
PHONOMENON | フェノメノン | Fashion Designer
3月末の雨の降りしきる寒い夜に、ひときわ熱気を帯びた場所があった。そこは、国立競技場。Phenomenonが初めてショー(10-11年秋冬)を行った場所だ。ショパン作曲『Etude no.12 in C minor, Op.25 no.12, “Ocean”』の旋律が一転、爆音のイギー・ポップに変わり、ショーがスタート。ショー幕開けの高揚感と勢いを最後まで持続したコレクションは、東京コレクションの話題を一気に集めた。圧巻のショーを発表したデザイナーのオオスミ タケシに、なぜ、いま、ショーでの発表を選んだのか話を聞いた。
Text:小柳美佳
初めてのショーはとても印象深かったです。テーマは何だったのでしょう?
少年が家のガレージに籠って一人で遊んでいるイメージです。秘密の場所で少年が隠れて、一人楽しむ空気感を服に落とし込みました。ロープや花札、鎧などガレージに眠っていそうなものから展開していきました。例えば、子供の頃の古いブランケットを彷彿とさせるものや、雑巾モチーフのショートパンツ、変色から着想した裾にかけてグラデーションしているツイードパンツなどが象徴するアイテムです。今回はガレージロックからイメージを膨らませていったので、「ガレージで少年が一人はじけている」という枠を外れないようにしました。モデルも子供のピュアな雰囲気を出したかったので、少年ぽさを残している人を選びました。
なぜこのタイミングでショーを行ったのですか?
空気感と素材感を一気に伝えたかったんです。いつもは展示会で発表していますが、会場や見に来てくれる人と音楽がミックスしていないし、コーディネイトされたものをモデルが着ないとイメージを伝えきれなかったんです。洋服はいつ誰がどんなシチュエーションで着るかが限られている。だから一番合うシチュエーションで、発表したかったんです。


2010-2011 A/W Collection
ショーで発表するにあたり、服作りに変化はありましたか?
アイテム数は増えましたが、作り方は変わりません。好きなようにショーピースを作れました。今まで諦めていた強いピースも入れられましたね。
終わってみての感想は?
ライヴをやっている時に近い、軽い興奮状態でした。今まで見てもらえなかった人、目が肥えた人、伝えきれなかった人に届いたので、良かったと思っています。どれだけそういう人に見てほしかったか。あと、終わった後に声援をもらえたのも楽しかったですね。
なぜ東京でショーを行うという選択だったのでしょう?
海外のエンターテイメントの見せ方は規模が違う。世界中から集まる魅力があります。でも、日本で生まれて日本でブランドをやっている立場からすると、もっと面白いことが多いはず。「何かないのかな?」と思うんです。世界のショーと並んでもいいと思う何かが。それは、派手とかシンプルとかの話ではなく、社会や不景気に反映されている場合でもなく、その瞬間に膨大なエネルギーがあった方がいいと思って、ショーをやりました。海外の友達からもすぐに連絡をもらったり、情報の広がり方が昔と違うことを実感しました。どこで発表するかという「場所」は関係なく、どこにいても届きやすい時代になっていると思います。


2010-2011 A/W Collection
オオスミさんはPhenomenonの他に、1999年からSwaggerというブランドも手掛けていますよね。
Swaggerはふたりでディレクションしているので、お互いに話し合うなかから共通のテーマを見つけ出すという感じです。一方でPhenomenonは自分ひとりで作っています。常に音楽や音楽のまわりのカルチャーからイメージを膨らませていて、それはどちらも同じですね。
一般的には、Swaggerはストリート、Phenomenonはモードと捉えられているところがあるような気がしますが、そのような住み分けは意識されていますか?
決してストリートとPhenomenonが離れているわけではなく、音楽も含めすべて自分の中に同居しているものなんです。Phenomenonでは、今まで表現したかったけどできていなかったことを表現しています。言ってみれば、表現のアウトプットのラインが一本増えた感覚です。よりパーソナルな部分が出ているのがPhenomenonですね。それと、よく言われる「モードとストリートの違い」というのがあまりわからないんです。モードだからショーをやるのではないし、ストリートだからショーをやらないというわけでもない。今回ショー形式で発表したことで、「モードへ殴り込み」とか「モードへ進出」と書かれたり言われたりしましたが、自分の中では少し違和感があるというか。もちろん、服作りに対する評価がバラバラなのは当たり前ですが、モードとストリートの対立軸で語ることには少し困惑しています。でもいわゆる、モードなブランドのショーで感じられるエッジ感、斬新さ、刺激は大切だと思います。そのエッジ感を自分なりに面白く表現できたらいいなと思いますね。

2010 S/S Collection
普段はどんな音楽を聴きますか?
ロックは全般的に好きですが、ガレージ、ヒップホップ、ハウス、テクノ……今は何でも聴きます。毎週ネットでCDを買ったり、ダウンロードしたり。そもそもファッションに興味を持ったのも音楽からなんです。中学生のころセックス・ピストルズなどパンクロックにハマり、彼らの着ていた洋服に興味を持ったんです。音楽と一緒に育ったというか、影響を受けるものはほとんど音楽からです。だから、前シーズン(10年春夏)は、サイケデリック・ロックをよく聴いていたので、ヒッピーのようなナチュラルなイメージのコレクションになりました。
以前は音楽活動もされていましたが、ファッションデザインに至った経緯を教えてください。
僕にとっては音楽もファッションも表現するという点では同じなんです。どちらにしても、人と違う表現でありたいという思いが強くて、物理的な作業こそ違いますが、何かを残したい、もっと多くの人に触れてもらいたい、というマインドはまったく同じだと思っています。本当に音楽と洋服のことしか考えてないので、何をしているという感覚もない。何もしたくない時は休むし。楽しくありたいとは思っています。
今後は海外での発表も視野に入れていますか?
パリやミラノはもちろんスゴい場所で憧れはあります。でも、コレクションを見せる場所としてはこだわっていません。僕の好きな洋服の幅は広い。ストリートウェアも好きで着ますし、パリやミラノのショーも好き。そんなストリートもモードもミックスされているという概念が当然だと思われるように変えていきたい。ミックスが前提で、その上に面白いものを作りたいと思っています。












