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JUNJI ISHIWATARI & YOSHINORI SUNAHARA | いしわたり淳治&砂原良徳 | Musician

それぞれスーパーカー電気グルーヴという人気バンドを解散・脱退し、ポップミュージックのフィールドで活動していたふたり、いしわたり淳治砂原良徳。彼らがユニットを組み、現在放映中のアニメ「四畳半神話大系」のエンディングテーマ「神様のいうとおり」を手がけた。スーパーカー『YUMEGIWA LAST BOY』のプロデュースを砂原が手がけたように、もともと親和性の高かった彼らが生み出したのは、いつの時代の、どこの世界の“和”なのかわからない、不思議な世界。やくしまるえつこのボーカルがぴったりとはまる、「ジャポネスク」という言葉だけでは到底説明がつかない楽曲に仕上がっている。

Text:大草朋宏


まずは結成のきっかけを教えてください。

砂原:プロデューサーとしてスーパーカーに関わったとき、ナカコーくんとは作業する時間が比較的長かったので、話はしたんですが、(いしわたり)淳治くんも「何か考えている人だよなぁ」って思っていたので、5年前くらいに一度飲みに行ったんです。そこで共通点がたくさんあると感じて、じゃあ、何かやってみようと。ふたりで何かをやってみる、というのが最初ですね。

共通点とは具体的にどのようなことだったんですか?

砂原:歌謡曲とかJ-POPというもののなかで、今もてはやされているものに対して、「僕たちだったらこうするよね」という方向性が一致していたこと。ポップミュージックのシーンは、いろいろなものを捨てながら進んできたと思うんですが、普遍的なものまで捨てているような気がして。そういう物は拾っていきたいですね。

ちなみにその飲み会のときは、音楽以外の話もあったんですか?

砂原・いしわたり:……野球(笑)

砂原:野球の監督って、野球を知らなければダメなのか?って話。それよりも例えば「次は打たれるんじゃないか」っていう予測能力がスゴく高いような人が監督になった方がいいんじゃないかって。気を読むような監督。

いしわたり:野球って唯一、1球1球アップで抜かれるスポーツなんですよ、ピッチャーもバッターも。だからテレビで見ながら、そういう能力があれば結構できると思うんですよ(笑)。

 いしわたり淳治&砂原良徳

音楽的に合うというのは大前提だと思いますが、そういう人間的に合う部分があった方が、うまくいきそうですよね。

砂原:そうですね。この野球の監督の話も、普通の視点じゃないと思うんですよね。彼は物事を切るときの角度や切り口が面白い。

ふたりでやっていくにしても、バンド形式にしたり、固定のボーカリストを入れたり、いろいろと形を模索できたと思いますが、ふたりだけでやることになったのはなぜですか?

砂原:例えば、ボーカルを入れてしまうと、そこから先は突き詰める作業しか残ってないんですよね。そうなると終わりに近づいて行くだけだと思うんです。以前にやったことのあることをやる必要もないし。あとはふたりだけで決めたかったというのも大きい。

それはユニット名にも表れていますね。

砂原:何かもっともらしい名前を決めちゃうと、それがマニフェストのようになってしまって、活動が制限されてしまう。これから先どうなるかは、固定しないでいたいんです。極端な話、10年後、僕が歌詞を書いて、彼が曲を書いていることもあり得る。そのくらいの感じでいいんじゃないかと思うんです。

 いしわたり淳治&砂原良徳

ボーカリストはどのような経緯でやくしまるえつこさんに決まったんですか?

砂原:周りのスタッフもボーカルを探してくれたんですけど、うまいボーカルはたくさんいましたね。高音が伸びるとか、リズム感がバッチリとか、ピッチが安定しているとか。でも僕らが探していたのは、ただうまい人ではなく、独特の雰囲気を持っている人だったので、やくしまるさんは最適でした。

実際、曲作りはどのように打ち合わせして進んだんですか?

いしわたり:打ち合わせは全然なかったです(笑)。それでも曲ができるって一番大切なことだと思うんですよね。言葉にしてしまうと、それにかなり引っ張られてしまうんですよ。「例えばさ…」という無責任な例えを、聞き手は意外と気にしてたりする。そういうものが増えれば増えるほど、軸はブレていくんですよ。言わないでできるのが、一番スゴい。

そうなると、曲作りへの取っ掛かりは、アニメのエンディングテーマになるということと、やくしまるさんが歌うということだけですか?

砂原:はい。アニメの原作を読んだら京都が舞台だったので、和の雰囲気を入れてわらべ唄をモチーフに使ってみたり、キーのアップダウンを抑えたり、みんなで歌うよりはひとりで歩きながらボソボソ歌うような素朴さを意識しました。が、それを口に出して言ったことはありませんね。それよりも、やっぱり5年前の飲み会で話したときのフィーリングが大きいですね。

 いしわたり淳治&砂原良徳

歌詞はどんなことを意識して書いたのですか?

いしわたり:やくしまるさんの声には奥行きがあるので、よく耳にするような歌詞を使ってしまうと、せっかくの奥行きが生かせず、表面上の聴きやすさだけで終わってしまうんです。なにか「えっ?えっ?」って引っかかる、いびつなところがほしかったんです。

その歌詞を見て、砂原さんはどう感じましたか?

砂原:正直、最初はよくわからなかった(笑)。でも、口に出して歌ったら、音遊びとして面白かったんです。それに、僕は1回見てすぐにわかる歌詞ってダメだと思っているんですよね。最近ですよ、この歌詞の意味がわかってきたのは(笑)。

ラブソング、ですよね?

いしわたり:歌詞のモチーフとしては恋愛ものですね。でも、「会いたい」って書かなくても、それは伝えられる。例えば、「自分を信じて」という歌詞があったとして、いわゆるJ-POPの人が歌うと、身の丈より清潔すぎると感じるんです。誰だって自分を信じたいって思っているんですよ。「この人、絶対そういう生い立ちじゃないところで歌を手に入れてきたはずなのに、なんでアウトプットがこんなに潔癖なんだろう」と。今回の歌詞では、「いいことをしてたら天国に行ける、と思っている私っていいでしょ?」というところまで書きたかった。そこまで書くのがリアリティだし、個性だし、奥行きだと思うんです。

 いしわたり淳治&砂原良徳

きれいなだけのものに抵抗がある?

いしわたり:抵抗はないんです。ポジティブな人がポジティブな歌を歌うのは大好きだし、むしろそういう歌ばかり聴いていたい。でも、そうじゃない人が同じ歌い方をしても、何も伝わらないと思うんです。その人なりのリアリティで歌ったほうがいい。例えば、「アイツだけいい思いして」と、誰でも一度だけじゃなく、ヘタしたら100回くらい思ってるはずだけど、それが歌われている歌詞を、今までに果たして何回聴いたことがあるだろう?と。確かにそれをテーマにすると湿っぽくなりすぎたり、カッコ悪いんですよ。でも、カッコ悪くならない書き方があるんじゃないかと。これはそういう提案であり、試みですね。

歌詞も曲も、すき間があるというか、詰め込まれすぎていなくて、不思議な余韻を感じますね。

砂原:僕は音楽においては特に、間が大切だと思っています。音数を増やせば増やすほど、その紙はどんどん黒い紙に近づいているだけ。ちょうどいいところがあるはずなんです。何も塗ってないところと、塗ってあるところの差があって初めて、ダイナミズムというのが起きる。マイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』で、曲の余韻についてスタッフに指示しているシーンがあって、「コイツわかってるなー」(笑)。“周りのスタッフはわからないんだな、だからマイケル・ジャクソンに価値があるんだな”と思いました。基本的に、音は鳴ってないもの、というのが大前提。その状態のなかで鳴らすということを忘れてはいけないんです。

いしわたり:今、思い出しましたけど、5年前もこんな話をしてましたね(笑)。





いしわたり淳治&砂原良徳
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