
WHITE MOUNTAINEERING | ホワイトマウンテニアリング | Fashion Designer
「服を着るフィールドはすべてアウトドア」。そんなコンセプトを掲げ、トレンドとは一線を画した独自路線でアウトドアとファッションの融合を計り、今最も注目を浴びているのが、メンズウェアブランドのホワイトマウンテニアリングだ。2010年春夏シーズンはランウェイで初のショーを開催し、業界での評価はさらに向上。ブランドを語る時には常に「自分たち」と言うように、チームワークを大切にするデザイナーの相澤陽介に、ショーに込めた思いと今後の展望を聞いた。
Text:三浦達矢
ご自身のファッションのルーツを教えてください。
父親がスゴく洋服の好きな人で、アウトドアな恰好をしていいました。物心ついた時からそれを見てきたので、ずっとファッションは身近にありました。ただ、父は広告などを手掛けるデザインの仕事をしていたので、その影響でデザインに興味を持ちました。デザインの対象が洋服になったのは、むしろ就職してから。大学では染織科でテキスタイルを勉強していました。卒業後は企業に就職して企画デザインの仕事をしていたのですが、そこは企画チームが素材からデザインまですべて手掛けるというシステムで、一から十までを学びました。
テキスタイルを選んだ理由は?
デザインに興味を持ってはいましたが、グラフィックとか映像はどうもピンと来なくて。自分はもっと何かに触っていたい、手を使って何かを作る方が向いている、と。だからといってファインアートでもないし、と考えた時、テキスタイルという選択肢に出合いました。テキスタイルを追求する中で、考え方がどんどんファッションに寄ってきたんです。
テキスタイルからファッションへとシフトした関心がアウトドアに向かった理由は?
アウトドアは、いつも身近にあった。父親が、僕にも自分が好きなアウトドア系の洋服を勝手に買ってきていましたから(笑)。まだネットもない時代に、L.L. Beanとかを通販で。そこからずっと気になっていたんでしょうね。

2010 S/S Collection
独立して自分のブランドを立ち上げようという思いはいつ頃からですか?
自分で何か作ってみないか、とある人に声をかけてもらって。そこで、一から作るのであればどういうコンセプトがいいかな、と考えた時に、ずっと頭の中にあったアウトドアをやりたい、と。企業で企画デザインを手掛けていた時にもアウトドアをテーマにしたことはあったんですが、それをもっと追求したいと思ったんです。だから、独立したいとか自分でブランドを立ち上げようという野心よりは、何か作ってみたい、という気持ちが基盤にあった気がします。
ブランド名の由来は?
アウトドアというコンセプトが伝わるわかりやすい言葉を使いたいけれど、あくまで“アウトドアウェア”ではなく“ファッション”なので、何かもう一言加えたい、と。そこで、コンセプトを体現している「Mountain」と、自分の中での東京のイメージカラーである「White」を組み合わせました。「White」は雪山を意識したわけではなく、あくまでコンクリートとか都会のイメージなんです。
ところで、コレクションにはチェックやフェアアイルなど、イギリスやスコットランドの伝統柄がよく使われていますね。
染織科出身のため、テキスタイルにはずっと興味があって。色んな国のテキスタイルのスワッチをルーティーンワークとして蒐集してきました。それは学生時代から続いていますが、当時自分で織ったものもちゃんと保管してあります。古い機場には、手本にするための海外の伝統素材なんかが結構置いてある。出張でそういう所を回る度にお願いして分けてもらい、今も集めています。それを、シーズンのテーマに合わせて引っ張り出してくるんです。柄や素材感は、とても大切にしています。だから素材はほとんどオリジナルです。ただ、「テクニック的にスゴい」とか「今までにはなかった新しいものを作りたい」と思っているわけではないんです。

2010 S/S Collection
形をデザインする上で気を配っている点は?
例えば縫い方にしても、「どっちに生地を倒したらどう見えるか」とか「通常は1回のところを2回織り伏せしたらどのくらいボリュームがでるか」とか。ベーシックなものを心がけながら、テクニック的な部分で試行錯誤を繰り返す中で、新しい形やアイデアが見えてくるんです。素材を作りながら、それをどうやって形にしていくか、ふたつのことを平行して考えています。
2010年春夏シーズンはショー形式でコレクションを発表しましたね。
やはり、ブランドとしての“意志”を明確化するのに、一番わかりやすい方法だと思ったんです。全体感を見せるには最適のやり方ですから。それに、今まで8シーズン展示会で見せてきて、そろそろショーで見せられるところまできたかな、と言う思いもあった。ショーで見せるにはいいけど、実際には「着づらい」「繊細すぎる」「デザイン過多だ」というのが一番イヤなので、ショーありきのブランドではなく、モノ作りを重視してやってきました。今回は、そのひとつの区切りとしてのショーだったと言えるかもしれません。
実際にショーをやってみていかがでしたか?
すごく面白かったし、大変でもありました。スケジュールは決まっているし、一定の型数を用意しなくちゃいけない。その中で、自分たちのキャパシティを合わせていくのが一番大変でした。自分は、アウトドアウェアをデザインしているわけではありません。アウトドアというコンセプトを持ちながら、あくまでそれをファッションに昇華させたブランドにしたいと思ってやってきた。それが、ショーをすることによって、より多くの人にきちんと伝わったという気はしています。

2010 S/S Collection
ショーをするにあたって心がけたことは?
まずは、ショーをするんだという気負いを持たないようにしよう、という点。方法論、アイテム、テンションなども含め、できる限りいつもと同じ体勢で取り組もうと。東京にはショーをやるブランドとやらないブランド、というカテゴリー分けがありますが、それはナンセンス。“ショーブランド”というカテゴリーに見られるための雰囲気作りは一切せず、あくまで今まで自分たちのやってきたことをそのままランウェイで表現することを目指しました。
今回、“ショーブランド”というイメージのないホワイトマウンテニアリングがショーを行なったことで、今までショーをするタイプではないと分類されてきたブランドも「自分たちにもショーという選択肢があるんだ」と感じたように思うんです。その意味で、非常に意義のあるショーだったと思っているのですが。
確かに今の東京ブランドは、ショーをするかしないか、モードかそうではないか、というカテゴリーに縛られ過ぎている気がしています。そういうことではなく、もっと色々な方法論で挑戦した方が面白いんじゃないかな、と思います。
ショーでは冒頭のホワイトルックが続くシーンが印象的でしたが、どういう意図が?
白いコレクションはずっとやりたかったんです。ブランド名にもなっているわけだし。正直、ビジネスを考えれば難しいカラーだとは思いますが、今のタイミングならやってもいいかな、と。次もやるかどうかはわかりませんけど。ただ、ブランドとしてずっと持っている“ハッピー”で“ポジティブ”な空気は伝えていきたい。洋服は楽しいものなんだ、ということを表現し続けていたいです。今シーズンは、そこがより際立っていたかな、という気はします。

2010 S/S Collection
今後もショー形式で発表していく予定ですか?
そのつもりではいます。ひとつのストーリーを土台にして、その時その瞬間に気になったり興味を持っていることを表現することで、シーズン性を出していきたい。テーマは毎回アウトドアに付随するところから持ってきているので、中核の部分はブレないと思います。
デザイン活動には没頭するタイプですか?
したいけどできない(笑)。ブランドは自分だけのものではないし、企業である以上、デザイン以外の仕事もたくさんあるし。だから、ギアの切り替えがすぐできるように心がけています。スタッフに何か言われると一瞬だけギアチェンジする。ただ、デザインのコアな部分はもう決まっているので、他のデザイナーに比べれば切り替えは簡単なのかもしれません。デザインに集中する特定の時期はなくて、いつでもずっと考えている感じです。リサーチの段階で色々なものを見て周りますが、それだけだとアイデアは浮かんできません。特にテクニカルな要素を含んだウェアは、作り続ける過程でどんどん形になっていくもの。作り続ける中で改善を繰り返すのが、自分たちに適したベストの方法論だと思っています。
日本での人気もさることながら、海外からも注目されていますね。
日本はもちろん、海外の方々にも受け入れてもらえればうれしい。ただ、特に東京発信のブランドなんだ、ということを意識してはいません。むしろ、東京も含めて、“都市”での生活に似合うデザインを心がけてはいます。

2009-2010 A/W Collection
今後レディスを展開する予定は?
ホワイトマウンテニアリングから派生したレディスコレクションであればやってみたい。「女性も着られる」という形での提案がしたいです。
あくまでも基本はメンズにあり、ということですね。メンズにこだわる理由は?
単純に、自分にとってはメンズの方が面白いんです。柔らかい素材よりもかたい素材が好きだし、テクニカルなことに集中もできるから。
蒐集している素材のスワッチの中から、気になるものを再現してみたり?
再現するということはありません。テキスタイルを構成する糸のクオリティが違うだけで、風合いは変わってしまうから。テキスタイルも洋服も、自分ひとりでできるものではありません。自分で糸を染めるわけでもなければ、自分でプリントするわけでもない。そこに携わっている人たちとのコミュニケーションの方法を見つけていくところに面白さがあったりします。一着の洋服ができあがるのに、これだけの人の手がかかっているのか、という実感が持てる部分も楽しいです。
楽しくやりがいを感じる瞬間は他にもありますか?
実際にアウトドアスポーツをしている人に受け入れられた瞬間は、「やった!」と思います。アウトドアウェアは、本来ファッションとしての役割だけではいけないもの。突き詰めれば生命にかかわる問題にも発展します。本格的アウトドアウェアのブランドではないにしても、体を張っている本気のアウトドア人間が、BLK(※ハイスペックな素材と高い技術力を駆使した、新感覚な本格的アウトドアウェアのライン)を着て雪山に挑み、「調子がいい」とメールをくれたりする。それは本当にうれしいです。その彼は、標高の高い山を制覇している本格派ですから。反対に、今まではアウトドアウェアをファッションのツールとしてしか捉えていなかった人たちが、ホワイトマウンテニアリングを通してアウトドアの面白さに目覚めてくれるようなことがあれば、それもうれしいです。

2010 S/S Collection











