはずっとやっていると思いますけど。

美濃:お客さんいなくても、絶対やっていますね。


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