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TROVE | トローブ | Fashion Designer

スペックを重視するメンズウェアのブランドにおいて、内面からにじみ出るやわらかなファンタジーを纏ったTROVEの服は稀有な存在と言える。それは、「男の子がみんな超合金を好きというわけではなく、花が好きな人もいる」と語る、デザイナーの上出大輔が描く男性像から生まれるもの。新しい価値観や試みを提案しつつも、決して声高には叫ばず、デザイン過多を嫌う。そんな肩の力の抜けたTROVEのデザインフィロソフィーを、上出が静かに、でも明確な言葉で語ってくれた。

Text:小柳美佳
デザイナーになった経緯を教えてください。

文化服装学院を卒業した後、どうやって洋服を世の中に出していくかという仕組みが何もわからなかったんです。当時はレディスの一点物を作っていたのですが、それこそ六畳一間みたいな部屋に籠ってずっと作ったものがバーッと家中にあるような状態で。どうしたものかと思っていたときに、同級生たちがアートや舞台の活動をするようになったので、そうゆう連中に提供していました。一点物なので量産も考えずに、機能よりも見てくれ、ましてやレディスの洋服ということで選択肢も多かったので、とても楽しく作っていましたが、気付いたら4,5年経っていたので、ヤバいなと(笑)。

でも4,5年続けられたということは需要もあったんですね。

結果的に需要があったというだけで、それで食べられていたわけではありません。自分の服が広まっていくきっかけを試行錯誤しながらやっていたので、4,5年して、このやり方では広まらないと悟りました(笑)。その頃、『DUNE』に取り上げて頂き、それを見た企業から声がかかり、名前を出さずにメンズウェアをデザインしていました。今までずっと作りたいものをレディスで表現していましたが、どうにも広がり方がわからない時に、メンズで流通の仕組みに則ったやり方でできるというのに興味を持ったので、ぜひやらせてくださいと言って。

流通の仕組みを学びつつ、メンズを手掛けたら広がりが見えましたか?

僕自身がまだ模索中で、広がり方を掴み切れていませんでした。単純に僕の能力不足で挫折して。ただ、その時作っていた服をウチの母体である生産会社の人間が気に入ってくれたみたいで、また拾われ、2004年にTROVEを立ち上げました。ホント拾われっぱなしで(笑)。

trove

立ち上げ時にはどんなイメージや男性像を描いていたのですか?

いわゆる強いだとかカッコいいだとか、わかりやすく言ってしまえば「ケンカが強い」「言い方が強い」というような男性に求められがちな「男性的物差し」って、みんなが賛成している、楽しんでいるのとは違うな、と思っていて。僕が苦手だというのもあるのですが、そうゆうイケイケの男性像というよりは、もう少し角のとれた、ベタに言ってしまえば穏やかとか優しいという男性像をブランドのイメージとして持っています。それゆえに肩の傾斜ひとつにしても、シャープに見せる、カチッと見せる、強く見せるというところをウチはむしろ排除していくことで、内面の柔らかさや肩の力が抜けたみたいなところが出せればいいなと思っています。それはここ数シーズン、特に顕著に出ていると思います。でも、自分が表現していきたい男性像がはっきり見え始めて、言葉にしたり形にしたのは、ショーを始めた08年秋冬シーズン頃ですね。メンズの服ってこれまで、シャツがあってジーンズがあって、それにブランド感というものを表面的にのせて、「ウチのシャツはこうなります」という作り方だったのですが、それがメンズ服の規制を作っているんじゃないかと思ったんです。もともとフォーマットありきなので、シャツに替わるアイテムを作っていくことをしないと、多分メンズのアイテムのバリエーションは増えないだろうと。ブランド開始後すぐに新しいアイテムを見せるというのは、ただの風変わりな服として終わってしまうので、まずは男性像を見せていくことに注力しました。TROVEの男性像を見て知って好んで頂いた上であれば、新しいものが出るきっかけがあるはずだと思い、男性像を表現するためのアイテムや環境作りに数年費やしました。

そうやって徐々にステップアップしていくという計画性はどうやって身につけたのですか?

性格です(笑)。業界的にも良しとされるのは、スター性も話題性もあるから一発目にバーンと発表するやり方だと思いますが、僕、そういう勇気もありませんし(笑)。徐々に徐々に、慎重に、おそるおそる。性格もこんな感じなので、目立つものを作りたくない。目立つものは良い面と悪い面があって、発表の仕方ひとつにしても、最初にバーンと出てくるものって一気に頭を洗脳してしまうので、すごい衝撃がある分、浸透するスピードは速いと思うんです。でも、浸透の速度が速いということは、理解しやすいということでもある。人は何事も理解すると飽きてしまうので、せっかくそれが素晴らしいものだとしても、頭でわかりやすいということは、かなり危険な方法だと思うんです。頭の中をパッと書き換えるというよりは、何か頭に残っているというのを継続して作っていくと、そこから膨らんでいくので、長いスパンで見るとその人から離れられないものになっていく。だから衝動型の見せ方はしたくなかったんです。

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でも舞台衣装は衝動が必要なものですよね?

多分その苦い経験もあるので、余計そうなったというか(笑)。瞬間的なものを作っていくことはとても刹那的すぎるというか、はかなすぎる。ブランドにとってもアイテムにとっても、僕はもう少し繋がっていくことをしたいんです。例えば、TROVEは、今季はこうだけど、来季は真逆という作り方を避けています。デザイナーが提案してきたもので今も残っているものって、シャネルジャケットとヴィヴィアン(・ウエストウッド)のボンテージパンツぐらいだと思うのですが、それは両者がずっとやり続けていることと、時代や年齢が変わっても常に消費者がいることが強いんだと思うんです。しかもアップデートされている。1人のデザイナーが、何年経ってもアイテムを買える環境を作り定着させていくには、そういう方法しか無いんです。

TROVEにとって、定番となりうるアイテムはありますか?

「パフT」と呼んでいるシリーズがそうです。メンズで丸首のものだと、Tシャツとニットしかない。女の子だったら、襟元を強調することなく、丸首でどんな素材でも取り入れられるワンピースがある。でも男性には、肩開き、後ろ開きなどを開閉する仕草はハードルが高すぎると思うんです。首まわりがそこまで詰まっていなくても、バサッとかぶれるようなネックラインは男の子にも許容範囲ができてきたはず。だからレディスの開ける作業を排除した、丸首でメンズでは取り入れられなかったツイードライクな生地や布帛をTシャツの感覚で着る方法を模索していて、その結果生まれたのがパフTです。もうひとつボレロも定番で出していますが、これも意図があります。男性が重ね着を見せたい時は、前を開けるしか方法が無かった。Vゾーンを作るか全開か。全開はだらしない、Vゾーンを作るのも変にいやらしくなる。じゃあ、全部閉じても裾や袖口から下に合わせたものが見えるボレロが、ウチの描く男性像と合うと思いました。

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今シーズン(10-11年秋冬)について聞かせてください。

コレクションテーマは「INNER FOREST」。森は好きだけど、山登りには興味がなくて、どちらかと言うと自然のある場所で室内に籠りたい。そういう切り口で森を捉えた洋服って意外とないんじゃないかと思って。通常の装備に近いアウトドアとして捉えるのではなく、森の建物の暖炉の前で刺繍をしたり詩を書いたりする男性像がイメージ。でも家に籠ってしまうだけだと、森を表現しづらくなる。どうしてその人が森にいるのかということを突き詰めていくと、もう少し精神世界に近いというか、森と共存したり共鳴したり、もしくは自分の中の森を探して行くような。そういう世界を表現できればなというのが、今回掲げたテーマです。

それはここ数シーズンの流れですか? エロール・ル・カインが描く森からインスピレーションを得た09-10年秋冬シーズンとも通じるように感じます。

そうですね。今までは男性ということを排除してきたのですが、やっとブランドの男性像を認知していただけるようになったので、今回はあえて(ブランドのベースである)メンズ的要素を排除する考え方のもと、メンズ的要素を入れて行く作業をしてみたんです。ここ数シーズンは、説明的なコレクションをやってきたので、ある程度土台ができた。だからあえて今回は説明的な部分を消しました。見た目の印象で言ったら、多分弱く写ると思うんです。でも頭で考えずに見てくれたら、今回の方が強いものができたかなと思います。

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今までは頭で理解できる説明的なコレクションを発表してきたから、受け手側も上出さんの思いとズレがなかったと思いますが、今回はそれを弱めたということで、自由な発想もできる反面、意図とは違う解釈もあるのでは?

そうですね。でもそれはそれでいいと思う。変な話、今まで説明を繰り返してきたおかげで、今回が一番みんなの感想が似ているんです。プレスリリースにもメディアに対しても一言も言っていないのですが、みんなスナフキンみたいな男性を思い描いてくれているみたいです。

コレクションを続けたことで、男性像のイメージが浸透したんですね。

もともと僕がやりたいことって、男性像の選択肢を増やしたいということに尽きるんです。ショーで発表する以前は、モノ単体で見せていくしかなかったので、男性像を提示しにくかったのですが、ショーではモデルの雰囲気も作り込めるので、洋服よりもまず男性像で見て頂けたのかなと思います。それで男性像に共感した人が洋服にも興味を持っていただけるというのが僕らの希望であり、楽しみであるというか。

色んな男性像があっていいという考え方は子供の頃からあったのですか?

ベタな言い方をしてしまえば、イケイケの人が苦手で(笑)。なんでこんな勝気な言い方をするんだろう、もっと楽しくできるじゃんって思っていて。僕は別に何か強く見せたいとか上に見せたいとかはなくて、ウチのお客様もそうなんですけど、自分を表現したり高めたりするベクトルを外に向けていない。もうちょっと自分向きなんです。イケイケや、不良カルチャーもカッコいいので、取って代わることではないのですが、女の子のここ10年間って、どんどんジャンルを作ってきたと思うんですよ。ギャルもいれば、ほっこりと言われる子もいる。そうやって女の子は自分が最も心地よい、輝いて見えるジャンルをどんどん作ってきたにも関わらず、男性はそうとは言えない。男性にももっと細分化したジャンルがあってもいいと思っていたら、こうなりました(笑)。

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子供の頃はどんな子でしたか?

田舎育ちで、洋服を手に入れるのも困難でしたが、おばあちゃんが編み物をしていたり、母親が70年代のヒッピー世代なので、当時の何だかわからない派手な人たちの写真集が部屋中にあるような環境でした。写真集はよく見てましたね。変な人たちがたくさんステージにいて楽しそうだなと思っている時に、観客の方に衝撃を受けてしまって。熱狂を作る人より、熱狂に動かされる人の方にリアリティを感じて面白いと思いました。

他にも『不思議の国のアリス』もお好きだとか。

ファンタジーも好きでした。でも、男の子向けのファンタジーの勇者が敵を倒すというものよりも、アリスとか妖精が出てくるような闘いのないファンタジーの方がよっぽど好きです。ソフィア・コッポラもスゴく好きで、『ヴァージン・スーサイズ』を見て、ストーリーよりも、香水瓶がバーッと並んでいる部屋とかマリア様とかロザリオとかの世界に惹かれてしまったんです。小さい時から男の子は水色、女の子はピンクという決まりがあるように、女の子の極端な形のひとつが『ヴァージン・スーサイズ』だと思った時に、男の子にももう少し振り幅があるなと思って。いわゆる性癖としての女装趣味には興味がないんですけど、壁紙の選び方とか女の子が好きなものがいいなと思うことがあるんです。でも一度女性用となったプロダクトはなかなかこっちに引っ張ってこれない。なので、徐々に引っ張ってこれるといいなと思います。

レディスのデザインに興味はありますか?

ゆくゆくはやりたいなと思っていますが、まずはメンズから。時間と心の余裕ができたらやります。

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