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NAOKI SHOJI | 東海林巨樹 | Illustrator

ドローイング、コラージュ、マンガなど様々なアプローチを用いて、独自の作品を発表し続ける若手クリエイター、東海林巨樹。線へのフェティシズムや描くことの快楽を、半ば自動筆記的にアウトプットする彼の作品は、パースが狂ってしまったかのようないびつな造形と、独特のユーモアや愛らしさを併せ持ち、見る者の目を釘付けにするような不思議な魅力にあふれている。ZINEの制作や個展の開催、さらにはアパレルブランドとのコラボレーション、CDジャケットのアートワーク制作など、近年急速に活動の場を広げつつあるニューカマーを取材した。
Text:原田優輝


絵は子供の頃からずっと描いていたのですか?

そうですね。割と家族みんな絵を描くのが得意で、父親がよくスケッチに連れて行ってくれたんです。そうした環境の中で自分も自然に絵を描くようになっていました。その頃は風景を描いたり、手塚治虫の絵を真似して描いたりしていました。当時は親の規制が結構厳しくて、マンガは手塚治虫以外は基本的に禁止だったんです。だから、手塚マンガでお気に入りのキャラクターを描いて、それをファイリングして人に見せたりしていました。でもいつも絵ばかり描いていたわけではなく、物語を作ったり、スケボーを自作したり、蟻地獄をたくさん捕まえたりしてました。

マンガ以外に影響を受けたものはありますか?

これも子供の頃の話なのですが、親が絵本や児童文学をよく買ってくれたんです。そういった本からの影響は今でも感じます。なかでも「だれも知らない小さな国」という本の挿絵を描いていた村上勉さんの、パースが狂ったような絵にはかなり影響されました。他にも「空とぶ大どろぼう」という児童文学があって、その挿絵を描いていた山田神さんという方の、万年筆で描いたような独特の線画のタッチもスゴく好きでした。新聞の風刺画も手がけている方で、子供向けにしてはちょっと癖のある絵でしたね。

東海林巨樹

今の東海林さんの作品からも、そうした線へのフェティシズムのようなものが感じられます。

それはあるかもしれないですね。やはり子供の頃に受けた影響というのは、その後に見たものよりも大きいんだと思います。児童文学の挿絵って、線画だけで着色されていないものが多いんですが、そういうものをなんだかカッコ良いと感じていました。ミヒャエル・エンデの「モモ」は、エンデ本人が挿絵を描いたらしいんですけど、ヤバイと思って見ていましたね。その後、高校卒業した辺りからは、松本大洋五木田智央、バリー・マッギーなどの絵に惹かれていきました。伝統的な絵画よりはもっと敷居が低いというか、でもちょっと癖のあるイラストやマンガに魅力を感じていましたね。その頃から自分でもマンガを描くようになりました。最初に13ページの短編を描いたんですが、それが意外と友達から好評で、気を良くしてその後2本短編を描き、卒業制作ではそれらの作品をまとめたZINEを作りました。

大学を卒業してからはどのような活動をされていたのですか?

とりあえずは学生時代の延長で、働きながらマンガを描いていました。青林工藝舎などいくつか出版社に持ち込んだりして。反応は割と良いんですが、描くペースが圧倒的に遅く、年に1本という感じだったので、それが仕事になるとも思えず…、どうしようかなと(笑)。ただ、描きたい話はあったので、何年かはがんばっていました。でも、自分の脳はストーリーをうまくまとめるようにはできていなかったみたいで…。絵を描くのは楽しいんですが、コマ割りなどのネーム作業が本当に辛かったですね。なかなかマンガとして成立させられなくて、ボツページだけがどんどん溜まっていきました。それより少し前から、マンガと並行して、コラージュのスクラップブックも作っていたんですが、だんだんそっちの方が楽しくなって、シフトしていきました。

東海林巨樹東海林巨樹

コラージュはいつ頃からやるようになったのですか?

大学3年の頃からです。「「美術手帖」の大竹伸朗さんの特集にスクラップブックなどが載っていて、それに衝撃を受けました。一枚のコラージュ作品がどうこうということよりも、スクラップブックという存在自体がカッコ良いと感じたんです。最初は、適当にその辺の雑誌やゴミなんかをノートに貼っていたのですが、卒業後アメリカ旅行に行った時にそこで拾ったものを使ってみたら、格段に楽しい上に友達の反応もスゴく良くて。うれしくなって作品をホームページに載せていたら、And Aから仕事の依頼が来たり、環ROYのCDジャケットをやらせてもらったり、GERMのTシャツを手伝うようになったりと、徐々に加速していきました。友達に会うと良いゴミをくれますし。その辺りからノートではなくダンボールに素材を貼ることが多くなり、少しずつサイズも大きくなっていったように思います。それまでは、絵のサイズは大きくてもB4のマンガ用の原稿用紙くらいだったんですよ。周りの同級生が卒業制作で100号サイズの油絵などを出すのを見て、僕には無理だなーと思っていました。

それはなぜですか?

大きく描いても「持たないんじゃないか?」という怖さがありました。自分は絵に関して割とせっかちなところがあるので、時間がかからない小さい絵の方が合っていたし、大きいものを作ってあまり上手くいかなかった時のことを考えると、面倒くさかったんだと思います(笑)。今はそういう抵抗はだいぶなくなったんですけど、やっぱりA4サイズくらいで描くのが一番好きですね(笑)。アメリカに行った時に、グラフィティも色々見て、カッコ良いなとは思ったんですが、同時に自分とはスタート地点が違うような印象を受けました。よくそんな大きな絵が描けるなと(笑)。やっぱり挿絵やマンガのサイズが好きなんでしょうね。

東海林巨樹

東海林さんの作品には、即興で描かれているような印象を受ける絵も多いのですが、描き始める時にどの程度完成形が見えているのですか?

もともと下書きがあって、それを大きく描いていくこともありますが、小さくヘロヘロ描いているものは、カッコ良くならなかったら誰にも見せなければいいというノリで、ほぼ何も決めずに描き始めてます。その時々でハマっているタッチのようなものがあって、寝る前に眼鏡も外し、枕元で手元もまともに見ずにお気に入りのタッチで描くのは至福の時ですね(笑)。次の日になって、昨晩描いた絵から気に入った部分をピックアップして、さらに描き進めていったりします。あと、自分がどこかで見たモチーフの記憶を元に描こうとしたりもするんですが、記憶というのは曖昧なものなので、もともとのイメージから微妙にズレて来たり、そもそも何が描きたかったか全然覚えてなかったりすることも多く、はっきり言ってすべてがテキトーなので楽しいですね。

東海林さんの作品には、おじさんの顔がよく登場しますね。

そうですね(笑)。以前に一年半くらいCMの絵コンテを描く仕事をしていたことがあって、そこでは主にタレントさんをリアルに描いていたんですよ。そんな時、空き時間に練習で外人のおっさんを描いてみたら、やたら楽しくて。ハゲてて、ヒゲなんかもブツブツ生えてるのに(笑)。多分それまで仕事でキレイな女性タレントさんばかり描いていた反動なんでしょうね。その経験は割と大きいのかも知れません。もちろん見る分には女の人の方がいいんですけど、描く分にはゴツゴツしているモチーフの方が断然楽しいです。おじさんとか、動物とか。

東海林巨樹東海林巨樹

そうしたモチーフも、東海林さんのタッチにかかると、不思議と怖さや嫌悪感を与えるような作品にはならないですよね。

僕、怖いのはダメなんですよ。だから、作品で人を怖がらせたいとかも全然思わないですし、できれば嫌われるようなものは描きたくないです(笑)。多分基本的にはカワイイものが好きなんですが、そういうものをストレートに描くのは恥ずかしさもあって、結果的にこういう作風になっているのかも知れません。カワイイと気持ち悪いの間のギリギリのところなんですかね。あと、ペチャっとしたものやダサいもの、田舎くさい感じとか、寂しい風景なんかはもともと好きですね。

最近は、CDジャケットのアートワークなども手がけられていますが、クライアントワークと作品制作のバランスはどのように考えていますか?

今のところ、僕の作品が好きで依頼してくれる人が多いので、クライアントワークと言っても、割と好きにやっていいという感じの仕事がほとんどです。そういう時は、依頼してくれた相手といかにコラボレーションしていけるかという考え方で、自分の引き出しの中から相手が一番好きそうなものを出したりしながら、お互いに良いと思えるところに落とし込めればと思ってやっています。ただ最近は、仕事として自分の作風とは違う、いわゆる普通のイラストもやるようになったのですが、その辺は正直少し戸惑いもあります。そういった仕事の時はキレイに描くことに徹するんですけど、どこかのタイミングで自分のもともとの作風とのギャップを埋められたらと思っています。

東海林巨樹東海林巨樹

展覧会では、ANTICSMasaru Iguchiさんやガラス作家のKusanoshinさんとのコラボレーション作品を発表したりもしていますよね。

そうですね。彼らとは今後も定期的に作品を作っていきたいです。ただ、展覧会での見せ方はまだ定まっていないところもあって。以前に、No.12ギャラリーで個展をやった時は、細かい絵を額装して壁面を埋め尽くしたんですけど、次にやる時はもっと大きな作品も象徴的に展示できたらとぼんやり考えてます。あと、昔の映画小屋にあった映写機のようなものを作って、チープなGIFアニメーションを延々と上映したりしたいです。

最後に、今後の予定などを教えてください。

展示は今のところ、3月にNo.12ギャラリーでの「ZINE LIBRARY」、8月頃にサンフランシスコで、「黒緑LESS」の方たちとのグループ展に参加する予定です。あと、GERMのTシャツのグラフィックは毎シーズン手伝っているので、良かったらチェックして下さい。他にも手がけたCDジャケットなどが春先にいくつか発売します。こちらも良かったらホームページで。今年は、イラストの仕事の傍ら、またマンガも発表していきたいです。ゆくゆくは絵本作家のような立ち位置で仕事をしていくことが理想かなと思っていて。自分の作品に値段を付けてギャラリーで売るということも、本当はもっとしっかりやらないとなと思ったりもしますが、イマイチしっくりきていないところも正直あって…。絵本やマンガであれば、一枚の絵を売るよりもはるかに安い値段で、より多くの人の手に作品が渡りますし。あんまり気負って難解なものを作るよりは、ちょっとでも喜んでもらえるものを描いていけた方が自分としてもうれしいですしね。

東海林巨樹東海林巨樹


2月19日(金)より、東海林巨樹も参加するグループ展『PREVIOUS/NEXT』を「PUBLIC/IMAGE.3D」にて開催します。

詳細は、こちら


Exhibition Information
previous_nextPUBLIC/IMAGE.3D presents
『PREVIOUS/NEXT』Exhibition

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