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MERCE DEATH | メルセデァス | Musician

自らギターで演奏したフレーズをループさせ、多重録音によってあたかもバンド演奏のようなパフォーマンスを展開するその独自のアプローチで注目を集める”ひとりライブバンド” メルセデァスコーネリアスのミュージックビデオ・コンテストで最優秀賞を受賞したインタラクティブ作品から、USTREAMを経由したジャムセッション、さらにはテスラコイルを用いたパフォーマンスまで、新たなライブ・パフォーマンスの形態を模索するその活動の背景には、どのような思いがあるのだろうか? ワイデン+ケネディ東京では、インタラクティブ・アートディレクターとしても活躍するマルチプレイヤー、メルセデァスこと大野真吾に話を聞いた。

Text:原田優輝


音楽を始めたのはいつ頃からですか?

中学生の頃にギターを始めて、高校時代はバンドをやっていました。高校卒業後は、MTRを買って、作曲や録音をするようになりました。その頃は、とにかく曲を作ったり、多重録音して遊ぶことが楽しかったんです。ただ、美大に進んでから、デザインを将来の仕事にしようと思うようになって、ギターも続けてはいたのですが、プライオリティを下げなくてはなりませんでした。バンドを組んでやるとなると、結構大変なんですよね。連絡を取り合って待ち合わせをしたりするのも意外に面倒だったり(笑)、一緒に演奏していると、誰が間違えたとか間違えてないとかきちんと話し合わなくてはならなかったり…。それでもギターを弾くこと自体は好きなので、普段は家でCDをかけて、それに合わせて演奏するというのを趣味として行ってました。

それが現在のメルセデァスのスタイルのもとになっているんですね。

そうですね。フランク・ザッパジミヘン、JB’Sなんかも好きだったので、彼らのCDをかけては、自分の担当パートを決めてジャムっていました(笑)。その後2002年頃に、友人がROLANDの「LOOP STATION RC-20」という機材を使っているのを見たんです。あるフレーズを弾いて録音すると、それがループされて、さらに音を重ねていくこともできる機材で、「ヤバイ、これは面白い!」と。僕が学生の頃にテープレコーダーでやっていたことを、ふたつのペダルだけでできるということが衝撃で、スグにそれを買いました。「これでひとりJB’Sができる!」と(笑)。それから半年くらいして使い方にも慣れてきたところで、カフェライブをやったり、海の家で演奏したりということをするようになっていきました。

当時のライブでのお客さんの反応はどんな感じでしたか?

お客さんによっては、あらかじめ録音したものをバックで流しているのかなと思っている人もいました。カフェライブって、お店のBGM代わりのようなところもあるので、みんなにしっかり見られているわけでもなく、終わってから「生でやってたの?」と聞かれることもよくありました。あと、これは今でもそうですが、機材について聞かれることも多いです。僕、いままで相当ROLANDのことを宣伝していると思いますよ(笑)。

機材はどのくらい使われているのですか?

ループに関しては、今も「LOOP STATION(RC-50)」を使っていて、エフェクター関連は、オーバードライブオートワウ、あとはボリュームペダルといった感じです。ギターの演奏も、ピックアップという音を拾う部分をスイッチで切り替えたり、ボリュームのトーンを調整したり、指で弾いたりピックで弾いたり、弾くポイントを変えたりというベーシックなギターの機能を最大限活かして、色んな音を出すということにこだわっています。ギターをやっている人からは、「エフェクトこれしか使ってないの?」と驚かれることもありますね。今は打ち込みの音を使えばもっと色々出せますよね。でも、あえてギターの弦を叩いてドラムみたいな音を出したり、ベースみたいな音を鳴らしたりということをやっています。

MERCE DEATH

バンドをやめて、ひとりで音楽活動をするようになる人たちの多くは、打ち込み系に流れていくように思うのですが、そことは違うアプローチを取っているところが面白いですよね。

それは世代の違いもあるかもしれないです。僕がギターを始めた中学生の頃はまだ80年代で、ガンズ・アンド・ローゼスボン・ジョヴィとかが出てきて、僕もご多分に漏れず好きになったんです(笑)。そのまま行くと、メタリカとかメタル方面に進むというのもありがちなんですが、当時は70年代リバイバルの流れもあって、レッド・ツェッペリンなんかを聴くようになりました。その辺から、ジミヘン、ジェフ・ベックなどに流れてファンクっぽいものを聴くようになったり、さらにフランク・ザッパとかも聴くようになり、初期のフュージョン系やAOR、さらにはSSW系も含めて70年代の音楽はかなり色々なジャンルで聴いていました。そうしているうちに、90年代のデジタルロックやDJブームが来たんですが、そういうものを横目で見ながら、DJは楽器がやりたくても飽きちゃう人たちのためのものだと当時は思っていました。僕はせっかくギター弾けるんだから、わざわざそっちをやらなくてもいいかなと。

演奏することへの思いが強いんですね。

そうですね。今ではもっとゴチャ混ぜに何でも聴いていますし、デジタルでもカッコ良い使い方をする人はもちろんいるわけで、結局はセンスが一番大事だと思うんですけど、当時はデジタルにハマるきっかけがなかった。DJとかでもスクラッチはカッコ良いと思っていたんですけど、デスクトップだけでやっているライブとかにはあまり感じるものがなくて…。音源として聴くぶんには、録音されたものが良ければそれでいいんですけど、ライブだと「こいつヤバイ!」みたいな感じが大事だったりするじゃないですか。そう考えると、楽器って分かりやすいんですよね。早弾きとかも、録音されたものを聴いても別になんとも思わないけど、実際目の前でやられるとやっぱビビりますよね。だから、僕としては録音したものを聴いてもらうことよりも、その場で作って喜んでもらえるようなことをやりたいと思っているところがありますね。

演奏は即興でやっているのですか?

そうですね。ただ、即興とは言っても手癖というのがあるので、毎回完全に新しい音を出せているかは分かりません。手癖の組み合わせ方がその時によって変わっていくというのが正しい説明の仕方かもしれないですね。自分の中に、手癖のライブラリがあるんです。例えば、カフェライブで女子が多いと思ったら、オシャレなコードから始めてみようとか、今日はむさ苦しいメタルファンが多いから、ちょっと歪んだメタルっぽい音から始めてみるとか(笑)。そうやってお客さんの様子を見ながらやっているんですが、カフェとかでまったり弾いていると、だんだんBGM化していくので、時々ノイズみたいな不協和音も出して、「お前らが気づくまで、この音出し続けてやるからな」みたいなこともやってみたりします(笑)。


即興の面白さを教えてください。

逆に僕は即興しかできないところがあるんです。例えば、友人の結婚パーティとかでバンドを組んだりすると、絶対間違えるんですよ。中学生でも弾けそうなリフを大事なタイミングで間違える(笑)。でも、即興で弾いていると、もし間違えても「間違えていない顔」をすればそれでいい(笑)。即興でやることで開放されるところがあるんです。そうやって自分を自由にしておくことで、ちょっと難しそうなフレーズにもあえてトライできるし、そこで「今日はうまくいった」とか「全然ダメだった」という自分の中のバロメータをチェックしながらやっています。

一方で、ソングライティングの部分にはあまり興味がないのですか?

最近は少し興味があります。普段の仕事で、WebサイトのBGMをどうするかという時に、時間も予算もない場合は自分で作ったりすることもあるのですが、それが割と評判良いんですよ(笑)。ただ、メルセデァスとは少し感覚は違いますね。メルセデァスはライブのための活動形式だと思っているので、ホームページ上で映像や音源をアップしているのもすべてサンプルでしかない。あくまでもライブに来てもらうためのものとして、YouTubeやMP3があるという感覚ですね。

やはりメルセデスは、録音よりもライヴなんですね。

はい。今は特に録音芸術がやりにくくなってきていますよね。20世紀というのは、録音された音楽の価値がどんどん高まっていった時代で、それがビジネスにもなったと思うんです。でも、それ以前はそもそも録音というのは無かったわけじゃないですか。音楽というのは、会場に行って演奏を楽しんだり、みんなで歌って楽しむものだったわけで、そうした歴史に比べると、録音芸術の歴史というのは圧倒的に短いんですよね。録音自体はこれからも残っていくとは思うんですが、これだけコピーが出回っている時代に、音楽の価値というのは明らかに変わってきていて、音楽業界全体も方向転換を始めている。そういう意味では、僕は先見の明があったんだと勝手に思っているんですけど(笑)。


最近は、Ustreamを使ったライブなども試みていますね。

ライブ映像を無料ストリーミングで流せたら、海外の人たちにも見せられると思って始めたのがきっかけです。ただ、実際にやるとなると、時差の問題があるので、何時から始めるのがいいのかで悩んでしまったんです。始めは、日本とヨーロッパとアメリカで時間を分けてやってみようと思っていたのですが、どうせならもっと分けた方が面白いかなと思い始め、結局フィレンツェやストックホルムなど、時差すらないところも分けてしまって、だったらもう「ワールドツアー」って言っちゃおう、と(笑)。せっかくだからツアーTシャツとかも作ったりして(笑)。そうしたら、ツアーの前半にヨーロッパを回っている時に、Ustreamの広報担当の人から連絡があり、「アメリカでやる時はこの時間にできないか?」相談されたんです。それでUstreamのトップページにバナーを載せてもらえたりもして、最終的には延べ2000人くらいに見てもらうことができました。

「World Jam band」というプロジェクトもやられていますね。

これは、色んな人のストリーミングウィンドウを「World Jam band」用のページに貼りつけてセッションをしようという試みです。とりあえず風呂敷を広げてみた感じだったんですが、実際に始めてみると参加してくれる人が意外にいて(笑)。5人くらいでやった時が一番まとまっていて良い感じでしたね。やっぱりタイミングが2、3秒ズレたりするんですが、それでも成立している瞬間はあるし、そもそもズレちゃいけないというのは誰が決めたんだと(笑)。キャプテン・ビーフハートだって演奏の音が全く聴こえないブースでボーカルを録ったり、「ズレ」を表現として使ったりしていますしね。ズレというのは人間の認識の問題で、実際にズレている音というのはないはずなんですよね。まぁ、屁理屈ですけど(笑)。ただ、真面目な話、オンラインジャムというのは、今後絶対需要が増えていくジャンルだと思います。

MERCE DEATH

オンラインネットワークを使って音楽を表現していくことの可能性は、今後さらに広がっていきそうですね。

そうですね。こんな大したことないことでも、それを「ワールドツアー」とか言ってやってみると、面白がってくれる人が世の中にはいるんだっていう事を実感できました。たとえテレビとかでは取り上げられないことでも、インターネットならそれを面白がってくれる人までちゃんと届く。だから、自分が面白いと思ったらとりあえず動くようにしています。たまに外で「メルセデァスさんですよね?」と聞かれたりすると、「伝わってる!」と感じて面白いですね。

普段は、ワイデン+ケネディでインタラクティブ関連の仕事をされていますが、そうした環境とメルセデァスの活動がつながる面もあるのでしょうか?

そうですね。Ustreamを最初に知ったのも仕事で調べものをしていた時ですし、例えば、Webサイトを構築していく時に必要なシステマティックな思考力がメルセデァスの表現に反映されてくることもあるし、逆にライブで必要な瞬発力が普段の仕事に活かされることもあって、その辺は面白いですね。若い頃に、「やりたいことを何かひとつに決めろ」というようなことも言われたのですが、僕は音楽もやりたいし、Webも映像もグラフィックも全部一緒にやりながら成長していきたいんです。少しずつ色んなことをやっていくなかで、様々な人と知り合うきっかけが増えて、最近は面白いことができるようになってきていると感じるので、このやり方でやってきて良かったなと思うし、これからもそうしていきたいですね。よく「自分が何をやりたいかよく分からない」という人がいますが、「それなら全部やったらいいのに」と思うんです。



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