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MUSTONE | マストワン | Artist

マンガやストリートカルチャーからの影響を強く感じさせるキャラクター色の強い作品を、絵画、マンガ、ライブペイント、グラフィティなど、さまざまな方法でアウトプットしてきたアーティスト、マストワン。古くからこの国で描かれてきた「妖怪」を一貫したテーマに掲げつつ、常に異なるアプローチでそれを表現し続けてきた彼は、現在、渋谷・NUNZUKA AGENDA白金・NANZUKA UNDERGROUNDの2会場で連続開催中の個展においても、原点回帰ともいえるスプレーを画材に選び、新たな境地を見せてくれている。昨年、情報過多な東京から、四国・徳島に制作の場を移し、理想的な環境で制作を続けている彼に、東京の展覧会場で話を聞いた。

Text:原田優輝

MUSTONE

今回の個展について教えてください。

渋谷のNANZUKA AGENDAと、白金のNANZUKA UNDERGROUNDの2会場で連続開催している展示ですが、作品のアプローチはどっちも同じで、全作品スプレーで描いています。去年の10月くらいからスプレーを使って描き始めたんですが、たくさん作品が出来て全部見せたかったんで、2会場でやることになりました。昨年の個展では、シリコンを使った作品を発表したんですが、ある時にシリコンの技法をスプレーでやってみたらどうなるんだろうと思ったんです。それで、実験的に作品を作ってみたんですが、ちょうどその頃、COS/MESのアルバムのアートワークを頼まれていて、「今一番やりたいことを自由にやって欲しい」ということだったんでその実験作を見せてみたら、スゴく気に入ってくれて「牛頭馬頭(ゴズメズ)」が完成しました。そこから、今回の方向性が固まっていきました。

実際に制作をしてみていかがでしたか?

これまでに使ってきたシリコンやオイルチョークのような色数の制約がないですし、制作スピードも早くなりました。スプレーという絵を描くためのポピュラーなツールを使いつつも、オリジナリティのあるアプローチで表現することができたと思うし、まだまだ描きたいアイデアもたくさんあるんで、いまはこのやり方がすごく自分に合っている感じですね。

MUSTONE

いわゆるグラフィティ的なアプローチではなく、スプレーを筆のように使って絵画を描いているような印象を受けます。

こういうスプレーの使い方は今までやってこなかったので、とても新鮮でした。型紙やステンシルも使わず、すべて噴き出したままでやっているので筆やペンに比べると、はるかに扱いづらいのですが、だからこそアジが出るところもあって、それはシリコンを使っていた時も同じです。エスキースを考えていく段階で半分くらいは完成形が見えていますが、スプレーを使っているとドリップしたりと、やっているうちに予測不可能なことが起きるんです。そういう事故的に起こったことをその場でディレクションしながら制作していくことで、自分の脳内にはなかったものが出来上がり、それに自分自身が感動しているという面白さがあります。

何種類くらいのスプレーを使っているのですか?

市販されているものはすべて制限なく使用しています。メーカーによってガス圧や噴き付け方も全然違うんで、一つひとつ使いながらそれぞれの性質を把握していきました。例えば、油性スプレーを噴いて、それが乾かないうちにその上に水性スプレーを噴き付けるとインクが弾いたりとか、そういう技法も発見しながら、徐々にスキルを身につけていきました。

MUSTONE

今回の展覧会もそうですが、作品のテーマには一貫して「妖怪」を掲げていますね。

僕はもともとマンガなどからの影響を強く受けていて、昔からキャラクター的な絵を描いてきたのですが、ある時からこれらを全部「妖怪」と総称しようと決めました。それは妖怪作家の水木しげる先生がやってこられた「妖怪の産み出し方」が、僕といっしょだったんです。

その「妖怪」に対する解釈は、長く制作を続けていても変わらないものなのですか?

そうですね。そもそも「妖怪はこうじゃないといけない」という難しい定義のようなものは、自分のなかには特になく、自由に受け止めています。水木先生も、世界中の怪獣だったり、妖精だったり、神様だったりを妖怪として産み出していますから。作品には自分の主張は込めていますが、別に妖怪について何かを言うつもりはありません。自分としては、空想のキャラクターとも言える形無きものを描いて表現することで、みんなが見えない妖怪を形にして見せているという感覚でやっています。

そのような妖怪のイメージはどのように湧いてくるのですか?

水木しげる先生は、妖気を感じる瞬間のことを「ムホっとなる」という言葉で表現しているんです。これは、自分がインスピレーションを得た瞬間と言い換えることができると思うんですが、僕がキャラクターを作るときもまさにそういう感覚があるんです。日常生活を送っているなかで、ムホっとなった瞬間を逃さず絵にしていくというわけです。

MUSTONE

日常生活と言えば、最近ご自身の故郷でもある徳島に移住されたそうですね。

去年引っ越しました。インターネットもつながず、スローな生活をしています。人に左右されずに自分のペースでやっていくことで、自由な発想が生まれてくると思うし、精神的なゆとりを持っていたいんです。そして、自分が気持ち良いと思える表現をしたい。今回はかなり大きなサイズの絵も描いているのですが、これもそうした思いと関係しています。開放的な作品を作って、自分も見る人も感動させたり、気持ち良くできたらと思って描いています。

絵を描くことの本質的な楽しさや喜びが、マストさんのモチベーションになっているんですね。

誰にも頼まれていないのに絵を描いているわけだから、まずその絵に自分が一番感動したいと思っているし、そのようなエネルギー循環が理想的です。今回はまさにそういう感じで作ることができました。愛着がわきすぎて、売りたくない。実際に展覧会のためとか、絵を売るために描いているわけじゃなく、日頃から自分がやりたいことに対して、色々模索をしながら制作を続けています。そこで出来てくるものを、タイミングで発表するという流れが理想だし、一番自然だと思うんです。

MUSTONE

これまでに様々な手法やスタイルで作品を発表してきていますが、これも自然な流れということなのですか?

そうですね。いつもそうなのですが、奇を衒って手法をどんどん変えているのではなく、ちゃんと筋道が通ったやり方をしてきていますし、本質的に伝えたいことは一貫しています。今回にしても、かなり回り道をしてスプレーに戻ってきたんですが、すべてはちゃんとつながっているんです。

以前に描かれていたマンガの作品は、今はもうやられていないのですか?

今はやってないけど、別にやめたわけではないです。今やりたいことがこれ(スプレー)なので、それをやっているというだけです。「マンガ」「グラフィティ」「アート」というような線引きは自分には関係ないですし、ずっとやりたいことをやってきただけなので、自分がどのシーンにいるのかというようなことも特に意識はしていません。

MUSTONE

作り手として理想的な立ち位置だと思いますが、現実的には生活の問題などもあり、それを実現することは難しくもありますよね。

売れていようがいなかろうが、精神的に余裕であるべきだと思うんです。続けられなくなる不安があるというのもわかりますが、結局は作ることでしか打開できないと思っています。「続けられる」ということが作家として一番大切なことだと思うので、いくら経済的に余裕があったとしても、それだけで10年、20年と続けていくのはとても難しく、継続していくためには、自分が産み出すものに対して確信がないとやっていけないと思うんです。自分にはまだやりたいことがたくさんあって、続けられなくなる不安はありません。僕は本当に描いてないとダメな人間なんです(笑)。

作り続けることで、また次のモチベーションが生まれてくることもありそうですね。

そうですね。結局自分の頭の中だけで思い付くことなんて限界があるんで、やっぱり手を動かしていくなかで、いかにインスピレーションを拾っていけるかが大切なんです。それを続けていくことで進化し続けていけたらいいなと思っています。

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